「うちの経営戦略って、どうなってるんですか?」——部下にそう聞かれて、口から出てきたのは「お客様第一」「シェアNo.1を目指す」といった方針やスローガンだけだった。経営会議の資料を読む立場になり、「経営戦略 入門」と検索してみたものの、ビジョン・戦略・戦術・3C・SWOTが頭の中でバラバラに散らばっていて、どれがどこに位置づくのか地図がない。そんな経験はありませんか。
「経営戦略って、結局なにを決めることなの?」「全社の戦略と事業の戦略って何が違う?」「3CやSWOTは知ってるけど、それ戦略のどこで使うの?」——この講座は、その3つの問いをほどくためのものです。
先に、いちばん大事なことを。経営戦略とは、立派な方針やスローガンのことではありません。限られたヒト・モノ・カネ・時間を、どこに・どう配るかを決める全社の意思決定です。そして、やることと同じくらい「やらないこと」を決める選択でもあります。この一文を背骨に、最後まで進みます。
読み終えたあなたは、次の4つができるようになります。
- 経営戦略とは「限られた資源を、どこに・どう配るかの全社の意思決定」だと、方針・スローガンとの違いを添えて説明できる
- 全社・事業・機能の3階層で、ある会社の戦略を仕分けて説明できる
- ビジョン→環境分析→戦略策定→実行の4ステップを並べ替えて説明でき、知っているフレーム(3C/SWOT)が地図上のどこに載るかを当てはめられる
- 身近な一社を3階層×4ステップの地図に当てはめ、どこが弱いかを1つ指摘できる
この講座は最後まで、「身近な一社の戦略を読み解き、3階層×4ステップの1枚の地図に統合する」という、たった1つの場面で説明します。共通の題材として、(例)架空のカフェチェーン「カフェA」に登場してもらいます。実在の会社ではなく、説明のための例だと思って読み進めてください。同じカフェAを、戦略=選択として読む→3階層に分ける→4ステップに沿って通す→1枚の地図に重ねる、と章ごとに角度を変えて組み上げます。各章末には手を動かす演習を置いているので、自社や知っている会社を当てはめながら読んでみてください。
なお、この講座は地図そのものを渡す入口です。地図の「行き先」——事業でどう戦うか(事業戦略)、なぜ勝てるか(競争優位)、どう儲けるか(ビジネスモデル)、買収・提携で外から伸ばす(M&A)といった各論は、地図の空白を見つけたあとに後続の講座へ進む形で住み分けます。まずはこの1本で、全体像をつかむ地図を手に入れましょう。
この講座のポイント
- 経営戦略を「限られた資源を、どこに・どう配るかの全社の意思決定」だと、方針・スローガン・戦術との違いを添えて説明できる
- 全社・事業・機能の3階層で、ある会社の戦略を仕分けて説明できる
- ビジョン→環境分析→戦略策定→実行の4ステップを並べ替えて説明でき、知っているフレーム(3C/SWOT)が地図上のどこに載るかを当てはめられる
- 身近な一社を3階層×4ステップの地図に当てはめ、どこが弱いかを1つ指摘できる
経営戦略とは何か(方針・戦術との違い)
「経営戦略とは」と検索して最初にひっかかるのが、言葉の混乱です。スローガンも、目標も、個別の打ち手も、ぜんぶ「戦略」と呼ばれてしまう。まずはこの混乱をほどき、戦略という言葉の輪郭をはっきりさせます。
この章のゴール
この章を読み終えると、経営戦略を「限られた資源を、どこに・どう配るかの全社の意思決定」だと、方針・スローガン・戦術との違いを添えて説明できるようになります。
経営戦略は「資源配分の選択」である
出発点に、ひとつの前提を置きます。会社のヒト・モノ・カネ・時間は、有限だということ。人数も、予算も、社長の時間も、無限にはありません。
だから経営戦略とは、その限られた資源を「どこに・どう配るか」を決める全社の意思決定です。どの市場に人を割くか、どの商品に予算を集めるか、何に時間をかけるか——この「配り方の決定」が戦略の中身です。
「お客様第一」のような掛け声は、向かいたい方向を示す表明であって、資源配分の決定そのものではありません。お客様第一を掲げていても、「では来期、限られた予算をどの顧客層に集中するのか」が決まっていなければ、戦略はまだ空白です。掛け声と戦略は、別物として切り分けてください。
