評価面談の基本 | マナビズ

評価面談の基本

評価面談の基本

「今期はBでした」——半期の評価面談で、あなたが部下にそう伝えたとたん、「えっ、自分ではAだと思っていました。なぜBなんですか?」と聞き返されました。とっさに出てきたのは、「うーん、まあ、総合的に見て……」という言葉だけ。気まずい沈黙が流れ、結局その面談は、お互いモヤモヤしたまま終わってしまった。部下を持って間もないリーダーなら、こんな経験が一度はあるのではないでしょうか。

評価面談がしんどいのは、評価そのものを伝えることより、「なぜその評価なのか」を自分の言葉で説明できないからです。でも、安心してください。部下が納得しないのは「評価が低いから」ではありません。「なぜその評価なのかが、事実で示されないから」です。スラスラ答えられるリーダーと、詰まってしまうあなたの違いは、評価のセンスでも厳しさでもありません。印象で語るか、事実で語るか——たったそれだけです。

この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. 評価面談を「評価を言い渡す場」ではなく、事実を根拠に部下と認識を合わせ、次の成長につなげる対話として説明でき、部下の納得感が「評価の高い・低い」ではなく「評価の根拠が事実で具体的に示されているか」で決まることを説明できる
  2. 評価を、印象や性格ではなく観察した行動・結果(事実)で根拠づけられ、代表的な評価エラー(ハロー効果・中心化傾向・寛大化傾向・期末効果)を挙げて、自分の評価がそれに陥っていないかを点検できる
  3. SBI(状況・行動・影響)で具体的なフィードバックを作成でき、自己評価を先に聞いてズレを事実ですり合わせ、次期の成長アクションまでつなげる面談の流れを組み立てられる

この講座は最後まで、「あなたが、チームの若手・佐藤さん(入社3年目)の半期評価面談を行う。あなたは佐藤さんをB評価とし、本人は“自分はもっとやれた、A相当だ”と思っている」という、たった1つの面談だけで説明します。この同じ面談を、評価面談とは何か→事実で評価する→事実で伝える→すり合わせて次へ、と1マスずつ地図に埋めていきます。各章末には手を動かす演習もあるので、自分の部下を1人思い浮かべながら読み進めてください。ここで学ぶ準備をそのまま使えるよう、評価面談の準備テンプレート(事実メモ&SBIフィードバックシート)は最後にダウンロードできます。まずは、評価面談を「気まずい言い渡し」から「事実で語る対話」に変える地図を手に入れましょう。

この講座のポイント

  • 評価面談を「評価を言い渡す場」ではなく、事実を根拠に認識を合わせ、次の成長につなげる対話として、自分の言葉で説明でき、部下の納得感が評価の高低ではなく根拠が事実で示されているかで決まることを説明できる
  • 評価を、印象や性格ではなく観察した行動・結果(事実)で根拠づけられ、代表的な評価エラーを挙げて、自分の評価がそれに陥っていないかを点検できる
  • SBI(状況・行動・影響)で具体的なフィードバックを作成でき、自己評価を先に聞いて、ズレを事実ベースで扱える
  • 自己評価を先に聞き、ズレを事実ですり合わせ、次期の成長アクションまでつなげる面談の流れを組み立てられる

評価面談とは何か(納得感は「事実の根拠」で決まる)

まずは、評価面談がしんどく感じるモヤモヤの正体をはっきりさせ、「気が重いイベント」から、自分で進められる対話に捉え直す土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、評価面談を「評価を言い渡す場」ではなく、事実を根拠に認識を合わせ、次の成長につなげる対話として、自分の言葉で説明でき、部下の納得感が評価の高低ではなく根拠が事実で示されているかで決まることを説明できるようになります。

評価面談がしんどい正体は「根拠を事実で説明できない」こと

「なぜBなんですか?」と聞かれて「総合的に見て……」と詰まってしまう。このとき苦しいのは、Bという評価を伝えること自体ではありません。Bにした根拠を、自分の言葉(事実)で説明できないことです。

