ソリューション営業入門|顧客の課題解決を売る営業とは | マナビズ

ソリューション営業入門|顧客の課題解決を売る営業とは

ソリューション営業入門|顧客の課題解決を売る営業とは

ちゃんと提案したのに、最後はいつも価格で負ける。お客さんが「これが欲しい」と言ったものをそのまま見積に起こして出しているのに、なぜか刺さらない。気づけば「他社さんと何が違うの」「今は間に合っています」で止まり、値引きを求められて初めて土俵に乗る——もしそんな手応えのなさが続いているなら、原因は提案の丁寧さやトークの巧拙ではないかもしれません。取り違えているのは、もっと手前の「自分は何を売っているのか」という一点です。

ソリューション営業とは、お客様との対話を通してお客様が抱えている問題やニーズをつかみ取り、その問題の解決策(solution)を提供する営業スタイルです(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「ソリューション営業とは?」)。言い換えれば、顧客が「欲しい」と言った商品そのものを売るのではなく、顧客の困りごと(課題)が解けた状態を売る営業です。売っているものが「商品」から「課題の解決」に変わると、お客様にとっての論点が「価格やスペックの比較」から「その困りごとを解けるのはどこか」に移り、価格だけの勝負から抜け出しやすくなります。

本講座は、この「課題解決を売る」という営業観そのものと、1件の案件を課題起点で組み立てる構えに絞ります。営業プロセスの流れ全体(準備からアプローチ、ヒアリング、提案、クロージング、フォローまで)の手順は営業の基礎が、課題を引き出す質問の作り込みはヒアリング力入門が、提案書を1枚に組む型は提案書の作り方入門が、それぞれの正本です。本講座はそれらの手順そのものには踏み込みません。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。ソリューション営業と御用聞き営業(物売り)・提案営業の違いを自分の言葉で説明できること、顧客の要望(ウォンツ)の奥にある課題(ニーズ)を仮説で立てて対話で確かめ、特定できること、そして特定した課題を起点に「課題→解決策→効果」の発想で提案を組み立てられることです。覚えて帰る型は「要望を預かる → 課題を確かめる → 課題解決を提案する」。本講座では、お客様が「(例)○○という既製の商品が欲しい」と言ってきた1件の案件を、要望どおり見積を出して失注しかけたところから、奥の課題を確かめて「課題解決の提案」に組み直す——という場面を、全章で追いかけます。

この講座のポイント

  • ソリューション営業と御用聞き営業(物売り)・提案営業の違いを、「何を売っているか」で自分の言葉で説明できる。
  • 顧客の要望(ウォンツ)の奥にある課題(ニーズ)を仮説で立て、対話で確かめて特定できる。
  • 特定した課題を起点に「課題→解決策→解決後の状態(効果)」の発想で、提案を組み立てられる。
  • 1件の案件を「課題を確かめる→課題解決として提案する」一連の構えで回し、価格だけの比較から抜け出す動き方を説明できる。

ソリューション営業とは何か——御用聞き・物売りとの違い

この章のゴール

ソリューション営業と御用聞き営業(物売り)・提案営業の違いを、「何を売っているか」で自分の言葉で説明できる。

ソリューション営業とは「商品」ではなく「課題の解決」を売ること

まず定義から押さえます。ソリューション営業とは、お客様との対話を通してお客様が抱えている問題やニーズをつかみ取り、その問題の解決策を提供する営業スタイルです。営業担当本位ではなく、お客様を主体とした提案型営業であり、営業担当はお客様の課題を一緒に解決するパートナー的な存在になります(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「ソリューション営業とは?」)。

ここで効いてくる問いが「自分は何を売っているのか」です。同じ商品を扱っていても、「この商品を買ってください」と差し出すのと、「あなたのこの困りごとを、この商品で片付けます」と差し出すのとでは、売っているものが違います。前者が売っているのは商品そのもの、後者が売っているのは課題の解決です。ソリューション営業は後者に立ちます。だからこそ提案の場面でも、自分が「売りたい商品」よりも「課題解決に最も効果的な商品」を、なぜこの商品なのかという明確な理由を添えて提案します(出典:同上)。

御用聞き・物売り・提案営業との違いは「何を売っているか」

この営業観の輪郭は、近い営業スタイルと並べると見えやすくなります。

ひとつは御用聞き営業です。お客様に「何が要りますか」と聞き、言われたものをそのまま用意して納める動き方を指します。要望に応えてはいますが、要望の奥にある困りごとまでは確かめていません。お客様が口にしたこと以上には踏み込まない、いわば受け身の営業です。

