モチベーション管理入門|部下の意欲を引き出すモチベーション管理の基本 | マナビズ

モチベーション管理入門|部下の意欲を引き出すモチベーション管理の基本

モチベーション管理入門|部下の意欲を引き出すモチベーション管理の基本

「最近、あの人やる気がなさそうだな」。会議で前は次々と意見を出していた中堅メンバーが、いつの間にか発言しなくなり、提案も減っている。気になって「期待してるよ」「もうひと踏ん張り頑張って」と声をかけてみる。けれど、ひとときは表情が和らいでも、行動はなかなか戻らない——。チームを率いていると、こんな場面に必ず出会います。そして多くの場合、私たちは原因を「本人の気合の問題」や「最近たるんでいる」といった性格・態度のせいにして、また励ましの声をかけて様子を見る、というところで止まってしまいます。

けれど、戻らない理由は本人の気合ではないかもしれません。本当の理由は、その人の意欲が下がっている「満たされていない要因」を、まだ見立てられていないことにあります。モチベーション管理とは、報酬で釣ることでも、気合を求めることでもありません。意欲が下がっている要因を見立て、相手の状態に合わせて意欲を引き出す関わりを選び、その後を観察して調整し続けること。これが本講座の背骨です。「給料を上げてやれないのにモチベーションなんて上げられるのか」と感じる方こそ、ここを読んでほしいと思います。管理職が報酬や評価を自由に動かせなくても、内から湧く動機づけには、現場の関わりで十分に関われるからです。

本講座が扱うのは、この「個人の意欲を引き出す現場の関わり」だけです。1on1という対話の場そのものの進め方は1on1ミーティングの進め方が、承認や指摘の言葉のつくり方はフィードバックの基本が、仕事を任せて育てる権限委譲の手順は権限委譲の基本が、組織全体の定着・エンゲージメント施策はエンゲージメント向上の基本が、それぞれ正本です。本講座はそれらの手順には踏み込みません。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。意欲が上がる・下がる仕組みを、外から与える動機づけと内から湧く動機づけに分けて説明できること。メンバーの観察できる行動から「意欲が下がっている要因」の仮説を立てられること。そして、相手の状態に合わせて意欲を引き出す関わりを1つ選んで言葉にできることです。覚えて帰る型は「見立てる → 関わる → 観察する → 調整する」。本講座では、提案が減り会議で発言しなくなった中堅メンバー1人の意欲低下を見立て、引き出す関わりを選ぶ、という同じ場面を全章で追いかけます。合言葉はひとつ。意欲は、上げるものではなく、引き出すものです。

この講座のポイント

  • 意欲が上がる・下がる仕組みを、外から与える動機づけと内から湧く動機づけに分けて説明できる。
  • メンバーの観察できる行動から「意欲が下がっている要因」の仮説を立てられる。
  • 相手の状態に合わせて意欲を引き出す関わりを1つ選んで言葉にできる。
  • 選んだ関わりが効いたかを観察し、次の打ち手に調整するサイクルを説明できる。

意欲はどこから生まれるのか——外からの動機づけと内からの動機づけ

この章のゴール

意欲が上がる・下がる仕組みを、外から与える動機づけと内から湧く動機づけに分けて説明できる。

意欲を「気合の量」で見るのをやめる

まず手放したいのは、「あの人はやる気がある/ない」という見方です。やる気を一本の量で測ろうとすると、足りないのは本人の気合だ、という結論にしかたどり着きません。すると打ち手は「もっと頑張れ」と励ますことくらいしか残らず、冒頭の場面のように行動が戻らないまま止まってしまいます。