戦略とは「やらないこと」を決めること
ここでもう一歩進みます。戦略の核心は、やることを増やすことではなく、やらないことを決める選択にあります。記憶に残るひと言として、これだけ持って帰ってください。
戦略とは、捨てるものを決めること。
経営学でも、「戦略の本質は、何をやらないかを選ぶことだ」(マイケル・ポーター)とよく言われます。理由はシンプルです。限られた資源を全方位に薄く配ると、どこでも中途半端になり、どこでも勝てない。だからこそ、ある客層・ある提供価値に絞り、それ以外は捨てる、という選択が戦略になります。
スローガン・戦術と戦略はどう違うか
混乱しやすい3つの言葉を、1行ずつ分けておきましょう。
- スローガン=掛け声・向かう方向の表明(例:「お客様第一」「地域No.1」)
- 戦術=個別の打ち手・手段(例:「SNSで発信する」「クーポンを配る」)
- 戦略=限られた資源を、どこに集中するかの選択(例:「朝の通勤客に絞り、その時間帯の体験に資源を集める」)
「シェアNo.1を目指す」は、目標やスローガンであって戦略ではありません。どこで・どうやってNo.1になるのか、そのために何を捨てるのかが決まって、はじめて戦略です。「SNSで発信する」も戦術であって戦略ではありません。それは、ある戦略を実行するための個別の手段のひとつです。
共通例:カフェAを「選択」として読む
ここで、この講座でずっと使うカフェA(例)に登場してもらいます。カフェAは、街じゅうのあらゆる客を狙うのではなく、朝の出勤前に立ち寄るビジネスパーソンに絞り、「短時間で受け取れる高品質なコーヒー」だけに資源を集めている——そういう会社だとします。
ここで読むべきは「何をやっているか」より、「何をやらないと決めているか」です。カフェAは、長居して過ごすカフェ空間を作り込むことも、食事メニューを増やすことも、夜の営業に力を入れることもしていない。これらは「捨てている」部分です。捨てているからこそ、朝の客層に資源を集中できる。これが、戦略=選択の正体です。
戦略を読むときは、立派なメニュー表(やっていること)ではなく、その裏にある「やらないと決めたこと」に目を向けてください。
つまずきポイント
この章でよくあるつまずきは3つです。①戦略を「がんばる」「シェアNo.1を目指す」といったスローガンと混同する。②「SNSをやる」「広告を出す」と個別の打ち手(戦術)を並べて戦略だと思う。③「やること」だけ並べて、「やらないこと」がどこにも決まっていない。どれも、「資源配分の選択/やらないことを決める」という背骨に戻れば見分けられます。
この章の確認(演習)
身近な一社(カフェAでも、自社でも、知っている会社でも構いません)を1つ選んでください。その会社が「やらない」と決めていそうなことを、1つ書き出します。書けたら、それがヒト・モノ・カネ・時間のどの資源を節約しているかを、一言添えてください。
戦略の3階層(全社・事業・機能)
「うちの戦略は……」と話すとき、それは会社全体の話ですか、それとも特定の事業の話ですか。この問いに即答できないと、会議の議論がかみ合いません。この章では、経営戦略を3つの階層に分けて、「全社戦略と事業戦略は何が違うのか」をはっきりさせます。
この章のゴール
この章を読み終えると、全社・事業・機能の3階層で、ある会社の戦略を仕分けて説明できるようになります。
戦略には3つの階層がある
経営戦略は、ひとつの塊ではありません。上位が下位を方向づける、入れ子の3階層になっています。代表的な分け方が、次の3つです。
- 全社戦略=どの事業に資源を配るか(事業の選択・組み合わせ)
- 事業戦略=その事業で、どう戦うか(競争の仕方)
- 機能戦略=各部門(営業・人事・製造・財務など)が、上の戦略をどう支えるか
「全社の戦略」と「事業の戦略」は、見ている範囲が違います。全社戦略は「会社として、どの土俵に立つか」を決め、事業戦略は「その土俵の中で、どう勝つか」を決める。機能戦略は、さらにその下で「各部門が何をするか」を決めます。
上の階層が下の階層を方向づける
3階層は、上から下へ流れます。全社戦略で「この事業に集中する」と決まると、その事業の戦い方(事業戦略)が定まり、それを支える各部門の動き方(機能戦略)が決まる。この順番が大切です。
