段取り力入門 | マナビズ

段取り力入門

段取り力入門

「金曜の会議までに、この資料お願い」——月曜の朝、先輩にそう頼まれたあなたは、さっそく目についた競合のリサーチから手を動かし始めました。ところが木曜の夕方、ふと気づきます。「これ、上司に確認してもらう時間、残ってる…?」。声をかけると「今日はもう無理、明日の朝に見るよ」。結局、金曜の朝に指摘を受け取り、会議の直前まで修正に追われる——若手の頃、こんな経験はありませんか。

同じ仕事でも、月曜の時点で「ゴールは上司の確認を通った5枚ですね。レビューに半日かかるので、木曜の午前までには出します。今日の午後からリサーチを始めます」と、その場で段取りを言える人がいます。違いは、仕事が速いかでも器用かでもありません。手を動かす前に「終わり」から逆算して、やること・順番・所要時間を決めているかだけです。これが、段取り力の正体です。

「段取り八分」という言葉があります。仕事は、手をつける前の段取りで8割が決まる、という意味です。この講座を読み終えると、次の3つができるようになります。

  1. 段取りを「早く手をつけること」や「気合い」ではなく、「仕事の終わり(締切とゴール)から逆算して、やること・着手順・所要時間を決めること」として説明できる
  2. 1つの仕事をやること(タスク)に分解して洗い出し、「これが終わらないと次に進めない」という依存関係で着手順を1本に並べられる(上司レビューなど、他人が関わる待ち時間も組み込める)
  3. 各タスクの所要時間を見積もって合計し、待ち時間も足して、締切から逆算して着手日と中間の締切(マイルストーン)を決められる

この講座は最後まで、「月曜の朝に頼まれた、金曜15時の会議で使う競合調査の報告資料を、若手の自分が用意する」という、たった1つの仕事だけで説明します。同じ仕事を、段取りとは何か→着手順を決める→締切から逆算する、と1段ずつ組み上げます。各章末には手を動かす演習も置いています。複数の仕事が重なったときの順番のつけ方まで知りたくなったら、関連講座で深められます。

この講座のポイント

  • 段取りを「早く手をつけること」ではなく、仕事の終わり(締切とゴールの状態)から逆算して、やること・着手順・所要時間を決めることとして、自分の言葉で説明できる
  • 1つの仕事をやること(タスク)に分解して洗い出し、「これが終わらないと次に進めない」という依存関係で着手順を1本に並べられるようになります(他人が関わる待ち時間も組み込めるようになります)。
  • 各タスクの所要時間を見積もって合計し、待ち時間も足して、締切から逆算して着手日と中間の締切(マイルストーン)を決められるようになります。これは、この講座の到達目標「仕事の終わりから逆算して、着手順と所要時間を見積もれる」そのものです。

段取りとは何か(終わりから逆算する)

この章のゴール

段取りを「早く手をつけること」ではなく、仕事の終わり(締切とゴールの状態)から逆算して、やること・着手順・所要時間を決めることとして、自分の言葉で説明できるようになります。

「とりあえず手をつける」が終盤のバタバタを生む

冒頭のあなたは、なまけていたわけでも仕事が遅かったわけでもありません。月曜の朝から手を動かしていました。それなのに金曜にバタバタしたのは、頼まれた瞬間に、目についた作業から前へ動き出してしまったからです。「終わり」を見ないまま走り出した、というサインです。

月曜の時点で「この仕事は最後に上司の確認がいる」「確認には半日かかる」と分かっていれば、木曜の夕方に青ざめることはありませんでした。手順が多い仕事ほど、行き当たりばったりで前から進めると、終盤で「時間が足りない」「やり忘れた」が必ず出ます。

ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。段取りは、手を動かす前に"終わりから"並べる。これがこの講座を通して、ずっと戻ってくる合言葉になります。

段取り=終わりを決めて、そこから逆算する

段取りとは、手をつける前にまず「終わり」を決め、そこから逆算(後ろから前へ)して、やること・順番・所要時間を決めることです。

逆算は難しい計算ではありません。ゴールを先に置いて、後ろから順に並べるだけです。仕事の終わり(締切とゴール)を先に置き、そこから後ろ向きに「いつ何をやるか」を並べます。

これに対して、目についた作業から前へ進めるのが、行き当たりばったりです。前から進めると本人は進んでいる感覚があるのに、終わりから見ていないので終盤で時間切れに気づきます。段取りは、早く手をつけることでも、気合いで乗り切ることでもありません。手を動かす前に、終わりから組み立てることです。ここを取り違えないでください。

