フィードバックの基本 | マナビズ

フィードバックの基本

フィードバックの基本

「もっとちゃんとやってほしいんだけど……」——メンバーの気になる行動に気づいて、勇気を出して伝えたのに、相手はちょっと黙っただけで、次の週もまた同じだった。あるいは、言い方がキツくなってしまって、その日から少し気まずい。逆に、遠回しに言いすぎて、たぶん伝わっていない。はじめてチームを任されたあなたは、こんな経験をしていませんか。

メンバーに「伝えて、動いてもらう」のは、プレイヤーとして自分が結果を出すのとは、まったく別の難しさがあります。注意したいけれど、関係が気まずくなるのが怖い。ほめたいけれど「がんばってるね」しか出てこない。そもそもフィードバックって、結局ダメ出しのことでしょう——そう感じて、言うのをため込んだり、つい感情的に言ってしまったり。

でも、同じ「資料が遅い」を伝えるのでも、相手が黙るだけの人と、相手が次から動いてくれる人がいます。違いは、あなたの優しさやキャラクターの問題ではありません。伝える中身を、事実→影響→期待 の順に組み立てているかだけです。何が起きて(事実)、それが誰に・どう響いて(影響)、次にどうしてほしいか(期待)。この3つを順に並べるだけで、「もっとちゃんと」では動かなかった相手が、動けるようになります。

この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. フィードバックを「相手の人格でなく行動を扱い、相手が動けるようにする働きかけ」として説明できる(ダメ出し・人格評価・曖昧な励ましとの違いを説明できる)
  2. 伝えたい中身を、事実(観察した行動)・影響・期待 の3つに切り分けて整理できる(自分の評価・解釈と「事実」を区別できる)
  3. 一つの場面について、事実→影響→期待の順で相手が動けるフィードバックの言葉を組み立て・伝えられる(注意するときも、ほめるときも)

この講座は最後まで、「メンバーの田中さんが、会議資料を締め切り当日の朝10時に提出してきた」という、たった1つの場面だけで説明します。あなたはチームのリーダーで、田中さんはあなたのメンバー。言いがちな「いつも遅いよね、もっと早めに」を、フィードバックとは何か→事実→影響→期待、と1段ずつ組み立て直していきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分が最近言いたかったことを思い浮かべながら読み進めてください。まずは、その演習をそのまま埋められる事実→影響→期待 フィードバック組み立てテンプレートを無料でダウンロードしておくと便利です。

この講座のポイント

  • フィードバックを「相手の人格でなく行動を扱い、相手が動けるようにする働きかけ」として、ダメ出し・人格評価・曖昧な励ましとの違いとあわせて説明できる
  • 伝えたい中身から「事実(観察した行動)」を、自分の評価・解釈・人格への決めつけと切り分けて取り出せる
  • 取り出した事実が、チーム・成果・自分にどう影響したかを、「私」を主語にして伝えられる
  • 事実・影響に続けて「今後どうしてほしいか(期待)」を具体的な行動で伝え、事実→影響→期待を1つのフィードバックに組み立てられるようになります。注意するときも、ほめるときも。

フィードバックとは(裁く言葉でなく、相手が動ける言葉)

まずは、「言ったのに変わらない」というモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。フィードバックという言葉を、自分の現場で使える道具にするための土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、フィードバックを「相手の人格でなく行動を扱い、相手が動けるようにする働きかけ」として、ダメ出し・人格評価・曖昧な励ましとの違いとあわせて説明できるようになります。

「言ったのに変わらない」の正体

あなたの伝え方が下手なわけでも、相手のやる気がないわけでもないかもしれません。多くの場合、フィードバックを「裁く言葉」として使ってしまっている——これが「言ったのに変わらない」の正体です。