意欲をもう少し分けて見てみましょう。人を動かす力には、大きく2つの源があります。J-Net21(中小企業基盤整備機構が運営する中小企業支援サイト)は、モチベーションの根源となる報酬は2種類あると整理しています。ひとつは外的報酬で、「昇給、昇進、ボーナス、福利厚生、ステータス、企業のバリュー、表彰など」。もうひとつは内的報酬で、「仕事自体の面白み、達成感、成功感、満足感、共有感など」です(出典:J-Net21「ベテラン社員のモチベーション向上の方法を教えてください。」)。外的報酬は「他より多い・他より良い」と比べられる相対的な価値、内的報酬は自分の中の絶対的な価値観からくるもので、他人とは比べられない価値だと説明されています。

動機づけには「外から与える」蛇口と「内から湧く」蛇口がある

この2種類を、2つの蛇口だと考えてみてください。ひとつは、報酬・評価・昇進・指示といった、外から与えられて意欲を動かす「外からの動機づけ」の蛇口。もうひとつは、仕事そのものの面白さ・達成感・成長の実感・意味といった、内から湧いてくる「内からの動機づけ」の蛇口です。意欲が落ちて見えるとき、どちらの蛇口が細っているのかを分けて見ると、打ち手が変わってきます。

冒頭の中堅メンバーで考えましょう。「報酬で釣る」発想だけだと、外からの蛇口しか見えません。けれど、本当に細っているのは「この仕事の何が面白くなくなったのか」「やっている意味を感じられているか」という、内からの蛇口のほうかもしれない。そう考え直すだけで、見るべき場所が「気合の量」から「どの蛇口が細っているか」へと移ります。

なお、内からの動機づけには、もうひとつ知っておきたい特徴があります。J-Net21は、心理学者E・デシの内発的動機付けの理論を紹介し、「外から動機付けられるよりも自分で自分を動機付ける方が、創造性、責任感、健康な行動、変化の持続性といった点で優れていた」という結果を挙げています(出典:J-Net21「社員のやる気を引き出す経営のポイントを教えてください。」)。内から湧く動機づけは、一時的に押すだけの外からの力よりも、長く続きやすい。だからこそ、管理職が向き合う価値があるのです。

報酬を動かせない管理職でも、内からの動機づけには関われる

「とはいえ、給料を上げられない自分に何ができるのか」。ここが本章のいちばん大事なところです。外からの蛇口、つまり報酬や評価の多くは、現場の管理職の一存では動かせません。けれど、意欲を支えるのは外からの蛇口だけではない、という心強い知見があります。

厚生労働省の『令和元年版 労働経済の分析(労働経済白書)』は、収入とワーク・エンゲイジメント(仕事にやりがいを感じ、熱心に取り組み、活力を得ている状態)の関係を分析し、「近年では、収入などの外発的動機付けが、ワーク・エンゲイジメント・スコアに大きな影響を与えない可能性を示唆する研究もある」と述べています。そのうえで、「年収とワーク・エンゲイジメントとの間に相関がみられないことは、人件費の増大といった費用負担が難しい企業であっても、仕事の在り方や職場環境を改善させる様々な工夫を重ねることによって、ワーク・エンゲイジメントを改善させることができる可能性があることを示唆している」としています(出典:厚生労働省『令和元年版 労働経済の分析』)。

つまり、報酬を動かせなくても、仕事の在り方や日々の関わりを工夫することで、働きがいには関われるということです。ここでつまずきやすいのは2つ。「意欲=本人の性格・気合の量」と決めつけてしまうこと。そして「報酬や評価を動かせないなら、自分には何もできない」と諦めてしまうことです。どちらも、内からの蛇口が見えていないことから来ています。本講座は、まさにこの内からの蛇口に、現場の関わりでどう手を伸ばすかを扱っていきます。ちなみに、意欲を引き出す入り口になる目標の立て方そのものに踏み込みたくなったら、目標設定の基本が正本です。本講座では深追いしません。

この章の確認(演習)