「終わり」は締切とゴールの2つで書く

逆算するには、「終わり」を締切(いつまでに)と、ゴール(何ができていれば"完成"か)の2つで書きます。

多くの人は締切しか見ていません。「金曜15時まで」だけだと逆算できません。「何ができていれば終わりなのか」が決まっていないと、そこへ至る作業を後ろから並べられないからです。

ここで、共通例の「金曜会議の報告資料」に初めて登場してもらいます。この仕事の「終わり」を、2つに分けて書いてみます。

終わりの種類内容
締切(いつまでに)金曜15時の社内会議の開始まで
ゴール(何ができていれば完成か)上司の確認を通った、競合3社の報告スライド5枚

ゴールを「上司の確認を通った5枚」と書いた瞬間、大事なことが見えます。完成には「上司の確認」が含まれている、つまり自分が作り終えるだけでは終わりではないのです。この一手間を月曜の時点で「終わり」に書き込めたかどうかが、木曜の青ざめを防げたかどうかの分かれ目でした。この章では作業はまだ並べません。「終わりを締切とゴールの2つで書く」ところまで掴めれば十分です。この報告資料を、これから全章で「立ち戻る原点」として使い回します。

この章の確認(演習):共通例「金曜会議の報告資料」について、いきなり作業を始めず、「終わり」を2つ(締切=いつまでに/ゴール=何ができていれば完成か)に分けて、1行ずつ書いてみてください。そのうえで、「段取りとは、この終わりから逆算して、やること・順番・時間を決めることだ」を、自分の言葉で1〜2行に書きます。

やることを洗い出して、着手順を決める(タスク出し→依存関係・待ち時間)

第1章で「終わり」を締切とゴールの2つで決めました。次はその終わりに向かって、「やること」を並べます。

この章のゴール

1つの仕事をやること(タスク)に分解して洗い出し、「これが終わらないと次に進めない」という依存関係で着手順を1本に並べられるようになります(他人が関わる待ち時間も組み込めるようになります)。

「やること」を全部書き出して、小さく分ける

終わりが決まったら、そこに至るやること(タスク)を、全部書き出します。頭の中だけで考えず、紙でもメモアプリでも、外に出すのがコツです。

大事なのは、手を動かす単位に、小さく分けること。「報告資料を作る」の一言だと、何分かかるか見当がつかず、「上司の確認」のような工程が抜け落ちます。共通例の報告資料なら、次の5つに分けられます。

  1. 競合3社をリサーチして情報を集める
  2. 集めた情報を比較表に整理する
  3. 報告スライドを5枚作る
  4. 上司にレビュー(確認)を依頼する
  5. 上司の指摘を直す(修正)

小さく分けると、2つ良いことがあります。ひとつは、ひとつずつなら「だいたい何分か」を見積もりやすくなること(次章で使います)。もうひとつは、書き出す途中で「上司の確認がいるな」「修正の時間もいるな」と、抜けに気づけること。「報告資料を作る」では見えなかった④と⑤が、分けたことで姿を現しました。

依存関係で着手順を1本に並べる

書き出したら、次は順番を決めます。やりやすい順や思いついた順ではなく、「これが終わらないと、次に進めない」という関係(依存関係)で並べます

共通例で見てみましょう。①リサーチで集めないと②整理できず、②整理しないと③スライドにまとめられず、③ができないと④レビューに出せず、④の指摘が返らないと⑤修正できません。つまり、こうなります。

① リサーチ → ② 整理 → ③ スライド作成 → ④ レビュー依頼 → ⑤ 修正

前の作業の結果が、次の作業の材料になる——この順で1本の線につながりました。やりやすそうだからとスライド作りから始めても、整理できていなければ手は止まります。依存関係で並べた順に着手するのが、いちばん詰まらないやり方です。

他人が関わる作業は「待ち時間」がある=早めに差し込む

ここで、いちばん見落としやすいポイントです。5つのうち④の上司レビューだけは、自分一人では終わらない作業だ、ということ。

リサーチも整理もスライドも修正も、自分が手を動かせば進みます。でも④は、上司に渡してから返ってくるまで、自分は手を動かせず、ただ待つ時間が生まれます。この待ちが半日なら、その半日は何をがんばっても⑤修正には進めません。この「依頼してから返ってくるまでの、自分は動けない時間」を、ここでは待ち時間と呼びます。

冒頭のあなたが木曜に青ざめたのは、この待ち時間を計算に入れていなかったから。待ち時間のある作業は、着手順の中で早めに差し込んでおくのが鉄則です。「④レビューは半日待つ」と分かっていれば、③スライドを締切直前まで引っ張らず、早めに終わらせてレビューへ回せます。だから、やることを並べたら、他人が関わって待ち時間が出る作業に印をつけておきましょう

