権限委譲入門|部下に仕事を任せるやり方と4つの伝え方 | マナビズ

権限委譲入門|部下に仕事を任せるやり方と4つの伝え方

権限委譲入門|部下に仕事を任せるやり方と4つの伝え方

「これ、自分でやった方が早いんだよな」。そう思って仕事を抱え込み続けた先に残るのは、いつまでも手が空かないリーダーです。たまに任せても「これお願い」とだけ言って渡し、範囲も期限も伝えないまま放置して、出戻りでやり直す。任せられないのは、あなたの能力や性格のせいではないかもしれません。多くの場合、足りないのは権限委譲のやり方——つまり「任せ方」を分けて相手に渡す技術です。

実は、自分が高い成果を出すために必要な力と、チーム全体の成果を上げるために必要な力は別物です(出典:J-Net21「管理職にした社員が能力を発揮できないのですが、どうしてでしょうか?」)。プレイヤーとしての速さは、そのまま「任せて育てる力」にはなりません。だからこそ、任せ方は学んで身につけるものです。この講座では、その権限委譲のやり方を3ステップで身につけます。覚えて帰る型は「『任せる/残す』を仕分ける → 目的・範囲・期限・報告点の4点を渡す → 任せ切って要所だけ見る」。本講座は、1つの仕事をどこまで・どう相手に渡し切るかという受け渡しの実技だけに絞ります。任せた仕事を半年単位の育成計画として積み上げる方法は部下育成入門、管理職の役割の全体像はマネジメントの基礎が正本なので、そちらには踏み込みません。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。任せられない理由(抱え込みと丸投げ)を自分の業務を例に説明できること、自分の業務を「任せる/残す」で仕分けできること、そして任せるときに渡す4点を書き出して相手に渡せることです。共通例として、あるプレイヤー兼任のリーダーが「毎週の定例レポート作成」をメンバー1人に任せ切る場面を、全章で追いかけます。

この講座のポイント

  • 任せられない理由(抱え込みと丸投げ)を、自分の業務を例に説明できる。
  • 自分の業務を「任せる/残す」で仕分けできる。
  • 任せるときに渡す4点(目的・任せる範囲=権限・期限・報告のタイミング)を書き出して相手に渡せる。

なぜ権限委譲がうまくいかないのか——抱え込みと丸投げ

この章のゴール

任せられない理由(抱え込みと丸投げ)を、自分の業務を例に説明できる。

権限委譲とは「範囲を決めて渡し切る」こと

権限委譲とは、仕事を捨てることでも、責任を部下に押し付けることでもありません。OJTでは、人材育成の方法のひとつとして「権限を委譲したり、自分自身で考えて取り組める機会を提供したり」することが挙げられています(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。つまり任せることは、相手に経験を通じて成長してもらうための手段です。実際に仕事を任せて経験させると、「自分でやり遂げた」という達成感がさらなる意欲を引き出します。ただし、同じ出典は「逆に失敗して自信を喪失させる場合もあるため、上司のきちんとした指示・フォローが重要」とも釘を刺しています(出典:同上)。任せる=放っておくこと、ではないのです。

公的な整理でも、権限を委譲すると組織の自律性が高まり、意思決定が早くなって業務効率化が期待できるとされています。一方で「業務や判断の『丸投げ』と捉えられることもあるため、委譲場面や内容をルールとして明確化し、理由とともに説明する等の方策が重要」とされます(出典:中小企業庁「人材活用ガイドライン」)。権限委譲とは、この「範囲を決めて渡し切る」ことだと言えます。

任せられない状態は「抱え込み」と「丸投げ」の2つに割れる

任せられない状態は、大きく2つに割れます。1つは抱え込み。「自分がやった方が早い・確実」と考えて手放さない状態です。共通例のリーダーも、定例レポートを「自分なら(例)短い時間で作れるから」と抱え込み続け、空き時間が生まれません。もう1つは丸投げ。「これお願い」とだけ渡し、何のためにやるのか・どこまで任せるのか・いつまでか・どこで報告するかを伝えず放置する状態です。一度任せたものの様式も期限も伝えず、出戻りした、という景色がこれにあたります。権限委譲は、この抱え込みと丸投げの「間」にあります。