自分のチームを思い浮かべて、「外からの動機づけ」で人が動いている場面と、「内からの動機づけ」で人が動いている場面を、それぞれ1つずつ書き分けてみてください。たとえば「評価のために締切を守った」は外から、「面白くて自分から調べ込んだ」は内から、というように。そのうえで、いまあなたが気になっているメンバーは、どちらの蛇口が細って見えるかを一言で書いてみましょう。

意欲が下がる要因を見立てる——観察できる行動から仮説を立てる

この章のゴール

メンバーの観察できる行動から「意欲が下がっている要因」の仮説を立てられる。

「やる気がない」は結論ではなく、満たされていないサイン

第1章で、意欲を「気合の量」ではなく「どの蛇口が細っているか」で見ると決めました。第2章では、その細っている蛇口、つまり「満たされていない要因」を見立てていきます。

ここでの出発点は、「やる気がない」を結論にしないことです。「あの人はやる気がない」と言い切った瞬間、思考は止まります。そうではなく、意欲が落ちて見えるのは、何かが満たされていないサインだと読み替えます。では、何が満たされていないと、人は持続的に働けなくなるのか。J-Net21は、職務満足を決める要因として「達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進など」を挙げ、「人間の労働にはそれなりの意味と価値・責任が必要であり、何らかの社会的所属や受け入れられているという実感(承認)が満たされないと、十分に満足して持続的な仕事はできない」と説明しています(出典:J-Net21「社員のやる気を引き出す経営のポイントを教えてください。」)。達成感、承認や受け入れられている実感、仕事そのものの意味——こうしたものが欠けると、意欲は細っていくということです。

手がかりは観察できる行動——推測ではなく事実から始める

要因を見立てる手がかりは、本人の心の中ではなく、観察できる行動にあります。J-Net21の「OJTの進め方」は、報告・相談の場面で「ただ聞くのではなく、部下の仕事に対する考え方・意欲・取り組み姿勢・問題意識・仕事の処理方法などを把握し、チェックします」と述べ、これによって動機づけができるとしています。さらに「仕事のレベルが下がっているとき、態度・行動に問題があるとき」も、関わりの機会だとしています(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。大切なのは、推測(「やる気がないに違いない」)から始めるのではなく、観察できる事実(提案の数、締切の守り方、発言の様子、報告の内容)から始めることです。

冒頭の中堅メンバーを、事実で書き出してみます。「会議での提案が、以前は毎回あったのに、ここ1か月はほぼゼロ」「締切ギリギリの提出が増えた」「ランチや雑談に加わらなくなった」。これらはすべて、推測ではなく観察できる行動です。ここから初めて、要因の仮説に進みます。

要因は1つに決めつけず「仮説」として保留する

観察できた行動を、満たされていない要因の候補に結びつけます。ここで参考になるのが、厚生労働省の労働経済白書が紹介する「仕事の資源」という考え方です。白書は、ワーク・エンゲイジメントを支える「仕事の資源」として、「組織での仕事の進め方(意思決定への参加、コントロールなど)」「対人関係や社会関係(上司によるコーチング、社会的な支援など)」「課題(仕事のパフォーマンスに対するフィードバック、正当な評価など)」を挙げています。そして「仕事の要求度とコントロールのバランスがとれていない場合、従業員は仕事にストレスを感じる」とし、こうした仕事の資源が乏しいと働きがいが下がりうると整理しています(出典:厚生労働省『令和元年版 労働経済の分析』)。

これを現場の言葉に置き換えると、満たされていない要因の候補は、おおむね次のように見立てられます。自分で進め方を選べる裁量(コントロール)が奪われていないか。成長や上達を実感できるフィードバック・評価があるか。自分の仕事が誰かの役に立っている、受け入れられているというつながり(社会的な支援)を感じられているか。中堅メンバーの「提案が通らない経験が続いた末に発言しなくなった」という事実からは、たとえば「自分の意見が反映されず、関わる意味やつながりを感じにくくなっているのではないか」という仮説が立てられます。