この章の確認(演習):共通例「報告資料」のやることを5つ書き出し、依存関係の矢印(→)で着手順を1本に並べてみてください。そのうえで、自分一人では終わらず「待ち時間」が出る作業に、印をつけてみます(答えは④の上司レビュー。返ってくるまで半日の待ちがあります)。何分かかるかの見積もりは、次の章でやります。

所要時間を見積もって、締切から逆算して並べる(バックワード)

第2章で、やることと着手順、待ち時間の場所まで分かりました。最後は、ここに「時間」を入れて、締切から逆算したスケジュールに落とします。

この章のゴール

各タスクの所要時間を見積もって合計し、待ち時間も足して、締切から逆算して着手日と中間の締切(マイルストーン)を決められるようになります。これは、この講座の到達目標「仕事の終わりから逆算して、着手順と所要時間を見積もれる」そのものです。

各タスクに「だいたい何分か」を見積もって合計する

着手順が決まったら、並べた各タスクに、「だいたい何分かかるか」を見積もっていきます。第2章で小さく分けておいたのが、ここで効きます。「報告資料を作る」では見当もつきませんが、「スライドを5枚作る」になら時間の見当がつきますよね。

共通例で、各作業に時間を入れてみましょう。

着手順やること所要時間(見積もり)
競合3社をリサーチして情報を集める120分
集めた情報を比較表に整理する60分
報告スライドを5枚作る90分
上司にレビューを依頼する15分
上司の指摘を直す(修正)45分
自分の作業の合計330分(=5時間30分)

120+60+90+15+45で、合計330分、5時間30分です。これが「自分が手を動かす作業の量」。「この資料どれくらいかかる?」と聞かれて「だいたい5時間半です」と答えられる——第1章のあなたから一歩前進です。

待ち時間を足して、締切から逆向きに置く

ただし5時間30分は「自分の作業時間」であって、「この仕事が片づくまでの時間」ではありません。ここに、第2章で印をつけた④レビューの待ち時間(半日)を足す必要があります。

そこで、締切から逆向きに置いていきます。終わり(締切=金曜15時)を起点に、後ろから前へ並べます。

  • ⑤ 修正(45分)は会議の前に終わっている必要がある → 金曜の午前にやる
  • ⑤をやるには上司の指摘が手元にいる → レビューは木曜中に返ってきている必要がある
  • レビューには半日かかる → だから ④レビュー依頼は、木曜の午前までに出す(これが中間の締切=マイルストーンです)
  • ④の前に③スライドが完成している → ③は水曜中に終える
  • ③の前に①リサーチ・②整理(合わせて180分)を終える → ①②は月〜火
  • だから、月曜の午後には着手する

締切から後ろ向きに並べると、「いつ何をやればいいか」が自動的に決まります。とくに大事なのが、「④レビュー依頼は木曜の午前まで」という中間の締切(マイルストーン)です。最終締切は金曜15時ですが、自分にとっての本当の山場は「木曜の午前までにレビューに出す」こと。ここを逆算で先に決めておけば、冒頭の青ざめは起こりません。「たぶん間に合う」という感覚が、「この筋なら間に合う」という数字の裏づけに変わりました。

見積もりは短くなりがち=少し余裕(バッファ)を持つ

最後にひとつ注意です。見積もった時間は、だいたい短めにズレます

これは、あなたが見積もり下手だからではありません。人は誰でも、自分の作業時間をつい楽観して短く見積もる癖があります(これは「計画錯誤」と呼ばれ、1979年にカーネマンとトベルスキーが指摘した、誰にでも起こる癖です)。だから、見積もりを出したら、そこに少し余裕(バッファ)を足しておきます

リサーチが手こずる、レビューが半日のはずが丸一日になる、はよく起こります。だから逆算したスケジュールはギリギリで組まず、中間締切が「木曜の午前まで」なら、自分の中では「水曜の夕方には出す」と前倒しで構えておきます。段取りは詰め込むことではなく、終わりから逆算したうえで少し余裕を持って並べることです。

共通例の段取りを1枚にまとめる

ここまでを、共通例「金曜会議の報告資料」で1枚にまとめると、こうなります。

曜日やることねらい
月(午後)① リサーチに着手早めに走り出す
① 完了 → ② 整理(①②で180分)材料をそろえる
③ スライド5枚を作る(90分)レビューに出せる形にする
木(午前まで)④ レビュー依頼(中間締切=マイルストーン)半日の待ちに間に合わせる
木(午後)レビュー待ち(半日)自分は別の仕事へ
金(午前)⑤ 修正(45分)会議前に仕上げる
金(15時)会議(締切・ゴール)上司確認済みの5枚を提出

最終締切から逆算したから、「月曜の午後には動く」「木曜の午前までにレビューへ出す」という、行動に移せる中間の締切が見えました。これが、終わりから逆算する段取りの全体像です。