もし「4月のあの案件でこう動いてくれた、だからここは高い。一方、この時期にこれができていなかった、だから今期はB」と、具体的な事実をスラスラ言えたら、面談はずっとラクなはずです。詰まるのは、評価が「半年の全体的な印象」でできていて、その中身が言葉になっていないから。つまり、評価面談がしんどい本当の原因は、面談の進め方より手前の、評価の根拠が事実になっていないところにあります。

評価面談の目的は「査定の通知」ではなく「認識合わせと次の成長」

評価面談という場の目的を、捉え直しましょう。評価面談は、評価結果(A・B・Cなど)を一方的に通知して終わる場ではありません。一般に、評価面談の目的は次の3つだと言われます。①評価結果とその根拠を伝えて、お互いの認識を合わせる(納得性を作る)。②部下が自分の次の成長課題に気づくきっかけを作る(育成)。③次の期に向けて動機づけする。

つまり、評価面談は「上司が評価を言い渡す場」ではなく、上司と部下が、事実をもとに認識を合わせ、次の成長につなげる“対話”の場なのです。「言い渡し」だと思っているうちは気まずい儀式のままですが、「対話」だと捉え直すと、やることが変わってきます。

納得感は「評価の高低」ではなく「根拠の確かさ」で決まる

そして、この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのが、これです。部下の納得感は、評価が高いか低いかでは決まりません。 決めるのは、その評価の根拠が、事実で具体的に示されているかです。

低い評価でも、「この場面でこうだったから」と事実で具体的に示されれば、人は「悔しいけれど、確かにそうだ」と受け止められます。逆に、高い評価でも、根拠が「まあ全体的に良かったから」だけだと、「なんとなく褒められた」で終わり、本人の中に何も残りません。だから、評価面談で目指すのは「評価を上げて納得させる」ことでも「言い負かす」ことでもありません。根拠を事実で示すこと、ただそれだけです。

この考え方を、3つのステップの地図にまとめておきます。この地図を、これから1つずつ埋めていきます。

ステップやることこの講座での章
① 事実で評価する印象や性格でなく、観察した行動・結果で根拠づける第2章
② 事実を根拠に伝える状況・行動・影響(SBI)で具体的に。自己評価を先に聞く第3章
③ すり合わせて次へズレを事実で突き合わせ、次の成長アクションを決める第4章

ここで、この講座を通して使う共通例に登場してもらいましょう。あなたのチームの若手、入社3年目の佐藤さんです。あなたは今期、佐藤さんをB評価としました。ところが佐藤さん本人は、「自分はもっとやれた、A相当だ」と思っています。冒頭の「なぜBですか?」「総合的に見て……」は、まさにこの佐藤さんとの面談の場面でした。この章では、まだ中身は埋めません。「①佐藤さんのBを、事実で評価できているか?②それを、事実で伝えられているか?③ズレをすり合わせて、次につなげられているか?」という3つの問いの“枠”だけを立てておきます。

この章の確認(演習)

これから行う(または直近で行った)評価面談を1つ思い浮かべ、その部下について、「評価結果(A/B/Cなど)」と「その根拠」を分けて書き出してみてください。

そのうえで、書いた根拠が「総合的に」「印象で」「なんとなく」になっていないか点検します。「いつ・どの場面で・何をして・どうなったか」という具体的な事実で書けているでしょうか。事実で書けない部分があれば、それこそが、この先の第2章・第3章・第4章で埋めていくところです。空欄が見つかったら、この章はゴールです。

評価を「事実」で根拠づける(印象・性格でなく行動・結果)

地図の1マス目、事実で評価するを埋めます。「なぜこの評価か」に詰まる原因を根っこから断つ章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、評価を、印象や性格ではなく観察した行動・結果(事実)で根拠づけられ、代表的な評価エラーを挙げて、自分の評価がそれに陥っていないかを点検できるようになります。

評価するのは「人柄」ではなく「行動と結果」

評価の根拠が「総合的に」になってしまう、いちばんよくある原因がこれです。人柄で評価してしまうこと。「佐藤さんは明るくて、感じがいい」「真面目でやる気がある」——こうした印象は、評価の根拠になりません。