「もっとちゃんとやって」「しっかり頼むよ」と言うとき、伝わるのは「あなたはダメだ」という気配だけです。相手は責められた気持ちにはなりますが、では具体的に次に何をすればいいのかは、まったく分かりません。だから黙るか、反発するか、いずれにせよ行動は変わらない。漠然とした言い方や、「あなたは雑だ」のような決めつけは、相手の心に壁を作るだけなのです。

ここで、この講座の背骨を最初に置いておきます。フィードバックは、人を裁くためでなく、相手が動けるようにするためのもの。相手を反省させて終わりではなく、相手の次の行動が変わって初めて、フィードバックは成功です。

フィードバックの2つの軸:人格でなく行動/ほめるも直すも

フィードバックとは、相手の行動や結果について、観察した事実をもとに、相手が次に動けるように伝え返すことです。この定義から、最初に押さえてほしい軸が2つあります。

1つめは、扱うのは「人格」ではなく「行動」だということ。「君は雑な人だ」は人格への決めつけです。人の性格は、言われてもそう簡単には変わりませんし、言われた側はただ傷つくだけです。一方、「今回の資料は当日の朝に出てきた」は行動の事実です。行動なら、本人が次から変えられます。人格は変えられないけれど、行動は変えられる。だからフィードバックは、いつも人ではなく行動に向けます。

2つめは、フィードバックには「良い行動を伸ばすフィードバック(ポジティブ)」と「改善を促すフィードバック」の両方があるということ。フィードバック=叱る・ダメ出し、ではありません。むしろ、メンバーが良い動きをしたときに「その行動が、こう良かった」と具体的に伝えることも、立派なフィードバックです。注意するときも、ほめるときも、これから学ぶ型は同じです。

動ける言葉の型は、事実→影響→期待

では、相手が動ける言葉は、どう組み立てればいいのでしょうか。順番は決まっています。事実(観察した行動)→影響(それがどう響いたか)→期待(今後どうしてほしいか)です。この3つを、この順番で並べます。

「もっとちゃんと」がなぜ人を動かさないのか、もう分かりますね。あの一言には、事実(何が起きたか)も、影響(それがどう響いたか)も、期待(次にどうしてほしいか)も、ぜんぶ抜けているからです。逆に、この3つがそろえば、相手は「なるほど、あれが、こう響いたから、次はこうすればいいのか」と、自分で次の一歩を描けます。なお、この「事実」と「影響」の部分は、世の中ではSBI(状況・行動・影響)というフィードバックの型としても知られています。本講座は、そこに「期待」を足した3ステップで進めます。

ここで、この講座をずっと一緒に歩く共通の場面に登場してもらいましょう。あなたのメンバーの田中さんが、来週の会議で使う資料を、締め切り当日の朝10時になって初稿で出してきた、という場面です。レビューする時間がなくて、あなたは少しヒヤッとしました。

このとき、つい言ってしまいがちなのが、こんな一言です。

「田中さん、いつも資料が遅いよね。もっと早めに出してよ。」

一見、注意になっています。でも、これは「裁く言葉」の見本です。どこが足りないのか、4つの目で見てみましょう。

見る目この一言は?
① 人格か行動か「いつも遅い」は性格の決めつけに寄っている(人格寄り)
② 事実があるかいつ・何が、が無い(「いつも」は事実ではない)
③ 影響があるか誰がどう困ったかを言っていない(影響なし)
④ 期待が具体か「早めに」が何時のことか分からない(期待があいまい)

4つとも、足りていません。これでは田中さんは、責められた気はしても、次に何をすればいいかは分かりません。この章では、まだ直しません。「何が足りないか」が見えれば十分です。次の章から、この一言を、事実→影響→期待 の順に、1つずつ組み立て直していきます。

この章の確認(演習):NG版「田中さん、いつも資料が遅いよね。もっと早めに出してよ」を読み、これが「裁く言葉」になっている理由を、①人格か行動か ②事実があるか ③影響があるか ④期待が具体か、の4点で書き出してみてください。まだ直さなくて大丈夫です。何が抜けているかを自分の言葉で言えたら、ゴール達成です。