「自分でやった方が早い」「任せると品質が落ちる」というつまずき

ここでのつまずきは2つです。1つは「任せる=楽をする・部下に押し付ける」という罪悪感で手放せないこと。もう1つは、一度の出戻りで「やっぱり自分で」と巻き取ってしまうことです。背景には構造的な事情もあります。公的な調査でも、上司の部下に対する育成・指導が、業務の多忙とともに人材育成上の大きな課題として指摘されています(出典:厚生労働省「平成26年版 労働経済白書」)。手が空かないから任せられず、任せないからますます手が空かない——この悪循環を断つのが、これから学ぶ任せ方です。

この章の確認(演習)

最近「自分でやった方が早い」と抱え込んだ仕事、または「これお願い」と丸投げして出戻った仕事を1つ思い出してください。それが抱え込みと丸投げのどちらだったか、そのときの自分の判断(なぜそうしたか)とあわせて書き出します。そのうえで、「なぜ自分は任せられなかったのか」を自分の言葉で1文にまとめてみましょう。

何を任せ、何を残すか——仕分けの基準

この章のゴール

自分の業務を「任せる/残す」で仕分けできる。

すべてを任せず、すべてを抱えず——「任せる/残す」を線引きする

任せ方の第一歩は、何でも渡すことでも、何でも抱えることでもなく、「任せる/残す」を線引きすることです。公的な整理でも、権限委譲は委譲する場面や内容を明確化することが要とされています(出典:中小企業庁「人材活用ガイドライン」)。ある企業の事例では、社長が一人で抱えていた仕事を「最初は社長が一緒に行いながら、従業員の自発的な取組成果を認めて成功体験を積み重ね、必要なスキルを少しずつ身に付けていってもらうことで権限移譲を進めていった」と紹介されています(出典:中小企業庁「人材活用事例集」)。いきなり全部ではなく、線を引いて、少しずつ渡すのが基本です。

任せやすいのは「手順が決まっている・繰り返す・本人の力の少し上」

では、どんな仕事から任せるか。目安になるのが仕事の難易度です。OJTでは「部下の現有能力よりやや高めの仕事を割り当て、努力を促します」とされ、あわせて「仕事の意義、必要とされる能力、そこで身につけてほしい能力などを明確にし、自覚させたうえで取り組ませる」ことが求められます(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。手順が決まっていて、繰り返しがあり、本人の今の力より少し上——この条件にあう仕事が、任せやすい仕事です。共通例なら、毎週繰り返す定例レポート作成がこれにあたります。一方、その数字をもとに経営会議で報告するような対外的な判断は、自分に残します。最終判断・対外的な責任・機密性の高い仕事は、線引きとして手元に置いておくのが現実的です。

なお、簡単すぎる雑用ばかり渡しても相手は育ちませんし、逆に最終責任ごと丸ごと渡せば、それは丸投げに逆戻りです。任せる仕事の難易度を相手の成長に合わせて半年単位で一段ずつ上げていく“育成の計画”は部下育成入門が、何を手放すかの優先順位の判断軸は優先順位づけの基本が正本です。本講座は「少し上を1つ任せ切る」ところまでに絞ります。

この章の確認(演習)

自分がいま抱えている業務を5つ書き出してください。それぞれを「手順が決まっているか」「繰り返すか」「相手の今の力の少し上か」で見て、「任せる/残す」に振り分けます。そのうえで、任せる側に入った仕事から、次に実際に任せる1つを選びましょう。

任せ切る伝え方——目的・権限・期限・報告点の4点を渡す

この章のゴール

任せるときに渡す4点(目的・任せる範囲=権限・期限・報告のタイミング)を書き出して相手に渡せる。

丸投げと過干渉を防ぐ鍵は「4点を言葉にして渡す」こと

任せる1つが決まったら、いよいよ渡し方です。丸投げと過干渉のどちらにも振れないための鍵は、任せるときに4点を言葉にして渡すこと。この4点には公的な骨格があります。OJTでは仕事を任せる前に「何を/どの程度・水準まで/どのような方法で/いつまでに」を細かく明確にしてから取り組ませるとされ、さらに「仕事の意義」を明確にして自覚させることが求められています(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。これを任せ方に落とすと、次の4点になります。