なぜなら、「明るい」「真面目」は、観察した事実ではなく、あなたの中にできた印象だからです。評価の根拠になるのは、観察できる「行動」と「結果」です。「明るい」ではなく「お客様からの問い合わせに、その日のうちに返信していた(行動)/そのおかげでクレームがゼロだった(結果)」。ここまで具体的な行動と結果に落ちて、はじめて評価の根拠になります。

無意識の「評価エラー」を知る

やっかいなことに、人が人を評価するときには、無意識のクセが入り込みます。これを人事評価エラーと呼びます。評価エラーとは、評価者が無意識にやってしまう、評価のかたよりのことです。無意識なので、知らないと自分では気づけません。代表的なものを4つ、押さえておきましょう。

評価エラーどんなクセか佐藤さんの面談で言うと
ハロー効果1つの目立つ印象が、他の項目の評価まで引っ張る「明るくて感じがいい」から、企画力も対応力も全部○にしてしまう
中心化傾向自信がなく、無難に全員を“真ん中”にする差をつけるのが怖くて、チーム全員をBにしてしまう
寛大化傾向嫌われたくなくて、全体的に甘くつける低い評価を伝えるのが気まずくて、つい甘めのBに
期末効果評価期間の終盤・直近の出来事に引っ張られる先月の小さなミスが記憶に新しく、半年全体を辛くつける

「ハロー効果」のハローは、聖人の頭の後ろに描かれる「後光」のことです。1つの良い印象が、後光のように全体を明るく照らして、本当の姿を見えにくくしてしまう——そんなイメージです(この言葉は、心理学者のソーンダイクが1920年の論文で初めて使ったとされています)。

大事なのは、これらが無意識に起こるということです。「自分は印象では評価していない」と思っていても、知らないうちに陥ってしまう。だから、エラーの存在を知っておくこと自体が、最初の対策になります。

だから「事実メモ」を半期を通して残す

では、無意識のクセに引っ張られないために、どうするか。答えはシンプルです。日付・場面つきの「事実メモ」を、半期を通して残しておくこと。そして、面談の直前に半年を思い出すのではなく、そのメモ(事実)から評価することです。

面談直前に「えーと、佐藤さんは半年どうだったかな」と記憶をたどると、どうしても直近の印象(期末効果)や、人柄の印象(ハロー効果)に引っ張られます。でも、4月・5月・6月と、その都度「いつ・どの場面で・何をして・どうなったか」をメモに残しておけば、評価は記憶ではなく事実の積み重ねになります。

佐藤さんの例で、印象から事実に切り替えてみましょう。「明るいから全部○」「先月ミスしたから辛め」をやめて、半期のメモを見返すと、こんな事実が出てきます。強み=「4月の新規キャンペーンの資料作成で、締め切りの2日前に、先方の要望が変わったことに気づき、自分から修正案を出した。おかげで差し戻しがゼロで、先方の信頼につながった」。課題=「6月以降、既存顧客のフォロー連絡が後回しになり、抜けが数件あった」。これが、印象ではなく事実に基づくBの根拠です。「なぜB?」に、この2つの事実で答えられるようになりました。やることは4つだけ——人柄でなく行動・結果で書く、4つの評価エラーに陥っていないか点検する、日付・場面つきの事実メモを半期を通して残す、そして記憶ではなくそのメモ(事実)から評価する、です。

この章の確認(演習)

あなたの部下を1人決めて(共通例なら佐藤さん)、評価の根拠になる「事実」を、良い点2つ・課題2つ、それぞれ日付・場面つきで書き出してみてください。

このとき、「明るい」「真面目」「やる気がある」といった性格をあらわす言葉は使わないのがコツです。「いつ・どの場面で・何をして・どうなったか」という、行動と結果で書きます。もし書けないものがあれば、それはあなたを責める材料ではなく、「その部分の事実メモが足りていなかった」というサインです。次の半期は、そこをメモする——それも立派な一歩です。

納得感を生む伝え方(SBIで具体的に・自己評価を先に聞く)

