会議ファシリテーション入門

会議ファシリテーション入門

「じゃあ、この進め方で。今日の進行、お願いね」——そう言われて、定例会議の進行役を任されたあなた。当日、議題を読み上げて「では、何かご意見はありますか?」と聞いてみる。けれど、返ってくるのはシーンとした沈黙か、逆にあちこちに話が広がって、気づけば30分の予定が50分に。声の大きいベテランばかりが話し、若手は最後まで黙ったまま。そして時間切れになると、「うーん、じゃあ、また来週もう一度考えましょう」。結局、何も決まらない——こんな会議に、心当たりはありませんか。

同じ進行役でも、30分ちょうどで「来月のキャンペーンはSNS割引でいきます。担当は田中さん、期限は今月末」と決め切って終わる人がいます。その違いは、話術がうまいかどうかでも、特別なセンスがあるかどうかでもありません。会議が始まる前に、何を決める会議か(目的)・どう進めるか(進行)・どう決めるか(合意形成)を設計しているかだけです。これこそが、ファシリテーションの正体です。

ファシリテーションというと、その場で巧みに議論をさばく話術のように思うかもしれません。でも実際は逆で、会議の良し悪しは、始まる前の設計でほとんど決まります。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. ファシリテーションを「その場の話術」ではなく、会議の目的・進行・合意形成を“始まる前に”設計して、時間内に決め切る段取りの技術として、ただの司会との違いを含めて説明できる
  2. 1つの会議について、目的(ゴール=何を決めるか・終了条件)とアジェンダ(時間配分=タイムボックス)作成でき、意見を広げる「発散」と絞る「収束」を時間で分けて進行を設計できる
  3. 決め方を事前に選び、議論を1つに収束させて合意をつくり決定事項・担当・期限の3点をその場で確定して、会議を時間内に締められる

この講座は最後まで、「あるチームの定例会議」という、たった1つの会議だけで説明します。6人チームの、毎週金曜午後の30分(15時00分開始〜15時30分終了)の定例会議。今週のテーマは「来月の販促キャンペーンをどうするか」です。今は前述のとおり、毎回50分に延び、若手は黙り、脱線し、「また来週」で何も決まらない会議。この同じ会議を、ファシリテーションとは何か→目的を設計する→進行を設計する→合意形成を設計する、と1段ずつ組み上げて、最後は30分ちょうどで「決まったこと・担当・期限」が揃った状態に変えていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、書きながら読み進めてみてください。まずは、この設計をすぐ自分の会議でも回せるよう、会議設計テンプレートを無料でダウンロードしておくと、各章の内容をそのまま埋めながら進められます。

第1章:ファシリテーションとは(会議を「決める場」に変える設計の技術)

まずは「また来週」で終わる会議の正体を、はっきりさせましょう。ファシリテーションという言葉を、自分の会議で使えるようにする土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、会議ファシリテーションが「その場の話術」ではなく「会議の目的・進行・合意形成を始まる前に設計して時間内に決め切る段取りの技術」だと、ただの司会との違いを含めて説明できるようになります。

「また来週」で終わる会議の正体

あなたの進行の話術が下手なわけではありません。多くの場合、会議が始まる前に、何も設計していない——これが「また来週」で終わる会議の正体です。

議題を1行メモして、会議室を押さえて、当日「では、ご意見は?」と聞く。これだけだと、会議は当日の流れ任せになります。何を決めれば終わりなのかが共有されていないから、話はあちこちに広がる。時間の配分が決まっていないから、最初の話題で時間を使い切る。決め方が決まっていないから、いざ絞る段で「どうしようか…」となって、結局「また来週」。どれも、当日の話術でどうにかする話ではなく、始まる前に決めておけば防げたことばかりです。

ここで覚えてほしい背骨はひとつです。会議は、始まる前に8割決まる。当日うまく話そうとするのではなく、始まる前に「何を決める会議か・どう進めるか・どう決めるか」を設計しておく——それが、この講座のゴールです。

ファシリテーションとは何か(ただの司会との違い)

