給与ソフトに勤怠を入力すれば、手取りの金額は出てきます。でも、「なぜこの額になるの?」と聞かれて、自分の言葉で答えられるでしょうか。総支給と手取りは何が違うのか、控除欄に並ぶ項目名はそれぞれ何の天引きなのか、社会保険料は誰がいつ決めているのか——前任者から「毎月この手順でやって」と引き継いだまま、根拠を説明できずに止まってしまう。多くの新任担当者がここでつまずきます。
この講座が扱うのは、給与計算という一つの実務プロセスの「流れ」です。給与計算とは、勤怠を集計して総支給額を出し、そこから控除を引いて手取り(差引支給額)を確定し、預かった控除を会社が後で納めるまでの、一本の流れです。本講座はソフトの代わりに計算をするのではなく、ソフトが出してきた数字が「どの段階の、どの計算の結果なのか」を、明細の項目を指しながら説明できるようになるための地図です。
最初に線を引いておきます。給与という支出を帳簿に記録する仕組み(仕訳)は会計の基礎(kouza-020-accounting-basic)が、売上・利益・コストといった経営数字の読み方はビジネス数字(kouza-025-business-numbers)やコスト意識(kouza-026-cost-awareness)が、所得税や住民税が「誰に・何に・いつ課税されるか」という税金そのものの仕組みは税金の基本(kouza-136-tax-basic)が、それぞれの正本です。本講座はそこには踏み込みません。税金は「給与から引かれる控除の一系統」として明細の上で見分けられるところまでを扱い、毎月の給与計算の流れだけに絞ります。
この講座を終えると、次の3つができるようになります。1つ目は、給与計算の全体の流れ(勤怠集計 → 総支給額 → 控除 → 差引支給額 → 納付)を、順を追って説明できること。2つ目は、控除が大きく「社会保険料」と「税金」の2系統に分かれることを、明細の項目に紐づけて見分けられること。3つ目は、1人の社員の明細を題材に、総支給・控除・手取りの関係を説明できることです。本講座の共通の題材は、月給制の正社員1名(例)の1か月分の給与です。この同じ1人の明細を、勤怠集計から手取り・納付まで、全章を通して段階的に作り上げていきます。
この講座のポイント
- 給与計算の全体の流れ(勤怠集計 → 総支給額 → 控除 → 差引支給額 → 納付)を、順を追って説明できる。
- 総支給額が「基本給+各種手当」で構成されること、勤怠の集計が支給額にどう効くかを、明細の項目に紐づけて説明できる。
- 控除が大きく「社会保険料」と「税金」の2系統に分かれることを、明細の控除欄の項目に紐づけて見分けられる。
- 1人の社員の明細で総支給・控除・手取り(差引支給額)の関係を通して説明でき、預かった控除がその後どう納付されるかの流れまで言える。
給与計算とは何か——支給から手取りまでの全体像
この章のゴール
給与計算の全体の流れ(勤怠集計 → 総支給額 → 控除 → 差引支給額 → 納付)を、順を追って説明できる。
給与計算は「総支給を出す→控除を引く→手取りが残る→納める」の一本の流れ
まず、給与計算の全体像を一本の流れとして頭に入れます。順番はこうです。①勤怠(出勤日数・労働時間・残業時間)を集計する。②総支給額を出す。③控除を計算して引く。④差引支給額(手取り)を確定する。⑤預かった控除分を会社が後日納付する。この①から⑤までを、淀みなく声に出して言えるようになることが、この章のゴールです。
ポイントは、給与計算が「総支給額を出す」ところから始まり、「納付する」ところで終わる、という両端です。多くの人は手取りの金額にだけ目が行きますが、手取りは流れの途中で出てくる④の結果にすぎません。そして④で終わりではなく、会社には⑤の納付という工程が残っています。この両端を押さえると、毎月の作業が「どこからどこへ進んでいるのか」が見えてきます。
手取りは最初に決まっている額ではなく“引き算の結果”
ここで一番伝えたいことを先に言います。手取りは、最初から決まっている額ではありません。総支給額から控除を引いた“あと”に残る、引き算の結果です。「手取り◯◯円の人」という言い方をすると、あたかも手取りが先にある数字のように聞こえますが、計算の順序は逆です。先に総支給額があり、そこから社会保険料や税金が引かれ、残ったものが手取りになります。