ここで決定的に重要なのは、この仮説を「決めつけ」にしないことです。観察できる行動と要因は、1対1で機械的に対応するわけではありません。提案が減ったのは裁量の問題かもしれないし、家庭の事情かもしれない。だから「これが原因だ」と断じず、「こうではないか」という仮説として保留します。確かめるのは次の関わりの中で、です。つまずきやすいのは、行動を見ずに「あいつはやる気がない」と人格で断じてしまうこと、そして要因を1つに決めつけて、確かめないまま対処に走ってしまうことです。なお、立てた仮説を実際に確かめる対話の場をどう設計し進めるかは、1on1ミーティングの進め方が正本です。本講座は「何に着目して仮説を立てるか」までを扱います。

この章の確認(演習)

意欲が落ちて見えるメンバーを1人選び、その人について「観察できる行動」を3つ、推測を交えずに書き出してください(例:提案が減った、締切ギリギリが増えた、雑談に加わらなくなった)。そのうえで、その行動から考えられる「満たされていない要因」の仮説を1つだけ立て、「裁量/成長の実感/つながり・意味」のどれに近いかを書き添えましょう。1つに決めつけず、「仮説」として書くのがコツです。

意欲を引き出す関わりを選ぶ——状態に合わせて打ち手を1つ決める

この章のゴール

相手の状態に合わせて意欲を引き出す関わりを1つ選んで言葉にできる。

引き出す関わりは1つではない——任せる・経験させる・意味づけ・承認

要因の仮説が立ったら、次はそれに合わせて関わりを選びます。意欲を引き出す関わりは、ひとつではありません。J-Net21の「OJTの進め方」は、動機づけの方法をいくつも挙げています。「業務の計画策定に参画させたり、権限を委譲したりなどと、部下に主体性をもたせる工夫が求められます」(=任せる・裁量を渡す)。「実際に仕事を与え、経験や実践を通して…『自分でやり遂げた』という達成感からさらなる意欲を引き出す」(=経験させる・成長を実感させる)。仕事を割り当てる際は「仕事の意義、必要とされる能力…を明確にし、自覚させたうえで取り組ませます」(=意味づけ)。そして「注意する、叱る、ほめる、励ますといった行為を効果的に取り入れていきましょう」(=承認・励まし)と述べています(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。

整理すると、引き出す関わりには、少なくとも次の方向があります。裁量を渡す(任せる)。成長を見える化する(経験させ、達成感を持たせる)。貢献の意味を伝える(意味づけ)。承認する(ほめる・受け入れる)。どれもそれぞれに効きますが、大切なのは「いつでもこれが正解」という万能の打ち手はない、ということです。

第2章の仮説に対応させて打ち手を選ぶ

打ち手は、思いつきで選ぶのではなく、第2章で立てた仮説(満たされていない要因)に対応させて選びます。中堅メンバーについて「自分の意見が反映されず、関わる意味やつながりを感じにくくなっているのでは」という仮説を立てたなら、合いそうな関わりは「意味づけ」です。その仕事が誰の役に立っているのか、チームにとってどういう意味があるのかを、具体的に伝える。一方、「進め方の裁量が奪われ、やらされ感が強いのでは」という仮説なら、合いそうなのは「裁量を渡す」関わりです。

裁量を渡す関わりのわかりやすい形が、目標を本人に決めさせることです。J-Net21は「目標は自分で決めたからこそ、実現に向けてやる気がわく」とし、上司は「期待している目標額をもっていてもなるべく具体的な数値を指示しない」「部下自身に行わせる」ことが大切だと述べています(出典:J-Net21「社員のやる気を高める目標設定」)。ただし、目標の立て方そのものの手順や、任せて育てる権限委譲の具体的な進め方は、本講座の範囲外です。前者は目標設定の基本、後者は権限委譲の基本が正本なので、踏み込みたくなったらそちらへ。同じように、承認や指摘を相手に届く言葉でどう伝えるかはフィードバックの基本に譲ります。本章は「どの関わりを選ぶか」までを扱います。

