「売上1,000万円の案件、取れました!」——そう言って意気込んで報告したのに、上司から「で、その案件、結局いくら残るの?」と聞かれて、「えっと……」と詰まってしまう。1,000万円という数字は分かっているのに、そこから何がどれだけ引かれて、最後に手元にいくら残るのかは考えたことがなかった——働きはじめて間もない頃、こんな経験はありませんか。
同じ「売上1,000万円の案件」でも、それをまるごと儲けのように受け取って喜ぶ人と、「売上は1,000万円だけど、費用を引いたら残る利益はいくら?」と一歩立ち止まって考えられる人がいます。違いは数字に強いかどうかでも、会計の資格があるかどうかでもなく、売上・費用・利益という“お金の流れ”を分けて見ているかです。「会計は経理の専門家の仕事で、自分には関係ない」「数字や会計の話になると思考停止してしまう」「粗利とか営業利益とか、言葉は聞くけど何が違うのか説明できない」——そんなふうに会計を避けてきた人ほど、売上をまるごと儲けと受け取り、会議で「粗利」「営業利益」が出ると分かったふりでうなずいてしまいます。
でも会計は本来、むずかしい計算の話でも、専門家だけの世界でもありません。会社に入ってくるお金(売上)・出ていくお金(費用)・残るお金(利益)を分けて見るという、家計で「収入−支出=残り」を見るのと同じ当たり前の話です。会計の基礎とは、つまるところこの3つを混ぜずに分けて見ることだ、とまず覚えてください。
この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- 売上・費用・利益の違いと関係(利益=売上−費用)を、自分の言葉で説明できる
- 自分の仕事が売上と費用のどちらに関わるかを言える(自分の業務を、お金の流れの中に位置づけられる)
- 粗利と営業利益など、利益にいくつかの段階がある違いを、ざっくり説明できる(計算の各論には深入りしません)
この講座は最後まで、「小さなカフェのお金の流れ」という1つの身近な商売だけで説明します。コーヒー1杯の売上から、豆やカップなどの原価、家賃や人件費といった費用が引かれて、利益が残る——この同じカフェを、会計とは何か→売上と費用の中身→利益の段階→自分の仕事とのつながり、と順に組み上げていきます。会計の基礎を、たった1軒のカフェで丸ごと掴んでしまいましょう。各章末には手を動かす演習も置いているので、無料会員登録をして、書きながら読み進めてみてください。
この講座のポイント
- 会計を「入ってくるお金・出ていくお金・残るお金」の話と捉え、利益=売上−費用を自分の言葉で説明できる
- 売上と費用にどんな中身があるかを区別でき、自分の身近な例で売上と費用を仕分けられる
- 利益が1種類ではなく、粗利と営業利益のように段階があることを、ざっくり説明できる
- 自分の日々の仕事が売上と費用のどちらに関わるかを言え、コスト意識を持って動ける
会計とは=お金の流れを見える化する(利益=売上−費用)
まずは「で、その案件いくら残るの?」に詰まるモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。会計の基礎の土台になる、いちばん大事な章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、会計を「入ってくるお金・出ていくお金・残るお金」の話と捉え、利益=売上−費用を自分の言葉で説明できるようになります。
「で、その案件いくら残るの?」に詰まる正体
あなたの数字の力が足りないわけでも、説明が下手なわけでもありません。多くの場合、売上の1,000万円という数字だけを見ていて、そこから費用が引かれて利益が残る、という流れを分けて見ていない——これが「で、結局いくら残るの?」に詰まる正体です。
売上が大きいと、それだけで「大きな儲け」のように感じてしまいます。でも、その案件には外注費もかかれば、関わった人の人件費もかかります。1,000万円がまるごと手元に残るわけではありません。売上をまるごと儲けと受け取っているうちは、上司の「いくら残るの?」という問いに、いつまでも答えられないのです。
