「自分でやった方が早いんだよな」——大事な仕事をつい全部抱え込み、リーダーになったのに、気づけば自分だけ毎晩残業している。部下に任せても、やり方が気になって細かく口を出して嫌がられるか、「あとはよろしく」と渡して期限直前に「全然違う…」と慌てるか、の両極端。部下の育て方は「見て覚えて」「困ったら聞いて」で止まっていて、何をどう教えればいいか分からない。自分の数字は出るのに、チーム全体の成果は伸びない。配属されて間もない頃、こんなモヤモヤを抱えていませんか。
でも、安心してください。「リーダーって何する人?」にスラスラ答えられる人と、毎晩残業して詰まってしまうあなたの違いは、能力でも根性でもありません。自分でやるか、それとも“任せて・育てて・チームで成果を出す”かだけです。このモヤモヤの正体は、ひとことで言えば、プレイヤー(自分で成果を出す人)のやり方のまま、マネージャー(チームで成果を出す人)の席に座っていること。プレイヤーとマネージャーは、実は別の仕事なのです。
経営学者のドラッカーは、マネジメントを「組織(チーム)に成果を上げさせること」、マネージャーを「組織の成果に責任を持つ人」だと定義しました。つまり、マネージャーの仕事は、自分が一番のプレイヤーとして点を取ることではなく、チームに点を取らせること。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- マネジメントを「部下の管理・監督」や「自分1人で頑張ること」ではなく、管理者の役割=①業務管理→②人材育成→③成果創出の3点で“チームで成果を出す”仕事として、自分の言葉で説明できる
- 自分が「自分でやった方が早い」と抱え込んでいる仕事を1つ選び、ゴール・期限・任せる範囲を決めて“任せる”手順を説明でき、丸投げでもマイクロマネジメントでもない任せ方を使い分けられる
- 人材育成で「答えを教える(ティーチング)」と「問いかけて考えさせる(コーチング)」の違いを説明でき、チームの成果創出を「目標を分けて、進捗を見て、評価で次につなげる流れ」として説明でき、1on1・目標管理・評価などの個別の打ち手がこの3点のどこに当たるかを位置づけられる
この講座は最後まで、「トップ営業だった けんとさんが、4人の営業チームのリーダー(課長)になり、部下の ゆいさん を育てながら、チームで成果を出していく」という、たった1つの場面だけで説明します。同じリーダーと部下を、マネジメントとは何か→どう任せるか→どう育てるか→どうチームで成果を出すか、と1マスずつ地図を埋めていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分のチームを思い浮かべながら読み進めてみてください。そして、この「業務管理→人材育成→成果創出」の地図を、自分のチームでも使えるようにしたくなったら、無料会員登録で続きの講座(任せ方・1on1・目標管理・評価)に進めます。まずは、この1本で役割の全体像を掴みましょう。
この講座のポイント
- マネジメントを「部下の管理・監督」「自分1人で頑張ること」ではなく、管理者の役割=①業務管理→②人材育成→③成果創出の3点で“チームで成果を出す”仕事として、自分の言葉で説明できる
- 自分が「自分でやった方が早い」と抱え込んでいる仕事を1つ選び、ゴール・期限・任せる範囲を決めて“任せる”手順を説明でき、丸投げでもマイクロマネジメントでもない任せ方を使い分けられる
- 人材育成で「答えを教える(ティーチング)」と「問いかけて考えさせる(コーチング)」の違いを説明でき、相手や場面で使い分ける入口に立てる
- チームの成果創出を「個人の成果の足し算」ではなく「目標を分けて、進捗を見て、評価で次につなげる流れ」として説明でき、1on1・目標管理・評価などの個別の打ち手を位置づけられる
マネジメントとは何か(プレイヤーからマネージャーへ)
まずは、「自分でやった方が早い」で抱え込んでしまうモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。マネジメントという言葉を、ふわっとした「管理」のイメージから、自分で使える1枚の地図に変える土台の章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、マネジメントを「部下の管理・監督」「自分1人で頑張ること」ではなく、管理者の役割=①業務管理→②人材育成→③成果創出の3点で“チームで成果を出す”仕事として、自分の言葉で説明できるようになります。
