AI倫理入門|AI利用のリスクと配慮を正確さ・公正さ・誠実さで点検する | マナビズ

AI倫理入門|AI利用のリスクと配慮を正確さ・公正さ・誠実さで点検する

AI倫理入門|AI利用のリスクと配慮を正確さ・公正さ・誠実さで点検する

「AIが書いたんだから、合ってるでしょ」。そう言って外に出した文章が、もし間違っていたら。誰かを傷つける言い回しだったら。あるいは、他人の作品にそっくりだったら——その責任は、誰のものでしょうか。生成AIは、調べものや文案づくり、画像の作成まで、驚くほど手早く手伝ってくれます。けれど便利だからこそ、その出力を確かめずにそのまま外へ出すと、思わぬところで誰かや自分の仕事に迷惑をかけることがあります。

AI倫理と聞くと難しい専門論のように感じますが、本講座で扱うのはもっと身近なことです。AI倫理とは、AIを使った結果が他人や仕事に与える影響に配慮すること。とりわけ、AIの出力を「自分が外へ出す」前に、一度立ち止まって点検することです。配慮のポイントは3つに束ねられます。正確さ(鵜呑みにしない)・公正さ(不当に扱わない)・誠実さと権利(隠さない・侵さない)。この3点で立ち止まれば、AIのリスクは大きく減らせます。

最初に、この講座が扱う範囲をはっきりさせます。本講座は「AIの出力を外へ出す前の配慮」だけに絞ります。社内の情報をAIに入力してよいかどうかの線引き(情報漏えいの防止)は、対になる入力側のテーマとしてAIリテラシーと情報セキュリティが正本です。何が個人情報かやその取扱いルールは個人情報保護の基本、社内規程やコンプライアンス全般の判断はコンプライアンス入門へ。本講座はそこには踏み込みません。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。AIを使うときのリスクと配慮を「正確さ・公正さ・誠実さ」の3観点で自分の言葉で説明できること。AIの出力を外へ出す前に、事実が正しいか・誰かを不当に扱っていないかを点検し判断できること。そして、AI利用を隠さず、出した責任は使った自分にあると捉えて、配慮した行動を選べることです。本講座では、AIに作らせた「取引先A社向けの紹介文(架空)」を社外メールに使う前に、この3点で点検する場面を全章で追いかけます。

この講座のポイント

  • AIを使うときのリスクと配慮を「正確さ・公正さ・誠実さ」の3観点で、自分の言葉で説明できる。
  • AIの出力を外へ出す前に、事実が正しいか・特定の人を不当に扱っていないかを点検し、判断できる。
  • AIで作ったものを使うときに、AI利用を隠さず・責任は使った自分にあると捉えて、配慮した行動を選べる。

AIを使うときに何が起きうるか——AI利用のリスクと倫理

この章のゴール

AIを使うときのリスクと配慮を「正確さ・公正さ・誠実さ」の3観点で、自分の言葉で説明できる。

AI倫理は専門論ではなく「使った結果が他人や仕事に与える影響への配慮」

AI倫理は、難しい理屈や特別な資格の話ではありません。AIを使った結果が、他人や自分の仕事にどんな影響を与えるかに配慮すること——それが本講座で言うAI倫理です。実際、国の指針もこの「配慮」を具体的に挙げています。経済産業省と総務省の「AI事業者ガイドライン」や、内閣府の「人間中心のAI社会原則」は、AIを使うときに守るべき配慮として、公平性・透明性・アカウンタビリティ(結果に対する説明責任)などを掲げています(出典:経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン」、内閣府「人間中心のAI社会原則」)。本講座では、こうした配慮を入門者向けに「正確さ・公正さ・誠実さ」の3つに束ねて扱います。

リスクは3つ——正確さ・公正さ・誠実さと権利

1つ目は正確さのリスクです。生成AIは、事実に基づかない誤った情報を、もっともらしく出すことがあります。これをハルシネーション(幻覚)と呼びます(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。A社向け紹介文に「もっともらしいが出典のない数字」が混じる、というのがこのリスクです。2つ目は公正さのリスクです。学習したデータの偏りから、特定の人や立場を決めつけ、不当に不利に扱う言い回しが出ることがあります。国の指針も、人種・性別・国籍・年齢・信条などの背景を理由に、人々が不当な差別を受けないよう求めています(出典:「AI事業者ガイドライン」「人間中心のAI社会原則」)。3つ目は誠実さと権利のリスクです。AIで作ったと伝えずに自作のように出したり、他人の文章・作品・顔などの権利を侵してしまうことです。

