「来期のチーム目標を立てておいて」。上司にそう言われて、資料に「売上アップ、しっかりがんばります」と書いた——働き始めると、こんな場面が必ずやってきます。けれど、その目標、期末になったとき「達成できた」と誰が判定できるでしょうか。「しっかりがんばる」では、達成したのかどうか、あなたにも上司にも分かりません。
ここで登場するのがKGIです。KGIとは、チームが目指すゴールを「誰が見ても達成したか分かる数字」にしたもの。会議では「KPI」という言葉とセットでよく飛び交いますが、この2つは役割が違います。良い目標は、気合いの量ではなく、「何を・いつまでに・どれだけ」で決まります。
この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の違いを説明できる
- 良いKGIの条件(数字で測れる・期限がある・1つに絞る)で、KGIの良し悪しを見分けられる
- 自分(自チーム)の業務のKGIを、数字と期限つきで1つ立てられる
この講座は最後まで、「チームの“売上を伸ばす”という曖昧な目標を、達成判定できるKGIにする」という、たった1つの場面で説明します。なお本講座は「ゴールの立て方(KGI)」に集中します。立てたあとに、それを測れる中間指標へ作り込む方法(KPI設計)は、別講座のKPI入門講座(kouza-011-kpi-basic)が担当します。
この講座のポイント
- KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の違いを説明できる
- 良いKGIの条件(数字で測れる・期限がある・1つに絞る)で、KGIの良し悪しを見分けられる
- 自分(自チーム)の業務のKGIを、数字と期限つきで1つ立てられる
KGIとは何か(KPIとの違い)
「KGIって、KPIと何が違うの?」。まずはこのモヤモヤを晴らすところから始めましょう。この違いさえつかめれば、目標設定の会議で迷子になることはなくなります。
この章のゴール
この章を読み終えると、KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の違いを説明できるようになります。
「目標の数字」には2種類ある:ゴールを測るKGI、途中を測るKPI
会議で飛び交う「目標の数字」は、実は2種類に分けられます。ゴールそのものを測る数字と、ゴールに近づく途中を測る数字です。前者がKGI、後者がKPIです。
KGIは Key Goal Indicator の略で、日本語では重要目標達成指標と呼ばれます。むずかしく聞こえますが、中身は「最終的に達成したいゴールを、数値にしたもの」。売上・利益・顧客数などが、よくKGIに設定されます。
一方のKPIは Key Performance Indicator の略で、日本語では重要業績評価指標。こちらはゴールに向かう途中(プロセス)が順調かを測る、中間の指標です。
ここがこの講座の背骨です。KGIはゴールを測り、KPIは途中を測る。同じ「目標の数字」でも、見ている場所が違うのです。この一点を、最後まで握っていてください。
マラソンでたとえる:完走がKGI、10km通過がKPI
言葉だけだと分かりにくいので、マラソンでたとえてみましょう。
マラソンの最終ゴールは「42.195kmを完走する」こと。これがKGIにあたります。一方で、走っている途中の「10km地点を1時間以内に通過する」といったチェックポイントがKPIです。完走(ゴール)に近づいているかを、途中の通過点で確かめている、というわけです。
共通の場面に当てはめましょう。あなたのチームの目標は「売上を伸ばす」。最終的に達成したいことなので、ここで数字にすべきゴール=KGIは「売上」です。では、その手前にある「訪問件数」や「商談数」は何かというと、売上というゴールに近づく途中を測る数字、つまりKPIの候補です。この「売上を伸ばす」を、以降の全章で立ち戻る原点として使います。
順序が大事:まずKGIを決め、そこからKPIへ
KGIとKPIには、扱う順序があります。まず最終目標であるKGIを1つ決め、そのあとでKGIを分解してKPIを決めていく、という順序が基本です。ゴール(KGI)が決まっていないのに途中の通過点(KPI)だけ並べても、それが本当にゴールに効くのかは分かりません。だからこそ、最初に決めるべきはKGIなのです。
ここでつまずきやすい
KGIとKPIを混同したり、ゴールを決める前から「測りたい数字」をたくさん並べてしまったりする。これがいちばん多い入口のつまずきです。順序を守りましょう。まずゴール(KGI)を1つだけ決める。途中の通過点(KPI)は、そのあとでじっくり選べばよいのです。
