「この定例、要りますか?」——メンバーにそう聞かれて、はっきり答えられなかったことはないでしょうか。前任から引き継いだ朝会、週次の報告会、月に一度の会議。気づけばカレンダーは会議で埋まり、増やすことはできても減らせない。けれど、会議が減らせない本当の原因は、1つひとつの会議の進め方が下手だからではありません。多くの場合、会議の「体系」を目的で設計していないからです。
会議体設計とは、どんな会議を・誰が・どの頻度で・何の目的で持つか、そして何を畳むかを、会議のラインナップごと組み立てることです。1回の会議を上手く回す前に、そもそも持つべき会議を目的で組み直す——本講座はこの一点に絞ります。設計した会議を実際に時間内に進行し合意に持ち込む技術は会議ファシリテーション入門、決めたことの記録(議事録)は議事録の書き方、会議での発言の仕方は会議での発言力が、それぞれの正本です。本講座は「どんな会議を持つか」を決めるところまでで、その先には踏み込みません。
この講座を終えると、次の3つができるようになります。会議を目的で見分け、目的が混在した会議に気づけること。1つの会議について「目的・参加者・頻度・所要時間・終了条件」を1枚に書き出して設計できること。そして、自チームの会議を棚卸しして統合・廃止・存続を判断し、ラインナップごと組み直せることです。覚えて帰る型は「目的で分類する → 1会議を5項目で設計する → チーム全体を組み直す」。本講座では、ある課(例:5人のチーム)が抱える複数の定例——朝会・週次報告会・月次会議——を題材に、第1章で仕分け、第2章で1会議を設計し直し、第3章でチーム全体を組み直す、という同じ場面を追いかけます。
この講座のポイント
- 会議を目的で分類し、目的が混在した会議を見分けられる。
- 1つの会議について「目的・参加者・頻度・所要時間・終了条件」を1枚に書き出して設計できる。
- 自チームの既存会議を棚卸しして、統合・廃止・存続を判断し、目的に合う会議体一覧を組み直せる。
会議体とは何か——会議を目的で分類する
この章のゴール
会議を目的で分類し、目的が混在した会議を見分けられる。
会議体とは1回の会議の良し悪しではなく「会議のラインナップ」
会議体とは、組織やチームが定常的に持っている会議の集まり、つまりラインナップのことです。注目するのは「この会議の進行が上手いか」ではなく、「どんな会議を・何の目的で持っているか」という体系のほうです。
会議は、目的によって役割も進め方も変わります。たとえば幹部が集まって経営方針を決める「経営会議」と、新商品や販売促進のアイデアを話し合う「企画会議」は別物として扱われ、進め方の技法も異なります。J-Net21(中小機構)の「企画会議の技法」は、企画会議を経営会議と同等以上に重要だとしたうえで、「中には経営会議と企画会議をほとんど区別していない中小企業もある」と指摘しています(出典:J-Net21「企画会議の技法」)。逆に、ただ情報を伝えるだけなら、会議を開かずに済むこともあります。J-Net21は無駄な会議を見直す観点として「会議を開くほどの議題なのか、もしかしたら資料を配布すれば済むことではないのか」を挙げています(出典:J-Net21「無駄な業務をなくして効率化を図るには…」)。
目的が言えない会議・目的が混ざった会議に気づく
ここで自分の会議に目を向けます。共通例の課を見てみましょう。朝会は情報共有のはずです。週次報告会は、報告を聞きながらいつのまにか「で、どうするか」を決め始め、情報共有と意思決定が混ざっています。月次会議はアイデア出しの場だったはずが、気づけば各自の報告で埋まっている。こうして並べると、目的が言える会議と、言えない会議・混ざった会議が見えてきます。
J-Net21は、業務のムダの典型として「会議の目的が分からないような『無駄な会議が多い』」状態を挙げています(出典:J-Net21「無駄な業務をなくして効率化を図るには…」)。また、生産性の高い会議の条件として「議題を1つに絞る」ことを挙げています(出典:同)。1つの会議に目的を詰め込みすぎると、長いのに何も決まらない——これが「目的の混在」のサインです。「定例だから」という理由は、目的ではありません。なお「会議が多すぎる」「会議が時間の何割を占める」といった数値はここでは扱いません。大切なのは、自分の会議の目的を1語で言えるかどうかです。
この章の確認(演習)