1つ目は目的。何のためにやるのかという仕事の意義を、一文で伝えます。2つ目は任せる範囲=権限。どこまで自分で決めてよく、どこは相談するのか、その境目を渡します。3つ目は期限。いつまでにを明確にします。4つ目は報告のタイミング。どの節目で確認するかを決めておきます。共通例なら、定例レポートを「目的=チームの進捗を共有するため/範囲=様式と数字の出し方は任せる、公表前に一度見せる/期限=毎週木曜17時(例)/報告点=初回は提出前に一度すり合わせ」のように渡します。

報告のタイミングを決めれば、放置でも過干渉でもなくなる

4点目の報告のタイミングが、放置と過干渉の両方を防ぎます。OJTでは、実際に仕事を始めてから目標や方法が合わない問題が生じうるため「つねに報告させ、相談させることを怠ってはなりません。状況に応じ、早急に、柔軟に、適切に軌道修正を行いながら進めていきましょう」とされています(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。だからといって、途中で何度も口を出せば過干渉になります。公的な事例でも、過干渉を避ける姿勢として「常に管理監督しようとするのではなく、適度な距離を保ちつつ、成長を手助けする姿勢で関わる」「経営層は何かを指示するのではなく、相談に乗り…伴走する関わり方にしている」と紹介されています(出典:中小企業庁「人材活用事例集」)。あらかじめ報告の節目を決めておけば、その節目だけ確認し、間は任せ切れます。これが「任せ切って要所だけ見る」状態です。

つまずきやすいのは、4点を渡さず「これお願い」で済ませること(=丸投げ)、途中で何度も口を出すこと(=過干渉)、そして範囲を曖昧にして責任の所在が消えることです。任せても、結果に最終的な責任を持つのは任せた側だという点は変わりません。だからこそ範囲を言葉にしておきます。なお、任せた後に答えを教えず相手の考えを引き出す問いかけそのものはコーチング入門が正本で、本講座は「報告点を決めて要所で確認する」までに絞ります。

この章の確認(演習)

第2章で選んだ「任せる1つ」について、4点を書き出した“任せ方メモ”を作ってください。①目的を一文で、②任せる範囲(自分で決めてよい/相談する の境目)を、③期限を、④報告のタイミングを、それぞれ具体的に書きます。書けたら、それを実際に相手に渡せる形になっているか読み返しましょう。

まとめ

権限委譲とは、抱え込みでも丸投げでもなく、「任せる/残す」を線引きし、目的・範囲・期限・報告点の4点を渡して任せ切ることです。守るのは「自分でやる速さ」ではなく、「任せ方をきちんと渡せているか」。覚えて帰る型は「『任せる/残す』を仕分ける → 4点を渡す → 任せ切って要所だけ見る」の3ステップ。任せるとは、放すことでも握ることでもなく、範囲を渡し切ることです。

明日の一歩として、次に「手が空かない」と感じたら、抱えている業務を一覧にして「任せる1つ」を選び、目的・範囲・期限・報告点の4点を書いて相手に渡してみてください。それが、権限委譲の最初の実務です。さらに進んで、任せた仕事を一度きりで終わらせず、半年単位で難易度を一段ずつ上げて“育てる計画”にしたい方は、部下育成入門へ進むのが次のステップです。

本講座の特典として、目的・範囲・期限・報告点の4枠を埋めるだけで任せ方が整う「任せ方メモ」テンプレートをご用意しています。テンプレートの入手案内と、任せ方・チームづくりに役立つ実務情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

権限委譲と丸投げは何が違うのですか

範囲を渡すかどうかです。丸投げは目的も範囲も伝えず放置する状態で、権限委譲は目的・範囲・期限・報告点の4点を渡して任せ切ることを指します。

何から任せればよいですか

手順が決まっていて繰り返しがあり、相手の今の力より少し上の仕事からです。最終判断や対外的な責任、機密性の高い仕事は自分に残すのが現実的です。

任せたのに出戻りが多いのはなぜですか

多くは渡す4点が不足しています。特に範囲(どこまで自分で決めてよいか)と報告のタイミングが曖昧だと、放置か過干渉に振れて出戻りが増えます。

任せた後はどこまで確認すればよいですか

あらかじめ決めた報告の節目だけ確認します。常時監督すると過干渉になるため、適度な距離を保ち、節目で軌道修正するのが基本とされています。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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