ファシリテーションとは、日本ファシリテーション協会(FAJ)の言葉を借りれば、「人々の活動が容易にできるよう支援し、うまくことが運ぶよう舵取りすること」です。会議でいえば、話し合いが円滑に進み、時間内にゴールにたどり着くよう支援する働きのこと。それを担う人がファシリテーターで、会議でいう進行役にあたります。

ここで、ただの司会との違いを押さえておきましょう。司会は、議題を読み上げて、順番に発言を回していく役です。一方ファシリテーターは、ただ順番に回すだけではありません。黙っている人から意見を引き出し、ばらばらに出た意見を整理し、最後は1つの結論と次の行動まで導きます。実務の現場では、ファシリテーターは「自分の意見を押し通さず、特定の立場に肩入れしない中立的な進行役」だと言われます。自分の案を通すために議論を誘導するのではなく、参加者の力を借りて、チームとして決めるのを助ける役、というイメージです。

つまり、進行役を「順番に意見を聞いて回すだけの人」だと思っていると、ここでつまずきます。進行役の仕事は、聞いて回すことではなく、引き出して・整理して・決め切るところまで導くことなのです。

ファシリテーションは「当日の話術」ではなく「始まる前の設計」

そして、この講座でいちばん捉え直してほしいのが、ここです。ファシリテーションは、当日の話術ではなく、始まる前の設計だということ。

なぜなら、会議は「みんなで集まって話す場」ではなく、「時間内に決めて、次の行動につなげる場」だからです。集まって話すだけなら、雑談と変わりません。決めて、誰がいつまでに何をやるかまで持ち帰れて、初めて会議の意味があります。そして「時間内に決めて次につなげる」ためには、当日アドリブでさばくより、始まる前に段取りを組んでおく方が、はるかに確実なのです。

その段取りは、たった3点です。①目的(この会議で何を決めるか)②進行(時間内にどう進めるか)③合意形成(どうやって決めて、誰がいつまでにやるか)。この3点を始まる前に設計しておく——これが会議ファシリテーションの中身です。第2章からは、この3点を1つずつ、共通例の定例会議で設計していきます。

ここで、共通例の会議に登場してもらいましょう。6人チームの、金曜30分の定例会議。テーマは「来月の販促キャンペーンをどうするか」。今のこの会議は、議題を読み上げて「ご意見は?」と聞くだけ、つまり目的も進行も合意形成も設計しないまま、当日の流れで乗り切ろうとしている状態です。だから毎回50分に延び、若手は黙り、脱線し、「また来週」で終わる。この同じ会議を、これから3点とも設計し直していきます。

この章の確認(演習):共通例「定例会議」について、「この会議が、時間内に“決まったこと・担当・期限”まで揃って終わるには、始まる前に何を決めておけばいいか」を、①目的②進行③合意形成の3つの枠で、それぞれ1行ずつ書き出してみてください。中身の設計は次章以降でやるので、いまは「会議は当日いきなり始めるのではなく、始まる前に3点を設計するもの」「会議は話す場ではなく決める場」という捉え方を、自分の言葉にできたらゴール達成です。

第2章:目的を設計する(ゴール=何を決める会議か、アジェンダとタイムボックス)

第1章で、会議は始まる前に3点を設計するもの、と掴みました。ここからは、その1点目「目的」を設計します。

この章のゴール

この章を読み終えると、1つの会議について、目的(ゴール=何を決めるか・終了条件)とアジェンダ(時間配分=タイムボックス)作成できるようになります。

ゴールは「話し合う」ではなく「終わった状態」で書く

設計の1点目は、目的です。会議の目的とは、「終わったときに、何が決まっていれば、この会議は成功か」ということ。これをゴールと呼びます。

ここで多くの人がやってしまうのが、ゴールを「来月のキャンペーンについて話し合う」と書いてしまうことです。でも、「話し合う」はゴールになりません。話し合った結果、何も決まらなくても「話し合った」は達成できてしまうからです。決める会議のゴールは、終わった状態(終了条件)で書きます。たとえば「来月のキャンペーン施策を1つに決める」「担当と期限まで確定する」のように、何が決まっていれば終わってよいかを、はっきり言葉にするのです。