「自分でやった方が早い」で詰まる正体
あなたの能力が足りないわけではありません。むしろ逆で、プレイヤーとして優秀だった人ほど、ここでつまずきます。なぜなら、優秀だった人ほど「自分のやり方」に自信があり、部下に任せて自分の思うようにいかないと、つい手を出して取り返してしまうからです。
けれど、プレイヤーとマネージャーは別の仕事です。サッカーでいえば、点を取るのがうまい名ストライカー(プレイヤー)が、そのまま名監督(マネージャー)になれるとは限りません。監督の仕事は、自分がピッチで点を取ることではなく、選手たちが点を取れるようにすることだからです。「自分でやった方が早い」と大事な仕事を抱え込むと、短期的には確かに速い。でも、いつまでも自分がチームの一番の働き手=一番のボトルネックのままで、部下は育たず、チームの数字も伸びません。
ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。プレイヤーは自分が点を取る人、マネージャーはチームに点を取らせる人。マネジメントとは、自分でやることではなく、任せて・育てて・チームで成果を出すこと。この持ち替えができるかどうかが、すべての出発点です。
マネジメント=チームに成果を上げさせること
では、マネジメントとは具体的に何をすることなのでしょうか。経営学者のドラッカーは、マネジメントを「組織(チーム)に成果を上げさせるための機能」、マネージャーを「組織の成果に責任を持つ人」だと定義しました。
ここで大事なのは、「成果に責任を持つ」=「自分が全部やる」ではない、ということです。マネージャーの責任は、チーム全体が成果を出せる状態を作ること。だから、自分1人の数字を伸ばすことよりも、4人のチーム全体の数字を伸ばすことに目を向けます。評価する軸を「自分の成果」から「チームの成果」に切り替える——これが、プレイヤーからマネージャーへの頭の切り替えです。
ここで先回りして、いちばんありがちな誤解を潰しておきます。「マネジメント=部下を管理・監督すること」という思い込みです。進捗をチェックして、できていなければ指摘する。たしかにそれもマネージャーの仕事の一部ですが、ごく一部にすぎません。管理・監督だけを切り取って「これがマネジメントだ」と思うと、「自分が見張る人」になってしまい、肝心の「チームで成果を出す」が抜け落ちます。
役割は1枚の地図:業務管理→人材育成→成果創出
では、「チームで成果を出す」マネージャーは、具体的に何をする人なのか。ドラッカーは、マネージャーに共通する仕事を5つ(目標設定・組織化・動機づけとコミュニケーション・評価・人材育成)に整理しました。この講座では、はじめてリーダーになったあなたがつかみやすいように、これを大きく3つにまとめます。
| 役割 | ひとことで言うと | この講座の章 |
|---|---|---|
| ① 業務管理 | 仕事を抱え込まず、人に任せて回す | 第2章 |
| ② 人材育成 | 部下が自分で考えて動けるよう育てる | 第3章 |
| ③ 成果創出 | ①と②を通じて、チームで成果を出す | 第4章 |
これが、マネージャーの役割=1枚の地図です。①業務管理から始めて、②人材育成、③成果創出の順に埋めていきます。
先輩や人事がよく口にする「1on1」「目標管理」「評価」「コーチング」といった言葉も、実はこの地図のどこかに乗っています。1on1やコーチングは「人材育成」のあたり、目標管理や評価は「成果創出」のあたり。今は名前を覚えなくて大丈夫です。「全部この3つの地図の上に乗るんだな」とだけ掴んでください。
ここで、この講座を通して使う共通例に登場してもらいましょう。トップ営業だった けんとさんです。けんとさんは、その実績を買われて、4人の営業チームのリーダー(課長)になりました。ところが、大事な商談は「自分でやった方が早い」と全部自分で回し、部下が作った資料も自分で手直し。結果、自分は毎晩残業、部下(その1人が、入社3年目で、まじめだけれど指示待ちになりがちな ゆいさん です)は手持ち無沙汰で育たず、チームの数字も伸びません。これが「プレイヤーの席に座ったままのマネージャー」です。この章では、まだ中身は埋めません。「①任せる(業務管理)②育てる(人材育成)③チームで成果を出す(成果創出)」の3つの“枠”だけを立てておきます。
この章の確認(演習)
共通例の けんとさん が、「自分でやった方が早い」と抱え込んでいそうな仕事を、3つ想像して書き出してみてください。たとえば「大口顧客の商談」「部下の資料の最終チェック」「クレーム対応」など、何でもかまいません。
