広げた案を絞る——実現性×インパクトで1案に | マナビズ

広げた案を絞る——実現性×インパクトで1案に

前の講座で、あなたは制約や分解、組み合わせや転用を使って、業務改善や販促のアイデアを10個、20個と「広げる」ところまで来ました。ところが、ここで多くの人の手が止まります。案はたくさんあるのに、「で、どれにするの?」と聞かれた瞬間、何を基準に選べばいいか分からなくなる。結局、なんとなく好みで決めたり、会議で一番声の大きい人が推した案に流れたりする。そして後日、上司に「他の案は検討したの?」「これ、本当に実現できるの?」と詰められて言葉に詰まる——。

絞り込みでつまずくのは、決め方の「軸」を持っていないからです。広げるのに手順があったのと同じで、絞るのにも手順があります。この講座を読み終えると、発想と評価を分けて評価モードに切り替えられるようになり、実現性×インパクトの4象限で案に優先順位を付けられるようになり、最後に意思決定マトリクスで採点して1案に絞り、「なぜこれを選んだのか」を自分の言葉で説明できるようになります。題材はこれまでと同じ、「部署の業務改善や販促の小さな企画を任された若手」のあなたです。

この講座のポイント

  • アイデアを「広げる作業」と「評価する作業」を分ける理由と、評価モードに切り替える合図を、自分の言葉で説明できる
  • 案を「実現性(労力)」と「インパクト」の2軸でつくる4象限にプロットし、どれから手をつけるか優先順位を付けられる
  • 絞った候補を意思決定マトリクスで重み付き採点し、定性的な判断を添えて1案に決め、その理由を説明できる

広げたあとは「評価モード」に切り替える

この章のゴール

この章を読み終えると、アイデアを「広げる作業」と「評価する作業」を分ける理由と、評価モードに切り替える合図を、自分の言葉で説明できるようになります。

「一番面白い案」を選ぶと、あとで実現性に詰まる

まず、絞り込みでありがちな誤解を3つ、名指しで外しておきます。「アイデアは才能」「いい案は降ってくる」——これは前の講座で外しました。発想は手順で出せます。そして絞り込みの段では、もう2つの誤解が出てきます。ひとつは「一番面白い案が正解だ」という思い込み。もうひとつは「多数決や、声の大きい人の意見で決めればいい」という思い込みです。

面白さや勢いだけで選ぶと、たいてい後で実現性につまずきます。出典の解説でも、発想で出た案は「コストがかかる」「実現できない」「法規制に触れる」といった現実を無視した理想論になりがちだ、と指摘されています。だからこそ、面白さとは別の軸で、地に足をつけて検証するステップが必要になります。

広げる時間と、評価する時間を分ける

ここで一番大事な考え方が、発想と評価を切り分けることです。アイデアを広げている最中に「それはコストが」「うちでは無理」と批判を始めると、出かけた案がしぼんでしまいます。だから広げる時間には、荒唐無稽な案も含めてとにかく出し切る。批判は持ち込まない。これが前の講座でやってきたことです。

そして、出し切ったと決めた瞬間に、頭のスイッチを「評価モード」に切り替えます。ここからは逆に、遠慮なく現実を持ち込んでいい時間です。「これは予算的にどうか」「誰がやるのか」「ルール上できるのか」と、さっきまで禁止していた批判を、ここで全部ぶつけます。広げるときは批判ゼロ、絞るときは批判全開。同じ案でも、向き合う時間を分けるのがコツです。

評価モードに切り替える合図

評価モードに入ったら、各案に対して「本当に実現できるか」を一度くぐらせます。具体的には、案ごとに「実現性の不安」を最低1つ書き出してみてください。「これは予算が足りなそう」「承認が下りなさそう」「時間がかかりすぎる」——こうした現実的なひっかかりを言葉にすることが、評価モードに入った合図です。面白いかどうかではなく、回るかどうかで案を見始める。この切り替えができれば、第2章の採点に進めます。

この章の確認(演習)

お題:広げた案のリストを開き、冒頭に「ここから評価モード」と一言書いてください。 そのうえで、各案の横に「実現性の不安」を1つずつ書き足します。面白さの評価はいったん脇に置き、「回るかどうか」だけを見ます。不安が書けない案があれば、それはまだ中身が具体的になっていないサインです。

実現性×インパクトの4象限で当たりをつける

この章のゴール

この章を読み終えると、案を「実現性(労力)」と「インパクト」の2軸でつくる4象限にプロットし、どれから手をつけるか優先順位を付けられるようになります。

2つの軸で、案の「当たり」をつける

評価モードに入ったら、まずは大づかみに当たりをつけます。使うのは2つの軸だけです。ひとつは労力(実現性)——その案を実行するのにかかる手間・コスト・時間。もうひとつはインパクト——うまくいったときの効果や、収益、顧客満足の大きさです。この2軸で案を分類するのが、Impact Effort Matrix(インパクト・労力マトリクス)と呼ばれる考え方です。

やり方はシンプルです。各案について、労力を1〜10で、インパクトを1〜10で採点します。そして横軸を労力、縦軸をインパクトとした図の上に、点として置いていきます。難しく考えず、「これは労力8でインパクト3くらい」と感覚で置いて構いません。並べてみることに意味があります。

4象限の読み方:クイックウィンから手をつける

案をプロットすると、図は4つのエリアに分かれます。それぞれの読み方はこうです。

  • 高インパクト × 低労力……最優先で取りかかるべきエリア。労力が少ないのに効果が大きい「クイックウィン」です。まずここを探します。
  • 高インパクト × 高労力……効果は大きいが手間もかかるエリア。勢いで始めず、戦略的に計画してから実行します。
  • 低インパクト × 低労力……効果は小さいが、ついでにできるエリア。優先度を下げるか、誰かに委ねます。
  • 低インパクト × 高労力……効果が小さいのに手間だけかかるエリア。ここは思い切って排除・最小化します。時間の無駄になりがちです。