ゴールを終わった状態で決めると、「ここまで決まったら終わり」という終了条件も同時に決まります。これが、ダラダラ延びる会議に歯止めをかけます。

アジェンダにタイムボックスを入れる(会議の脚本)

ゴールが決まったら、次は、そのゴールに時間内でたどり着くための道順を作ります。これがアジェンダ(議題とその順番)です。アジェンダは、いわば「会議の脚本」。どの順番で何を話せばゴールに着くかを、先に書いておくものです。

ここで欠かせないのが、各議題に時間配分(タイムボックス)を入れることです。「この議題は10分」と先に区切っておくと、決定までのチェックポイントがはっきりして、時間内に結論を出しやすくなります。アジェンダを作ったら、各議題の時間を足してみて、合計が予定時間に収まっているかを必ず確認してください。

共通例の定例会議で、目的とアジェンダを設計してみます。まずゴールは、「来月の販促キャンペーンの施策を1つに決め、担当と期限まで確定する」。終了条件は、「施策1つ+担当+期限が揃ったら終わり」。そして、30分のアジェンダにタイムボックスを入れると、こうなります。

順番議題(やること)時間
1共有(前提・今の状況をそろえる)5分
2意見出し(施策のアイデアを出す)10分
3絞り込み(出た案を整理して絞る)10分
4決定(1つに決めて担当・期限を確定)5分
合計30分

5+10+10+5で、ちょうど30分。これが「会議の脚本」です。「ご意見は?」と漠然と聞いていた会議が、ゴールに向かって動き出すのが分かりますか。

冒頭で「目的・決めること・終了予定時刻」を宣言する

脚本ができたら、最後にもう一手。会議の冒頭で、目的・決めること・終了予定時刻を宣言することです。

具体的には、開始のひとことをこう変えます。「今日は30分で、来月のキャンペーン施策を1つ決めます。終了は15時30分です」。たったこれだけですが、効果は大きい。参加者全員が「30分で1つ決める会議なんだ」「15時30分には終わるんだ」と意識して臨むので、自然と脱線が減り、時間も意識されます。逆にこの宣言がないと、参加者は「いつ終わるか分からない、何を決めるのかも曖昧な会議」に、なんとなく付き合うことになります。

なお、世の中には情報共有だけの会議や、アイデアを広げるだけの会議もあります。目的が違えば設計も変わりますが、この講座では「何かを決める会議」を主役に扱います。あなたが「また来週」で困っているのは、たいてい決める会議のはずだからです。

この章の確認(演習):共通例「定例会議」について、①ゴールを「終わった状態」で1文 ②終了条件 ③アジェンダ(議題+時間配分が合計30分になるように) ④冒頭宣言の1文、を実際に書いてみてください。書けたら、次に、自分が次に開く(または出る)会議を1つ選び、同じ4つを書いてみます。ゴールを「話し合う」ではなく「終わった状態」で書けて、アジェンダの時間の合計が予定時間に収まったら、ゴール達成です。手元の会議設計テンプレートを使えば、この4つをそのまま埋められます。

第3章:進行を設計する(タイムボックス、発散と収束、脱線・沈黙への備え)

第2章で、目的(ゴール)とアジェンダ(タイムボックス)を設計しました。でも、脚本があっても、進め方を間違えると時間内には終わりません。設計の2点目「進行」を、この章で組み立てます。

この章のゴール

この章を読み終えると、意見を広げる「発散」と絞る「収束」を時間で分けて進行を設計でき、脱線・沈黙・声の偏りへの備えを持てるようになります。

「発散(広げる)」と「収束(絞る)」を時間で分ける

決める会議の進行で、いちばん大事なコツがこれです。意見を「広げる時間」と「絞る時間」を、はっきり分けること。広げる時間を発散、絞る時間を収束と呼びます。

発散の時間は、とにかくアイデアを否定せずに、数を出します。「それは予算が…」と評価を始めると、人は発言しなくなるからです。一方、収束の時間は、出た案を整理して、似たものをまとめ、1つに絞っていきます。この2つを同時にやろうとすると——出すそばから否定が入って——場が縮んで何も出なくなります。だから、時間で分けるのです。