地図の2マス目、事実を根拠に伝えるを埋めます。集めた事実を、相手に届く形に変える章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、SBI(状況・行動・影響)で具体的なフィードバックを作成でき、自己評価を先に聞いて、ズレを事実ベースで扱えるようになります。

「もっと主体的に」では、伝わらない

第2章で事実を集めても、その伝え方を間違えると、せっかくの事実が相手に届きません。いちばんありがちな失敗が、抽象的な言葉で伝えてしまうことです。

「もっと主体的に動いてほしい」「コミュニケーション力を上げよう」。一見アドバイスっぽく聞こえますが、言われた部下は困ります。「主体的」「コミュ力」が、具体的にどの行動を指しているのか分からないからです。これでは、フィードバックが「ふんわりしたダメ出し」になってしまい、部下は身構えるだけです。伝えるべきは、性格や能力のラベルではなく、観察した行動です。

フィードバックの型「SBI(状況・行動・影響)」

そこで使える型が、SBIです。これは、フィードバックを次の3つに分けて、順番に伝える型です。提唱したのは、リーダーシップ開発の研究機関であるCCL(Center for Creative Leadership)です。

SBI意味伝えること
S(Situation/状況)いつ・どの場面で「4月の新規キャンペーンの資料作成のとき」
B(Behavior/行動)何をしたか「納期の2日前に、先方の要望変更に気づいて、自分から修正案を出した」
I(Impact/影響)その結果どうなったか「差し戻しがゼロになって、先方の信頼につながった」

英語の頭文字は覚えなくて大丈夫です。「いつ・どの場面で(状況)/何をしたか(行動)/その結果どうなったか(影響)」の3つに分けて伝える、と掴んでおけば十分です。

このSBIには、いいところが2つあります。1つは、性格ではなく行動に焦点が当たるので、言われた側が身構えにくいこと。「あなたは主体性がある」は人格の評価ですが、「あの場面で、こう動いた」なら、ただの事実です。もう1つは、何を続け・何を変えればいいかが具体的に分かること。このSBIは「ほめる」にも「課題を伝える」にも、同じ型で使えます。

上の表の「もっと主体的に」のSBI翻訳を見てください。「主体的だね」と言うより、ずっと具体的に、佐藤さんの心に届きそうです。課題側も、まったく同じ型で伝えられます。S=「6月以降の既存顧客フォローで」、B=「対応が後回しになって」、I=「連絡漏れが数件あって、1件は問い合わせにつながった」。これなら「フォローが甘い」と人柄を責めずに、行動の事実として伝わります。

自己評価を先に聞く、そして良い点から伝える

伝え方には、もう1つ大事なコツがあります。いきなり評価結果を言い渡さず、まず部下の自己評価を先に聞くことです。

なぜ先に聞くのか。上司が先に「Bです」と言ってしまうと、部下はそれに合わせてしまい、本音が出なくなるからです。先に「今期、自分ではどうだった?」と聞くと、佐藤さんからは「自分はAだと思います。4月のキャンペーンを最後までやり切ったので」という本音が出てきます。これが、後でズレをすり合わせる材料になります。聞くときは遮らず、最後まで受け止めましょう。

そして、自分から伝えるときは、良い点(できていること)から先に伝えます。人は、先に課題(ダメ出し)から入られると身構えてしまい、その後の話が耳に入りません。先に「4月のキャンペーンのこの動き、本当に助かった」と良い点をSBIで伝えてから、課題を伝える。この順番だけで、同じ内容でも受け取られ方がまるで変わります。

やることは、第2章で集めた事実を S(状況)→B(行動)→I(影響)に分けて言葉にし、面談では自己評価を先に聞いてから、良い点のSBI→課題のSBIの順で伝える、です。

この章の確認(演習)

第2章で書き出した事実から、良い点・課題を1つずつ選び、それぞれをSBI(状況・行動・影響の3要素)に分けて、フィードバックの言葉にしてみてください。「◯◯の場面で(状況)、△△をした(行動)、その結果□□になった(影響)」という形で、1文ずつ書きます。

