事業戦略入門 | マナビズ

事業戦略入門

事業戦略入門

「この事業、来期どう伸ばす?」——そう聞かれて、「広告を増やして、値下げもして、ついでに新商品も出して…」と、思いついた打ち手を口にした経験はありませんか。1つの事業・店舗・部門を任されると、施策はいくつも浮かびます。けれど、そこで何を選んで、何をやめたのか。その軸がないまま走り出すと、力が分散して、どれも中途半端に終わりがちです。日々の数字管理や現場改善はできても、「この事業の戦略」を1枚で語れない——その手応えのなさは、あなたの能力の問題ではなく、ただ“選ぶ順番”を持っていないだけかもしれません。

「戦略って、結局がんばって売上を上げることでは?」「打ち手はいくつもあるけど、どれを選べばいいか分からない」「そもそも経営戦略と事業戦略って、何が違うの?」——もしそう感じているなら、この講座はそのためのものです。先に結論を置きます。事業戦略とは、「1つの事業を・どの市場で・どの方向に伸ばすかを選び、やらないことを決めること」です。打ち手を足すことでも、ただ売上を追うことでもありません。戦略の中心にあるのは「足す」ではなく「選ぶ」。これがこの講座でずっと使う背骨です。

読み終えたあなたは、次の4つができるようになります。

  1. 事業戦略と全社(経営)戦略の違いを、自分の言葉で説明できる(本講座は1事業に降りる、と位置づけられる)
  2. 自分の事業の「戦う市場(どの顧客・どの領域で戦うか)」を1つに定められる
  3. 成長の4方向(既存深耕/新市場/新商品/多角化)で、成長の選択肢を見分けられる
  4. 自分の事業の成長戦略を「どの市場で・どの方向に伸ばすか」の1枚にまとめられる

最初に、住み分けを決めておきます。複数の事業をどう束ね、どこに資源を配分するかという全社の地図づくりは経営戦略入門(kouza-119)、選んだ市場でどう勝つか=優位の源泉は競争優位入門(kouza-122)、その事業でどう儲けるか=収益の構造はビジネスモデル入門(kouza-121)で扱います。本講座は、その手前にある「1事業を・どの市場で・どの方向に伸ばすか」だけに絞ります。

そしてこの講座は最後まで、「自分が任された1つの事業(例:地域密着のカフェ事業)を、来期どう成長させるか」という、たった1つの場面だけで説明します。会社全体は飲食・物販・カフェなど複数の事業を持っていて、あなたはそのうちの「カフェ事業(例)」を任された——そんな設定です。この同じ事業を、事業戦略とは何かを知る → 戦う市場を絞る → 成長の方向を選ぶ → 1枚にまとめる、と一歩ずつ組み立てます。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分の担当事業に置き換えながら読み進めてみてください。

この講座のポイント

  • 事業戦略と全社(経営)戦略の違いを自分の言葉で説明でき、本講座が「1事業に降りる」位置づけだと言える
  • 自分の事業の「戦う市場(どの顧客・どの領域)」を1つに定められる
  • 成長の4方向(既存深耕/新市場/新商品/多角化)で、自分の事業の成長の選択肢を見分けられる
  • 自分の事業の成長戦略を「どの市場で・どの方向に伸ばすか」の1枚にまとめられる

事業戦略とは何か(全社戦略との違い)

最初の章では、「事業戦略とは何か」をはっきりさせます。ここを取り違えると、考える土俵そのものがズレてしまうので、まずは言葉の整理から始めます。

この章のゴール

この章を読み終えると、事業戦略と全社(経営)戦略の違いを自分の言葉で説明でき、本講座が「1事業に降りる」位置づけだと言えるようになります。

「戦略=がんばって売上アップ」を、いったん手放す

事業戦略の話に入る前に、よくある誤解をひとつ手放しておきましょう。それは「戦略=とにかく売上を上げること」「戦略=打ち手をたくさん並べること」という捉え方です。

打ち手を思いつくのは大事なことですが、打ち手ので勝負するのは戦略ではありません。広告も値下げも新商品も全部やる、というのは、裏を返せば「何も選んでいない」状態です。資源(人・お金・時間)は限られているので、全部に手を出すと、どれも薄くなります。戦略の本質は「やることを足す」より、「伸ばす方向を選び、やらないことを決める」ことにあります。この講座では、これを最初から最後まで判断のものさしにします。