この順序を取り違えると、説明があやふやになります。「総支給と手取りの差は何ですか」と聞かれたとき、その差こそが控除(社会保険料+税金)だと即答できるかどうか。手取りを引き算の結果として捉えていれば、迷わず答えられます。覚えて帰ってほしいのは、「手取りは、引いた“あと”に残る数字」という一言です。
明細は「支給」「控除」「差引支給」の3ブロックでできている
給与明細を開くと、項目がたくさん並んでいて圧倒されます。けれども、明細は大きく3つのブロックでできています。1つ目は「支給」のブロック。基本給や各種手当など、社員に支払う金額がここに並びます。この合計が総支給額(額面)です。2つ目は「控除」のブロック。社会保険料や税金(税金の基本(kouza-136-tax-basic)で扱う所得税・住民税)など、総支給額から差し引く金額がここに並びます。3つ目は「差引支給額」。総支給額から控除合計を引いた、手取りの金額です。
共通例の社員(例:月給制の正社員1名)の明細を、この3ブロックに分けて眺めてみましょう。支給の欄から総支給額が決まり(第2章)、控除の欄から控除合計が決まり(第3章)、その差が差引支給額になる(第4章)。明細の上を、左上の支給から、控除を経て、差引支給へと矢印が進んでいくイメージです。どんなに項目が多くても、この3ブロックの枠組みで眺めれば、いま見ている数字がどのブロックの数字なのかが分かります。
会社は控除を“預かって納める”立場——引いて終わりではない
もう一つ、流れの最後(⑤納付)に関わる大事な視点があります。控除した社会保険料や税金は、会社のお金になるわけではありません。会社は社員から“預かって”、後で国や市区町村、年金事務所などへ納める立場です。たとえば住民税について、東京都主税局の事務手引きは「事業主が特別徴収した徴収金は、従業員からの預り金であり、事業資金ではありません。必ず区市町村に納入してください」と明記しています(出典:東京都主税局「個人住民税 特別徴収の事務手引き」)。社会保険料も、事業主が毎月の給料から被保険者(社員)負担分を差し引き、会社負担分とあわせて納めます(出典:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」)。
つまり、控除は「引いて終わり」ではありません。引いたお金には、後で必ず納める先と期限があります。だから給与計算は、手取りを支払った時点では完結せず、納付までを含めて一連の流れになります。この「預かって納める」という会社の立場は、第4章でもう一度詳しく見ます。
この章の確認(演習)
自分の給与明細(または共通例の社員の明細)を1枚用意し、項目を「支給/控除/差引支給」の3ブロックに線で分けてください。そのうえで、計算が進む順に、①勤怠集計、②総支給額、③控除、④差引支給額(手取り)、⑤納付、と番号を振ってみましょう。①から⑤を声に出して言えれば、この章のゴールは達成です。
総支給額を組み立てる——基本給と各種手当
この章のゴール
総支給額が「基本給+各種手当」で構成されること、勤怠の集計が支給額にどう効くかを、明細の項目に紐づけて説明できる。
総支給額(額面)=基本給+各種手当——まだ“引く前”の金額
流れの最初の山は、総支給額を出すことです。総支給額(額面とも呼びます)は、基本給に各種手当を足したものです。共通例の社員の支給欄を見ると、基本給があり、その下に通勤手当、残業手当、役職手当…と項目が並びます(金額はいずれも例です)。これらをすべて足した合計が、総支給額です。
ここで強調したいのは、総支給額はまだ“引く前”の金額だ、ということです。第1章で確認したとおり、手取りは引き算の結果でした。総支給額は、その引き算が始まる前の出発点です。「額面◯◯円」と言うとき、それは総支給額のことであって、手取りではありません。総支給と額面は同じもの、手取りはその後に残るもの——この区別を、支給欄を見ながら言えるようにします。
固定的な手当と勤怠に連動する手当を分けて見る