もうひとつは物売り、いわゆる商品提案営業(プロダクト営業)です。これはお客様に自社の商品やサービスの魅力をアピールし、競合する商品のなかから選んでもらえるように提案する営業方法で、売りたい商品やサービスがあらかじめ決まっているのが特徴です(出典:同上)。決まっている商品の機能や仕様を、いかにうまく説明するかが勝負になります。冒頭の「商品説明はうまくなったのに刺さらない」は、まさにこの物売りの土俵に立っている状態です。

これらに対してソリューション営業は、売る対象が「商品」ではなく「課題の解決」です。御用聞きが受け身で要望を受け取り、物売りが決まった商品の機能を説明するのに対し、ソリューション営業はお客様の困りごとを一緒に定義し、その解決を提案します。同じ出典は、お客様が既に持っている課題をヒアリングして解決策を提案する「問題解決型」と、お客様自身が課題に気づいていない潜在的な課題の解決を目指す「インサイト型」という2つのスタイルを挙げ、後者では「お客様の課題を導き出すところから始まる」と説明しています(出典:同上)。要望に応えるだけの受け身から、潜在的な課題にまで踏み込む能動へ——この踏み込みの深さが、ソリューション営業を御用聞き・物売りと分ける線です。

共通例で当てはめてみましょう。お客様が「(例)○○という商品が欲しい」と言ってきた。あなたはその要望どおりに見積を起こし、商品の機能と価格を並べて提出した。ところが「他社さんのほうが安い」で止まってしまった——これは典型的な物売りの場面です。ここで一歩引いて、「お客様はその商品で、本当は何を解決したかったのか」へ視点を移せるかどうか。そこがソリューション営業の入口になります。

「丁寧に要望を聞く=ソリューション営業」というつまずき

この章で起きやすいつまずきが2つあります。

1つ目は「丁寧に要望を聞けばソリューション営業だ」という思い込みです。要望を丁寧に聞き取ること自体は大切ですが、聞いた要望をそのまま見積にするだけなら、それは御用聞きのままです。ソリューション営業の核心は、要望の奥にある困りごとまで確かめ、その解決を売ることにあります。聞く対象が「要望」で止まっているか、「要望の奥の課題」まで届いているかが分かれ目です。

2つ目は「ソリューション営業とは、高機能・高価格の商品を勧めることだ」という誤解です。出典が示すのは逆で、提案すべきは「売りたい商品」ではなく「課題解決に最も効果的な商品」です(出典:同上)。高い商品を上手に売ることではなく、お客様の課題をいちばん的確に解く手段を選ぶことが、ソリューション営業の振る舞いです。

なお、SPINなどの質問の型や、インサイト営業・チャレンジャーセールスといった呼び名を聞いたことがあるかもしれません。これらの個別のフレーム名や提唱者には本講座では立ち入りません(本講座では確かな出典で固められる「商品ではなく課題解決を売る」「受け身で応える営業と能動的に潜在課題へ踏み込む営業の違い」という機能の対比までを扱います)。営業プロセスの流れ全体を体系的に学び直したい場合は、営業の基礎へ進んでください。

この章の確認(演習)

自分の直近の案件を1つ思い出してください。その商談で会話は「誰の言葉」で進んでいましたか。自社の商品の機能・スペック・価格の話が中心だったなら、あなたは商品を売っていた(物売り・御用聞き)可能性が高いです。逆に、お客様の困りごと・現場で起きていることの話が中心だったなら、課題の解決を売れていたと言えます。「自分は商品を売っていたか、課題の解決を売っていたか」を、会話が誰の言葉で進んだかを根拠に1文で判定してみましょう。

要望の奥にある「課題」を見つける——ニーズとウォンツ

この章のゴール

顧客の要望(ウォンツ)の奥にある課題(ニーズ)を仮説で立て、対話で確かめて特定できる。

「○○が欲しい」は要望(ウォンツ)であって課題そのものではない

お客様が口にする「(例)○○が欲しい」は、要望(ウォンツ)です。要望とは、困りごとを解決するための「具体的な手段の指定」だと考えてください。お客様はたいてい、奥にある困りごとそのものよりも先に、手段のほうを口にします。