少し言い換えてみます。施策を10個並べたリストは、一見すると「がんばっている計画」に見えます。けれど、そのリストのどこにも「これはやらない」と書かれていなければ、それは計画であって戦略ではありません。戦略には必ず「捨てた選択肢」が裏側にあります。広告に予算を寄せると決めたなら、その分どこかを削っている。新しい客層を狙うと決めたなら、今の客層への手当ては後回しにしている。選ぶとは、同時に何かを諦めること——この感覚を持っているかどうかが、施策の羅列と戦略を分けます。だからこの講座では、最後に必ず「やらないこと」を1つ書く、というところまでをワンセットにします。

全社戦略と事業戦略は、どこが違うのか

「経営戦略と事業戦略って何が違うの?」——この問いに答えるには、扱う階層で分けて考えると分かりやすくなります。

経営戦略は、ふつう次の3つの階層で整理されます。いちばん上が全社(経営)戦略=複数の事業をどう束ね、どこに資源を配分するかという「上位の地図」。その次が事業戦略=その中の1つの事業を、どの市場で・どう成長させるか。いちばん下が機能戦略=営業・生産・調達といった部門ごとの実行レベルの戦略です。本講座が扱うのは、真ん中の事業戦略です。

同じ「戦略」という言葉でも、全社戦略と事業戦略では見ている範囲が違います。全社戦略は会社全体を見て、どの事業を伸ばし、どこから手を引くかを決めます。事業戦略は、その地図の中の1つのマスに降りて、その事業をどう成長させるかを決めます。なお、扱う事業が1つしかない会社では、全社戦略と事業戦略が事実上ひとつになることもあります。だからこそ本講座は、「複数事業の地図」ではなく「1事業の伸ばし方」に降りる側だと、最初にはっきりさせておきます。

なぜこの区別にこだわるのか。それは、階層を取り違えると、せっかく考えた打ち手が空回りするからです。たとえば「うちの事業、どう伸ばそう」と悩んでいるのに、頭の中では「そもそも会社はどの事業に力を入れるべきか」という全社の話をぐるぐる考えてしまう——これだと、自分の手の届かない決定を相手に答えが出ず、時間だけが過ぎます。逆に、会社全体の方向性を決める場で、自分の担当事業の細かい施策ばかり話しても、議論はかみ合いません。いま自分が立っている階層はどこかを意識するだけで、考えるべき問いと、考えても仕方ない問いが切り分けられます。本講座は、あなたが「1事業を任された」という、いちばん打ち手を動かしやすい階層に的を絞ります。

いま考えている問いを、「全社」か「1事業」かに仕分ける

最初の一手は、シンプルです。いま自分が考えている問いが、「全社の問い」なのか「1事業の問い」なのかを仕分けること。これだけで、考える土俵を取り違えなくなります。

「全社の問い」とは、事業の足し引きです——どの事業を残し、どれを畳み、どこに新しく出るか。「1事業の問い」とは、選んだ1つの事業の伸ばし方です——この事業を、どの市場で・どの方向に伸ばすか。本講座が扱うのは、後者です。

カフェ事業(例)で具体化してみましょう。「カフェ事業に投資を増やすか、それとも物販事業を畳むか」——これは複数事業を見比べる全社の問いです。一方、「カフェ事業を来期、どの市場で・どの方向に伸ばすか」——これが1事業の問いであり、本講座のテーマです。前者の地図づくりは、複数事業をどう束ね、どこに資源を配分するかを扱う経営戦略入門(kouza-119)の領域なので、そちらに譲ります。この「カフェ事業」を、以降の全章で立ち戻る原点として使っていきます。

見分け方は単純です。問いの主語が「会社」なら全社の問い、「この事業」なら1事業の問い。「うちはどの事業に賭けるべきか」は会社が主語、「カフェ事業をどう伸ばすか」はこの事業が主語です。迷ったら、その問いに答えを出せるのは誰か——経営トップか、それとも事業を任された自分か——を考えると、どちらの土俵かが見えてきます。本講座が扱うのは、あなた自身が答えを出して動かせる、後者の問いです。

この章の確認(演習)

自分の担当領域について、紙でもメモでもよいので、次の2つを1つずつ書き分けてください。(1)「全社の問い(どの事業を残す・畳む・始めるか)」を1つ、(2)「1事業の問い(自分が任された事業を、どの市場で・どの方向に伸ばすか)」を1つ。書けたら、自分がふだん時間を使っているのはどちらの問いか、丸をつけてみましょう。

戦う市場を決める(どこで戦うか)

事業戦略が「1事業の伸ばし方」だと分かったら、次はその第一歩です。「どう伸ばすか」を考える前に、まず「どこで戦うか」を決めます。順番を逆にしないことが、この章のポイントです。