事実を伝える(評価・解釈でなく、観察した行動を)

第1章で、NG版には事実が無いと分かりました。そこでこの章では、型の1番目「事実」を取り出す練習をします。

この章のゴール

この章を読み終えると、伝えたい中身から「事実(観察した行動)」を、自分の評価・解釈・人格への決めつけと切り分けて取り出せるようになります。

「事実」と「意見」は、別のもの

フィードバックがこじれる原因の多くは、たった1つです。自分の意見を、事実のように言ってしまうこと。

ここで言う事実とは、その場にいた人なら誰が見ても同じになる、観察できる行動や出来事のことです。「いつ・何が・どうだったか」がはっきりしていて、誰が確かめても同じ答えになります。一方、「雑だ」(評価)、「やる気がない」(解釈)、「いいかげんな人だ」(人格)は、ぜんぶあなたの頭の中の意見です。同じ場面を見ても、人によって違う意見になります。

この区別が、なぜ大事なのでしょうか。人は、意見には反論できますが、事実には反論しにくいからです。「やる気がないよね」と言えば、「いや、やる気はあります」と返されて、そこで話が止まります。けれど「今回の資料は当日の朝に出てきたよね」という事実には、田中さんも「はい、そうです」と認めるしかありません。事実を共有できて初めて、話は前に進みます。

評価語が出たら、「何を見てそう思った?」と戻す

では、頭に浮かんだ意見を、どうやって事実に変えるのか。コツは1つです。評価や決めつけの言葉が出てきたら、「それは、何を見てそう思ったんだろう?」と自分に問い直すこと。そうやって、観察した具体的な行動まで戻していきます。

たとえば「雑だ」と思ったなら、何を見て雑だと思ったのか。「誤字が3か所あった」かもしれないし、「見出しの番号が飛んでいた」かもしれません。そこまで戻せば、それが事実です。

ひとつ、見分ける目印を覚えておくと便利です。「いつも」「ちゃんと」「しっかり」のように、いつ・どれだけ が入っていない言葉は、事実ではないサインです。これらが口から出かかったら、「本当にいつもか?」「ちゃんと、って具体的にはどういう状態か?」と立ち止まってください。

共通例で、事実に直してみる

田中さんの場面に戻ります。NG版の「いつも遅いよね」を、事実に直します。

まず「いつも」は本当でしょうか。今月の田中さんの提出を思い出してみると、実は遅れたのは今回が初めて。先月までは期限内に出していました。だとすると「いつも」は事実ではなく、あなたの印象です。盛らずに、起きたことだけを言います。

事実に直すと、こうなります。

「今回の会議資料、締め切り当日の今朝10時に初稿をもらったよね」

「今回」「当日の今朝10時」「初稿」と、いつ・何が・どうだったか が入っていて、田中さんが見ても同じ。「雑」「やる気がない」といった評価や解釈は、いったん全部カッコに入れて、観察できた行動だけを取り出しました。これで田中さんは「はい、そうでした」と、事実をあなたと共有できます。型の1番目が、できあがりです。

この章の確認(演習):共通例とは別に、あなたが最近メンバーに言いたかったこと(または、つい言ってしまったこと)を1つ思い出してください。その中の評価語・解釈・人格への言葉(雑・遅い・やる気がない・いつも、など)に線を引き、「それは何を見てそう思ったか」を考えて、「いつ・何が・どうだった」の事実1文に書き換えてみます。評価語を観察した行動に戻せたら、ゴール達成です。テンプレートの「事実」欄に書き込んでみてください。

影響を伝える(その事実が、誰に・どう響いたか)