逆向きは、うまくいきません。各部門が個別にがんばっても(=機能の打ち手をいくら足しても)、上位の選択が空白なら、全体はちぐはぐになります。営業は新規開拓に走り、製造は別の商品に注力し、人事はまた違う人材を採る——方向がそろわないのは、たいてい上の階層の選択が決まっていないからです。
単一事業の会社では全社=事業が重なる
ここでよくある誤解を、先に潰しておきます。「うちは事業が1つだけだから、3階層なんて関係ない」——そうではありません。事業が1つしかない会社は、3階層が無いのではなく、全社戦略と事業戦略が重なっているだけです。「どの事業をやるか」と「その事業でどう戦うか」が、同じ1つの答えになる、というだけのこと。機能戦略(各部門の支え方)は、規模が小さくても必ず存在します。
共通例:カフェAを3つの箱に分ける
カフェA(例)を、3つの箱に1文ずつ振り分けてみましょう。
- 全社戦略=コーヒーのテイクアウト事業に資源を集中する(食事・物販には広げない)
- 事業戦略=「朝・短時間・高品質」という価値で、他のカフェと差別化する
- 機能戦略=店舗オペレーション部門が、提供スピードを上げる動線と仕込みで支える
こうして3つの箱に入れると、「カフェAはどの土俵に立ち(全社)/その土俵でどう勝ち(事業)/それを誰がどう支えるか(機能)」が、一目で言えるようになります。「うちの戦略は」と話すときに、自分がどの箱の話をしているのかを、まず意識してください。
つまずきポイント
ここでのつまずきは、①全社戦略と事業戦略を混同する(「うちの戦略」がどの階層の話か曖昧なまま議論する)、②単一事業の会社には階層が無いと誤解する、③機能(部門の打ち手)を全社戦略と取り違える、の3つです。いずれも、「3つの箱に1文ずつ振り分ける」作業をすれば、自然にほどけます。
なお、この章で出てきた事業戦略——「その事業で、どこで・どう戦うか」の中身は、奥が深いテーマです。競争の仕方そのものを掘り下げたくなったら、続きは事業戦略を扱う関連講座へ。さらに「なぜその会社は勝ち続けられるのか」という競争優位の源泉に踏み込むなら、それを扱う関連講座へ進んでください。この章では、それぞれが「どの箱に載るか」という居場所だけ押さえておけば十分です。
この章の確認(演習)
身近な一社、または自社の戦略を、全社・事業・機能の3つの箱に1文ずつ振り分けて書き出してください。うまく書けない箱があれば、そこが「まだ決まっていない/自分が把握できていない」部分です。その箱に印をつけておきましょう。
戦略立案の4ステップ(ビジョン→環境分析→戦略策定→実行)
「3CやSWOTは研修で習ったけど、あれって戦略のどこで使うの?」——この章で、その疑問に答えを出します。戦略を作る流れを4つのステップに分け、知っているフレームが地図のどこに載るかを当てはめます。
この章のゴール
この章を読み終えると、ビジョン→環境分析→戦略策定→実行の4ステップを並べ替えて説明でき、知っているフレーム(3C/SWOT)が地図上のどこに載るかを当てはめられるようになります。
戦略は4つのステップで作って回す
戦略は、一発で決まるものではなく、順番に作って回すものです。代表的な流れが、次の4ステップです。
- ビジョン/目的——どこを目指すか(何のために、どうなりたいか)
- 環境分析——外部(市場・競合)と内部(自社)の状況を見る
- 戦略策定——どこで・どう戦うかを選ぶ(=資源の配り方を決める)
- 実行・見直し——決めたことを動かし、結果を見て直す
順番が前後すると、うまくいきません。①の目的が無いまま②の分析だけ進めると、「何のために分析しているのか」が分からず、データばかり集まって決められなくなります。まず「どこを目指すか」を置いてから、現状を見るのが筋です。
分析フレームは「ステップ②の道具」
ここが、この章のいちばんの山場です。3CやSWOTのような分析フレームは、戦略そのものではありません。ステップ②(環境分析)で使う道具です。
- 3C=外部・競合・自社を見る視点(顧客・競合・自社の3つから状況をつかむ)
- SWOT=自社の強み・弱み(内部)と、機会・脅威(外部)を整理する枠組み