この章のゴール

この章を読み終えると、自分の事業の「戦う市場(どの顧客・どの領域)」を1つに定められるようになります。

成長の方向を選ぶ前に、土俵を1つに絞る

成長の方向(次章で扱います)を考える前に、まず戦う土俵を1つに絞るのが先です。なぜなら、戦う相手も求められる価値も決まっていないのに「どう伸ばすか」だけ考えても、打ち手が宙に浮くからです。

ここでやめてほしいのが、「全員が顧客」という発想です。誰にでも喜ばれようとすると、一人ひとりに届く価値はかえって薄まります。広く狙うほど薄くなる——逆に言えば、絞ることが力になるということです。「みんなに来てほしい」ではなく「この人に来てほしい」を1つ決める。これが市場を決めるということです。

「誰に・どんな価値で・どの範囲で」の3点で言い切る

では、戦う市場はどう決めるのか。次の3点で「言い切る」と決めやすくなります。

  • 誰に——想定する顧客を、具体的に1つに絞る
  • どんな価値で——その人が本当に求めている価値を、1つ言う
  • どの範囲で——戦う範囲(地域・商品の幅など)を決める

「言い切る」というのがコツです。ぼんやり「幅広い層に」「いいものを」では、決めたことになりません。この3点が定まると、後で考える打ち手が自然に絞られてきます。逆に、ここが曖昧なまま打ち手から考えると、思いつきの施策が際限なく増えてしまいます。

3点のうち、特につまずきやすいのが2つ目の「どんな価値で」です。ここで「おいしいコーヒー」「丁寧な接客」のような言葉を置きたくなりますが、それは多くの店が掲げていて、あなたの事業を選ぶ理由にはなりません。コツは、その顧客が困っている場面を1つ思い浮かべ、それをどう解くかで価値を言うこと。カフェ事業(例)なら、在宅ワーカーが「家だと集中できない、でもオフィスは遠い」という場面で困っている——だから価値は「おいしさ」ではなく「集中できる作業場所」になります。価値とは、商品の良さではなく、顧客の困りごとの裏返しだと考えると、言い切りやすくなります。

「どう勝つか」は、ここでは深掘りしない

市場を絞ると、すぐに「で、その市場でどうやって勝つの?」という問いが出てきます。とても自然な疑問です。ただ、その「どう勝つか=優位の源泉」は、本講座では深掘りしません。ここでは「戦う場所を1つに決める」ところまでで線を引きます。

「絞った市場で何を武器に勝つか」という優位の源泉のつくり方は、競争優位入門(kouza-122)でじっくり扱います。本講座では、まず戦う場所を決め、次章で「どの方向に伸ばすか」へ進みます。

この章の確認(演習)

第1章で選んだ自分の事業について、戦う市場を1文で書いてください。型は「○○な顧客に・○○の価値で・○○の範囲で戦う」です。たとえばカフェ事業(例)なら、「近隣の在宅ワーカーに・集中できる作業場所という価値で・店舗まわりの徒歩圏で戦う」となります。書けたら、その文が「全員が顧客」になっていないか、価値が「いいもの」のような誰にでも当てはまる言葉で止まっていないか、見直してみましょう。

カフェ事業(例)で言えば、戦う市場を「近隣の在宅ワーカーの“集中できる作業場所”」に絞ります。万人向けの“ふつうのカフェ”をやめ、①誰に=近隣の在宅ワーカー、②どんな価値で=集中できる作業場所、③どの範囲で=店舗まわりの徒歩圏、と3点で言い切る。ここまで決めて初めて、次の「どの方向に伸ばすか」が考えられるようになります。

成長の4方向から選ぶ(成長の型)

戦う市場が決まったら、いよいよ「どの方向に伸ばすか」です。ここで役立つのが、成長の選択肢を整理する「型」です。思いつきで並べていた打ち手が、実はたった4つの方向に整理できる——それを見ていきます。

この章のゴール

この章を読み終えると、成長の4方向(既存深耕/新市場/新商品/多角化)で、自分の事業の成長の選択肢を見分けられるようになります。

1事業の成長は、大きく4つの方向に整理できる

1つの事業の伸ばし方は、「商品」と「市場」のそれぞれを「いまのまま」か「新しくするか」で組み合わせると、大きく4つの方向に整理できます。

  • 既存深耕=いまの商品 × いまの市場(今いる顧客にもっと買ってもらう)
  • 新市場開拓=いまの商品 × 新しい市場(同じ商品を、新しい客層・地域へ)
  • 新商品開発=新しい商品 × いまの市場(今の顧客に、新しい商品を出す)
  • 多角化=新しい商品 × 新しい市場(商品も客も、両方新しい)