第2章で、きれいな事実1文ができました。でも、事実だけを突きつけられた相手は、まだ動けません。この章で足すのが、型の2番目「影響」です。

この章のゴール

この章を読み終えると、取り出した事実が、チーム・成果・自分にどう影響したかを、「私」を主語にして伝えられるようになります。

事実だけでは「で?」となる

「今回の資料は当日の朝10時に初稿が出てきたよね」。これだけを言われた田中さんは、内心こう思うかもしれません。「……それの、何が問題なんですか?」。

ここが落とし穴です。あなたの中では「朝提出=困る」が当たり前でも、田中さんにはその“困る”が見えていません。その事実が、誰に・何に・どう響いたか(影響)を添えて、はじめて相手は「だから直す意味があるんだ」と腹落ちするのです。

影響は、できるだけ具体的に、3つの方向から探すと出てきます。チームへの影響(会議が予定どおり進まない)、成果への影響(誤字が残ったまま顧客に出てしまう)、そして自分への影響(レビューする時間が取れずヒヤッとした)。この3つのどれか、あるいは全部を言葉にします。

「私」を主語にする

影響を伝えるとき、言い方ひとつで、相手の受け止めはまるで変わります。鍵は、主語を「私」にすることです。

「君は、私を困らせるよね」——これは主語が「あなた(君)」で、責めている響きになります。相手はとっさに身構えます。一方、「私は、レビューする時間が取れなくて困ったんだ」——こちらは主語が「私」。自分が感じたことを、事実として伝えているだけなので、角が立ちません。この「私を主語にする言い方」は、アイメッセージと呼ばれます(心理学者のトマス・ゴードンが、親子のコミュニケーションの中で広めた考え方です)。同じ内容でも、「あなたは〜」を「私は〜」に置き換えるだけで、相手は責められたと感じずに、影響を受け取れます。

影響は、盛らない・脅さない

もう1つ、大事な注意があります。影響を、実際より大きく盛ったり、脅しに使ったりしないことです。

「いつもこうやって迷惑かけてる」「こんな調子だとクビになるよ」——こうした言葉は、もう事実ではありません。一度きりのことを「いつも」と言えば事実から外れますし、起きてもいないクビをちらつかせれば、それは脅しです。盛りや脅しは、その場では効くように見えても、「この人は大げさに言う」という不信を残し、信頼を壊します。影響は、実際に起きたこと・現実に起こりうることだけを、等身大で伝えます。

田中さんの場面で、事実に影響を足してみましょう。

「今回の会議資料、締め切り当日の今朝10時に初稿をもらったよね(事実)。そうすると、私がレビューする時間が取れなくて、誤字が残ったまま会議で使うことになったんだ。お客さま向けの資料だったから、正直、少しヒヤッとしたよ(影響)。」

チーム(会議で使う資料)、成果(顧客に出る)、自分(レビューできずヒヤッ)への影響が、「私」を主語にして、等身大で入っています。これで田中さんは、「朝に出すと、先輩のチェックが入らないまま、お客さまに届いてしまうのか」という、事実の“その先”を、はじめて自分ごととして共有できます。

この章の確認(演習):第2章で書き換えた、あなた自身の事実1文に、影響を1〜2文足してみてください。「その事実で、チーム・成果・自分にどう響いたか」を、「私は〜」を主語にして書きます。「あなたは〜」になっていないかを確かめ、私を主語に直せたら、ゴール達成です。テンプレートの「影響」欄に続けて書き込みましょう。

期待を伝える(今後どうしてほしいか+一緒に考える)

事実と影響で、田中さんは「朝提出は、こう響くんだな」と腹落ちしました。でも、まだ足りないものがあります。次に、どうすればいいのかです。それを渡すのが、型の3番目「期待」です。

この章のゴール

この章を読み終えると、事実・影響に続けて「今後どうしてほしいか(期待)」を具体的な行動で伝え、事実→影響→期待を1つのフィードバックに組み立てられるようになります。注意するときも、ほめるときも。