自分が主催する会議を1つ選び、その目的を「意思決定」「情報共有」「アイデア出し」「関係づくり」のどれにあたるか、1語で言い切ってみてください。2つ以上当てはまってしまうなら、それが目的の混在のサインです。混ざっている会議を1つ見つけられたら、この章のゴールは達成です。
1つの会議を設計する——目的・参加者・頻度・時間・終了条件
この章のゴール
1つの会議について「目的・参加者・頻度・所要時間・終了条件」を1枚に書き出して設計できる。
会議体を組む前に「1会議の設計図」を5項目で持つ
ラインナップを組み直す前に、まず1つの会議をきちんと設計できるようになります。設計図に書く項目は5つ——①目的(第1章で決めた型)②参加者(その目的に必要な人と役割)③頻度④所要時間⑤終了条件です。
このうち多くは、公的な手引きが「会議の事前告知に書くべきこと」として挙げているものと重なります。J-Net21は、ミーティングの事前告知文に書く事項として「標題、開催日時、課題、目的・背景、ゴール、持参するもの・準備すること、その他(司会、書記、議事録作成者など役割、進行ルールなど)」を列挙し、「参加者には、課題と目的を事前に知らせることが必要」だとしています(出典:J-Net21「成果に結びつけるミーティングの進め方を教えてください。」)。目的・ゴール・参加者と役割は、まさにここに含まれています。参加者を「念のため全員」にすると人数だけが膨らむので、その目的に必要な人と役割(司会・書記・記録係など)に絞ります。頻度は、目的に応じて毎日・週次・隔週・月次から選びます。所要時間も先に決めます。J-Net21は「生産性の高い会議は30分以内と言われています」とし、30分以内で解決できる議題に絞ることを勧めています(出典:J-Net21「無駄な業務をなくして効率化を図るには…」)。
終了条件を先に決めると、目的の混ざった会議は設計段階で破綻する
5項目のなかで効くのが終了条件です。終了条件とは「何が決まれば/何が共有できれば終わりか」という会議のゴールです。J-Net21は、ミーティングの最終的なねらいは「『決める』ことではなく、『実行すること』『成果を上げること』」だとし、決める際は「誰が」「いつまでに」「何を」「どのように」といったキーワードで具体化することを求めています(出典:J-Net21「成果に結びつけるミーティングの進め方…」)。会議の最後に「アクションアイテム(行うべきこと)と、期限(日時)及び担当者を明確にして」共有する、という形です(出典:J-Net21「海外の方々との会議の際に留意するとよい点を教えてください。」)。終了条件を先に書くと、目的が混ざった会議は「何が決まれば終わりか」を1つに書けず、設計の段階で行き詰まります。それが混在を見つける合図です。
共通例の「週次報告会」を1枚に設計し直してみます。目的を「意思決定」に絞り、報告だけが用件の参加者は外し、終了条件を「来週の優先タスクが(例)3つ決まったら終了」に置きます。会議資料は事前に配ります(出典:J-Net21「無駄な業務をなくして…」)。外した情報共有の部分は、朝会やチャットなど別の場へ寄せます。こうして設計した会議を実際に時間内に回し、合意に持ち込む進行・グランドルールづくりは会議ファシリテーション入門へ。1on1を会議体に組み込む場合の対話の進め方は1on1ミーティングの基本へ進んでください。
この章の確認(演習)
自分の会議を1つ選び、「目的・参加者・頻度・所要時間・終了条件」の5項目を1枚に書き出してください。終了条件は「何が決まれば/共有できれば終わりか」を1文で。もし終了条件が書けなければ、その会議は目的が曖昧だというサインです。
チームの会議体を組み直す——棚卸し・統合・廃止・存続
この章のゴール
自チームの既存会議を棚卸しして、統合・廃止・存続を判断し、目的に合う会議体一覧を組み直せる。
まず会議を棚卸しして、各会議に目的を1語で付ける
1会議を設計できたら、最後はチーム全体のラインナップを組み直します。やることは、棚卸し→判断→再配置の順です。
最初の棚卸しは、書き出して可視化することから始めます。J-Net21は業務効率化の第一歩を「『どの業務でどれだけ無駄が発生しているのか』を明確に把握すること」とし、仕事の流れを記録して「文書として目に見える形にすることで、客観的に無駄を見つけることができます」と述べています(出典:J-Net21「無駄な業務をなくして効率化を図るには…」)。会議も同じです。自チームの会議を一覧に書き出し、各会議に第1章で決めた目的を1語で付けます。目的が付けられない会議が、最初の見直し候補です。