手当には、毎月だいたい一定の「固定的な手当」と、勤怠によって変わる「勤怠連動の手当」があります。通勤手当や役職手当は、毎月ほぼ同じ額で支給される固定的な手当です。一方、残業手当(割増賃金)は、その月にどれだけ残業したかによって変わります。だから総支給額を組み立てる手順は、①基本給を置く、②固定的な手当(通勤・役職など)を足す、③勤怠に連動する手当(残業など)を足す、④合計して総支給額を出す、という順になります。
残業手当が勤怠に連動するのは、割増賃金のルールが時間に応じて計算されるからです。厚生労働省の説明によれば、時間外労働や深夜労働(原則として午後10時〜午前5時)には1時間当たりの賃金の25%以上、法定休日の労働には35%以上の割増賃金を支払わなければならず、1か月60時間を超える時間外労働は50%以上の割増になります(出典:厚生労働省「時間外・休日労働と割増賃金」)。つまり、勤怠の集計で出た残業時間が、この割増率を通じて支給額に直結します。勤怠を正しく集計することが、正しい総支給額の前提になるわけです。
通勤手当には非課税の上限という考え方がある
手当を見るときに、もう一つ意識したいのが「課税される手当」と「非課税の手当」の違いです。これは次章の控除(とくに税金)につながる伏線です。代表例が通勤手当です。電車やバスで通勤する人の通勤手当は、最も経済的かつ合理的な経路・方法で通勤した場合の定期券などの金額が、一定の限度まで非課税になります。国税庁によれば、その金額が1か月当たり15万円を超える場合は15万円が非課税限度額となり、限度額を超える部分は給与として課税され、支給月の給与に上乗せして源泉徴収されます(出典:国税庁 No.2582「電車・バス通勤者の通勤手当」)。
ここで覚えるのは、金額そのものより「手当には課税されるものと非課税のものがある」という構造です。総支給額の中には、税金の計算対象になる部分(課税支給額)と、ならない部分(非課税支給額)が混ざっています。だから総支給額がそのまま税金の計算の元になるわけではない——この点は、第3章で所得税の計算を見るときに効いてきます。なお、人件費を経営側のコストとしてどう捉えるかはコスト意識(kouza-026-cost-awareness)が、給与の金額を帳簿に記録する仕組みは会計の基礎(kouza-020-accounting-basic)が扱います。本章は、あくまで支給欄を組み立てるところに絞ります。
この章の確認(演習)
共通例の社員(または自分)の支給項目を、基本給・固定的な手当・勤怠連動の手当に分けて書き出し、すべて足して総支給額(額面)を出してください。最後に、その金額の横に「これはまだ手取りではない」と一言そえましょう。総支給と手取りの違いを、自分の言葉で確認するのがこの演習の狙いです。
控除を理解する——社会保険料と税金の2系統
この章のゴール
控除が大きく「社会保険料」と「税金」の2系統に分かれることを、明細の控除欄の項目に紐づけて見分けられる。
控除は社会保険料グループと税金グループの2系統
総支給額が出たら、次は控除です。控除欄にはいろいろな項目が並んでいますが、大きく2つの系統に分けて見ると、一気に整理できます。①社会保険料グループ(健康保険・厚生年金・雇用保険など)と、②税金グループ(所得税・住民税)です。控除欄の項目を上から読み、それぞれが「社会保険料か、税金か」のどちらに属するかを仕分けられること——これがこの章のゴールです。
よくあるつまずきが、控除をぜんぶ「税金」とまとめてしまうことです。実際には、控除の多くを占めるのは社会保険料で、税金(所得税・住民税)はそのうちの一系統にすぎません。「給与から引かれているのは税金だけではない」と気づくだけで、明細の見え方が変わります。
社会保険料グループ——健康保険・厚生年金・雇用保険
社会保険料グループには、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などがあります。これらに共通するのは、会社と本人で分担して負担し、本人負担分が給与から差し引かれる、という点です。日本年金機構は、事業主が毎月の給料・賞与から被保険者(社員)負担分の保険料を差し引き、事業主負担分とあわせて納付すると説明しています(出典:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」)。つまり、控除欄に出てくる健康保険料や厚生年金保険料は「本人負担分」であり、これとは別に、明細には出てこない「会社負担分」が存在します。本人負担分と会社負担分を混同しないことが大切です。