ここで知っておいてほしいのが、発散から収束へ移る「あいだ」のことです。たくさん出た意見を絞ろうとすると、たいてい意見がぶつかり、場がもやもやと混沌とします。「で、結局どれ?」と煮え切らない、あの感じです。この産みの苦しみの局面を、ファシリテーションの世界ではサム・ケイナーが「グローンゾーン」と呼びました(うめき声のゾーン、という意味です)。名前を覚える必要はありませんが、大事なのは、この混沌は失敗ではなく、絞り込みに必ず訪れる通り道だということ。ここで焦って打ち切らず、通り抜けるのが進行役の仕事です。

グランドルールとパーキングロットで場を整える

発散と収束をうまく回すために、進行役が使える小道具が2つあります。

1つめが、グランドルール。会議の始めに共有しておく「この場のルール」です。たとえば「①人の意見を否定しない ②1回の発言は短く ③全員、一度は発言する」の3つ。ここで大切なのは、ルールを並べるだけでなく、なぜそのルールがあるのかを一言添えることです。「いいアイデアを潰さないために、否定はナシでいきましょう」と理由が分かると、参加者はルールを自分のものとして守ってくれます。

2つめが、パーキングロット(駐車場、の意味)。会議では、「そもそも商品の値段を変えたら?」のように、今日の議題からズレた意見が必ず出ます。これを無視すると発言者は気を悪くしますし、かといって付き合うと時間切れになる。そこで、「それは大事だけど、今日の議題とは別なので、別途あつかいますね」と言って、ホワイトボードの隅に書き留めておく。これがパーキングロットです。意見を捨てずに、本筋に戻れる。発言した人も、進行役も、嫌な気持ちにならずに済みます。

沈黙と「声の偏り」への備え(若手の意見を会議に乗せる)

共通例の会議のいちばんの悩みは、「声の大きいベテランばかり話して、若手が黙ってしまう」ことでした。これは放っておくと、一部の人の意見だけで会議が進み、せっかく集まった意味が薄れます。進行役には、ここに2つの備えがあります。

1つは、名指しで振ること。「田中さんは、どう思う?」と、黙っている人に直接たずねます。「何かご意見は?」と全体に投げると、結局いつもの人が答えますが、名指しなら、黙っていた人にも発言の番が回ります。もう1つは、付箋に書いてもらうこと。口で言うのは苦手でも、紙に書くなら出せる、という人は多いものです。全員が付箋に1枚書いて貼り出せば、声の大きさに関係なく、全員の意見が場に並びます。

なお、相手の発言を引き出す問いの作り方そのものは「質問力入門」(kouza-088)、相手の話を受け止める聴き方は「傾聴力の基本」(kouza-089)でくわしく扱います。この講座では、「発言を均す進行の備えを持っておく」ところまで押さえれば十分です。

共通例の30分の進行を、ここまでで設計するとこうなります。共有5分で前提をそろえ、意見出し10分は発散——グランドルールを共有してから、否定せずに案を出し、黙っている若手には名指しか付箋で必ず1案ずつ出してもらう。途中で「値段を変えたら?」と脱線が出たら、パーキングロットへ。絞り込み10分は収束——似た案をまとめ、2案くらいに絞る。ここがグローンゾーンですが、焦らず通り抜けます。これで、声の大きい人だけの会議に、若手の案も乗るようになります。

この章の確認(演習):共通例「定例会議」の30分について、①発散と収束をそれぞれ何分にするか ②グランドルールを3つ ③脱線が出たときに言う一言(パーキングロットへの逃がし方) ④黙っている若手への振り方、を具体的に書いてみてください。次に、自分の会議を思い出して、「いつも誰が話して、誰が黙っているか」を書き出し、発言を均すための一手を1つ決めてみます。

第4章:合意形成を設計する(決め方を先に決める、収束、決定事項・担当・期限)

第3章で、発散と収束のある進行を設計しました。いよいよ、設計の3点目「合意形成」です。ここを設計できると、「また来週」が消えます。

この章のゴール

この章を読み終えると、決め方を事前に選び、議論を1つに収束させて合意をつくり決定事項・担当・期限の3点をその場で確定して、会議を時間内に締められるようになります。