ここで覚えてほしい背骨はひとつです。会計とは、会社に入ってくるお金(売上)・出ていくお金(費用)・残るお金(利益)を分けて見る話だ、ということ。売上・費用・利益を混ぜずに3つに分ける——それがこの章の、そしてこの講座全体のテーマです。
会計=お金の流れを記録して、残るお金(利益)を見える化すること
会計とは、会社に入ってくるお金と出ていくお金を記録して、残るお金を見える化することです。むずかしい計算や、専門家だけの世界の話ではありません。家計で「今月は収入がこれだけ、支出がこれだけ、だから残りはこれだけ」と見るのと、同じ発想です。会社だけでなく、お金のやりとりがある町内会や部活、サークルでも、実は同じことが行われています。
そして、会計でいちばん大事な式がこれです。利益=売上−費用。入ってくるお金(売上)から、出ていくお金(費用)を引いて、残るお金(利益)を見る。ただそれだけの引き算です。
大事なのは、ここから分かることです。売上が大きくても、費用が大きければ、利益は小さくなり、ときにはマイナス(赤字)にもなります。だから「売上が増えた=儲かった」とは限りません。導入の「売上1,000万円の案件」も、費用が900万円かかっていれば残る利益は100万円、費用が1,100万円なら売上1,000万円でも赤字です。費用がどれだけ出ていっているかまで見て初めて、本当に儲かったかが分かります。
ここで共通例の「小さなカフェ」に、初めて登場してもらいましょう。あるカフェで、コーヒー1杯が500円。これが1日に10杯売れたとします。すると、その日の売上は 500円 × 10杯 = 5,000円。けれど、このコーヒーを出すために、豆・牛乳・カップ代がかかります。さらに、お店の家賃や、働く人の人件費、電気やガスの光熱費もかかります。これらが全部「費用」です。売上の5,000円から、こうした費用を引いて、初めて利益が残ります。「5,000円売れた=5,000円儲かった」ではないのです。この当たり前のようで見落としがちな一点こそ、会計の基礎の出発点です。
なお、一つだけ区別しておきたいことがあります。計算上の利益と、実際に手元にある現金は、必ずしも同じではありません。利益が出ている(黒字)のにお金が足りなくなることすらあり、これは黒字倒産と呼ばれます。仕組みはこの入門講座では深入りしません。いまは「帳簿の上の利益と、財布の中の現金は別物なんだな」という区別だけ、頭の隅に置いてください。
会計の基本は、3つを混ぜずに分けて見ること
ここまでで、会計の基本の形が見えてきました。売上・費用・利益をひとまとめにせず、入ってくる・出ていく・残るの3つに分けて見る。これが会計の出発点です。
この3分けを押さえておくと、このあとの章がすべて、この式の中の話だと分かります。第2章では「売上と費用には、どんな中身があるか」を見ます。第3章では「残る利益にも、いくつか段階がある」ことを見ます。第4章では「自分の仕事が、売上・費用のどこに効いているか」を当てはめます。どれも、利益=売上−費用という1本の式から枝分かれしているだけです。
会計を「経理の専門家がやる難しい仕事」と身構える必要はありません。入ってくるお金・出ていくお金・残るお金を分けて見る——この姿勢さえ持てれば、あなたはもう会計の入り口に立っています。
この章の確認(演習):共通例「カフェ」で、1日の売上と費用をいくつか仮に置いて、利益=売上−費用を計算してみてください。たとえば「売上5,000円、費用3,000円なら、利益は2,000円」という具合です。次に、自分の身近な活動(フリマ出品でも、ちょっとした副業でも、何でもかまいません)について、売上・費用・利益を3行で書いてみます。売上だけでなく、費用を引いた“残るお金”まで自分の手で出せたら、ゴール達成です。
売上と費用の中身を見る(何が売上で、何が費用か)
利益=売上−費用という式が掴めたら、次は売上側・費用側それぞれの中身を、もう少し分けて見ていきます。
この章のゴール
この章を読み終えると、売上と費用にどんな中身があるかを区別でき、自分の身近な例で売上と費用を仕分けられるようになります。
売上=受け取るお金/費用=その売上を生むために出ていくお金
まず、言葉の中身をはっきりさせましょう。売上とは、商品やサービスを提供して受け取るお金です。お客さんから入ってきたお金の合計、と言ってもいいでしょう。一方、費用とは、その売上を生むために出ていくお金です。商品を仕入れたり作ったりするお金も、お店を回すためのお金も、すべて費用に含まれます。
