EBITDA入門 | マナビズ

EBITDA入門

EBITDA入門

会議資料に出てくる「EBITDA」。営業利益と何が違うのか、なぜわざわざこの数字を使うのか——読み方からして自信がない。そんな経験はありませんか。営業利益や粗利はなんとなく分かるのに、EBITDA だけは「読み方も中身も曖昧」で、資料に出てきても素通りしてしまう。上層部が「この会社の EBITDA は」と話すたびに、「EBITDA って結局、利益のことだよね?」「なんで営業利益じゃダメなの?」と、心の中でつぶやいていないでしょうか。

でも、安心してください。曖昧なのは、あなたの理解力のせいではありません。EBITDA は新しい利益ではなく、営業利益から「設備投資と会計方針のクセ」を取り除いて、本業の稼ぐ力を横並びに比べるための目安にすぎません。中身さえ分かれば、自分で計算もできます。読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. EBITDA が何を表す指標か(営業利益に減価償却費などを足し戻した、設備投資・会計方針の影響を除いた稼ぐ力の目安)を、自分の言葉で説明できる
  2. 営業利益と減価償却費から EBITDA を簡易式で計算できる
  3. EBITDA が使われる場面(設備の重い会社や会計方針の異なる会社の横並び比較など)と、その限界を説明できる

この講座は最後まで、「営業利益は同じくらいなのに、設備投資の重さが違う2社を EBITDA で横並びに比べる」という、たった1つの場面だけで説明します。この同じ2社を、何を表すか→簡易式で計算する→どんな場面で使い何に注意するか、と一歩ずつ組み立てます。各章末には手を動かす演習も置いているので、書きながら読み進めてみてください。なお、利益そのものの基礎は粗利の基本、EBITDA を使った企業価値評価の全体像は M&A 入門で、それぞれ続きを学べます。まずはこの1本で、「EBITDAとは何か・どう計算するか」を押さえましょう。

この講座のポイント

  • EBITDA が何を表す指標かを、営業利益との違いで説明できる
  • 営業利益と減価償却費から EBITDA を簡易式で計算できる
  • EBITDA が使われる場面と、その限界を説明できる

EBITDAとは何を表す指標か

まずは「EBITDA とは結局なんなのか」をはっきりさせる章です。難しい数字に見えても、出発点は誰もが知っている「営業利益」です。

この章のゴール

この章を読み終えると、EBITDA が何を表す指標かを、営業利益との違いで説明できるようになります。

EBITDAは「足し戻した営業利益」だと押さえる

EBITDA を一言でいうと、営業利益に減価償却費などを足し戻した数字です。新しい種類の利益ではありません。あなたがすでに知っている営業利益に、ひと手間を加えただけのものです。

そもそも EBITDA は、英語の頭文字をつなげた言葉で、Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization(利払い・税・減価償却の前の利益)の略です。読み方は実は決まっておらず、「イービットディーエー」「イービッタ」などいくつかの読まれ方があります。読み方に自信がなくても気にしなくて大丈夫、というのが正直なところです。大事なのは中身、つまり「支払利息・税金・減価償却費などを引く前の利益」だという点です。

この「引く前に戻す」が、足し戻しの正体です。EBITDA は、営業利益から差し引かれている減価償却費などを足し戻して、設備投資の大きさや会計方針(償却の年数など)の影響を取り除き、本業でどれだけ稼ぐ力があるかを見るための目安なのです。

なぜ減価償却費を足し戻すのか

ここで「減価償却費」が出てきました。これは、過去に買った設備の費用を、使う年数に割り振って毎年少しずつ計上する費用のことです。ポイントは、その年に現金が出ていく費用ではないこと。お金はもう設備を買ったときに払い済みで、帳簿の上だけで毎年費用として差し引かれています。

だから、減価償却費を足し戻すと、「設備を多く持っているせいで利益が押し下げられている分」を外して見られます。設備の重さで沈んでいた本業の稼ぐ力が、浮かび上がってくる——これが、わざわざ足し戻す理由です。

営業利益との違いを1文で言えるようにする

営業利益と EBITDA の関係は、こう整理できます。営業利益は「減価償却費を引いたあとの、本業のもうけ」。EBITDA は「その減価償却費などを足し戻して、設備の重さをならした目安」。同じ会社の同じ資料から、両方を出せる関係です。