どちらも、②の「状況を見る」段階で使います。地図でいえば、3CもSWOTも「②環境分析」というマスの中に載る道具、ということです。フレームを使うこと自体は戦略づくりのゴールではなく、③「どこで・どう戦うかを選ぶ」ための材料を集める手段にすぎません。ここを取り違えると、「SWOTを埋めたから戦略ができた」と勘違いしてしまいます。
各フレームの具体的な使い方には、この講座では踏み込みません。3C分析の使い方、SWOT分析の使い方は、それぞれを扱う関連講座で手を動かして学べます。ここでは「②環境分析の道具」という居場所だけ、しっかり押さえてください。
「分析どまり」「実行しっぱなし」を避ける
4ステップでよく起きる事故は3つです。①②の分析で止まって、③の「選ぶ」に進めない(情報は集まったが、決断しない)。②④の見直しを飛ばして、「作って終わり」にする。③フレームを「埋めること」自体が目的になり、何を選ぶかを忘れる。
戦略は、立てて終わりではありません。動かして、結果を見て、直す。④まで回して、はじめて一周します。地図のどのマスで自分が止まっているかを意識すると、次に何をすべきかが見えます。
共通例:カフェAを4ステップで通読する
カフェA(例)を、4ステップに沿って一筆書きでつないでみましょう。
- ビジョン=「朝の時間を、おいしい一杯で気持ちよく始められる街にする」
- 環境分析=駅前の通勤客の流れ(顧客)、近隣チェーンの提供スピード(競合)、自社の仕込み体制(自社)を見る
- 戦略策定=「朝の通勤客に絞り、提供スピードと品質で差別化する」と選ぶ(=夜営業や食事は捨てる)
- 実行・見直し=注文から受け取りまでの時間を毎月見て、遅い時間帯の動線を直す
②で3Cの視点(顧客・競合・自社)が使われているのが分かりますか。ここで集めた材料があるから、③で「朝の通勤客に絞る」という選択ができる。フレームは、選ぶための材料集めの道具——この感覚を、カフェAの流れでつかんでください。
つまずきポイント
つまずきは、①分析(②)で止まり策定(③)へ進めない、②実行(④)の見直しを飛ばして作りっぱなしにする、③フレームを使うこと自体が目的になる、の3つでした。「4ステップに並べ、フレームは②の道具と位置づける」——これで、自分が今どこにいるかが分かります。
この章の確認(演習)
身近な一社(カフェAでも自社でも構いません)を4ステップに並べて書いてください。そのうえで、「②環境分析では、3Cの視点とSWOTの視点のどちらが使えそうか」を1つ選び、なぜそちらかを一言添えましょう。
地図を1枚に統合する(身近な一社・自社を読み解く)
ここまでで、戦略=選択(第1章)、3階層(第2章)、4ステップ(第3章)という3つの道具がそろいました。最後に、これらを1枚の地図に重ね、「自社の戦略はどこが描けていて、どこが空白か」を見えるようにします。
この章のゴール
この章を読み終えると、身近な一社を3階層×4ステップの地図に当てはめ、どこが弱いかを1つ指摘できるようになります。
3階層×4ステップを1枚の地図に重ねる
これまでの章を、1枚の地図にまとめます。縦軸=3階層(全社・事業・機能)、横軸=4ステップ(ビジョン→分析→策定→実行)。この縦3×横4のマス目が、経営戦略の全体像の地図です。
各マスには「誰が・何を決めるか/見るか」が入ります。たとえば「全社×ビジョン」のマスには会社全体の目指す姿が、「事業×戦略策定」のマスにはその事業での戦い方の選択が、「機能×実行」のマスには各部門の日々の動かし方が入ります。第1章で学んだ「戦略=選択(やらないことを決める)」は、どのマスでも共通する判断基準として効いてきます。
このマス目の読み方は、縦に見ると「同じステップを、全社・事業・機能の3つの目線で確かめる」ことになり、横に見ると「同じ階層が、ビジョンから実行まで一本につながっているか」を確かめることになります。縦と横の両方から眺めると、「決めたつもりで決まっていないマス」が浮かび上がってきます。この一枚があると、議論が今どのマスの話なのかを指差しながら進められます。
空白マス=弱点であり、次の学びの入口
地図を埋めていくと、ちゃんと描けているマスと、空白のマスが見えてきます。この空白こそ、その会社(自社)の戦略で手薄になっている部分です。