「AIが作ったから自分の責任ではない」というつまずき

ここで多くの人がつまずくのが、「AIが作ったものだから、間違っても自分の責任ではない」という考えです。けれど、その出力を選んで外へ出したのは自分です。便利さに気を取られていると、出力が他人や仕事にどんな影響を与えるかに目が向かなくなります。だからこそ、出力を見たら「これを外に出して、内容は正しいか・誰かを不当に扱っていないか・隠していないか/権利を侵していないか」の3点で一度立ち止まる習慣が要ります。なお、そもそも社内の情報をAIに入れてよいかという入力側の線引きは、AIリテラシーと情報セキュリティで扱います。

この章の確認(演習)

最近あなたがAIに手伝ってもらった作業を1つ思い出してください。その出力を外へ出すとしたら、「正確さ・公正さ・誠実さ」の3つの観点のうち、どれにリスクがありそうかを当てはめてみましょう。そのうえで、「AI倫理とは何か」を3つの観点を使って自分の言葉で1文にまとめてみてください。

AIの出力を鵜呑みにしない——正確さと公正さへの配慮

この章のゴール

AIの出力を外へ出す前に、事実が正しいか・特定の人を不当に扱っていないかを点検し、判断できる。

AIは「それらしい文章」を作るが、事実を保証はしない

生成AIは、それらしく自然な文章を作るのが得意です。しかしそれは、事実を保証してくれることとは別です。ハルシネーションは技術で完全には抑えられないため、利用する側が出力の正しさを確かめることが望ましいとされています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。やっかいなのは、正しそうな文章の中に誤りが自然に紛れ込むため、見た目では気づきにくいことです。共通例で言えば、A社向け紹介文の「業界シェア(例)◯%」を、出典を当たらずそのまま貼ってしまう——これが正確さの失敗です。だから手順はこうなります。数字・固有名詞・出来事といった事実は、元の出典で確かめる。確かめられないものは外す。「それっぽいから合っている」で外に出さないことが、正確さへの配慮です。

学習データの偏りが、特定の属性への決めつけになりうる

正確さと並ぶのが公正さです。AIの出力には、学習したデータの偏りから、特定の人や立場を一括りにする決めつけが混じることがあります。国の指針は、AIの出力が公平性を欠かないよう、AIに単独で判断させるだけでなく、適切なタイミングで人間の判断を介在させることを求めています(出典:「AI事業者ガイドライン」)。A社向け紹介文に「◯◯な立場の人はこうだ」と決めつける表現が紛れているのに、それを見落として外へ出す——これが公正さの失敗です。手順は、人や属性に触れる表現について「特定の人を不当に決めつけ、不利にしていないか」を見直すこと。自分と違う立場の人への決めつけは気づきにくいので、意識して見ます。直せない、あるいは判断に迷うものは、外すか確認に回します。

なお、AIに入れる情報そのものの線引き(情報漏えいの防止)はAIリテラシーと情報セキュリティ、個人を特定できる情報の取扱いルールは個人情報保護の基本が正本です。本章は、出力を外へ出す前に正確さと公正さを点検することに絞ります。

この章の確認(演習)

手元にあるAIの出力(無ければA社向け紹介文を思い描いて)から、「出典を確かめるべき箇所」を1つと、「人への決めつけになりうる箇所」を1つ、それぞれ見つけて印をつけてください。そのうえで、その2か所をどう処理するか(確かめる/直す/外す/確認に回す)を決めてみましょう。