販促企画でいえば、「今あるSNSアカウントで投稿の型を変える」はクイックウィン寄り、「新しいキャンペーンサイトをゼロから作る」は高インパクト・高労力寄り、といった具合に分かれていきます。図にすると、勘で議論していたときには見えなかった優先順位が、ひと目で分かります。

この章の確認(演習)

お題:自分の業務改善案を、労力1〜10・インパクト1〜10で採点し、4象限に置いてください。 置き終えたら、左上(高インパクト×低労力)のクイックウィンに当たる案を2〜3個に絞ります。ここで残った候補が、次の章で本格的に比べる対象になります。右下(低インパクト×高労力)に来た案は、いったん外して構いません。

意思決定マトリクスで重み付け採点し、1案に決める

この章のゴール

この章を読み終えると、絞った候補を意思決定マトリクスで重み付き採点し、定性的な判断を添えて1案に決め、その理由を説明できるようになります。

残った候補を、評価項目で定量比較する

4象限で2〜3個に絞った候補は、どれも「効果がありそうで、現実的」なものばかりです。ここからは、もう一歩細かく比べます。使うのが意思決定マトリクスです。候補を縦に並べ、横に「評価項目」を並べた表をつくり、点数で比較します。

ポイントは、評価項目ごとに重みを付けることです。すべての項目が同じ重さとは限らないからです。たとえば評価項目を「緊急性」「実現性」「収益性」「将来性」の4つにして、緊急性は重み1.0、実現性は1.0、収益性は2.0、将来性は2.0、というように差をつけます。今回の企画で「将来につながること」を重く見たいなら、将来性の重みを大きくする、というわけです。

点数 × 重みの合計で、見え方が変わる

各候補に、評価項目ごとの点数(たとえば1〜5)を付け、その点数に重みを掛けて、合計点を出します。表にするとこんなイメージです。

  • 候補A:緊急性4×1.0+実現性5×1.0+収益性3×2.0+将来性2×2.0 = 19点
  • 候補B:緊急性3×1.0+実現性3×1.0+収益性4×2.0+将来性4×2.0 = 22点

単純に点を足すと候補Aが高く見えても、収益性と将来性を重く見た重み付けでは候補Bが逆転します。何を大事にするかを重みで表明することで、選んだ理由が数字として残るのです。「なんとなくBがいい気がする」ではなく、「収益性と将来性を重視したので、合計点でBが上だった」と説明できるようになります。

最高点が、必ずしも正解ではない

ただし、注意があります。合計点が一番高い案を、機械的に選ぶ必要はありません。 マトリクスはあくまで頭を整理する道具で、最終判断は定量(点数)と定性(点数にしきれない事情)の両面で行います。たとえば点数は2位でも、「今の体制ならこちらの方が確実に回る」「現場の納得が得やすい」といった、表に出ていない理由でそちらを選ぶことは十分あり得ます。

大事なのは、点数で機械的に決めることではなく、点数という土台があるから「なぜ最高点ではなくこちらを選んだのか」まで含めて説明できることです。これが、勘で決めたときとの決定的な違いです。広げて、4象限で当たりをつけ、マトリクスで採点し、最後は定性で締める。この順番をたどれば、1案に絞った理由を堂々と語れます。

この章の確認(演習)

お題:第2章で残した2〜3個の候補で、意思決定マトリクスをつくってください。 評価項目を3〜4個決め、それぞれに重みを付け、各候補を採点して合計点を出します。最後に1案を選び、「○○と○○を重視したので、この案にした」と理由を一文で書いてください。最高点の案を選ばなかった場合は、その理由も添えます。

まとめ

広げた案を1案に絞る道のりは、4つのステップでした。

  1. 分ける(第1章)……広げる時間と評価する時間を分ける。評価モードに切り替え、各案の実現性の不安を書き出す。
  2. 当たりをつける(第2章)……実現性(労力)×インパクトの4象限にプロットし、クイックウィンを2〜3個に絞る。
  3. 採点する(第3章)……意思決定マトリクスで評価項目に重みを付け、点数×重みの合計で定量比較する。
  4. 締める(第3章)……最高点に縛られず、定量+定性の両面で1案を選び、理由を一文で説明する。

覚えて帰る合言葉は、「広げたら、軸で採点して絞る」です。絞り込みは才能でも、声の大きさでもありません。軸を決めて採点すれば、誰でも「なぜこれか」を説明できます。

明日の最初の一歩:いま手元にある「広げた案」を、紙の真ん中に縦軸(インパクト)と横軸(労力)の十字を引いて、置いてみてください。たった1分で、どれから手をつけるべきかの当たりがつきます。ここで1案に絞れたら、次の講座では、その案を上司に通すための「企画1枚化」に進みます。

よくある質問

案が多すぎて4象限に置ききれないときは?

まず労力もインパクトも明らかに低い案を外し、残りだけを置きます。全部を並べる必要はなく、検討に値する案だけを比べれば十分です。

合計点が一番高い案を選ばなくてもいいのですか?

はい。マトリクスは判断を助ける道具で、答えそのものではありません。点数を土台にしつつ、体制や納得感など定性的な事情を加えて最終決定します。

評価項目は何個くらいが適切ですか?

3〜4個が扱いやすい目安です。多すぎると採点が大変になり差が出にくくなります。今回の企画で特に重視したい点に絞り、重みで強弱をつけましょう。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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