J-Net21の解説は、この構造を分かりやすく示しています。洋服や靴を買うのは一見すると楽しさのためですが、その奥には「今もっている服は流行おくれで着て歩くのが恥ずかしい」「今の靴は履き心地が悪い、底が減って見栄えが悪い」といった不満・不快を解消したいという欲求があります。本当のニーズとは、不便・不満・不快・不安など、お客さまが何か困ったことや悩んでいることを解消することだ、というわけです(出典:J-Net21「ニーズのつかみ方『困っていることは何ですか?』」)。「○○が欲しい」という要望の下には、必ず「本当はこの困りごとをなくしたい」という課題が隠れています。

ここを取り違えると、何が起きるか。同じ出典は、お客さまが困っているのに「この商品は今年の新商品で売れています」といったニーズに合わないお声掛けでいきなりアプローチしてしまう例を挙げています(出典:同上)。要望をそのまま受け取って商品を差し出すこの動きは、まさに前章の物売りです。困りごとを確かめないまま見積を出すから、価格とスペックの比較表に並べられて終わるのです。

要望をいったん預かり、奥の課題(ニーズ)を仮説で立てて確かめる

では、どう構えるか。覚えて帰る型の最初の2ステップ、「要望を預かる → 課題を確かめる」です。

まず、要望をそのまま見積に直行させず、いったん預かります。「○○が欲しい」と言われたら、すぐ商品の話に入らず、「それで解決したい本当の困りごとは何だろう」と一段下げて考える。J-Net21は、困りごとを助けるように「何かお困りですか」とお声掛けすると、お客さまの心が開いておおよその欲求がつかめると述べ、同時に「まだこの段階では、具体的にどのような商品を欲しいのかお客さま自身にも分かっていない」とも指摘しています(出典:同上)。つまり、要望は入口にすぎず、本当の課題は対話で一緒に具体化していくものなのです。

ここで頼りになるのが「仮説」です。すべてのお客様が自分の潜在的なニーズを明確に捉えているわけではありません。だから営業担当は、お客様が置かれている状況を把握し、仮説を立ててニーズを知る能力が必要だ、と出典は述べています。入念なリサーチをもとに「お客様の立場なら、どんな商品・サービスが必要か」をイメージするスキルです(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「ソリューション営業とは?」)。

進め方は3つの動きに整理できます。1つ目は、要望をそのまま受け取らず「それで解決したいことは何か」と一段下げること。2つ目は、商談の前に課題の仮説を立てておくこと。お客様の業種や役割から、ありそうな困りごとを事前に想定しておきます。3つ目は、対話でその仮説を確かめ、ズレていたら潔く捨てることです。仮説はあくまで確かめるための叩き台であって、当てにいくものではありません。

共通例に戻ります。お客様は「(例)○○が欲しい」と言ってきました。ここであなたは、すぐ見積を出す代わりに「(例)現場で何かが回りきっていないのではないか」という仮説を立てて確かめにいきます。すると、要望の奥に「(例)△△の作業が手作業のままで回らず、○○が常態化している」という困りごとが見えてきた——この、要望の下にある課題まで届いて初めて、課題解決の提案が組めるようになります。

顕在ニーズと潜在ニーズ——「困りごとはありますか」で止まらない

課題には、お客様が自覚しているものと、していないものがあります。お客様が既に課題を持っていて見えている状態が顕在ニーズで、これは要望に応えやすい。一方、お客様自身が課題に気づいていないのが潜在ニーズです。出典は、「人件費が上がって悩んでいる」という相談の根本原因が、調査すると勤怠時間を適切に管理できておらず残業代が増えていたことだった、という例を挙げています(出典:同上)。お客様が言葉にした悩み(人件費)と、本当の課題(勤怠管理ができていない)はズレていることがある、ということです。

だからこそ、漠然と「何か困りごとはありますか」と聞くだけでは足りません。それでは「特にないですね」で止まってしまいがちです。ここで立てておいた仮説が効きます。「(例)御社の規模だと△△の作業がご負担になっていませんか」と、具体的な仮説をぶつけることで、お客様も「言われてみれば」と本当の困りごとを言語化できるようになります。

なお、この章で踏み込むのは「課題を握りに行く構え」までです。どんな質問を、どの順番で、どんな言い回しで投げるかという質問の作り込みや、場面別のヒアリング設計は、ヒアリング力入門が正本です。本講座は「要望を預かり、仮説を立てて課題を確かめる」という構えを身につけるところに絞ります。