期待は、「いつ・何を」が分かる行動で

事実と影響だけで止めると、相手は「悪かったな」とは思っても、次の一手が分かりません。だから最後に、今後どうしてほしいかを、具体的な行動で伝えて締めます。

ここでも、第1章のNG「もっと早めに」が、なぜダメだったか思い出してください。「早めに」では、何時のことか分かりません。期待は、いつ・何を、がはっきりした行動にします。「会議の前日の午前までに、初稿を出してほしい」——ここまで具体的なら、田中さんは迷いません。

押しつけず、「一緒に考える」

ただし、期待は「こうしろ」と一方的に押しつけるものではありません。一言、相手に手段を考えてもらう問いかけを添えると、ぐっと動きやすくなります。

「次は前日の午前までに初稿を出してほしいんだけど、どうすれば間に合いそうかな?」。こう聞かれると、田中さんは自分で段取りを考えます。自分で「じゃあ前々日から手をつけます」と決めた行動は、人から命じられた行動より、ずっと続きます。過去の失敗を責めるのではなく、未来の行動に一緒に目を向ける——この前向きな姿勢が、相手のやる気を削がずに行動を変えます。

事実→影響→期待を、1つにまとめる

では、ここまでの3つを、ひとつなぎにしてみましょう。第1章であれだけ足りなかったNG版が、こう生まれ変わります。

「今回の会議資料、締め切り当日の今朝10時に初稿をもらったよね(事実)。そうすると、私がレビューする時間が取れなくて、誤字が残ったまま会議で使うことになって、少しヒヤッとしたよ(影響)。次からは、会議の前日の午前までに初稿をもらえると、二人で一度見直せて安心なんだ。どうすれば前日の午前に間に合いそうかな?(期待)」

「いつも遅いよね、もっと早めに」と比べてみてください。同じ「資料が遅い」を伝えているのに、田中さんが受け取るものは正反対です。責められた気持ちではなく、「次は前日午前に出せばいいんだ」という、はっきりした次の一歩。これが、裁く言葉と、動ける言葉の違いです。

この型は、ほめるときも同じ

最後に、いちばん覚えて帰ってほしいことを。事実→影響→期待 は、注意するときだけの型ではありません。ほめるときも、まったく同じです。

「がんばってるね」は、やさしい言葉ですが、第1章のNG版とよく似ています。何が・どう良かったのかが無く、相手はどの行動を続ければいいか分からないからです。良い行動こそ、事実→影響→期待 で具体的に伝えましょう。

たとえば後日、田中さんが、別の資料を前日の午前に出してくれたとします。そのとき、こう言えます。

「昨日の午前に、初稿をもらえたよね(事実)。おかげで二人で前もって見直せて、誤字ゼロで会議に出せた。お客さまの反応も良かったよ(影響)。すごく助かった。この出し方、これからもぜひ続けてほしい(期待)」

「がんばってるね」より、何倍も田中さんに届きます。どの行動を続ければいいかが、はっきり分かるからです。フィードバックは、叱るための道具ではありません。良い行動を伸ばすためにも、同じ型が使えます。

この章の確認(演習):第2章・第3章で作った、あなた自身の事実+影響に、期待を1文足して、事実→影響→期待を1つのフィードバックに組み立ててみてください。期待は「もっと」「ちゃんと」を使わず、いつ・何を、が分かる行動で書きます。次に、最近メンバーがした“良かった行動”を1つ思い出し、ポジティブ版(事実→影響→期待)でも1つ書いてみましょう。注意とほめるの両方を、同じ型で組み立てられたら、ゴール達成です。

まとめ:フィードバックは、人を裁くためでなく、相手が動けるようにするため

おつかれさまでした。「田中さんが会議資料を当日の朝に出してきた」という、たった1つの場面を、フィードバックとは何か→事実→影響→期待、と1段ずつ組み立ててきました。歩いてきた道を、振り返ります。

