「うちの評価制度、結局何のためにあるんだろう」。毎年、配られた評価シートの指示どおりに点をつけ、集計し、面談の段取りをする。けれど、後輩に「この評価項目って何を測っているんですか」と聞かれると、うまく答えられない。「制度がそうなっているから」で済ませてきたからです。評価が甘い・辛いと言われても、何が正解なのかも分からない。多くの現場で起きているこの困りごとの正体は、評価制度を「手続き」として扱っていることにあります。
人事評価制度は、会社が決めた毎年の手続きではありません。何を評価するか(評価対象)、どの基準で測るか(評価基準)、どう運用するか(評価プロセス)という3つの部品でできた「仕組み」であり、その結果を社員の処遇(昇給・昇格・賞与など)と人材育成につなげるためにあります。この3つの部品で読めるようになると、自社の制度を自分の言葉で説明できるようになります。本講座は、この「制度=仕組みの全体像を説明できる」ことだけに絞ります。確定した評価を本人に伝える1回の面談の進め方は評価面談の基本が、期初に良い目標を1つ作る手順は目標設定の基本が、それぞれの正本です。本講座はその各論には踏み込まず、地図のどこに当たるかを示すにとどめます。
この講座を終えると、次の3つができるようになります。人事評価制度が「評価対象・評価基準・評価プロセス」の3つの部品でできていることを説明できること、自社の評価制度をその3部品に当てはめ、評価項目が何を・どの基準で測っているかを説明できること、そして評価が歪む代表的な原因(評価エラー)を名前で挙げ、自分の評価を点検できることです。覚えて帰る型は「評価制度=評価対象(何を)×評価基準(どの基準で)×評価プロセス(どう運用)→ 処遇と育成へ」。本講座では、ある会社の1枚の評価シート(例。自己評価欄+評価項目+5段階+一次評価者・二次評価者の欄)を、4章を通して読み解いていきます。読み終えるたびに、このシートのどこが何なのかを言えるようになっていきます。
この講座のポイント
- 人事評価制度が何のためにあり、どんな全体像(仕組み)なのかを説明できる。
- 評価対象(何を評価するか)と評価基準(どの物差しで測るか)を区別して説明できる。
- 評価制度が1年(または半期)の中でどう運用されるか(評価プロセス)を時系列で説明できる。
- 評価が歪む代表的な原因(評価エラー)を名前で挙げ、自分の評価を点検できる。
人事評価制度とは何か——目的と全体像
この章のゴール
人事評価制度が何のためにあり、どんな全体像(仕組み)なのかを説明できる。
評価は「印象で順位をつけること」ではなく「決められた対象・基準・手順で測ること」
最初に、人事評価が何のためにあるのかを押さえます。人事評価の役割は2つです。1つは、従業員ごとに強み・弱みを把握して人材育成に活かすこと。もう1つは、評価結果を給与や人材配置などの処遇に活かすことです。そして、評価が経営者や上司の好き嫌いで行われると従業員は不満を感じやすいため、一定のルール(人事評価制度)のもとで公正に評価していく必要があります(出典:J-Net21「人事管理の基本」)。公的な人事評価の解説でも、人事評価は「能力・実績を正確に把握して、任用、給与等の人事管理の基礎とするとともに、人材育成やパフォーマンス向上につなげること」を目的とすると示されています(出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド」)。
ここで大切なのは、評価が「印象で順位をつけること」ではない、という点です。人事評価は人間性や人格を評価するものではなく、職務行動を通じて表れた能力や、仕事の結果を客観的に把握するものです(出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド(評価者・調整者編)」)。「あの人はまじめだから良い評価」ではなく、「この期間に、この行動を、この結果まで行った」という事実で測る——これが評価の出発点です。
評価結果は処遇の決定と人材育成の2つにつながる
評価の目的は、よく「処遇を決めること」だけだと誤解されます。実際には、処遇と育成の両輪です。評価結果が反映される主な給与には基本給と賞与があり、たとえば成果は賞与に、能力や姿勢は基本給に反映させる、といった形で処遇に結びつきます(出典:J-Net21「人事管理の基本」)。同時に、評価は本人の強み・弱みを可視化し、次に何を伸ばすべきかを示す育成の材料でもあります。処遇だけを見て育成の側面を忘れると、評価は「給与を決める作業」になってしまいます。逆に、この2つの目的を言葉にできると、後輩に「何のためにあるんですか」と聞かれたときに、「処遇を決めるためと、あなたを育てるための2つのためだよ」と即答できます。