この章でやりがちな間違い

つまずきは3つあります。1つ目は、要望をそのまま課題だと思い込むこと。「○○が欲しい」は手段の指定であって、課題そのものではありません。2つ目は、仮説を立てずに「困りごとはありますか」と漠然と聞いて「特にない」で止まること。3つ目は、自分の売りたい商品に合わせて課題をこじつけることです。これをやると、本当の困りごととズレた提案になり、結局は刺さりません。仮説はお客様の状況から立てるもので、自社の都合から逆算するものではない、と覚えておいてください。

この章の確認(演習)

自分の担当顧客を1社思い浮かべてください。その顧客から「言われている要望(○○が欲しい・○○をしたい)」と、「その奥にありそうな課題(仮説)」を、紙の左右2列に書き出します。要望は事実をそのまま、課題のほうは「本当はこの困りごとを消したいのではないか」という仮説で構いません。そのうえで、その仮説をどう確かめるか(次の商談でどんな話題から入るか)を、1つだけ決めてみましょう。

課題解決を提案に組み立てる——課題→解決策→効果

この章のゴール

特定した課題を起点に「課題→解決策→解決後の状態(効果)」の発想で、提案を組み立てられる。

提案は「課題 → 解決策 → 解決後の状態(効果)」の順で語る

課題を握れたら、いよいよ提案です。ソリューション営業の提案は、商品の機能紹介から始めません。「合意した課題 → その解決策 → 解決すると現場がどう変わるか(効果)」の順で語ります。主語は終始「お客様の課題」で、商品は課題を解く手段として後から出てきます。

この順序の根拠は、価値の捉え方にあります。J-Net21は、ビジネスモデルキャンバスの「価値提案(何を)」を「顧客の問題解決やニーズをどのように満たしているのか」と定義しています(出典:J-Net21「ビジネスモデルキャンバスとは」)。つまり、お客様に届ける価値の正体は商品そのものではなく、お客様の問題が解決されることなのです。提案を「商品の説明」ではなく「課題がこう解ける」という形で組むのは、この価値の定義に素直に従うことにほかなりません。

主語は終始「顧客の課題」——商品は課題を解く手段として後から出す

ここで多くの人がつまずくのが、「効果」を機能の言葉で語ってしまうことです。同じ出典は、価値提案を具体的な「製品」や「サービス」にしてしまわないように、と注意しています。たとえばパン屋の価値提案は「食パン」や「あんぱん」ではなく、「焼きたて」や「ふわふわ」とした方がよい。いつでも焼きたてが買える、ふわふわの触感ならどこにも負けない——それが顧客にとっての価値だ、というのです(出典:同上)。

これは提案の効果の語り方にそのまま使えます。「この機械は処理速度が速いです」は商品(食パン)の説明にすぎません。「この困りごとがこう片付くので、現場の○○が変わります」と、お客様の現場の変化(焼きたて・ふわふわ)で語って初めて、効果になります。だからこそ、提案する商品も「自分が売りたい商品」ではなく「課題解決に最も効果的な商品」を選び、なぜこの商品なのかという理由を添えます。理由を添えることでお客様の納得感が得られ、成約につながりやすくなる、と出典は述べています(出典:リクルートマネジメントソリューションズ「ソリューション営業とは?」)。

提案を組む3つの動きに整理しておきましょう。1つ目は、提案を「課題の確認」から始めること。前章で握り、お客様と合意した課題を、最初に置きます。2つ目は、解決策を課題に1対1で対応させること。機能を羅列するのではなく、「この困りごとが、これでこう解ける」と一対一でひもづけます。3つ目は、効果を「解決後にどうなるか」をお客様の言葉・現場の変化で描くことです。「高機能です」ではなく「○○がこう変わります」と語れているかを点検します。

共通例で組み立ててみます。握った課題は「(例)△△の作業が手作業のままで回らず、○○が常態化している」でした。これに対して、「この課題(△△が回らない)を、こう解きます(解決策)。すると、(例)現場の△△がこう片付き、○○が起きにくくなります(効果)」という形で提案を組みます。最初に出しかけた“商品スペックと価格を並べた見積”と、この“課題から始まる提案”を並べてみると、お客様が聞いている論点がまるで違うことが分かるはずです。前者の論点は「他社と比べて安いか・高機能か」、後者の論点は「うちの困りごとを本当に解けるか」です。