具体的な保険料率は、本講座では断定しません。たとえば協会けんぽの健康保険料率は都道府県ごとに異なり(出典:協会けんぽ「令和7年度保険料額表」)、雇用保険料の労働者負担分も年度や事業の種類によって改定されます(例として、令和7年度・一般の事業の労働者負担は1,000分の5.5。出典:厚生労働省「令和7年度 雇用保険料率のご案内」)。料率は年度ごとに変わるため、実務では必ずその年の公式の料額表・料率表を確認してください。本講座で押さえるのは、「これらは社会保険料グループで、会社と本人で分担し、本人負担分が控除される」という構造のほうです。
社会保険料には、もう一つ実務で戸惑いやすい時間差があります。日本年金機構は、当月支払う給料から前月分(前月の標準報酬月額にかかる保険料)を差し引くことができるとしており、たとえば5月の給料支払日には4月分の保険料を差し引く、と説明しています(出典:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」)。つまり、今月の明細に出ている社会保険料が、必ずしも今月分とは限りません。この“前月分を当月控除”という運用を知っておくと、月をまたぐときの混乱を避けられます。
税金グループ——所得税(源泉徴収)と住民税(特別徴収)
税金グループは、所得税と住民税です。所得税は「源泉徴収」というかたちで毎月の給与から天引きされます。その金額は、給与の額から社会保険料などを引いた後の金額をもとに、「給与所得の源泉徴収税額表」に当てはめて求めます。国税庁の説明では、税額表に当てはめる金額は、その月の給与等から社会保険料等を控除した後の金額であり、扶養控除等申告書を提出している人には「甲欄」、提出していない人には「乙欄」を使います(出典:国税庁 No.2511「税額表の種類と使い方」)。ここで第2章の伏線が回収されます。社会保険料を引いた後の金額が基準になるので、社会保険料の計算は所得税の計算より前に来るわけです。
住民税は「特別徴収」というかたちで天引きされます。所得税が当年の給与をもとに毎月計算されるのに対し、住民税は前年の所得をもとに市区町村が税額を計算し、その通知を受けて天引きします。東京都主税局の手引きによれば、特別徴収の徴収期間は6月から翌年5月までの12か月です(出典:東京都主税局「個人住民税 特別徴収の事務手引き」)。所得税と住民税は、同じ税金グループでも「いつの所得をもとに、どう決まるか」が違う——この違いを押さえておくと、控除欄の見分けがさらに正確になります。なお、天引きや納付を法令を守る業務体制としてどう整えるかはコンプライアンス(kouza-106-compliance-basic)が、所得税・住民税が誰に何にいつ課税されるかという仕組みそのものは税金の基本(kouza-136-tax-basic)が扱います。本章は、控除欄の項目を2系統に見分けるところまでです。
この章の確認(演習)
共通例の社員(または自分)の控除欄の項目を、「社会保険料」「税金」の2列に仕分けして書き出してください。健康保険・厚生年金・雇用保険は社会保険料の列へ、所得税・住民税は税金の列へ。仕分けたら、それぞれの列で合計を出します。各項目について「これは何のための天引きか」を一言で言えれば、見分けの力がついています。
手取りを確定し、納付までつなぐ——1人の明細で通して読む
この章のゴール
1人の社員の明細で総支給・控除・手取り(差引支給額)の関係を通して説明でき、預かった控除がその後どう納付されるかの流れまで言える。
差引支給額(手取り)=総支給額 − 控除合計
いよいよ流れを通します。第2章で組み立てた総支給額から、第3章で仕分けた控除合計(社会保険料+税金)を引きます。その残りが、差引支給額——つまり手取りです。共通例の社員でいえば、支給欄の合計(総支給額)から、控除欄の合計(社会保険料グループ+税金グループ)を引いた額が、銀行口座に振り込まれる金額になります(具体的な金額はいずれも例です)。