制度は「評価対象・評価基準・評価プロセス」の3つの部品でできている
では、その目的を果たす制度は、どんな部品でできているのでしょうか。制度づくりは、求める人材像に基づいて評価基準を設定することから始まります。評価基準は、評価すべき成果・能力(行動)・姿勢(態度)という3つの視点で検討します。そして、その基準に従ってどう評価するかという評価方法——誰が誰を評価するのか、評価対象期間、評価尺度(点数・ランク付け)、評価プロセスなど——を決めていきます(出典:J-Net21「人事管理の基本」)。
これを本講座では、3つの部品として整理します。評価対象(何を見るか)、評価基準(どの物差しで測るか)、評価プロセス(誰が・いつ・どう運用するか)の3つです。以降の章は、この3部品にそのまま対応します。第2章で評価対象と評価基準を、第3章で評価プロセスを扱います。覚えて帰る型「評価制度=評価対象(何を)×評価基準(どの基準で)×評価プロセス(どう運用)→ 処遇と育成へ」を、ここで一度、声に出してみてください。
1枚の評価シートに3つの部品が全部入っている
抽象的に聞こえるかもしれませんが、3つの部品は、あなたが毎年つけている1枚の評価シートの中に全部入っています。共通例の評価シート(例)を広げてみましょう。「協調性」「企画力」「目標達成度」といった項目欄が並んでいるなら、それが評価対象——何を見るかです。各項目の右に「5:期待を大きく上回る/3:期待どおり……」のような5段階(例)の説明があれば、それが評価基準——どの状態なら何点かという物差しです。そして、自己評価欄・一次評価者欄・二次評価者欄が並んでいれば、それが評価プロセス——誰の手を通って評価が決まるか、の入口です。シートは、3つの部品を1枚にまとめた設計図なのです。
なお、評価結果が乗っていく「器」が等級です。評価で測った能力や成果が、昇格・昇給という段階づけに反映されます。職能資格制度のように、社員の能力をもとに複数の段階(等級)に格付けし、上位等級ほど賃金が高くなるよう設計する仕組みもあります(出典:J-Net21「職能資格制度の導入」)。ただし、本講座は「評価=測る側」に徹します。等級という器そのものの設計(等級の定義や賃金テーブル)は等級制度入門が正本なので、そちらに譲ります。本章では、評価結果が等級・処遇につながる、という関係だけ押さえておけば十分です。
この章の確認(演習)
自社(または共通例の会社)の評価制度について、その目的を「処遇の決定」と「人材育成」の2軸で、それぞれ1文ずつ書き出してください。次に、手元の評価シートを1枚開き、「評価対象(項目欄)」「評価基準(各項目の段階の説明)」「評価プロセス(自己評価・一次評価者・二次評価者の欄)」の3部品が、シートのどこに当たるかを指で確認しましょう。最後に、覚えて帰る型を自分の言葉で一度言い切ってみてください。
何を・どの基準で評価するのか——評価対象と評価基準
この章のゴール
評価対象(何を評価するか)と評価基準(どの物差しで測るか)を区別して説明できる。
評価対象は代表的に「成果」「能力」「情意」に分かれる
3部品のうち、まず「何を見るか」=評価対象から見ていきます。一般に人事評価は、業績(成果)・能力・情意(態度)の3要素について、それぞれどんな項目をどんな基準で評価するかを決めて行います(出典:J-Net21「人事評価制度と賃金制度の改善」)。それぞれの中身を、もう少し具体的に見ましょう。情意評価は、規律性・責任性・協調性・積極性などを軸に、仕事に対する意欲や態度を見ます。能力評価は、本人が保有している知識・技術や、問題対応力・対人対応力などを見ます。成績評価(業績評価)は、業務の結果=出した成果を見ます(出典:J-Net21「職能資格制度の導入」)。
共通例の評価シート(例)の項目を、この3つに仕分けてみると分かりやすくなります。「目標達成度」は成果、「企画力」「実行力」は能力、「協調性」「積極性」は情意——というように、項目はどれかの対象を測っています。ここで起きやすいつまずきが、成果(結果)と行動・能力(プロセス)を混同して同じ点をつけてしまうことです。「結果は出していないが、よく頑張っていた」を成果の項目に高い点として入れてしまうと、成果と情意がごちゃ混ぜになります。何を見る項目なのかを意識して仕分けるだけで、評価のブレはかなり減ります。
評価基準は「どの状態なら何点か」を決める物差し