課題を握ったのに商品スペック紹介に戻るつまずき

この章のつまずきは2つです。1つは、せっかく課題を握ったのに、提案になると商品スペックの紹介に逆戻りしてしまうこと。資料を作り始めると、つい機能の一覧から書いてしまいます。提案は課題の確認から始める、と決めておくのが歯止めになります。もう1つは、効果を「高機能です」「最新です」と機能で語ってしまい、お客様の現場の変化で語れていないことです。「それでお客様の何が変わるのか」を一言で言えるかを、提出前に必ず確かめてください。

なお、この「課題→解決策→効果」の発想を、実際の提案書1枚のレイアウト(どの順でどう配置し、どう1枚にまとめるか)に落とす作成手順は、本講座では扱いません。提案書を1枚に組む型は提案書の作り方入門が正本です。本講座は「課題起点で提案を構成する発想」までを身につけるところに絞ります。

この章の確認(演習)

前章の演習で書いた「課題の仮説」を1つ選んでください。それについて、「課題 → 解決策 → 解決後の状態(効果)」の3行で、提案の骨子を書きます。ルールは1つだけ、商品名から書き始めないこと。1行目は合意したい課題、2行目はその課題をどう解くか、3行目は解けるとお客様の現場がどう変わるか。3行目が「高機能です」のような機能の言葉になっていないか、お客様の変化で書けているかを点検しましょう。

案件を課題解決で回す——一連の流れと、価格勝負から抜ける

この章のゴール

1件の案件を「課題を確かめる→課題解決として提案する」一連の構えで回し、価格だけの比較から抜け出す動き方を説明できる。

ソリューション営業は単発の話法ではなく案件全体を貫く構え

ここまでの3つの動き——要望を預かる、課題を確かめる、課題解決を提案する——は、商談1回かぎりのテクニックではありません。1件の案件を最初から最後まで貫く「構え」です。要望を受けたその瞬間から、課題を確かめる対話を経て、課題解決として提案を出すまで、ずっと主語を「お客様の課題」に置き続ける。これがソリューション営業の回し方です。

共通例を、案件の最初から最後まで通しで振り返ってみましょう。最初、お客様は「(例)○○が欲しい」と言い、あなたは要望どおりの見積を出しかけました(物売り)。しかしそこで止めて要望を預かり、「(例)△△が回っていないのでは」という仮説を立てて確かめ、「(例)△△の作業が回らず○○が常態化している」という課題を握りました。そして「課題→解決策→効果」で提案を組み直しました。どこで「物売り」から「課題解決」に切り替わったかと言えば、要望どおりの見積を出すのを一度止めて、奥の課題を確かめにいった、あの一歩です。この一歩を案件全体に通せるかどうかが、ソリューション営業を回せているかの分かれ目になります。

論点を「価格・スペック比較」から「その課題を解けるのはどこか」へ移す

この構えで案件を回すと、お客様にとっての論点が動きます。物売りの提案では、論点は「価格が安いか、スペックが高いか」です。比較表に並べられ、いちばん安い一社が勝ちます。一方、課題から組んだ提案では、論点が「うちのこの困りごとを、本当に解けるのはどこか」に移ります。論点が課題解決の確度になれば、価格だけで横並びにされる土俵から抜けやすくなります。

この「価格勝負から抜ける鍵は差別化・価格以外の価値だ」という方向は、中小企業白書でも一貫して示されています。2020年版白書は、短納期といった強みを際立たせたり、本来の製品やサービスに付随的なサービスを加えたりして、差別化や新たな付加価値の創出に成功している企業がある、と述べています(出典:中小企業庁 2020年版 中小企業白書)。同じ白書が挙げる事例では、配送業で厳しい価格競争に巻き込まれていた企業が、「単に物を運ぶだけでは先細りする」と考え、配送先の建設現場のニッチなニーズに応えるサービス(端材の加工・修正など)を提供し、現場の工数や産業廃棄物の削減につながって顧客から高い評価を得ました。その結果、「困ったときの大日頼み」と頼られる存在になった、と紹介されています(出典:同上)。「物を運ぶ(商品)」から「現場の困りごとを片付ける(課題解決)」へ売るものを変えたことで、価格競争から抜けた——本講座の背骨そのものの実例です。