ここで、この講座でずっと使う2社に登場してもらいましょう。営業利益は同じくらいなのに、設備投資の重さが違う2社です(例)。

  • A社=工場や機械をたくさん持つ、設備の重い会社。減価償却費が大きい。
  • B社=設備をあまり持たない、身軽な会社。減価償却費が小さい。

この2社、営業利益は近い数字だったとします。それでも、A社は減価償却費という重しが大きいぶん、利益が小さく見えがちです。「営業利益が小さい=稼ぐ力が弱い」と早合点すると、設備が重いだけのA社を不当に低く見てしまう。ここに、営業利益だけで比べる落とし穴があります。次章から、この2社を「立ち戻る原点」として使い回します。

なお、「利益=売上−費用」や粗利といった利益の基礎概念そのものをおさらいしたい方は、粗利の基本を扱う関連講座で土台を固められます。この講座では、EBITDA に話を絞ります。

この章の確認(演習)

EBITDA について、次の2つを自分の言葉で1文ずつ書いてください。(1)「EBITDA は、営業利益に何を足し戻したものか」。(2)「なぜ足し戻すのか」。教科書の言葉ではなく、同僚に説明するつもりで書いてみましょう。

EBITDAを計算してみる(簡易式)

EBITDA の中身が分かったら、次は自分で計算してみる章です。式はとてもシンプルで、足し算ひとつで出せます。

この章のゴール

この章を読み終えると、営業利益と減価償却費から EBITDA を簡易式で計算できるようになります。

実務でよく使う簡易式は「営業利益+減価償却費」

実務でよく使う簡易式は、これだけです。

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

第1章の「営業利益に減価償却費を足し戻す」を、そのまま式の形にしたものです。意味と計算がきれいにつながっているので、式を丸暗記するより「足し戻しているんだな」と中身で覚えるほうが忘れません。

ひとつ補足です。EBITDA には、この簡易式のほかにも、当期純利益や経常利益を起点にして支払利息・税金などを足していく、より厳密な組み立て方が複数あります。式が一通りでないのは、EBITDA が会計基準で定められた正式な表示科目ではないためで、目的に応じて算定の仕方が変わるからです。ただ、この講座では深入りしません。まずは「営業利益+減価償却費」で値を出せること、ここをゴールにしましょう。

どの数字を資料のどこから拾うか

計算で必要なのは、たった2つの数字です。営業利益減価償却費。これを手元の資料から拾えれば、あとは足すだけです。

つまずきやすいのは、「営業利益」のつもりで別の利益(経常利益や純利益など)から足してしまうことです。簡易式の起点は、あくまで営業利益。まずそこを確かめます。減価償却費は会社や資料の様式によって載っている場所が変わるので、ここでは「どの行か」を暗記するより、「資料の中から営業利益と減価償却費の2つを探し出す」という拾い方を身につけてください。

EBITDAで見ると順位が入れ替わることがある

では、共通例の2社で計算してみましょう。数字はすべて架空の例です(例)。

  • A社(設備が重い):営業利益 100 + 減価償却費 80 = EBITDA 180
  • B社(身軽):営業利益 110 + 減価償却費 10 = EBITDA 120

営業利益だけで見ると、B社(110)がA社(100)を上回っています。ところが EBITDA で見ると、A社(180)がB社(120)を逆転します。営業利益順と EBITDA 順が入れ替わったわけです。

入れ替わりの正体は、A社の大きな減価償却費(80)です。設備の重さで沈んでいたA社の稼ぐ力が、足し戻しによって浮かび上がった。これこそが、第1章で見た「設備の重さで利益が小さく見える」差の、数字での裏づけです。この「足し戻して横並びに比べる」感覚を、次章の使い所につなげます。

この章の確認(演習)

次の数字(例)で EBITDA を簡易式で計算してください。「営業利益 60/減価償却費 50 の会社」。計算できたら、その EBITDA と営業利益(60)との差が、どこから来たのかを一言で書いてみましょう。

EBITDAはどんな場面で使い、何に注意するか

計算できるようになったら、最後は「いつ使い、何に気をつけるか」です。便利な道具ほど、使いどころと限界をセットで覚えると失敗しません。

この章のゴール

この章を読み終えると、EBITDA が使われる場面と、その限界を説明できるようになります。

設備や会計方針の違いをならして横並び比較する

EBITDA がいちばん力を発揮するのは、設備投資の重さや会計方針・国の違いをならして、会社どうしを横並びに比べたいときです。

第2章で、設備の重いA社と身軽なB社の順位が入れ替わりました。あれがまさに、EBITDA の使い所です。減価償却費の大小に振り回されず、本業の稼ぐ力をそろえて比べられる。だから、通信・鉄道・製造のように設備投資の重い業種の会社を比べるときや、税率や金利の異なる海外企業と比べるときに、よく使われます。買収のときに会社の値段の目安を測る物差しとしても登場します。「設備の重さや国の違いをならして、横並びに見る」——これが EBITDA の役割だと押さえてください。