評価対象を仕分けたら、次は「どの基準で測るか」=評価基準です。評価基準は、従業員から見て「何を会社が求めているのか」が分かる表現で、具体的に定めることがポイントです(出典:J-Net21「人事管理の基本」)。そして、どんな項目について、どういった基準で評価がなされるのかが、あらかじめ明確かつ具体的に示されていることが大切です。評価の枠組みをブラックボックスにせず、従業員が「何をどうすれば評価されるのか」を知ることで、納得性が高まります(出典:J-Net21「人事評価制度と賃金制度の改善」)。判定の物差しは、評価尺度(点数やランク付け)という形で表されます(出典:J-Net21「人事管理の基本」)。
ここで強調したいのは、評価対象と評価基準は別物だということです。評価対象は「何を見るか」、評価基準は「どこまでできたら何点か」。たとえば「協調性」という対象に対して、「5:周囲を巻き込んで成果を出した/3:自分の役割の範囲で協力した……」という段階の定義が基準です。基準が「ふつう」「よくできた」程度の言葉しかないと、評価者ごとに解釈が分かれてブレます。基準が具体的な行動の言葉で書かれているほど、誰がつけても近い点になります。
評価手法は「何を測るやり方」として制度の上に乗る
評価対象のうち成果(業績)を測る代表的なやり方が、目標管理制度(MBO)です。MBO(Management By Objectives)は、1950年代から60年代にかけて米国の経営学者ピーター・ドラッカーらが提唱した手法で、個々の担当者に自ら業務目標を設定・申告させ、その進捗や実行を各人が主体的に管理するものです(出典:J-Net21「目標管理制度における目標設定の方法」)。期初に立てた目標の達成度で成果を測る——これが、多くの会社の評価シートの「成果」欄の裏側にある考え方です。
ただし、本講座が扱うのは「MBO が制度のどこに乗るか」までです。期初に良い目標を1つ、達成基準が明確な形で作る進め方(SMART など)は目標設定の基本が、チーム目標を四半期で運用する枠組み(OKR)はOKR入門が正本です。本講座は、評価項目が「何を・どの基準で測っているか」を読み解けるところまでに絞り、目標文の作り方そのものには踏み込みません。
この章の確認(演習)
共通例(または自社)の評価シートの項目を、「成果/能力/情意」のどれを見ているかで仕分けてください。次に、それぞれの項目に評価基準(何点はどんな状態か)が言葉で定義されているかを確認します。そのうえで、最も基準が曖昧だと感じる項目を1つ選び、「ある1段階分(たとえば5点)はどんな状態か」を、具体的な行動の言葉で自分なりに書き直してみましょう。
誰が・いつ・どう運用するのか——評価プロセス
この章のゴール
評価制度が1年(または半期)の中でどう運用されるか(評価プロセス)を時系列で説明できる。
評価プロセスは「目標設定→記録→自己評価→一次評価→調整→フィードバック」の流れ
3つ目の部品が、評価プロセス——誰が・いつ・どう運用するかです。制度は1枚の紙ではなく、1年(または半期)かけて回る流れだと捉えると、急に分かりやすくなります。公的な人事評価ガイドは、この流れを次の工程で示しています。①目標を設定する(期首面談で、果たすべき役割を上司と共有する)、②期中の行動を把握する(日常の業務管理を通じて観察する)、③評価・調整を行う(具体的な評価事実に基づき評価する)、④フィードバックをする(結果を開示し、期末面談で来期に向けた助言をする)。被評価者の側から見ると、目標を設定する→自己申告(自己評価)を行う→フィードバックを受ける、という流れになります(出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド」被評価者編/評価者・調整者編)。
これを民間の評価シートの言葉に置き換えると、「期初の目標設定 → 期中の記録 → 本人の自己評価 → 一次評価者の評価 → 二次評価者・人事による調整 → 確定 → 本人へのフィードバック」という時系列になります。共通例の評価シート(例)の自己評価欄・一次評価者欄・二次評価者欄は、この1枚が1年の流れの中で誰の手を通っていくかの目印なのです。なお、目標設定の周期や面談の回数は会社の運用によって異なるため、本講座では「期初に」「期中に」「期末に」という時間の順序として押さえます。
期中の記録を飛ばすと、評価は印象になってしまう