さらに2024年版白書は、競合他社との差別化ができている企業ほど価格転嫁も進んでいる傾向にあり、価格の引上げに見合った付加価値向上につながる差別化が重要だと述べています(出典:中小企業庁 2024年版 中小企業白書)。逆に2023年版白書は、価格転嫁が困難な理由の上位に「ブランド化や差別化による競争力が弱い」「価格競争力が弱い」が挙がること、そして取引依存度の高い企業ほど価格転嫁が反映されにくく、販売先数を増やすことが価格転嫁に重要だと指摘しています(出典:中小企業庁 2023年版 中小企業白書)。価格以外で評価されていない状態は、価格交渉でも不利になりやすいのです。課題解決で「あの会社でなければ」と評価される関係を増やすことは、特定の取引先に値段で縛られる状態から抜ける道でもあります。

価格を下げて取りにいき「物売り」に戻るつまずき

この章のつまずきは2つです。1つは、課題解決を1回の商談の話法だと誤解して、案件全体に通せないこと。最初の商談で課題を握っても、提案・見直しの局面でまた商品スペックと価格の話に戻ってしまっては、せっかくの構えが続きません。要望を預かる→課題を確かめる→課題解決を提案する、を案件を貫く一本の線として持ち続けてください。

もう1つは、苦しくなって価格を下げて取りにいき、結局「物売り」に戻ってしまうことです。値引きで取った瞬間、論点は再び価格に戻り、次もまた価格で叩かれます。価格で勝負する土俵から降りるために課題解決を売っているのに、自分から価格の土俵に戻っては本末転倒です。なお、営業プロセスの各段階(準備からアプローチ、クロージング、フォローまで)の手順そのものは営業の基礎が正本です。本章はその流れを「課題解決の発想」でどう回すかという視点に絞っています。

この章の確認(演習)

いま動いている自分の案件を1件選んでください。1枚の紙に、「言われている要望」「立てた課題の仮説」「課題解決としての提案骨子(課題→解決策→効果)」の3つを書き出します。そのうえで、次の商談で確かめにいく課題を1つだけ決めましょう。決めた課題について、確かめる切り口(仮説)も一緒にメモしておくと、商談がそのまま課題を握りにいく場になります。

まとめ

ソリューション営業とは、お客様が「欲しい」と言った商品を売るのではなく、お客様の困りごと(課題)が解けた状態を売る営業です。売っているものが「商品」から「課題の解決」に変われば、お客様の論点は「価格・スペックの比較」から「その課題を解けるのはどこか」に移り、価格だけの勝負から抜け出しやすくなります。

覚えて帰る型は「要望を預かる → 課題を確かめる → 課題解決を提案する」。お客様の「○○が欲しい」という要望をいったん預かり、奥にある課題を仮説で立てて対話で確かめ、「課題→解決策→効果」で提案を組み、その構えを案件全体に通す——この一連が、ソリューション営業の回し方です。売るのは商品ではなく、困りごとが消えた“あと”の景色だ、と覚えておいてください。

明日の一歩として、次にお客様から「○○が欲しい」と言われたら、すぐ見積を出さず、「それで解決したい本当の困りごとは何ですか」と一段下げて確かめてから提案を組んでみてください。それが、物売りから課題解決へ切り替わる最初の一歩です。さらに、営業プロセスの全体像をたどり直したい場合は営業の基礎へ、課題を引き出す質問の作り込みはヒアリング力入門へ、提案書を1枚に組む型は提案書の作り方入門へ進むのが次のステップです。

本講座をきっかけに、ソリューション営業の実務に役立つ事例や、案件を課題起点で組み立てるヒントをメルマガでお届けしています。「価格勝負から抜けたい」「課題解決を売る営業に変えたい」と感じた方は、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

ソリューション営業と御用聞き営業は何が違うのですか

売っているものが違います。御用聞きは言われた商品をそのまま用意する受け身の営業、ソリューション営業は要望の奥の課題を確かめ、その解決を売る営業です。

ニーズとウォンツの違いを一言で言うと何ですか

ウォンツは「○○が欲しい」という具体的な手段の指定、ニーズはその奥にある「本当に消したい困りごと(課題)」です。要望を預かり、奥の課題を確かめます。

課題解決を提案するとき、何から話せばよいですか

商品の機能からではなく、合意した課題から始めます。「課題→解決策→解決後の現場の変化(効果)」の順で、主語を終始お客様の課題に置いて語ります。

ソリューション営業にすると、本当に値引き競争から抜けられますか

論点が価格から「課題を解ける確度」に移るため抜けやすくなります。中小企業白書も、差別化や価格以外の価値が価格競争からの脱却に重要だと示しています。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

上部へスクロール