ポイントは、「主体的」「真面目」といった性格をあらわす言葉を使わず、観察した行動で書くこと。性格のラベルを、行動と結果に置き換えられたら、ゴールです。

面談の流れと、評価を次の成長につなげる

地図の3マス目、すり合わせて次につなげるを埋めます。ここまでの2つを、1回の面談の流れに組み立てます。

この章のゴール

この章を読み終えると、自己評価を先に聞き、ズレを事実ですり合わせ、次期の成長アクションまでつなげる面談の流れを組み立てられるようになります。

面談の流れを1本に組み立てる

評価面談には、進めやすい標準的な流れがあります。第2章・第3章で身につけたことを、この流れに乗せていきます。

順番やること
① 準備事実メモを見返し、良い点・課題をSBIで用意しておく(第2・3章)
② アイスブレイクいきなり評価の話に入らず、最近の様子などから入る
③ 目的の共有「評価を伝え、次の成長を一緒に考える場」だと最初に伝える
④ 自己評価を聞く「今期、自分ではどうだった?」と先に聞き、遮らず受け止める
⑤ 事実を根拠に伝える良い点のSBIから、次に課題のSBIを伝える
⑥ ズレをすり合わせる自己評価と評価のズレを、事実で突き合わせる
⑦ 次期の成長アクション「だから今後はこうしよう」を一緒に決める
⑧ クロージング期待を伝え、前向きに締める

準備(①)が抜けると、その場の思いつきと直近の印象だけで話すことになり、結局「総合的に」に逆戻りします。第2章の事実メモと第3章のSBIは、この準備のためにあります。

ズレは「どちらが正しいか」ではなく「事実」で突き合わせる

多くのリーダーがいちばんつまずくのが、⑥のすり合わせです。佐藤さんのように、自己評価(本人はA)と、あなたの評価(B)にズレがあるとき、どうするか。

やってはいけないのは、「いや、君はAじゃない」「いえ、自分はAです」という、どちらが正しいかの押し問答です。これをやると感情の対立になり、納得から遠ざかります。ここでも軸は、評価の高低ではなく事実です。

具体的には、まず「Aだと思ったのは、どの仕事?」と、本人が思う根拠を事実で聞きます。佐藤さんが「4月のキャンペーンを最後までやり切ったから」と答えたら、「そこは本当に強みだよ」と、その事実をSBIで認めます。そのうえで、「ただ、6月以降の既存顧客フォローで、対応の抜けが数件あった。ここが今期Bにした理由なんだ」と、こちらの評価の根拠(事実)を並べます。こうして事実と事実を並べると、「どちらが正しいか」の勝負ではなく、「強みは強み、課題は課題」という認識の調整になります。佐藤さんも、「確かに、あのフォローは抜けていました」と、事実なら受け止められるのです。

評価を「次の成長アクション」に変えて終わる

最後に、評価面談を過去の判定で終わらせないことが大切です。「今期はBでした、以上」では、ただの成績発表です。評価面談の価値は、その評価を未来の行動に変えるところにあります。

そこで、面談の締めには、次期の成長アクションを一緒に決めます。佐藤さんの例なら、「来期は、その既存顧客フォローを仕組み化して、1人で回せるようにしよう。それができれば、来期はAが見えるよ」。こう伝えると、Bという評価が「ダメだった証明」ではなく、「次にAになるためのスタートライン」に変わります。これができると、評価面談は「気まずい言い渡し」から「成長のきっかけ」になります。

この章の確認(演習)

あなたの部下を1人決めて、面談の流れを、準備からクロージングまで、1枚に書き出してみてください。特に、⑥のすり合わせで使う「事実」と、⑦の次期の成長アクションを、1つずつ具体的に決めておきます。

この準備を、毎回ゼロから作るのは大変です。そこで、ここで学んだ「事実メモ」と「SBIフィードバックシート」をまとめた評価面談の準備テンプレートを用意しました。こちらからダウンロードして、次の面談の準備にそのまま使ってください。テンプレートに事実を書き込み、SBIに分け、次期アクションを決めれば、それがそのまま、あなたの面談の台本になります。