このプロセスで最もつまずきやすいのが、②の「期中の記録」を飛ばしてしまうことです。評価ガイドは、評価期間中は日々の業務管理を通じて目標の達成状況や行動をよく観察し、期末の評価に向けて評価事実を収集・記録するよう求めています。そして、記憶は時間とともに薄れるため、評価期日に近い時期の行動だけで評価したり、事実ではなく主観や推測で評価したりしないよう、必要に応じて記録に留めることが有益だとしています(出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド(評価者・調整者編)」)。期中に事実を記録しておかないと、期末に「直近の印象」や「なんとなくの全体像」で一気につけることになり、評価が事実から離れていきます。記録は、評価を印象から守るための土台です。
一次評価がそのまま確定ではない——調整という工程がある
もう1つ知っておきたいのが、調整という工程です。「自分がつけた点がそのまま本人の評価になる」と思い込んでいる人は少なくありませんが、多段階の運用では、評価者の評価を上位者がチェックしてバランスを整えます。評価ガイドでは、調整者が評価者による評価に不均衡がないかを審査し、その観点の1つとして「全体的な水準から見た評価の甘辛などの偏りがないか」を挙げています。こうして不均衡が調整されることで、評価への納得感の向上、適材適所の人材配置、メリハリのある処遇が図られるとされています(出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド(評価者・調整者編)」)。一次評価者の「甘め・辛め」のクセを、二次評価者や人事がならす——この調整工程があるからこそ、部署をまたいだ評価の公平さが保たれます。
そして、プロセスの末端が、確定した評価を本人に伝えるフィードバック(期末面談)です。評価ガイドも、評価・調整・確認が完了したら、評価者が期末面談で評価結果を開示し、指導・助言などのフィードバックを行うとしています(出典:同上)。ただし、この1回の面談を「どう話すか」——伝え方、納得してもらう順番、SBI のような型——は本講座の範囲外です。確定した評価を本人に伝える面談の進め方は評価面談の基本が正本なので、運用の地図としてここに位置づけたうえで、話し方の各論はそちらに送ります。
この章の確認(演習)
自社(または共通例)の評価プロセスを、「①目標設定 ②期中の記録 ③自己評価 ④一次評価 ⑤二次評価・調整 ⑥確定・フィードバック」の6工程に当てはめて、時系列で並べてください。そのうえで、自分が関わっている工程はどれかを確認し、抜けている、または曖昧になっている工程を1つ書き出しましょう。特に「②期中の記録」が仕組みとして存在するか、を点検してみてください。
評価が歪む原因と点検——評価エラー
この章のゴール
評価が歪む代表的な原因(評価エラー)を名前で挙げ、自分の評価を点検できる。
制度が整っていても、評価する人の見方のクセで結果は歪む
ここまでで、評価制度は3つの部品でできた仕組みだと分かりました。ところが、制度が整っていても、評価する人の見方のクセで結果は歪みます。これを評価エラーと呼びます。公的な評価ガイドは、評価エラーを防ぐ観点として「評価における主観などの排除と、具体的・客観的視点に立った評価が重要であり、評価者自身の傾向を認識したうえで評価することも必要」だとしています(出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド(評価者・調整者編)」)。まず、自分がどのクセに陥りやすいかを知ることが、点検の第一歩です。
評価ガイドの「評価者が陥りやすい評価エラー」では、代表的なものとして次が挙げられています(以下、すべて出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド(評価者・調整者編)」)。
- ハロー効果:全体的な印象、あるいは何か一つの印象から、個々の特性を同じように評価してしまう傾向。「明るく人付き合いが良い」という印象だけで、評価項目のほとんどを高くつけてしまう、といった形です。
- 寛大化傾向:ややもすると甘い評価をしてしまう傾向。長く同じメンバーでいると人情から寛大になってしまう、などです。
- 厳格化傾向:評価が基準以上に辛くなる傾向。寛大化傾向と表裏の関係にあります。
- 中心化傾向:大部分を「普通」「平均的」と評価し、優劣の差をつけることを避ける傾向。5段階なら、多くが3に集まる形です。
- 論理的錯誤:評価の段階で自分の論理を持ち込み、関連がありそうな評価要素に同じ・似た評価をつけてしまう傾向。「積極性」が高い人は「粘り強さ」も高いはず、と連動させてしまう、などです。