この章の確認(演習)
お題:あなたの身近な目標を1つ思い浮かべ、それがKGI(ゴール)かKPI(途中の通過点)か仕分けてみてください。
たとえば「年間売上1,200万円(例)」ならゴールなのでKGI、「週に20件訪問する(例)」なら途中の通過点なのでKPIです。どちらか1つに仕分けられたら、ゴール達成です。
良いKGIの3条件
KGIとKPIの違いがつかめたら、次は「良いKGIを見分ける目」を持ちましょう。同じゴールでも、達成したか判定できるものと、できないものがあります。
この章のゴール
この章を読み終えると、良いKGIの条件(数字で測れる・期限がある・1つに絞る)で、KGIの良し悪しを見分けられるようになります。
「売上を伸ばす」がKGIとして弱い理由
冒頭の「売上アップ、がんばります」を思い出してください。これがKGIとして弱いのは、やる気が足りないからではありません。「いくらに」「いつまでに」が抜けていて、達成したか判定できないからです。
「売上を伸ばす」は、1円増えても伸びていますし、期限もないので、いつ評価すればいいかも分かりません。これでは、期末に上司と「達成できましたね」と握手することができないのです。
良いKGIの3条件:数字で測れる・期限がある・1つに絞る
そこで、良いKGIの条件を3つの型としてお渡しします。
- 数字で測れる……達成したか・していないかを、誰が見ても判定できること。「がんばる」は測れませんが、「売上1,200万円(例)」なら判定できます。
- 期限がある……いつまでに、という区切りがあること。「いつか売上を上げる」ではなく「来期末までに」と区切ります。
- 1つに絞る……チームが目指すゴールは1つにすること。ゴールを5つも10つも掲げると、どれを優先すればいいか分からなくなり、結局どれも中途半端になります。
この3条件には、背景になっている有名な考え方があります。SMARTです。これは George T. Doran が1981年に雑誌『Management Review』で提唱した、目標の書き方の枠組みで、Specific(具体的)・Measurable(測れる)・Time-related(期限)などの頭文字をとったものです。各語は使う人や時代で少しずつ変わるため、暗記する必要はありません。本講座では、このうち「数字で測れる」「期限がある」に、目標管理で大事な「1つに絞る」を加えた3点だけ押さえれば十分です。
「売上を伸ばす」を3条件で書き直す
では、共通例の「売上を伸ばす」を、3条件を満たすKGIに書き直してみましょう。
NG:「売上を伸ばす」……測れない・期限なし。達成判定できない。
OK:「来期末までに、チームの売上を1,200万円にする(例)」……数字で測れて、期限があり、ゴールが1つ。
書き直しの手順はこれだけです。目標の候補を、「①数字で測れる? ②期限はある? ③1つに絞れている?」と問いにかけ、3つともYESになるまで言葉を足していく。これで、判定できないふわっとした目標を、達成判定できるKGIに変えられます。
ここでつまずきやすい
「顧客満足を高める」「チームの雰囲気を良くする」のような、数字にしにくい努力目標のまま放置すること。大切なことではありますが、KGIにするなら「アンケートの満足度を○点にする(例)」のように、測れる形まで翻訳してください。また、ゴールを盛りすぎるのも禁物です。今期いちばん大事な1つに絞りましょう。
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この章の確認(演習)
お題:あなたの曖昧な目標を1つ選び、良いKGIの3条件を満たす形に書き直してみてください。
「売上を伸ばす」のような目標を、「来期末までに、売上を○○万円にする」のように、数字で測れて・期限があり・1つに絞った形に直します。1つ書き直せたら、ゴール達成です。
KGIを立てて、KPIへつなぐ
良いKGIを見分けられるようになったら、いよいよ自分のKGIを立てます。そして、立てたKGIを「絵に描いた餅」で終わらせないために、次の一歩までを見ておきましょう。
この章のゴール
この章を読み終えると、自分(自チーム)の業務のKGIを、数字と期限つきで1つ立てられるようになります。
KGIは立てて終わりではない:分解してKPIへ逆算する
良いKGIを立てると、つい満足してしまいます。けれど、KGIは立てただけでは何も動きません。「来期末までに売上1,200万円(例)」と決めても、明日の朝、机に向かって何をすればいいかは、まだ決まっていないからです。