第1章の「利益=売上−費用」を、こんどは売上側・費用側それぞれの中身に分けて見る、ということです。「何が売上で、何が費用か」を自分の言葉で言えるようになると、お金の流れがぐっと見やすくなります。
カフェで言えば、売上はコーヒーやケーキの代金です。お客さんが払ってくれたお金ですね。費用は、コーヒーの豆・牛乳・カップ代、それからお店の家賃・働く人の人件費・電気やガスの光熱費。売上を生むために出ていくお金が、これらすべてです。
費用には「売れた分だけ増える費用」と「毎月決まってかかる費用」がある
ここで一歩進みます。費用は一色ではありません。ざっくり2種類に分けて見ることができます。
ひとつは、売れた分だけ増える費用です。たくさん作って売れば、それだけ増えていく費用のこと。コーヒーがたくさん売れれば、それだけ豆も牛乳もカップも使うので、この費用は増えます。逆に、その日まったく売れなければ、ほとんどかかりません。こうした費用を変動費とも呼びます。
もうひとつは、売れても売れなくても毎月決まってかかる費用です。お店の家賃は、コーヒーが1杯も売れなかった日でも、満席の日でも、同じ金額がかかります。基本の人件費(毎月決まって払う分)や光熱費も、おおむねこの仲間です。こうした費用を固定費とも呼びます。
カフェで仕分けてみましょう。豆・牛乳・カップ代は、売れた分だけ増える費用(変動費)。家賃・基本の人件費・光熱費は、毎月決まってかかる費用(固定費)です。たくさん売れた日は、豆や牛乳の費用は増えますが、家賃は同じ——この対比が、2種類の違いをよく表しています。
ただし、ここで暗記に走る必要はありません。大事なのは「変動費・固定費」という言葉そのものより、その費用が「売上に応じて動くのか、動かないのか」という性質のほうです。なお、人件費のように、働き方によってどちらにも分かれる費用もあります(毎月決まって払う給与は毎月かかる費用に近く、忙しいときだけ来てもらうアルバイトは売れた分だけ増える費用に近い、というように)。「この費目は必ずこっち」と硬く覚えるより、「これは売れた分だけ増えるかな、それとも毎月かかるかな」と問う習慣のほうが、ずっと役に立ちます。
費用を分けて見ると、「費用を抑える」でも利益が増えると分かる
費用を2種類に分けて見ると、もうひとつ大事なことに気づけます。利益を増やす道は、「売上を増やす」だけではない、ということです。
利益=売上−費用なので、売上を増やしても利益は増えますが、費用を抑えても利益は増えます。引き算の、引かれる側を小さくすれば、残りは大きくなる。当たり前のようですが、売上ばかりに目が向いていると、案外見落としがちな視点です。
費用を「売れた分だけ増える費用」と「毎月決まってかかる費用」に仕分けておくと、「どの費用なら見直せそうか」も見えてきます。この「費用を抑えても利益に効く」という視点は、第4章で「自分の仕事とお金のつながり」を考えるときに、もう一度効いてきます。いまは「利益への道は、売上側と費用側の2方向ある」とだけ押さえておいてください。
この章の確認(演習):共通例「カフェ」の費用を、「売れた分だけ増える/毎月決まってかかる」の2つに仕分けてみてください。豆・牛乳はどちらか、家賃はどちらか、と当てはめていきます。次に、自分の仕事で発生するお金を3つ挙げ(外注費・交通費・ツールの利用料など、何でもかまいません)、それぞれ売上か費用か、費用ならどちらの種類かを書いてみます。自分の業務のお金を、売上側・費用側、さらに費用の中身まで分けられたら、ゴール達成です。
利益にはいくつか段階がある(粗利と営業利益をやさしく)
売上と費用の中身が見えてきたら、次は「残るお金(利益)」のほうを、もう少しくわしく見ます。会議で出てくる「粗利」「営業利益」の正体が、ここで分かります。
この章のゴール
この章を読み終えると、利益が1種類ではなく、粗利と営業利益のように段階があることを、ざっくり説明できるようになります。
利益は1つではなく、「何の費用まで引いたか」で段階がある
第1章で「利益=売上−費用」と押さえました。じつは、ここで引く「費用」をどこまでにするかによって、見える利益が変わります。利益は1種類ではなく、何の費用まで引いたかで、いくつかの段階があるのです。