判断は3択——目的が言えないは廃止、重なるは統合、必要は設計図つきで存続
棚卸しができたら、1件ずつ「統合・廃止・存続」を判断します。判断のものさしは、出典が示す見直しの観点そのものです。J-Net21は、目的が分からない会議や「会議を開くほどの議題なのか、資料を配布すれば済むことではないのか」という観点、そして「同じような内容の報告書や資料はないか」という重複の観点で見直すことを勧めています(出典:J-Net21「無駄な業務をなくして…」)。これを会議体に当てはめると、目的が言えない会議は廃止、目的が重なる会議は統合、目的が明確で必要な会議は第2章の設計図を添えて存続、という3択になります。会議は足すより畳むほうが効きます。
共通例の課なら、情報共有で重なる朝会と週次報告会の共有部分を統合し、目的不明の月次会議は廃止、意思決定の週次会議は設計図つきで存続させます。結果として、カレンダー上の会議が減ります。同期の会議をやめて記録で共有に切り替えるなら、議事録の残し方は議事録の書き方やAI議事録の作り方へ。リモート中心のチームで会議体を組む観点はリモートマネジメント入門へ進んでください。
一度に全部変えず、まず1つ統合・1つ廃止から
つまずきやすいのは2つです。1つは「前任から引き継いだから」と惰性で全部存続させること。もう1つは、一度に全部を変えようとして現場が混乱することです。J-Net21は、無駄をまとめて「すぐにできそうな業務改善から順次行っていきます」と段階的な進め方を勧めています(出典:J-Net21「無駄な業務をなくして…」)。さらに、業務改善は「社長からトップダウンで業務改善の指示があっただけでは…失敗に終わる可能性が高まります」とし、現場と本音を話し合って想いを共有することの大切さを説いています(出典:同)。会議体の組み直しも同じで、まず1つ統合・1つ廃止から始め、現場と合意しながら進めるのが現実的です。
この章の確認(演習)
自チームの会議を一覧に書き出し、各会議に目的を1語で付けてください。そのうえで、1件ずつ「統合・廃止・存続」のいずれかを選び、統合1件・廃止1件を具体的に決めます。決めた理由を「目的が言えないから」「目的が重なるから」と一言で説明できれば、組み直しの第一歩は完了です。
まとめ
会議体設計とは、1回の会議の上手さではなく、どんな会議を・何の目的で持つかという体系を組むことです。目的で分類し(第1章)、1会議を「目的・参加者・頻度・所要時間・終了条件」の5項目で設計し(第2章)、チーム全体を統合・廃止・存続で組み直す(第3章)。この3ステップが、会議を減らして組み直すための型です。
明日の一歩は、自分が主催する会議を1つ選び、「目的・参加者・頻度・所要時間・終了条件」を1枚に書き出すこと。目的が言えなければ、その会議は畳む候補です。そして、設計した会議を実際に時間内に回し、合意に持ち込む進行・合意形成の技術は、会議ファシリテーション入門が次のステップです。
本講座の特典として、自チームの会議を「目的・参加者・頻度・終了条件」で棚卸しし、「統合・廃止・存続」を判断するための「会議体棚卸しシート」をご用意しています。シートの入手案内と、チーム運営に役立つ実務情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。
よくある質問
会議体設計と会議のファシリテーションは何が違うのですか
会議体設計は「どんな会議を持つか」を目的で組む上流の作業、ファシリテーションは「1回の会議を時間内に回す」進行技術です。本講座は前者を扱い、後者は専用講座へ送ります。
目的が混在した会議かどうかは、どう見分ければよいですか
終了条件を1文で書けるかで分かります。「何が決まれば終わりか」を1つに書けない会議は、目的が複数混ざっているサインです。
会議を減らすには、まず何から手をつければよいですか
棚卸しです。自チームの会議を一覧にして各会議に目的を1語で付け、目的が言えない会議や重なる会議から、1つ廃止・1つ統合を試します。
全部いきなり変えてもよいですか
避けたほうが無難です。公的な手引きも、すぐできる改善から順次進め、現場と共有することを勧めています。まず1件ずつ変えて様子を見ます。