決め方(決定方法)を「始まる前に」決めておく

意見が出そろっても、会議が決まらない最大の原因はこれです。「で、どうやって決める?」が、その場まで決まっていないこと。絞る段になって「多数決にする?」「いや、責任者が決める?」と決め方でもめると、肝心の中身を決める時間がなくなります。

だから、決め方(決定方法)を、始まる前に決めておくのです。決め方にはいくつかあります。全員の合意(全員一致)を目指すのか、多数決にするのか、あるいは「全員の意見を出し切ったうえで、最後はリーダーが1つに選ぶ」のか。どれが正解という唯一の答えはありませんが、事前に決めて、冒頭で共有しておくと、いざ絞るときにもめずに済みます。共通例なら、冒頭の宣言にこう一言足します。「決め方は、全員の意見を出し切ったうえで、最後は私(リーダー)が1つに選びます」。これで、参加者は「最後はリーダーが決めるんだな」と分かったうえで、安心して意見を出せます。

1つに収束させて、合意をつくる

決め方を共有したら、第3章の収束で2案くらいに絞った意見を、決めた方法で1つに決めます。共通例では、「SNS割引キャンペーン」と「店頭ポップ強化」の2案に絞れたとします。ゴールは「施策を1つに決める」ことなので、決め方どおり、リーダーが1つ——たとえば「SNS割引キャンペーン」——に決めます。

ここで大事なのは、合意形成は「とりあえず多数決で押し切る」こととは違う、ということです。合意形成のいちばんの価値は、決めた後に、メンバーが「自分が関わって決めたことだ」と当事者意識を持って動いてくれることにあります。だから、全員の意見をちゃんと出してもらったうえで決める、という順番が効いてきます。出すだけ出してもらえれば、最後がリーダー決定でも、「言いたいことは言えた」という納得が残るのです。

決定事項・担当・期限の3点で締める

1つに決まった。これで終わり——ではありません。ここで気を抜くと、「だいたいSNS割引でいいよね」と曖昧に流れて、結局「誰がやるんだっけ?」と次回に持ち越されます。決まったことを行動につなげる、最後のひと締めが要ります。それが、決定事項・担当・期限の3点を、その場で声に出して確認することです。

項目内容
決定事項(何を決めたか)来月の販促は「SNS割引キャンペーン」でいく
担当(誰がやるか)田中さん
期限(いつまでに)今月末までに企画書を出す

進行役は、終了5分前にこう締めます。「では、来月の販促はSNS割引キャンペーンに決定。担当は田中さん、期限は今月末までに企画書を出す。これで30分ちょうどです」。声に出して3点を確認することで、その場の全員が「決まった・誰がやる・いつまで」を共有できます。「誰が・いつまでに・何を」が決まっていない決定は、決まっていないのと同じ。逆に、この3点さえ揃えば、「また来週」は消え、次の会議で「あれ、どうなった?」と振り出しに戻ることもありません。なお、決めたことの記録(議事録)の作り方は「AI議事録の作り方」(kouza-045)で扱います。この講座では、その場で3点を口に出して締める、ところまでを押さえます。

この章の確認(演習):共通例「定例会議」について、①決め方を1つ選ぶ(全員一致/多数決/責任者が決める など) ②決定事項・担当・期限の3点を埋める ③閉じるときの一言(3点を声に出すセリフ)を書く、をやってみてください。次に、自分が最近「また来週」で終わらせてしまった会議を1つ思い出し、決め方・決定事項・担当・期限を後から埋めてみて、どこが抜けていたから決まらなかったのかを確かめてみます。手元の会議設計テンプレートを使えば、決め方の欄と、決定事項・担当・期限の3点欄が用意されているので、そのまま埋められます。

まとめ:会議は、始まる前に8割決まる

おつかれさまでした。「あるチームの定例会議」という、たった1つの会議を、ファシリテーションとは何か→目的を設計する→進行を設計する→合意形成を設計する、と1段ずつ組み上げてきました。歩いてきた道を振り返ります。