そのうえで、「マネージャーの役割は、①業務管理(任せて回す)②人材育成(育てる)③成果創出(チームで成果を出す)の3点だ」を、自分の言葉で1〜2行に書いてみます。「プレイヤーは自分が点を取る人、マネージャーはチームに点を取らせる人」——この違いを、自分の手で言葉にできたら、この章はゴールです。3つの枠は、これから第2章・第3章・第4章で1つずつ埋めていきます。
業務管理(抱え込まず、任せて回す)
地図の1マス目、業務管理(任せて回す)を埋めていきます。「自分でやった方が早い」の呪縛から、どう抜け出すか。マネージャーの第一歩です。
この章のゴール
この章を読み終えると、自分が「自分でやった方が早い」と抱え込んでいる仕事を1つ選び、ゴール・期限・任せる範囲を決めて“任せる”手順を説明でき、丸投げでもマイクロマネジメントでもない任せ方を使い分けられるようになります。
「自分でやった方が早い」のワナ
業務管理とは、チームの仕事を、自分で全部抱え込まずに、人に任せて回すことです。けれど、新任リーダーの多くが、ここで両極端のどちらかに振れてしまいます。
ひとつは、第1章で見た「自分でやった方が早い」と抱え込むパターン。これは、短期的には確かに速いのですが、あなたが永遠にチームの一番の働き手のままで、部下は育たず、チームは伸びません。
もうひとつは、いざ任せようとしたときに起きる、「丸投げ」と「マイクロマネジメント」という2つの失敗です。丸投げは「あとはよろしく」と放り出して放置すること。マイクロマネジメントは、逆に心配で、任せたはずなのに細かく口を出し続けること。この2つは正反対に見えて、どちらも「任せ方」を間違えている点で同じです。
丸投げでもマイクロマネジメントでもない、“ちょうどいい”任せ方
では、どう任せればいいのか。答えは、ゴール・期限・任せる範囲を最初に伝え、要所で進捗を確認することです。この、最初にきちんと握ってから渡す任せ方を、権限委譲と呼びます。権限委譲とは、ひとことで言えば「部下に、仕事と、進め方を自分で決める権限を渡すこと。ただし、最終責任はリーダーが持つ」ことです。
丸投げ・マイクロマネジメント・権限委譲の違いを、表で整理します。
| 任せ方 | やっていること | 部下に起きること |
|---|---|---|
| 丸投げ | ゴールも判断の基準も伝えず、「よろしく」で放置 | 何を出せばいいか分からず迷走する |
| マイクロマネジメント | 任せたのに、やり方を細かく指示し続ける | 自分で考えず、指示待ちになる |
| 権限委譲(ちょうどいい) | ゴール・期限・範囲を握り、要所で確認。責任は自分が持つ | 自分で進められ、主体性が育つ |
ポイントは、「最初に握って、途中は要所だけ、最後に確認」。丸投げが「握らなさすぎ」、マイクロマネジメントが「口を出しすぎ」だとすれば、権限委譲はそのちょうど真ん中です。そして、何かあったときに責任を取るのはリーダーである自分だ、という覚悟がセットになります。
共通例:けんとさんが「販売実績レポート」を任せる
では、けんとさんが抱え込んでいた「毎月の販売実績レポート作成」を、ゆいさんに任せてみましょう。
もし丸投げだったら——「ゆいさん、来月からレポートよろしく」。これだけでは、ゆいさんは何をどこまで出せばいいか分からず、迷走してしまいます。逆にマイクロマネジメントだったら——「フォントはこれ、この数字はここのセル、グラフはこの色で」。これでは、ゆいさんは言われたとおりに作るだけで、何も考えなくなります。
“ちょうどいい”任せ方は、こうです。「ゴールは、先月の売上を商品別にまとめて、気づいた点を3つ書くこと。期限は金曜の午前まで。数字の取り方で迷ったら、木曜までに相談して。体裁は前回のレポートを参考に、自由にやってみて」。どうでしょう。ゴール(何を達成すれば完了か)・期限(いつまで)・任せる範囲(数字で迷ったら相談、体裁は任せる)・確認のタイミング(木曜まで)が、最初にぜんぶ握れていますよね。これでゆいさんは自分で進められ、けんとさんの手も空きます。これが、業務管理の第一歩です。
この章の確認(演習)
自分(または共通例の けんとさん)が「自分でやった方が早い」と抱え込んでいる仕事を1つ選び、それを部下に任せる前提で、次の4つを、それぞれ1行で書き出してみてください。
- ① ゴール(何ができたら完了か):_____
- ② 期限(いつまでか):_____
- ③ 任せる範囲(どこは任せ、どこは相談してもらうか):_____