ここで、第1章で学んだKPIが効いてきます。KGI(ゴール)を、それに近づくための途中の数字=KPIに逆算していくのです。ゴールから逆算して「では、そのために何の数字を追えばいいか」を考える。この向きが大事です。
「売上1,200万円(例)」を中間指標へ逆算してみる
共通例で、逆算の入口だけ体験してみましょう。「来期末までに売上1,200万円(例)」というKGIに近づくには、その手前で動かせる数字は何でしょうか。
売上は、ざっくり言えば「お客さんに会った数 × 成約する割合 × 1件あたりの金額」のような要素でできています。すると、「訪問件数」のような、自分の行動で増やせる手前の数字が見えてきます。これがKPIの候補です。ゴール(KGI)から逆算すると、明日から追うべき途中の数字(KPI)が姿を現す——これが、KGIとKPIをつなぐということです。
ここから先、この中間指標をどう選び、どう分解し(KPIツリー)、どう毎週測って運用するかは、目標設計のもう半分のテーマです。その作り込みは、KPI入門講座(kouza-011-kpi-basic)が担当します。本講座でKGIを立てられたら、その続きとして読むのがおすすめです。
ここでつまずきやすい
立派なKGIを立てた満足で止まってしまうのが1つ。もう1つは逆に、ゴール(KGI)を決めないまま、いきなり「訪問件数を増やそう」とKPIだけ並べてしまうこと。必ずKGIが先、KPIが後です。ゴールが決まっていない通過点は、どこに向かっているか分かりません。
この章の確認(演習)
お題:あなたの業務の最終ゴールを、KGIの形で1つ書いてみてください。
「○○を、いつまでに、いくつ/いくらにする」の型に当てはめます。たとえば「チームの売上を、来期末までに、1,200万円にする(例)」のように。数字と期限の入った1文を書けたら、ゴール達成です。
まとめ:ゴールは、数字で1つ。
おつかれさまでした。「チームの“売上を伸ばす”」という曖昧な目標を、意味を知り、良し悪しを見分け、自分のKGIとして立てるところまで歩いてきました。最後に、その道を1枚の地図にまとめます。
- KGIとKPIの違い……KGIはゴールを測る指標、KPIはゴールに近づく途中(プロセス)を測る指標。まずKGIを決める(第1章)。
- 良いKGIの3条件……数字で測れる・期限がある・1つに絞る。この3つで良し悪しを見分ける(第2章)。
- 立ててKPIへつなぐ……「○○を、いつまでに、いくつにする」でKGIを立て、そこからKPIへ逆算する(第3章)。
この3つは、すべてたった1つの考え方に戻ります。
ゴールは、誰が見ても達成したか分かる数字で、1つ。
気合いの量ではなく、「何を・いつまでに・どれだけ」。それを決めるだけで、期末に「達成できた」と胸を張れる目標になります。この講座でいちばん覚えてほしいひと言は、これです。
ゴールは、数字で1つ。
明日の最初の一歩:自分の仕事の最終ゴールを、「○○を、いつまでに、いくつ/いくらにする」の1文で書いてみてください。第3章の演習を、実際の仕事で1回やってみる。曖昧な「がんばる」が、判定できるゴールに変わります。
次の一歩:そのKGIを分解して、明日から追える測れる中間指標(KPI)にする方法は、KPI入門講座(kouza-011-kpi-basic)で詳しく扱います。良いKGIを立てたら、続けて読んでみてください。
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よくある質問
KGIとKPIの違いは何ですか
KGIは「最終的に達成したいゴールを数値化した指標」、KPIは「そのゴールに近づく途中(プロセス)が順調かを測る中間指標」です。まずKGIを1つ決め、そこから逆算してKPIを設計するのが基本の順序です。
KGIは1つに絞るべきですか
はい、原則として今期いちばん大事な1つに絞ります。ゴールを複数掲げると優先順位が分からなくなり、どれも中途半端になりやすいためです。慣れてきたら、その下にKPIを複数ぶら下げる形にします。
良いKGIの例を教えてください
「来期末までに、チームの売上を1,200万円にする」のように、数字で測れて・期限があり・1つに絞られている形が良いKGIです。逆に「売上を伸ばす」「がんばる」は、達成判定できないためKGIとしては弱い表現です。
KGIを立てたら次は何をすればよいですか
立てたKGIを、それに近づくための測れる中間指標(KPI)へ逆算します。KGIを要素に分解してKPIを選び、毎週など定期的に測って運用する流れです。この作り込みはKPI入門講座(kouza-011-kpi-basic)で詳しく解説しています。