  1. フィードバックとは……相手を裁く言葉ではなく、相手が動ける言葉。扱うのは人格でなく行動(人格は変えられないが行動は変えられる)。目的は、相手の次の行動が変わること。注意するときも、ほめるときも使う(第1章)。
  2. 事実……その場にいた人なら誰が見ても同じになる、観察できる行動を取り出す。「雑」「やる気がない」「いつも」は、あなたの意見であって事実ではない。評価語が出たら「何を見てそう思った?」と観察に戻す(第2章)。
  3. 影響……その事実が、チーム・成果・自分にどう響いたかを添える。「あなたは〜」でなく「私は〜」(アイメッセージ)で、盛らず脅さず等身大に(第3章)。
  4. 期待……今後どうしてほしいかを、いつ・何を が分かる具体的な行動で伝え、「どうすればできそう?」と一緒に考える。過去を責めるより、未来の行動に目を向ける(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「これは、相手を裁く言葉になっていないか。事実→影響→期待で、相手が動ける言葉になっているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——フィードバックは、人を裁くためでなく、相手が動けるようにするため。だから、事実→影響→期待 の順で。これが身につくと、「もっとちゃんと」では黙るだけだった相手が、「次は前日午前に出せばいいんだ」と、自分で次の一歩を踏み出せるようになります。

明日の最初の一歩:最近メンバーに言いたかった(または、つい言ってしまった)ことを、1つ取り出してください。そして、それを 事実→影響→期待 の3つの箱に分けて書き、1つのフィードバックに組み立ててから、伝えてみます。きれいな言葉でなくてかまいません。「もっとちゃんと」の一言を、事実と影響と期待に分けてみること——それが、裁く言葉から動ける言葉へ変わる第一歩です。事実→影響→期待 フィードバック組み立てテンプレートを無料でダウンロードすれば、言いたいことを書き出す→評価語・人格語に線を引く→事実欄→影響欄(私を主語に)→期待欄(具体的な行動)→一緒に考える問いかけ欄、そしてポジティブ版の枠まで、一通り埋められます。

もっと深めたくなったら、その先の道も用意されています。フィードバックを単発で終わらせず、定期的に交わす場づくりは 1on1(kouza-058)、そもそも「何ができたら達成か」という基準を決める目標設定は kouza-059(目標設定) で深められます。本講座はまず、「一つの場面を、事実→影響→期待 で組み立てて伝えること」に絞りました。この型を、あなたのチームのいちばん近いメンバーから、さっそく使ってみてください。

よくある質問

フィードバックとは何ですか?

相手の行動や結果について観察した事実をもとに、相手が次に動けるように伝え返すことです。人を裁くためでなく、相手の行動が変わることを目的としており、注意するときだけでなくほめるときにも使います。

「事実」と「意見」はどう違いますか?

事実とは、その場にいた人なら誰が見ても同じになる観察できる行動や出来事のことです。「雑だ」「やる気がない」はあなたの評価・解釈であり事実ではありません。評価語が出たら「何を見てそう思ったか」と問い直し、いつ・何が・どうだったかを取り出します。

なぜ「私を主語」にして影響を伝えるのですか?

「あなたは私を困らせた」と主語を相手にすると、責めている響きになり、相手はとっさに身構えます。「私はレビューする時間が取れなくて困った」と自分を主語にすることで、角を立てずに影響を伝えられ、相手は受け取りやすくなります。

期待を伝えるとき「もっと早めに」ではダメなのですか?

「もっと早めに」では何時のことか相手に伝わらず、次の行動に迷いが生じます。「前日の午前までに初稿を出してほしい」のように、いつ・何をがはっきりした行動として伝えることで、相手は迷わず動けます。

ほめるときもこの型を使えますか?

はい、事実→影響→期待の型は、ほめるときもまったく同じです。「がんばってるね」だけでは何の行動が良かったか伝わりません。何が・どう良かったかを事実と影響で伝え、その行動を続けてほしいという期待で締めることで、メンバーはどの行動を伸ばせばいいかを具体的に理解できます。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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