- ④ 要所の確認タイミング(途中でいつ見るか):_____
この4つを最初に伝えてから渡せたら、それはもう丸投げでもマイクロマネジメントでもない、“ちょうどいい”任せ方です。手を動かして組み立てられたら、ゴールです。
人材育成(答えを教えるだけでなく、問いかけて育てる)
地図の2マス目、人材育成(育てる)を埋めます。任せた仕事を通じて、部下が「自分で考えて動ける人」に育つかどうか。ここが分かれ道です。
この章のゴール
この章を読み終えると、人材育成で「答えを教える(ティーチング)」と「問いかけて考えさせる(コーチング)」の違いを説明でき、相手や場面で使い分ける入口に立てるようになります。
「見て覚えて」では、指示待ちが固定される
人材育成と聞くと難しそうですが、要は「部下が、自分で考えて動けるようになるのを助けること」です。ところが、「見て覚えて」「困ったら聞いて」で止めてしまうと、部下はいつまでも自分で判断できず、結局あなたに「これどうすればいいですか」と聞きに来ます。そして、あなたが全部答える。すると部下は次もまた聞きに来る——この「指示待ちの固定ループ」が、いちばん避けたい状態です。
なぜこうなるのか。プレイヤーとして優秀だった人ほど、聞かれると、つい正解をすぐ教えてしまうからです。教える方が早いし、気持ちもいい。でも、それを続ける限り、部下は「自分で考える」機会を一度も持てません。
育て方は2つ:ティーチングとコーチング
部下の育て方には、大きく2つのやり方があります。
| 育て方 | やること | 向いている相手 |
|---|---|---|
| ティーチング | 答え・やり方を教える(道を知らない人に道を教える) | まだできない・経験が浅い段階 |
| コーチング | 問いかけて、本人に考えさせる(本人の中の答えを引き出す) | ある程度できる・経験を積んだ段階 |
ティーチングは、答えややり方を具体的に教えること。新しい仕事や、まだやったことのない部下には、これが必要です。道を知らない人には、まず道を教えてあげなければ進めません。一方のコーチングは、答えを言わずに「どう思う?」「どう進める?」と問いかけて、本人に考えさせること。ある程度できる部下には、こちらに切り替えると、自分で考える力が育っていきます。
大事なのは、この2つに優劣はなく、相手の習熟度(まだできない/ある程度できる)で使い分けるということです。ちなみに、こうした「相手の段階に合わせてリーダーの関わり方を変える」考え方は、状況対応型リーダーシップ(SL理論)として知られています。名前は覚えなくて大丈夫。「相手がまだできない段階なら教える、できる段階なら問いかける」と掴めれば十分です。
コーチングのコツは、すぐ答えを言いたくなるのをこらえて、問いかけて待つこと。プレイヤーの癖で口が先に動きそうになるのを、ぐっと我慢するのが第一歩です。
共通例:ゆいさんの「見積り、どう書けば?」にどう答えるか
ゆいさん(入社3年目・まじめだけれど指示待ちになりがち)が、「この見積り、どう書けばいいですか?」と聞いてきました。けんとさんは、どう答えるべきでしょうか。
プレイヤーの癖で全部答える=ティーチングばかりだと、ゆいさんは次の見積りでもまた聞きに来ます。指示待ちが固定されてしまうのです。そこで、使い分けます。ゆいさんが初めて出会う論点(たとえば「この割引はどう計算するか」)は、まだできない段階なので、きちんと教える(ティーチング)。一方、ゆいさんが過去に何度かやったことのある部分(たとえば「項目の並べ方」)は、「ゆいさんなら、どう書く? なぜそう思った?」と問いかける(コーチング)。
すると、ゆいさんは「あ、ここは自分で決めていいんだ」と気づきます。これを繰り返すうちに、だんだん自分で判断できるようになっていきます。さらに、けんとさんは、月に何度か ゆいさん と1対1で話す時間(1on1)を持つことにしました。1on1とは、定期的に1対1で部下の話を聞く時間のことで、評価を伝える面談とは違って、主役は部下です。「最近どう? 困ってることはない?」と定期的に聞くことで、ゆいさんのつまずきに早く気づけるようになります。
この章の確認(演習)
共通例の ゆいさん が「次の提案、どう進めればいいですか?」と聞いてきた場面を想定して、次の2つを、それぞれセリフで書いてみてください。
- ① ティーチングで答える言い方(やり方を具体的に教える):「_____」
- ② コーチングで問いかける言い方(本人に考えさせる):「_____」