会議で「粗利」と言ったり「営業利益」と言ったりするのは、別々のものを指しているわけではなく、同じ売上から、引く費用の範囲を変えて見ているだけ。これが分かると、「粗利と営業利益って、何が違うんだっけ」というモヤモヤが、すっと晴れます。
この講座では、いちばん基本になる粗利と営業利益の2段階を中心に見ていきます。実際には利益にはこの先にもまだ段階があります(経常利益、税引前当期純利益、当期純利益と続きます)が、それらは「さらに段階がある」と名前だけ知っておけば十分で、この入門講座では深入りしません。
粗利(売上総利益)=売上−原価/営業利益=そこから商売を回す費用を引いた残り
では、2段階を順に見ましょう。引く順番がとても大事なので、ゆっくりいきます。
まず、売上から「商品そのものにかかった費用(原価)」を引いたものが、粗利です。式で書くと、粗利(売上総利益)= 売上 − 原価。原価とは、その商品を仕入れたり作ったりするのに直接かかったお金のこと。粗利は、ざっくり言えば「その商品で、いくら残ったか」を表します。なお、粗利は正式には「売上総利益(うりあげそうりえき)」と呼ばれ、現場では「粗利(あらり)」と呼ばれることが多い、同じものの呼び名です。
次に、その粗利から、さらに「商売を回すためにかかる費用」を引いたものが、営業利益です。式で書くと、営業利益 = 粗利(売上総利益)− 販売費及び一般管理費(販管費)。販管費とは、商品そのものには直接かからないけれど、商売を回すために必要なお金のこと。お店の家賃、働く人の人件費、光熱費、広告費などがこれにあたります。営業利益は、ざっくり「本業で、いくら残ったか」を表します。
ここで絶対に取り違えないでほしい一点があります。粗利が引くのは「原価」(商品そのものの費用)、営業利益が引くのは「販管費」(商売を回す費用)です。引く順番は、売上 →(原価を引く)→ 粗利 →(販管費を引く)→ 営業利益。この順番を逆にしないでください。
カフェで見てみましょう。コーヒー1杯が500円で、その1杯に使う豆やカップなどの原価が150円だとします。すると、コーヒー1杯あたりの粗利は、500円 − 150円 = 350円。これが「コーヒー1杯で残ったお金(粗利)」です。けれど、お店には家賃も人件費も光熱費もかかります。これらの販管費を、お店全体の粗利からさらに引くと、お店全体の営業利益は、粗利よりもっと小さくなります。1杯あたりの粗利が350円あっても、お店を回す費用を引いた後に手元に残るお金は、それよりずっと少ない、というわけです。
段階で見ると「商品は儲かっているのに最後は残らない」が見える
なぜ、わざわざ段階に分けて見るのでしょうか。それは、段階で見ると、「商品自体は儲かっているのに、お店を回す費用が重くて、最後はほとんど残らない」といったことに気づけるからです。
カフェの例で言えば、コーヒー1杯の粗利が350円あって、「1杯あたりは結構儲かっているな」と見えても、家賃や人件費といった販管費が重ければ、お店全体の営業利益はぐっと小さくなります。粗利だけを見て「儲かっている」と早合点すると、その先の費用を見落としてしまうのです。逆に言えば、粗利と営業利益を見比べることで、「商売を回す費用がかかりすぎていないか」をチェックできる、ということでもあります。
大事なのは、用語を暗記することではなく、「いま見ている利益は、何の費用まで引いた後の残りなのか」を意識することです。粗利なのか、営業利益なのか。それが分かるだけで、会議で「粗利は出ているけど、営業利益で見ると厳しいですね」という会話に、自信を持って加われるようになります。
なお、粗利を売上で割った「粗利率」の計算や、財務諸表の上での正式な利益の並び方は、この講座では扱いません。それぞれ別の講座でくわしく学べます(最後にご案内します)。この章は「利益には段階がある」という考え方を掴むところまでで、十分です。
この章の確認(演習):共通例「カフェ」で、売上・原価・お店を回す費用を仮に置いて、粗利(売上−原価)と営業利益(粗利からさらに商売を回す費用を引いた残り)の2段階を、それぞれ出してみてください。引く順番を間違えないのがコツです。次に、自分が関わる商品やサービスについて、「原価にあたるもの」を1つ挙げてみます。利益を段階で見る感覚と、自分の仕事における原価のイメージが手で確かめられたら、ゴール達成です。