まとめ:納得感は“評価の高さ”でなく“根拠の確かさ”から生まれる

おつかれさまでした。「佐藤さんのB評価面談」という、たった1つの場面を、評価面談とは何か→事実で評価する→事実で伝える→すり合わせて次へ、と1マスずつ地図に埋めてきました。第1章で立てた3つの問いを、ここで振り返ります。

  1. 評価面談とは……評価を言い渡す場ではなく、事実を根拠に認識を合わせ次の成長につなげる対話。納得感は評価の高低でなく根拠が事実で示されているかで決まる(第1章)。
  2. 事実で評価する……人柄でなく観察した行動と結果で根拠づける。ハロー効果・中心化・寛大化・期末効果という無意識のクセを避けるため、日付・場面つきの事実メモを半期を通して残す(第2章)。
  3. 事実を根拠に伝える……「もっと主体的に」では伝わらない。SBI(状況・行動・影響)で具体的に、自己評価を先に聞き、良い点から伝える(第3章)。
  4. すり合わせて次へ……ズレは「どちらが正しいか」でなく事実で突き合わせ、過去の判定で終わらせず次期の成長アクションを一緒に決めて閉じる(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「『なぜこの評価ですか?』に、印象でなく“事実”で具体的に答えられているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——納得感は、評価の高さではなく“根拠の確かさ”から生まれる。だから、印象でなく事実で語る。これが身につくと、「なぜBですか?」と聞かれても、「4月のキャンペーンでこう動いてくれた。一方、この時期にこれが抜けていた。だから今期はB。ここを伸ばせば来期はAが見える」と、事実で、具体的に、次につなげて答えられるようになります。

明日の最初の一歩:次に評価面談を控えている部下を1人選び、①その人の半期の「事実」を、良い点・課題それぞれ2つずつ、日付・場面つきで書き出す。②それぞれをSBI(状況・行動・影響)でフィードバック文にする。③次期の成長アクションを1つ考える。印象でなく事実が1つでも書けたら、それが第一歩です。

その準備をそのまま進められるよう、評価面談の準備テンプレート(事実メモ&SBIフィードバックシート)をダウンロードできます。次の面談を「気まずい言い渡し」から「事実で語る対話」に変えてみてください。なお、評価面談の前段にある期初の目標設定、日常のフィードバック1on1、中長期の部下育成は、この評価面談と地続きのテーマです。まずは、目の前の1人の部下の事実を1つ書き出すところから。それが、納得感のある面談の出発点です。

よくある質問

評価面談とはどのような場ですか

評価面談は評価結果を一方的に通知する場ではなく、事実を根拠に上司と部下が認識を合わせ、次の成長につなげる対話の場です。

部下が自己評価と異なる場合はどう対処しますか

「どちらが正しいか」の押し問答にせず、まず部下の根拠を事実で聞き、こちらの評価の根拠(事実)と並べて突き合わせます。事実と事実を照らし合わせることで、感情的な対立を避けながら認識を調整できます。

SBIとは何ですか

SBIは「状況(Situation)・行動(Behavior)・影響(Impact)」の頭文字で、フィードバックを具体的に伝えるための型です。「いつ・どの場面で/何をしたか/その結果どうなったか」の3要素に分けて伝えると、性格ではなく行動に焦点が当たり、部下が受け取りやすくなります。

評価エラーとは何ですか

評価者が無意識にやってしまう評価のかたよりのことです。代表的なものに、一つの印象が全体の評価を引っ張るハロー効果、差をつけるのを避けて全員を真ん中にする中心化傾向、甘めにつけてしまう寛大化傾向、直近の出来事に引っ張られる期末効果の4つがあります。

評価面談の準備で最初にすることは何ですか

半期を通じて残してきた日付・場面つきの事実メモを見返し、部下の良い点と課題をそれぞれSBIの形で言葉にしておくことです。記憶や印象からではなく事実のメモから準備することで、面談での説明に詰まりにくくなります。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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