そのうえで、ゆいさんの習熟度を「まだできない/ある程度できる」のどちらかに仮に決めて、どちらをメインにするか、その理由を1行で書いてみます。「教える」と「問いかける」を、自分の手で使い分けられたら、ゴールです。
成果創出(個人の足し算でなく、チームで成果を出す)
地図の3マス目、成果創出(チームで成果を出す)を埋めます。ここが、第2章で任せ、第3章で育ててきたことが、ぜんぶ結実する場所です。
この章のゴール
この章を読み終えると、チームの成果創出を「個人の成果の足し算」ではなく「目標を分けて、進捗を見て、評価で次につなげる流れ」として説明でき、1on1・目標管理・評価などの個別の打ち手を位置づけられるようになります。
チームの成果は、“足し算”ではなく“流れ”で作る
成果創出は、マネージャーの存在理由そのものです。なぜ業務管理(任せる)や人材育成(育てる)をするのかといえば、すべては、チームとして成果を出すためです。
ここでの肝は、チームの成果は「メンバーがそれぞれ勝手に頑張った成果の、単なる足し算」ではないということです。リーダーが「あとは各自がんばって」と放っておいて出る成果には、限りがあります。チームの成果は、次の流れで作ります。
| 段階 | リーダーがやること |
|---|---|
| ① 目標を決める | チームとして何をどこまでやるかを決める |
| ② 分けて共有する | 誰が何に責任を持つか、分担を一緒に決める |
| ③ 進捗を見る | 任せた仕事の進み具合を、チームで定期的に確認する |
| ④ ずれたら手を打つ | 目標とずれていたら、責めずに一緒に立て直す |
| ⑤ 評価して次につなぐ | 結果を振り返り、次の成長につながる言葉を返す |
③は、第2章の「任せた仕事を要所で確認する」とそのままつながります。⑤の評価は、ただ点数をつけて査定することではありません。ドラッカーも、評価は個人を査定するためでなく、改善点を見つけ次につなげるための情報だ、と言っています。だから、結果が出なかったときも、個人を責めるのではなく、「どこでつまずいたか、次はどうするか」を一緒に考える。これが、第3章の人材育成にもつながっていきます。
なお、こうして「目標を通じて一人ひとりの責任をはっきりさせ、本人が自分で進められるようにする」考え方を、目標管理(MBO)と呼びます。これはドラッカーが提唱したもので、本来は、上司が一方的に目標を配るのではなく、本人が自分の目標として納得して持つことが大切だとされています。1on1は③④の進捗を見る場、目標管理は①②、評価は⑤に当たる——と、地図の上に置けると、バラバラに見えた言葉が一本につながります。
共通例:けんとさんのチームが「新規契約」をチームで増やす
けんとさんの営業チームが、「今期の新規契約を増やす」を目標にしたとします。
もし、けんとさんがプレイヤーの癖で「よし、自分が一番取ってくる」と動いたら、どうなるでしょう。チームの数字は、けんとさん1人分しか伸びません。残りの3人は、相変わらず手持ち無沙汰のままです。
そうではなく、流れで作ります。①チームの目標を決め、②「Aさんは既存のお客さまへの追加提案、ゆいさんは問い合わせ対応からの提案」と、誰が何に責任を持つかを一緒に決めて配り、③週1の朝会と1on1で進捗を見て、④ゆいさんが提案で詰まっていたら、一緒に作戦を考え(ここが人材育成とつながります)、⑤月末に結果を振り返って「ここが良かったね、次はこうしてみよう」とフィードバックする。こうして、けんとさん1人の力ではなく、4人それぞれが力を出せる状態を作るのが、マネージャーの成果です。第2章で任せ、第3章で育ててきたことが、ここでようやく「チームの成果」として実を結びます。
この章の確認(演習)
共通例の営業チームの目標「今期の新規契約を増やす」を題材に、次の3つを、それぞれ1〜2行で書いてみてください。
- ① 目標を2人のメンバー(Aさん・ゆいさん)に、どう分けて配るか
- ② 進捗を、いつ・どこで見るか
- ③ 結果を、どう振り返って次につなげるか
最後に、第2章(任せる)・第3章(育てる)が、この成果創出のどこにつながっているかを、1行で書いてみます。業務管理・人材育成・成果創出の3つが、1本につながっていることを、自分の手で確かめられたら、ゴールです。
まとめ:プレイヤーは自分が点を取る人、マネージャーはチームに点を取らせる人
おつかれさまでした。「トップ営業だった けんとさんが、4人のチームのリーダーになり、部下の ゆいさん を育てながらチームで成果を出す」という、たった1つの場面を、マネジメントとは何か→どう任せるか→どう育てるか→どうチームで成果を出すか、と1マスずつ地図に埋めてきました。第1章で立てた3つの枠を、ここで振り返ります。