自分の仕事とお金のつながり(どの数字に効くか)
ここまでで、売上・費用・利益の関係と、利益の段階が見えてきました。最後は、それを「自分ごと」にします。会計を、机の上の知識から、明日の仕事の道具に変える章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、自分の日々の仕事が売上と費用のどちらに関わるかを言え、コスト意識を持って動けるようになります。
現場の一人ひとりの仕事は、売上か費用のどこかに必ずつながっている
会計は、経営者や経理だけのものではありません。現場の一人ひとりの仕事も、利益=売上−費用という式の、どこかに必ずつながっています。
たとえば、お客さんへの提案や受注は、売上を増やす側の仕事です。一方、外注への発注、残業、ツールの契約、備品の購入などは、費用を増やす側の動きです。あなたの日々の仕事も、必ずこのどちらか(あるいは両方)に効いています。
ここで先回りして潰しておきたい誤解があります。「自分は営業じゃないし、売上に関係ない部署だから、会計なんて関係ない」という思い込みです。でも、売上に直接関わっていなくても、あなたは費用側で利益に効いています。どんな仕事も、入ってくるお金か出ていくお金の、どこかにつながっている。「自分には関係ない」と思っていた人ほど、ここに気づくと、日々の仕事の見え方が変わります。
カフェのスタッフに置き換えてみましょう。来店を増やす声かけや、常連さんづくりは、売上に効く動きです。一方、閉店後の電気の消し忘れや、食材を余らせて捨ててしまうことは、費用を増やして利益を減らす動きです。同じスタッフの行動でも、売上側に効くものと、費用側に効くものがある、というわけです。
「売上を増やす」だけでなく「ムダな費用を減らす」でも利益に貢献できる=コスト意識
第2章で見たとおり、利益=売上−費用なので、利益への貢献は、売上を増やすことだけではありません。ムダな費用を減らすことでも、利益に貢献できます。
むずかしい計算は要りません。自分の行動について、「これは、入ってくるお金を増やす動きか? それとも、出ていくお金を増やす(あるいは減らせる)動きか?」と問うだけでいいのです。この問いを持って働くことを、コスト意識と呼びます。コスト意識とは、自分の仕事に、どんなお金が発生しているかを、ふだんから意識することです。
ひとつだけ気をつけたいことがあります。コスト意識は、ただケチることではありません。費用を減らせば利益が増えるからといって、必要な費用まで削ってしまうと、本末転倒になりかねません。費用は、売上を生むための投資でもあるからです。大事なのは、闇雲に削ることではなく、「この費用は、それに見合う売上を生んでいるか」を見極めること。減らすべきムダと、残すべき投資を、分けて考える——それがコスト意識の本当の中身です。
自分の仕事を売上側・費用側に仕分けて、貢献できるところを1つ決める
では、仕上げです。自分の主な仕事を、売上側・費用側に当てはめて、明日から変えられることを1つ決めましょう。
カフェのスタッフで言えば、提案や声かけ(売上側)はもっと工夫できないか、電気の消し忘れや食材のムダ(費用側)はもっと減らせないか、と考えるわけです。あなたの職場でも同じです。提案や受注は売上側、外注費・残業・備品は費用側、と当てはめて、「自分はどこに効けるか」を一つ見つける。これが、会計を自分ごとにする、いちばん具体的な一歩です。
冒頭の「売上1,000万円の案件、結局いくら残るの?」という問いを思い出してください。第1〜3章で組み上げた、利益=売上−費用という式の中に、あなた自身の仕事を置けるようになれば、もう答えに詰まることはありません。「売上はこれだけ、費用はこれだけ、だから残る利益はこれくらいで、自分はここで貢献できます」——そう言える人に、あなたはもうなっています。
この章の確認(演習):自分の主な業務を3つ書き出し、それぞれ「売上を増やす」「費用を増やす(または減らせる)」のどちらに効くかを仕分けてみてください。次に、「明日からコストを意識して変えられること」または「売上に効く動き」を、1つだけ書きます。自分の仕事を利益=売上−費用の式に当てはめ、貢献できるところを1つ決められたら、ゴール達成です。