この章の確認(演習):まず共通例「報告資料」で、各タスクに所要時間(分)を入れて自分の作業を合計し(330分=5時間30分)、待ち時間(半日)を足して、締切金曜15時から逆算して「月曜は何をどこまで」「レビュー依頼は何曜の何時まで」を1本のスケジュールに書いてみてください。次に、自分が今抱えている締切のある仕事を1つ選び、①終わりを決め(締切+ゴール)→②やることを3〜5個に分けて依存順に並べ→③各作業の所要時間を見積もって、締切から逆算して、着手日と中間締切を1本書いてみます。

まとめ:段取りは、手を動かす前に"終わりから"並べる

おつかれさまでした。「金曜会議の報告資料」という、たった1つの仕事を、終わりから逆算する流れで1段ずつ組み上げてきました。段取りとは、「早く手をつけること」でも「気合い」でもなく、仕事の終わり(締切とゴール)から逆算して、やること・着手順・所要時間を決めることでした。手順は、次の3ステップです。

  1. 終わりを決める……締切(いつまでに)とゴール(何ができていれば完成か)を、2つに分けて書く。ゴールに「上司の確認」のような一手間まで書き込むのがコツ(第1章)。
  2. やることを洗い出して着手順を決める……タスクを手を動かす単位に小さく分け、依存関係で1本に並べる。他人が関わって待ち時間が出る作業には印をつけ、早めに差し込む(第2章)。
  3. 所要時間を見積もって締切から逆算して並べる……各タスクの所要時間を見積もって合計し(共通例なら330分=5時間30分)、待ち時間(半日)を足して、締切から逆向きに置く。すると着手日(月曜午後)と中間の締切(レビュー依頼は木曜午前まで)が決まる。見積もりは短くなりがちなので、少し余裕を持つ(第3章)。

この3つは、すべて1つの問いに戻ります。「手を動かす前に、終わりから逆算して、着手順と所要時間を並べられているか?」。いちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——段取りは、手を動かす前に"終わりから"並べる。これが身につくと、「金曜までに資料お願い」と頼まれた月曜の朝に、「ゴールは上司確認済みの5枚、自分の作業は約5時間半、レビュー待ちが半日あるので木曜午前までに出します」と、その場で段取りを口に出せるようになります。

明日の最初の一歩:いま抱えている締切のある仕事を1つ選び、①終わりを2つ(締切とゴール)書く ②やることを3〜5個に分けて依存順に並べる ③所要時間を見積もって締切から逆算して着手日と中間締切を1本書く——これを5分でいいのでやってみます。きれいでなくてかまいません。「とりあえず手をつける」前に、終わりから逆算して並べられたこと自体が第一歩です。

もっと先へ進みたくなったら、複数の仕事が重なったときの「どれから手をつけるか(優先順位のつけ方)」、やることを溜めずに回す「タスク管理の仕組み」、1日の時間の使い方(スケジュール術)は、関連講座で深められます。本講座は「1つの仕事を、終わりから逆算して着手順と所要時間に落とす段取りの型」に絞っています。まずはこの型を、自分の仕事で何度か回してみてください。回すほど、見積もりの精度も上がります。

よくある質問

段取り力とは何ですか?

仕事の「終わり」(締切とゴールの状態)を先に決め、そこから逆算してやること・着手順・所要時間を決める力のことです。早く手をつけることや気合いで乗り切ることとは異なります。

「締切」と「ゴール」はどう使い分けますか?

締切は「いつまでに」、ゴールは「何ができていれば完成か」を指します。たとえば「金曜15時」が締切で、「上司の確認を通った報告スライド5枚」がゴールです。ゴールに上司レビューのような一手間を書き込むことで、抜け漏れを防げます。

やることの洗い出しはどうやるのですか?

まず仕事を「手を動かせる単位」に小さく分けて書き出します。「報告資料を作る」ではなくリサーチ・整理・スライド作成・レビュー依頼・修正と分けると、工程の抜けに気づきやすくなります。次に「これが終わらないと次に進めない」という依存関係で1本の順序に並べます。

待ち時間とは何ですか?どう扱いますか?

自分ではなく他人(上司など)が動く時間のことで、その間は自分は次の作業に進めません。この待ち時間を含めて逆算しないと、終盤で時間切れになります。待ち時間のある作業は早めに着手順に差し込み、中間の締切(マイルストーン)として設定します。

見積もりがいつも短くなってしまいます。どうすれば良いですか?

人は自分の作業時間を楽観的に短く見積もる癖があります。見積もりを出したら少し余裕(バッファ)を足し、中間締切を「木曜午前まで」と決めたなら自分の中では「水曜夕方には出す」と前倒しで構えておくのが有効です。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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