この4方向は、成長の選択肢を整理する代表的な枠組み(成長マトリクス)として知られています。便利なのは、思いつきで挙げた打ち手も、必ずこの4つのどれかに収まるという点です。「広告を増やす」「値下げする」は既存深耕、「新しい客層を狙う」は新市場開拓、というように、バラバラだった施策を同じ地図の上に並べられます。

左上ほどリスクが低く、右下ほど高い

4方向には、取り組みやすさの濃淡があります。一般に、いまの商品・市場に近いほど(既存深耕)リスクは低く、商品も市場も新しい多角化はリスクが高いとされています。今あるものを土台にできるほど、勝手が分かっていて、失敗の幅が小さいからです。

ここで気をつけたいのが、「新しいこと=かっこいい」と感じて、いきなり一番遠い方向(多角化)に飛んでしまうことです。新しい商品を新しい市場で売るのは、両方が未知数で、最も難しい挑戦になります。原則は、いきなり一番遠い方向に飛ばないこと。まずは手前の方向から検討するのが堅実です。

なぜ手前から検討するのか。それは、今あるものを土台にできる方向ほど、すでに持っている強みや顧客との関係を再利用できるからです。既存深耕なら、相手はすでに自分を知っている顧客で、商品も使い慣れたもの。だから「もう一度来てもらう」「もう少し買ってもらう」工夫に集中できます。一方、多角化では、顧客との関係もゼロ、商品づくりのノウハウもゼロから——強みの貯金がほとんど効きません。だからといって多角化が悪いわけではなく、伸びしろが大きい方向でもあります。大事なのは、遠い方向ほどリスクも大きいと分かったうえで選ぶこと。漠然と「新しいことをやりたい」で飛びつくのと、4方向を見比べて「あえて遠い方向に賭ける」と決めるのとは、まったく別物です。

4方向に振り分けてから、実現性とリスクで比べる

具体的な手順はこうです。①いまの商品・市場を真ん中に置く。②4方向それぞれに「もし伸ばすなら何をするか」を1つずつ書く。③実現性とリスクで比べる。大事なのは、1つに思い込む前に、まず4方向すべてに案を出してみることです。

カフェ事業(例)で振り分けてみましょう。第2章で「在宅ワーカー × 集中できる作業場所」に絞った、その事業を起点にします。

  • 既存深耕=いまの客の来店頻度を上げる
  • 新市場開拓=法人の会議利用を新しく開拓する
  • 新商品開発=コーヒー豆の物販を足す
  • 多角化=まったく別の業態に出る

こうして4つを並べると、「多角化は今の自分たちには遠い」「既存深耕なら明日から動ける」といった違いが見えてきます。最初から1つに決め打ちしていたら、この比較はできませんでした。並べてから選ぶ——これが「見分ける」ということです。

この章の確認(演習)

自分の事業の成長案を、4方向(既存深耕/新市場/新商品/多角化)に1つずつ振り分けて書き出してください。4つすべてのマスを、無理にでも1案ずつ埋めるのがポイントです。書けたら、リスクが低いと思う順に並べ替えてみましょう。いきなり多角化から手をつけようとしていないか、自分でチェックできます。

戦略を1枚にまとめて選ぶ

ここまでで、戦う市場(第2章)と、成長の方向(第3章)がそろいました。最後の章では、この2つを束ねて「戦略」の形にします。バラバラに持っているだけでは、まだ戦略とは呼べません。

この章のゴール

この章を読み終えると、自分の事業の成長戦略を「どの市場で・どの方向に伸ばすか」の1枚にまとめられるようになります。

市場と方向は、束ねて初めて戦略になる

戦う市場と成長の方向は、別々に持っていても戦略になりません。「在宅ワーカーを狙う」「既存深耕で伸ばす」——この2つを1枚に束ねて初めて、「在宅ワーカー向けに、既存深耕で伸ばす」という1つの戦略になります。

そして、束ねるときに必ずやることがあります。それは「やらないことを決める」ことです。冒頭からの背骨、覚えていますか——戦略とは、伸ばす方向を1つ選び、やらないことを決めること。4方向すべてを「いつかやる」と残しておくのは、選んだことになりません。1つ選ぶとは、残りを「今はやらない」と決めることとセットです。