EBITDAが大きくても手元現金が潤沢とは限らない

一方で、ここがいちばん大事な注意点です。EBITDA が大きいからといって、その会社の手元現金が潤沢とは限りません。

理由は、EBITDA が「設備投資・借入の負担・税金」を引く前の数字だからです。足し戻したということは、裏を返せばそれらを見ていないということ。たとえば設備の重いA社は、いずれ設備を更新するために大きな出費が必要かもしれません。借入が多ければ、稼いだお金の多くが利息の支払いに消えるかもしれません。これらは EBITDA には現れず、別途見る必要があります。EBITDA は現金収支そのものではないのです。

だから、「EBITDA だけで会社の良し悪しを決めない」。これを明確に置いてください。EBITDA が大きい=優良、と短絡するのが、いちばんありがちな落とし穴です。

EBITDAだけで判断しないための一手

実務での持ち方は、シンプルです。EBITDA が便利な場面(設備や会計方針をならした横並び比較)と、EBITDA だけでは見えないもの(設備更新の出費・借入の負担・税金)を、いつもセットで持つこと。共通例でいえば、「A社とB社の本業の稼ぐ力は EBITDA で横並びに見る。ただし、A社の設備更新の出費や借入返済は EBITDA の外にあるので、そこは別途確かめる」となります。

なお、EBITDA を使って会社の値段を測る「EBITDA倍率」や、企業価値評価を含むM&Aの全体プロセスは、この講座のレーンの外です。その全体像は M&A 入門を扱う関連講座で学べます。ここでは「EBITDA とは何か・どう使い、何に注意するか」までを土台にしてください。

この章の確認(演習)

次の2つを、それぞれ1つずつ自分の言葉で書いてください。(1)「EBITDA を使うと便利な場面」。(2)「EBITDA だけでは判断できないこと」。共通例のA社・B社を思い浮かべながら書くと、具体的に書けます。

まとめ

EBITDA は新しい利益ではなく、営業利益に減価償却費などを足し戻した「設備投資・会計方針の影響を除いた、本業の稼ぐ力の目安」でした。簡易式は EBITDA = 営業利益 + 減価償却費。設備の重さや会計方針の違いをならして横並びに比べるのに強い一方、設備投資・借入・税金を無視するので、EBITDA だけで会社の良し悪しは決められません。

EBITDAは“もうけ”ではなく、横並びで比べるためのものさし。 この一言だけ覚えて帰ってください。

明日からの一歩は、シンプルです。次に EBITDA が出てくる資料で、営業利益と減価償却費を探して「営業利益+減価償却費」で値を出してみる。そして「何のためにこの数字を見ているのか」を、一言で言ってみる。それだけで、EBITDA は素通りする言葉ではなくなります。

ここから先、EBITDA が企業価値評価でどう使われるかの全体像は M&A 入門、利益指標そのものの基礎は 粗利の基本の関連講座へと続けられます。

EBITDA簡易計算シート(営業利益+減価償却費の計算欄と、使い所・限界のチェックリスト)を、メルマガ登録で配布しています。次に届く資料の EBITDA を、その場で自分で出してみましょう。

よくある質問

EBITDAの読み方は何ですか

決まった読み方はありません。「イービットディーエー」「イービッタ」など複数の読まれ方があり、どれが正式とは決まっていません。

EBITDAと営業利益は何が違うのですか

営業利益に減価償却費などを足し戻したものが EBITDA です。設備の重さや会計方針の影響をならして、本業の稼ぐ力を見ます。

EBITDAの簡易な計算式を教えてください

実務でよく使う簡易式は「営業利益+減価償却費」です。ほかにも目的に応じた組み立て方が複数あります。

EBITDAが大きい会社は良い会社ですか

EBITDAだけでは判断できません。設備投資・借入・税金を無視するため、EBITDAが大きくても手元現金が潤沢とは限りません。

監修
マナビズ編集部

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