  1. ファシリテーションとは……その場の話術ではなく、会議の目的・進行・合意形成を始まる前に設計して、時間内に決め切る段取りの技術。進行役は、順番に意見を聞いて回す司会ではなく、引き出して・整理して・決め切るところまで導く(実務では中立的な進行役と言われる)。会議は「話す場」でなく「決めて次につなげる場」(第1章)。
  2. 目的を設計する……ゴールは「話し合う」でなく「終わった状態」で書く(例:施策を1つに決め担当と期限まで確定)。アジェンダに時間配分(タイムボックス)を入れ、合計が予定時間に収まるか確認する。冒頭で「◯分で◯◯を1つ決めます。終了は◯時◯分」と宣言する(第2章)。
  3. 進行を設計する……意見を広げる「発散」と絞る「収束」を時間で分ける。発散は否定せず数を出し、収束は整理して絞る。絞るときの混沌(グローンゾーン)は通り道。グランドルールで場のルールを共有し、脱線はパーキングロットへ逃がし、黙る若手は名指しや付箋で会議に乗せる(第3章)。
  4. 合意形成を設計する……決め方(全員一致/多数決/責任者が決める など)を始まる前に決めて冒頭で共有。1つに収束させて合意をつくる。最後は決定事項・担当・期限の3点を声に出して締める。「誰が・いつまでに・何を」が無い決定は、決まっていないのと同じ(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「この会議は、始まる前に“目的・進行・合意形成”が設計されているか? 終わったとき“決定事項・担当・期限”が揃っているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——会議は、始まる前に8割決まる。これが身につくと、「また来週」で疲れだけが残っていた会議が、30分ちょうどで「決まった・誰がやる・いつまで」が揃って終わる会議に変わります。

明日の最初の一歩:次に自分が進行する(または出る)会議を1つ選び、始まる前に1枚だけメモを作ってみてください。書くのは、①ゴール(終わった状態で1文)②終了予定時刻 ③発散と収束の時間配分 ④決め方 ⑤決定事項・担当・期限の枠。きれいに書く必要はありません。当日アドリブでさばこうとせず、始まる前にこの5つを書いておく——それが、「また来週」から抜け出す第一歩です。会議設計テンプレートを無料でダウンロードすれば、目的・ゴール欄から、アジェンダ+時間配分欄、グランドルール欄、決め方欄、決定事項・担当・期限の3点欄まで、一通り埋められます。

もっと深めたくなったら、その先の道も用意されています。意見を引き出す問いの作り方は kouza-088(質問力入門)、相手の意見を受け止める聴き方は kouza-089(傾聴力の基本)、議論を短くまとめる力は kouza-091(要約力入門)、決めたことの記録は kouza-045(AI議事録の作り方)、オンライン会議ならではの作法は kouza-095(オンライン会議の基本)で深められます。この講座はあくまで「会議の目的・進行・合意形成を始まる前に設計して、時間内に決め切る段取り」に絞っています。まずはこの設計を、自分の次の会議で1枚、書いてみることから始めましょう。

よくある質問

ファシリテーションとは何ですか?

話し合いが円滑に進み、時間内にゴールにたどり着くよう支援する働きです。会議でいえば、目的・進行・合意形成を始まる前に設計して、時間内に決め切る段取りの技術です。

司会とファシリテーターは何が違うのですか?

司会は議題を読み上げて順番に発言を回す役ですが、ファシリテーターは黙っている人から意見を引き出し、ばらばらな意見を整理して、結論と次の行動まで導きます。

発散と収束はどう使い分ければよいですか?

発散はアイデアを否定せず数を出す時間、収束は出た案を整理して1つに絞る時間です。この2つを同時にやろうとすると発言が減るため、アジェンダ上で時間を分けて設計します。

会議でいつも同じ人ばかり話してしまいます。どうすればよいですか?

黙っている人を名指しで指名する、または付箋に意見を書いてもらう方法が有効です。全員が付箋に1枚ずつ書いて貼り出せば、声の大きさに関係なく全員の意見が場に並びます。

会議が「また来週」で終わらないようにするには何をすればよいですか?

会議の最後に「決定事項・担当・期限」の3点を声に出して確認することが重要です。この3点が揃っていない決定は実質的に決まっていないのと同じで、次回に持ち越される原因になります。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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