1枚に書く4項目

戦略を1枚にまとめるとき、書くのは次の4項目です。これを「戦略1枚シート」と呼ぶことにします。

  1. 狙う市場——誰に・どんな価値で・どの範囲で(第2章で決めたもの)
  2. 選んだ成長方向——4方向から1つ(第3章で選んだもの)
  3. まずやる一手——その方向で、最初に着手する具体的な1つ
  4. やらないこと——あえて捨てる方向

このうち4つ目の「やらないこと」を書けて初めて、「選んだ」と言えます。1〜3だけだと、まだ「やりたいこと」を並べただけになりがちです。捨てる方向を1つ言葉にすることで、選んだ一手に力が乗ります。

「やらないこと」は、嫌いな方向や苦手な方向を書く欄ではありません。第3章で並べた4方向のうち、魅力はあるけれど今期は手を出さないと決めたものを書く欄です。たとえば「新市場開拓(法人の会議利用)は筋が良さそうだが、今期は既存深耕に集中するので、来期以降に回す」と書ければ、それは立派な「やらないこと」です。捨てるとは、永遠に否定することではなく、順番をつけて後回しにすること。こう考えると、「やらないこと」を書くハードルはぐっと下がります。そして、この一文があるおかげで、半年後に「あれもこれも中途半端」になる事態を防げます。

「全部やる」は戦略ではない

戦略づくりで最も多い失敗は、方向を選ばず「全部やる」としてしまうこと、そして1枚にまとめず施策を羅列して終わってしまうことです。資源は有限です。あれもこれもと広げると、どの方向も中途半端になります。

カフェ事業(例)を1枚にまとめてみましょう。

  • 狙う市場=在宅ワーカー向け
  • 選んだ成長方向=既存深耕
  • まずやる一手=回数券を導入して、来店頻度を上げる
  • やらないこと=多角化(別業態への進出)は今はやらない

第2章で絞った市場と、第3章で選んだ方向が、そのまま1枚に流れ込んでいるのが分かります。これで「カフェ事業を来期どう伸ばすか」に、はっきり答えられる状態になりました。

なお、こうして選んだ市場で具体的に何を武器に勝つか(優位の源泉)は競争優位入門(kouza-122)、その事業でどう収益を生む仕組みにするか(収益の構造)はビジネスモデル入門(kouza-121)で、それぞれ続きを学べます。本講座の「1枚」は、その入口になります。

この章の確認(演習)

自分の事業の戦略を、「市場/成長方向/最初の一手/やらないこと」の4項目で1枚に書いてください。特に4つ目の「やらないこと」を空欄のままにしないこと。1つでも「今はやらない」を言葉にできたら、それがあなたの最初の事業戦略です。書けたら、上司や同僚にそのまま見せられる状態か、声に出して読んでみましょう。

まとめ

事業戦略とは、「1つの事業を・どの市場で・どの方向に伸ばすかを選ぶこと」でした。打ち手を足すことでも、がんばって売上を上げることでもなく、伸ばす方向を1つ選び、やらないことを決めること。型は、たった3ステップです。戦う市場を決める → 成長の4方向から1つ選ぶ → 1枚にまとめる

戦略とは、伸ばす方向を1つ選ぶこと。 この一文だけ、覚えて帰ってください。

明日からの一歩は、シンプルです。自分が任された事業について、「市場/成長方向/最初の一手/やらないこと」の4項目を、1枚に書いてみる。完璧でなくてかまいません。「やらないこと」を1つ決められたら、それだけで、打ち手の羅列から戦略へと一歩進めます。

ここから先は、複数事業を束ねる全社の地図づくりは経営戦略入門(kouza-119)、選んだ市場でどう勝つかは競争優位入門(kouza-122)、その事業でどう儲けるかはビジネスモデル入門(kouza-121)へと、続けて学べます。

本講座で使った「戦略1枚シート」(市場/成長方向/最初の一手/やらないこと)のテンプレを用意しました。メルマガ登録でダウンロードして、自分の事業で1枚を書き上げてみてください。実務での使い方の続きも、登録者向けにお届けします。

よくある質問

経営戦略と事業戦略の違いは何ですか

全社の複数事業をどう束ね資源配分するかが経営戦略、その1事業をどの市場で・どの方向に伸ばすかが事業戦略です。

事業戦略はどう立てればよいですか

戦う市場を1つに決め、成長の4方向から1つ選び、市場・方向・最初の一手・やらないことを1枚にまとめます。

成長の方向はいくつありますか

既存深耕・新市場開拓・新商品開発・多角化の4方向に整理でき、いまの商品・市場に近いほどリスクは低めです。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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