- 対比誤差:自分の能力を基準にして評価してしまう傾向。自分の得意分野は厳しく、苦手分野は甘く評価してしまう、といった形です。
- 逆算化傾向:処遇(最終的な全体評価)から逆算して、各項目の評価を後付けで帳尻合わせしてしまう傾向。
評価は事実の記録で根拠づける
これらのエラーに共通する処方箋は、はっきりしています。評価を「印象」ではなく「事実の記録」で根拠づけることです。評価ガイドは、評価対象を職務遂行における行動と結果に限り、勤続年数・学歴・年齢・性別といった属人的要素や私的な行動は対象にしないとしています。また、評価期日に近い時期の事実だけをとらえるのではなく、評価期間の全期間にわたる事実に基づいて評価することが必要だとしています(出典:内閣人事局・人事院「人事評価ガイド(評価者・調整者編)」)。第3章で見た「期中の記録」が、ここで効いてきます。記録があれば、「全項目が同じ点になっていないか(ハロー効果や論理的錯誤)」「中央に寄りすぎていないか(中心化傾向)」を、印象ではなく事実に戻って点検できます。
共通例の評価シート(例)で、ある社員の全項目がほぼ同じ点(たとえば全部4)になっているケースを見たら、それは印象に引きずられたハロー効果や論理的錯誤が疑われるサインです。疑わしいと感じたら、その項目について「期中に記録した事実」に戻り、本当にその点が事実で裏づくかを確かめます。ここでのつまずきは、エラーの名前は覚えても「自分はやっていない」と点検を飛ばしてしまうこと、そして印象評価を「直感だから当たっている」と正当化してしまうことです。名前を知ることはゴールではなく、自分の評価を事実で点検する入口にすぎません。
なお、点検して見えてきた評価を、どう本人に伝えて納得してもらうか——事実をもとにフィードバックする型はフィードバックの基本が、確定した評価を伝える面談は評価面談の基本が正本です。本章は「自分の評価を点検する」ところまでで、伝え方の各論はそちらに譲ります。
この章の確認(演習)
自分(または共通例)がつけた評価を1人分見直してください。上に挙げた評価エラーのうち、自分が当てはまりやすいものを1つ選び、なぜそう思うかを一言で書きます。そのうえで、そのエラーを防ぐために、期中に記録しておくべき事実(どんな行動を、いつ、どこに記録するか)を1つ書き出してみましょう。
まとめ
人事評価制度とは、何を評価するか(評価対象)×どの基準で測るか(評価基準)×どう運用するか(評価プロセス)を会社として決め、その結果を処遇と人材育成につなげる仕組みです。覚えて帰る型は「評価制度=評価対象(何を)×評価基準(どの基準で)×評価プロセス(どう運用)→ 処遇と育成へ」。評価対象は成果・能力・情意に分かれ、評価基準は「どの状態なら何点か」の物差し、評価プロセスは目標設定から記録・自己評価・一次評価・調整・フィードバックまで1年かけて回る流れでした。そして、制度が整っても評価者の見方のクセ(評価エラー)で結果は歪むため、評価は事実の記録で根拠づける——これが、自社の制度を説明し、自分の評価を点検するための地図です。
明日の一歩として、自社の評価シートを1枚開き、「評価対象・評価基準・評価プロセス」の3部品に色分けしてみてください。そのうえで、最も曖昧だと感じた部品を1つメモしておきましょう。それが、あなたの会社の評価制度を改善する最初の手がかりになります。さらに進んで、確定した評価を本人に伝える1回の面談に踏み出すなら、評価面談の基本が次のステップです。期初の目標づくりから整えたい場合は目標設定の基本へ進んでください。
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よくある質問
人事評価制度は何のためにあるのですか
社員の働きを一定のルールで評価し、その結果を処遇(昇給・昇格・賞与など)の決定と人材育成の2つにつなげるためです。処遇だけでなく育成の側面があるのが要点です。
評価対象と評価基準はどう違うのですか
評価対象は「何を見るか」(成果・能力・情意など)、評価基準は「どの状態なら何点か」という物差しです。対象を仕分け、基準を具体的な行動の言葉で定めるとブレが減ります。
自分がつけた評価は、そのまま本人の評価になるのですか
多くの場合は確定ではありません。一次評価のあとに二次評価者や人事が甘辛の偏りを調整する工程があり、部署をまたいだ公平さを保つために評価のバランスを整えます。
評価エラーを防ぐにはどうすればよいですか
期中に行動の事実を記録し、評価期間の全期間の事実に基づいて評価することです。印象ではなく記録に戻って、全項目が同じ点や中央に寄っていないかを点検します。