まとめ:利益=売上−費用。会計は“残るお金”の話
おつかれさまでした。「小さなカフェのお金の流れ」という、たった1軒のお店を、会計とは何か→売上と費用の中身→利益の段階→自分の仕事とのつながり、と1段ずつ組み上げてきました。歩いてきた道を振り返ります。
- 会計とは=お金の流れを見える化すること……会計は専門家だけのものではなく、入ってくるお金(売上)・出ていくお金(費用)・残るお金(利益)を分けて見る話。いちばん大事な式は利益=売上−費用。売上が大きくても費用が大きければ利益は残らない(第1章)。
- 売上と費用の中身を見る……売上=受け取るお金、費用=その売上を生むために出ていくお金。費用には「売れた分だけ増える費用」と「毎月決まってかかる費用」があり、費用を抑えても利益は増える(第2章)。
- 利益には段階がある……粗利(売上総利益)=売上−原価で「その商品でいくら残ったか」、営業利益=粗利−販管費で「本業でいくら残ったか」。段階で見ると、商品は儲かっているのに最後は残らない、が見える(第3章)。
- 自分の仕事とお金のつながり……現場の一人ひとりの仕事も、売上か費用のどこかに必ずつながっている。「ムダな費用を減らす」でも利益に貢献できる(ただケチるのとは違う)=コスト意識(第4章)。
この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「売上をまるごと儲けと思わず、費用を引いた“残るお金”で見られているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——利益=売上−費用。会計は“残るお金”の話。これが身につくと、案件を売上の大きさだけでなく利益で見られるようになり、自分の仕事を、コスト意識を持って動けるようになります。
明日の最初の一歩:明日の自分の仕事を1つ取り上げ、「これは売上を増やす仕事か、それとも費用を増やす(減らせる)仕事か」を、一言で書いてみてください。難しい計算は要りません。入ってくるお金・出ていくお金の、どちらに効くかを一言で言えれば、それで十分です。これが、会計を自分ごとにする第一歩になります。
もっと深めたくなったら、その先の道も用意されています。財務諸表(PL・BS・CSといった会社の成績表)の読み方は kouza-021 で、粗利率の計算などをくわしく知りたいなら kouza-022 で、売上がいくらになれば黒字になるか(損益分岐点)は kouza-023 で、決算書の読み方は kouza-102 で深められます。本講座はあくまで「会計の基礎=売上・費用・利益の関係をやさしく掴むこと」に絞っています。まずは無料会員登録をして、この基礎の上に、続けて関連講座で会計の理解を一歩深めていきましょう。
よくある質問
売上と利益は何が違うのですか
売上は受け取ったお金の合計で、利益はそこから費用を引いた残りです。この講座では「利益=売上−費用」という式で、売上をまるごと儲けと受け取らないことが会計の出発点だと説明しています。
粗利と営業利益の違いを教えてください
粗利は売上から原価(商品そのものにかかった費用)を引いた残りで、営業利益はそこからさらに家賃・人件費・光熱費などの販管費を引いた残りです。「何の費用まで引いたか」の違いで、どちらも同じ売上から段階的に費用を引いていったものです。
会計の知識がゼロでも理解できますか
できます。この講座は「コーヒー1杯のカフェ」という1つの身近な例だけで全章を通しており、計算式も利益=売上−費用という足し引きのみです。経理の経験や資格は必要ありません。
自分は営業や経理でないのに会計を知る必要はありますか
あります。現場の一人ひとりの仕事は、売上を増やす側か費用に効く側のどちらかに必ずつながっています。ムダな費用を減らすだけでも利益に貢献できるため、職種を問わずコスト意識を持つ根拠として会計の基礎が役立ちます。
変動費と固定費は必ず分けて覚えなければいけませんか
言葉の暗記は必須ではありません。大切なのは「その費用が売上に応じて変わるかどうか」という性質を問う習慣であり、この講座でも用語より考え方の習得を優先しています。