- マネジメントとは……自分1人で頑張ることでも、部下を管理・監督することでもなく、チームに成果を上げさせること。マネージャーは、チームの成果に責任を持つ人。プレイヤーは自分が点を取る人、マネージャーはチームに点を取らせる人(第1章)。
- 業務管理(任せて回す)……「自分でやった方が早い」で抱え込まない。ゴール・期限・任せる範囲を最初に握り、要所で確認する。丸投げ(放置)でもマイクロマネジメント(細かすぎ)でもない、ちょうどいい任せ方をする。責任は自分が持つ(第2章)。
- 人材育成(育てる)……「見て覚えて」で放置しない。まだできない段階は教え(ティーチング)、できる段階は問いかける(コーチング)。相手の習熟度で使い分け、すぐ答えを言わずに待つ(第3章)。
- 成果創出(チームで成果を出す)……成果は個人の足し算ではない。目標を分けて、進捗を見て、ずれたら一緒に手を打ち、評価で次につなげる。自分が一番取るのでなく、メンバーが力を出せる状態を作る(第4章)。
この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「『リーダーって何する人?』に、“任せて・育てて・チームで成果を出す”の3点で、筋道立てて答えられているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——プレイヤーは自分が点を取る人、マネージャーはチームに点を取らせる人。これが身につくと、後輩に「リーダーって何するんですか?」と聞かれたとき、「仕事を抱え込まずに任せて(業務管理)、人を育てて(人材育成)、その2つでチームの成果を出す(成果創出)。自分が点を取るんじゃなくて、チームに点を取らせる人なんだよ」と、地図の上で答えられるようになります。
明日の最初の一歩:自分が「自分でやった方が早い」と抱え込んでいる仕事を1つ選び、ゴール・期限・任せる範囲を決めて、部下1人に任せてみてください。そして、任せたら、答えを先に言わずに「どう進める?」と一度問いかけてみる。きれいにできなくて大丈夫です。「自分でやる」から「任せて・育てて・チームで出す」へ、手を持ち替える——その一歩が、すべての始まりです。
そして、この「業務管理→人材育成→成果創出」の地図を、もっと具体的に使えるようになりたくなったら、その先の道も用意されています。任せ方と進捗の見方を具体化する業務委任、1on1やコーチングの問いかけを磨く1on1・コーチング、チームの目標を設計する目標管理(MBO・OKR)、成果を次につなぐ評価・フィードバック——これらは、今日描いた地図の各マスを、ひとつずつ深掘りするものです。続きは、無料会員登録で次の講座に進めます。まずはこの「任せて・育てて・チームで成果を出す」という地図を、自分の手で1枚描けるようにしておきましょう。それが、リーダーとしてのすべての土台になります。
よくある質問
マネジメントとは何ですか?
チームに成果を上げさせることです。自分1人で頑張ることでも、部下を管理・監督することでもなく、「任せて・育てて・チームで成果を出す」のが、マネージャーの仕事です。
プレイヤーとマネージャーは何が違いますか?
プレイヤーは自分が点を取る人、マネージャーはチームに点を取らせる人です。優秀なプレイヤーがそのまま名マネージャーになれるとは限らないのは、仕事の種類そのものが異なるためです。
「丸投げ」と「マイクロマネジメント」の違いは何ですか?
丸投げはゴールも判断基準も伝えずに放置すること、マイクロマネジメントはやり方を細かく指示し続けることです。どちらも任せ方が両極端で、部下の主体性を育てられません。ゴール・期限・任せる範囲を最初に握る権限委譲が、ちょうどいい任せ方です。
ティーチングとコーチングはどう使い分けますか?
部下がまだ経験の浅い段階には答えやり方を教えるティーチングを、ある程度できる段階には「どう思う?」と問いかけて考えさせるコーチングを使います。優劣はなく、相手の習熟度に合わせて切り替えることが大切です。
初めてリーダーになった人でも、この講座の内容は実践できますか?
はい、実践できます。この講座は、けんとさんとゆいさんの共通例を使い、業務管理・人材育成・成果創出の3点を順に地図として埋めていく構成です。まず「自分でやった方が早い」と抱え込んでいる仕事を1つ選び、ゴール・期限・任せる範囲を決めて部下に渡す一歩から始められます。