万能の正解はない——同じ励ましの使い回しをやめる

ここで強調したいのは、相手の状態に合わせて使い分ける、という姿勢そのものです。J-Net21は、OJTは「対象となる部下の成熟度・性格・業務の適性・求められる能力…すべてにおいて個々に異なります」と述べ、目標についても「部下の能力や特性に応じて組み合わせて使うと効果的」「それぞれを上手に使い分けることで、社員のやる気も能力も高まります」としています(出典:J-Net21「OJTの進め方」「社員のやる気を高める目標設定」)。

つまずきやすいのは、誰にでも同じ励まし・同じ承認を使い回してしまうことです。「期待してるよ」を全員に言って回っても、裁量が欲しい人にも、意味を求めている人にも、同じ言葉では届きません。もう1つのつまずきは、「報酬・評価がないと動かせない」と打ち手そのものを放棄してしまうこと。第1章で見たとおり、報酬を動かせなくても内からの蛇口には関われます。仮説に合わせて、関わりを1つ選んで言葉にする。それが、この章のゴールです。

この章の確認(演習)

第2章で立てた仮説に対して、意欲を引き出す関わりを「裁量を渡す/成長を見える化する/意味を伝える/承認する」の中から1つ選んでください。そして、「○○な状態だと見立てたから、△△する」という形で、選んだ理由とセットで言葉にしてみましょう。たとえば「関わる意味を感じにくくなっていると見立てたから、この仕事が誰の役に立っているかを具体的に伝える」のように、次の1on1で試せる形に落とすのがコツです。

意欲が続く関わりにする——一過性で終わらせず観察と調整を回す

この章のゴール

選んだ関わりが効いたかを観察し、次の打ち手に調整するサイクルを説明できる。

意欲づけは一度の声かけで終わらない

ここまでで「見立てる → 関わる」まで進みました。けれど、意欲づけは一度の声かけや一回の関わりで終わるものではありません。むしろ、関わった後にどう観察し、どう調整するかで、効果が続くかどうかが決まります。

J-Net21の「OJTの進め方」は、仕事を任せて経験させる関わりについて、「『自分でやり遂げた』という達成感からさらなる意欲を引き出すことにもなりますが、逆に失敗して自信を喪失させる場合もあるため、上司のきちんとした指示・フォローが重要です」と述べています(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。同じ関わりでも、その後のフォローがあるかないかで、意欲を引き出すか、逆にしぼませるかが分かれるということです。だからこそ、関わった「後」が大事になります。

効いたかどうかを「観察できる行動の変化」で判断する

効いたかどうかは、気分や印象ではなく、観察できる行動の変化で判断します。第2章で意欲低下のサインを観察できる行動でとらえたのと同じように、ここでも行動で見ます。たとえば「意味づけ」を試したなら、見るのは「会議での提案が(例)再び出るようになったか」「締切前の動き出しが早くなったか」といった、目に見える変化です。心の中は見えませんが、行動の変化なら観察できます。

J-Net21は、仕事が終了したときの指導として「部下が身につけた知識や仕事に対する意欲・態度などを把握し、チェックします」とし、関わりの後にも意欲・態度を把握し続けることを促しています(出典:J-Net21「OJTの進め方」)。関わったら終わり、ではなく、関わった後の行動を見届けるところまでが、ひとつの関わりです。

変わらなければ仮説に戻って選び直す

観察して、行動に変化があれば、その関わりを続けます。けれど、変わらなければ——ここが踏ん張りどころです。「効かなかったのは本人のせい」とするのではなく、自分の見立てに戻ります。最初に立てた「満たされていない要因」の仮説が違ったのかもしれない。意味の問題だと思っていたが、本当は裁量の問題だったのかもしれない。そう考えて、第2章の仮説に戻り、別の要因を見立て直し、別の関わりを選びます。