そして空白は、悪いことばかりではありません。それは同時に、「次に何を学べばいいか」「次に何を決めればいいか」の行き先になります。地図の空白を見つけることは、宝の地図で「まだ掘っていない場所」に印をつけるのと同じです。
弱点は1つに絞って指す
ここで大事なのは、弱点を欲張らないことです。「あれも足りない、これも足りない」と複数挙げると、優先がつかず、結局どれにも手をつけられません。
だから、最も空白/手薄な1マスを、1つだけ名指しします。その1つを、次の一歩にする。地図全体を完璧に埋めることより、「次にどこを掘るか」を1つに決めることのほうが、はるかに前に進みます。
共通例:カフェAの地図を完成させる
カフェA(例)の地図を、最後まで完成させてみましょう。第1〜3章で見たとおり、カフェAは「全社=テイクアウトに集中」「事業=朝・短時間・高品質で差別化」「機能=店舗オペレーションがスピードで支える」が、4ステップの①〜③まで、はっきり描けています。
一方で、たとえば「④実行・見直し」の行が手薄かもしれません。提供スピードは測っているけれど、競合が同じ朝の客層に参入してきたとき、どう戦い方を変えるかの見直しが決まっていない——そんな空白が見つかったとします。これは「事業戦略の“どう戦い続けるか”が手薄」という弱点です(あくまで地図の読み方の例で、実在の評価ではありません)。
弱点が見つかったら、その空白の行き先を案内します。「事業でどう戦うか」を深めるなら事業戦略、「なぜ勝ち続けられるか」を掘るなら競争優位へ。もし空白が「どう儲けるか」の設計ならビジネスモデル、「外から事業を取り込む」手段ならM&A入門へ進みます。地図の空白に合わせて、それぞれを扱う関連講座から行き先を選んでください。
つまずきポイント
ここでのつまずきは、①地図を「埋めて満足」で止まり、空白を次の行動につなげない、②弱点を複数挙げて優先がつかない、③自社のことになると主観で塗りつぶし、空白を空白と認められない、の3つです。「最も手薄な1マスを、1つだけ指す」——これを守れば、地図が次の一歩につながります。
この章の確認(演習)
自分の勤務先(または身近な一社)を、3階層×4ステップの地図に当てはめてください。縦3×横4のマスを、書ける範囲で埋めます。埋め終わったら、最も空白/手薄な1マスを1つ指し、そこを次に深掘りすべきテーマとして書き出しましょう。
まとめ
経営戦略とは、限られたヒト・モノ・カネ・時間を「どこに・どう配るか」を決める全社の意思決定であり、やることと同じくらい「やらないこと」を決める選択でした。バラバラに学んだ言葉やフレームは、3階層(全社・事業・機能)×4ステップ(ビジョン→環境分析→戦略策定→実行)の地図に載せれば、1枚につながります。3CやSWOTは、その地図の②環境分析の道具として、居場所が決まりました。
戦略とは、捨てるものを決めること。 この一文だけ、覚えて帰ってください。
明日からの一歩は、シンプルです。身近な一社か自社を、3階層×4ステップの地図に当てはめてみて、「一番手薄な1マス」を口に出して言ってみる。それだけで、次に何を決めればいいかが見えてきます。
地図の行き先は、空白に合わせて選べます。事業でどう戦うかは事業戦略、どう儲けるかはビジネスモデル、なぜ勝てるかは競争優位、外から伸ばす手段はM&A入門、そして分析フレームの使い方は3C分析/SWOT分析へと、それぞれを扱う関連講座へ続きます。
経営戦略の全体像チェックシート(3階層×4ステップの地図)を、メルマガ登録で無料配布します。次に経営会議の資料を読むとき、このシートに自社を1枚で書き出してみてください。「一番手薄な1マス」が、あなたの会社の次のテーマです。
よくある質問
経営戦略と経営戦術の違いは?
戦略は「限られた資源をどこに集中するかの選択」、戦術は「その選択を実行する個別の打ち手」です。捨てる対象を決めるのが戦略です。
全社戦略と事業戦略はどう違う?
全社戦略は「どの事業に資源を配るか」、事業戦略は「その事業でどう戦うか」を決めます。前者が土俵選び、後者が土俵での勝ち方です。
3CやSWOTは戦略のどこで使う?
戦略立案4ステップのうち、②環境分析で使う道具です。状況をつかむ手段であって、フレームを埋めること自体が戦略づくりのゴールではありません。