AIで作ったものを使うときの配慮——誠実さ・権利・責任

この章のゴール

AIで作ったものを使うときに、AI利用を隠さず・責任は使った自分にあると捉えて、配慮した行動を選べる。

「自分が外へ出す」時点で、結果の責任は使った自分(と会社)に及ぶ

AIの出力を外へ出すかどうかを最後に決めるのは、人です。国の指針も、AIの利用にあたっては人が自らどう利用するかを判断・決定し、その結果については利用に関わった人たちが適切に分担して責任を負うべきだとしています(出典:内閣府「人間中心のAI社会原則」)。つまり「AIが作ったから自分は無関係」ではなく、外へ出すという行為をしたのは自分であり、その結果には責任が及びます。覚えて帰るひと言はこうです——AIは下書きを作る。出す責任は、あなたにある。

隠さない・権利を侵さない・最後は人が判断する

ここでの配慮は3つです。1つ目は、AI利用を不当に隠さないこと。国の指針も、AIを利用している事実について用途や状況に応じた適切な説明が得られるべきだとしています(出典:内閣府「人間中心のAI社会原則」、経済産業省・総務省「AI事業者ガイドライン」)。求められたら「これはAIで下書きしました」と言える状態にし、社内ルールがあればそれに従います。2つ目は、他人の権利を侵していないか確かめること。文化庁の整理では、AIで生成したものが既存の作品と似ていて(類似性)、かつその作品をもとに作られたと言える場合(依拠性)には、著作権の侵害となりうるとされています(出典:文化庁「AIと著作権に関する考え方について」)。また、他人の顔や名前を無断で宣伝や商品に使うと、肖像権やパブリシティ権を侵すことがあります(出典:BUSINESS LAWYERS/最高裁判例の解説)。A社向けに添える画像が、誰かの作品や顔に似ていないかを確かめずに社外へ出す——これが権利の失敗です。不確かなら使わない、が安全です。3つ目は、最後は人が「出す/出さない」を判断すること。法令や規程の細かな中身に踏み込んだ判断が必要なときは、コンプライアンス入門を頼り、迷えば確認に回します。

この章の確認(演習)

AIで作った成果物(紹介文や画像など)を1つ想定してください。それを外へ出す前に、「①AI利用を隠していないか ②他人の権利(作品・顔・名前)を侵していないか ③人が最終的に判断したか」の3つのチェックを通します。そのうえで、出す/直す/やめるのどれを選ぶかを決め、その理由を一言で説明してみましょう。

まとめ

AI倫理とは、AIを使った結果が他人や仕事に与える影響への配慮です。観点は3つ——正確さ(鵜呑みにしない)・公正さ(不当に扱わない)・誠実さと権利(隠さない・侵さない)。AIの出力を外へ出す前に、この3点で一度立ち止まる。それだけで、リスクは大きく減らせます。そして忘れてはいけないのは、出した責任は使った自分にあるということです。

明日の一歩として、次にAIの出力を外へ出す前に、「正しいか・誰かを不当に扱っていないか・隠していないか/権利を侵していないか」の3点を確かめてから出してみてください。AIに「入れてよい情報」の線引き(情報漏えいの防止)という、本講座と対になる配慮を知りたい方は、AIリテラシーと情報セキュリティへ進むのが次のステップです。

本講座の特典として、AIの出力を外へ出す前に「正確さ・公正さ・誠実さ」の3点を点検できる「AI利用チェックシート」をご用意しています。無料会員登録で、チェックシートのダウンロードと、AIを安心して使うための実務情報をお届けします。

よくある質問

AI倫理とは、結局どういう意味ですか

AIを使った結果が他人や仕事に与える影響への配慮です。出力を外へ出す前に、正確さ・公正さ・誠実さの3点で立ち止まることを指します。

ハルシネーションには、どう対処すればよいですか

出力の数字や固有名詞を、元の出典で確かめることです。ハルシネーションは技術で完全には防げないため、検索などで確認することが望ましいとされています。

AIで作ったことは、必ず伝えないといけませんか

用途や社内ルールによります。少なくとも、求められたら「AIで作った」と言える状態にし、社内のルールがあればそれに従うのが基本です。

AIで作った文章や画像を使うと、著作権の問題になりますか

他人の作品に似ていて、かつそれをもとに作られたと言える場合は侵害となりえます。顔や名前の無断使用も権利を侵すため、不確かなら使わないのが安全です。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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