J-Net21の「OJTの進め方」も、「実際に仕事を始めてみてから、目標や方法が適当でなかったり…部下の能力にそぐわなかったりという問題が生じる場合もあるため、つねに報告させ、相談させることを怠ってはなりません。状況に応じ、早急に、柔軟に、適切に軌道修正を行いながら進めていきましょう」と述べています。さらに目標設定でも、「対象期間が終わった後に、目標ごとの未達成の理由を掘り下げることで、個々の社員の弱点と補強の方向性が明らかになり…次の目標設定の際の精度を高めることができる」とし、振り返りを次に活かすことを勧めています(出典:J-Net21「OJTの進め方」「社員のやる気を高める目標設定」)。

これで、覚えて帰る型がひとつにつながります。「見立てる → 関わる → 観察する → 調整する」。このサイクルを回し続けることが、モチベーション管理です。つまずきやすいのは、一度声をかけて満足し、その後を観察しないこと。そして、変化が出ないのを本人のせいにして、見立てに戻らないことです。なお、こうした個人への関わりを、組織全体の定着やエンゲージメントの仕組みへ広げていく視点は、エンゲージメント向上の基本が正本です。本講座は、あくまで現場の一人ひとりへの関わりに絞っています。

この章の確認(演習)

第3章で選んだ関わりについて、「効いたかどうかを、何の行動で判断するか」を1つ決めてください(例:会議での提案が再び出るか/報告の内容が前向きになるか)。そして、もしその行動に変化が出なかったら、次にどの要因の仮説に戻って見立て直すかも、あらかじめ1つ書いておきましょう。これで、観察と調整のサイクルが回り始めます。

まとめ

モチベーション管理とは、報酬で釣ることでも、気合を求めることでもありません。意欲が下がっている要因を見立て、相手の状態に合わせて引き出す関わりを選び、その後を観察して調整し続けることです。管理職は報酬や評価を自由に動かせなくても、仕事の在り方や日々の関わりを工夫することで、内から湧く動機づけには十分に関われます(出典:厚生労働省『令和元年版 労働経済の分析』)。覚えて帰る型は「見立てる → 関わる → 観察する → 調整する」。意欲は、上げるものではなく、引き出すものです。

明日の一歩として、意欲が落ちて見えるメンバーを1人思い浮かべてください。その人の観察できる行動を書き出し、そこから「満たされていない要因」の仮説を1つ立て、次の1on1で試す関わりを1つだけ決める。そこから、あなたのモチベーション管理が始まります。引き出した意欲を対話の中で継続させていく進め方は、1on1ミーティングの進め方が次のステップです。

本講座の特典として、観察できる行動から要因の仮説を立て、引き出す関わりまでを1枚で整理できる「意欲の見立てシート」をご用意しています。シートの入手案内と、メンバーの育成・マネジメントに役立つ実務情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

モチベーション管理と、ただ励ますことは何が違うのですか

励ましは全員に同じ声をかける一方通行です。モチベーション管理は、観察できる行動から要因を見立て、相手の状態に合わせて関わりを選び、観察して調整するところまでを含みます。

報酬や評価を動かせない管理職でも、意欲には関われますか

関われます。厚生労働省の労働経済白書も、人件費を増やせなくても仕事の在り方や職場環境の改善で働きがいを高めうると示しています。日々の関わりが内からの動機づけを支えます。

部下のやる気が下がっているとき、最初に何をすべきですか

「やる気がない」と結論づける前に、観察できる行動(提案の数、締切、発言、報告の様子)を事実として書き出します。そこから満たされていない要因の仮説を1つ立てるのが出発点です。

関わってみても意欲が戻らないときはどうすればよいですか

本人のせいにせず、最初に立てた要因の仮説に戻って見立て直します。意味の問題だと思っていたら裁量の問題だった、ということもあります。仮説を選び直し、別の関わりを試します。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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