ここで第1章の背骨をもう一度確かめます。手取りは、最初に決まっていた額ではなく、総支給額から控除を引いた引き算の結果でした。明細を上から下へ——支給の合計、控除の合計、その差し引き——とたどれば、手取りがどう生まれたかを一筆で説明できます。「総支給はこの項目の合計、控除は社会保険料と税金で、引いた残りが手取りです」と、明細の項目を指しながら言えれば、第3の到達目標は達成です。
給与“支給”は完了でも、会社には「預かった控除を納める」工程が残る
手取りを振り込んだ時点で、社員から見れば給与は受け取り完了です。けれども、会社から見ると流れはまだ終わっていません。第1章で触れたとおり、控除した社会保険料や税金は会社の預かり金であり、それぞれに納める先と期限があります。ここを最後の矢印としてつなぎます。
納付期限は、控除の種類ごとに決まっています。源泉徴収した所得税は、原則として給与を実際に支払った月の翌月10日までに国へ納めます。ただし、給与の支給人員が常時10人未満の場合は「納期の特例」を使え、1月から6月までに源泉徴収した分は7月10日、7月から12月までの分は翌年1月20日が期限になります(出典:国税庁 No.2505「源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例」)。給与から特別徴収した住民税は、徴収した月の翌月10日までに市区町村へ納入します(出典:東京都主税局「個人住民税 特別徴収の事務手引き」)。健康保険・厚生年金保険料は、納付対象月の翌月末日が納付期限です(例:4月分の保険料は5月末日。出典:日本年金機構「厚生年金保険料等の納付」)。
つまり、控除欄で引いた一つひとつのお金には、引いた後に「どこへ・いつまでに納めるか」という続きがあります。給与計算が“支払って終わり”ではなく“納付まで”の一連だ、というのは、この続きがあるからです。手取りを会社の最終的なコストだと思い込むと、この納付の工程が視界から抜け落ちます。実際には、預かった控除を期限までに納めるところまでが、給与にまつわる会社の仕事です。
毎月の作業と、年に区切りのある手続きは粒度が違う
最後に、混同しやすい時間の粒度を整理します。ここまで見てきたのは、毎月くり返す給与計算の流れです。これとは別に、年に区切りのある手続きがあります。代表が年末調整です。毎月の所得税の源泉徴収はあくまで概算で、1年が終わるところで、その年の所得や各種控除を反映して正しい税額に精算します。毎月の作業(源泉徴収)と、年に1度の精算(年末調整)は、同じ給与まわりでも粒度が異なります。両者を同じ粒度で混ぜて話すと、流れの説明がぶれます。本講座では、毎月の流れと年次の手続きは別物だと区別するところまでにとどめ、年末調整や税額の中身そのものは税金の基本(kouza-136-tax-basic)に譲ります。また、給与の支払いや納付を帳簿に記録する仕組み(仕訳の入口)は会計の基礎(kouza-020-accounting-basic)で扱います。
この章の確認(演習)
共通例の社員1名について、1枚の紙に「総支給額 → 控除合計 → 差引支給額(手取り)」を上から順に書き、引き算で手取りを確定してください。そのうえで、引いた控除の下に「この控除分は、この後、社会保険料は翌月末日まで、源泉所得税と住民税は翌月10日までに納付」と矢印で書き添えます。総支給から手取りまでの流れと、その先の納付までを、1枚で通して説明できれば完成です。
まとめ
給与計算は、「勤怠集計 → 総支給額 → 控除(社会保険料+税金)→ 差引支給額(手取り)→ 納付」という一本の流れです。手取りは最初に決まっている額ではなく、総支給額から控除を引いた引き算の結果でした。控除は大きく社会保険料グループと税金グループの2系統に分かれ、会社はそれを社員から預かって、期限までに納める立場です。1人の社員の明細をこの順で読めれば、給与ソフトが出した数字も「どの段階の、どの計算の結果か」で説明できます。
明日からの最初の一歩は、手元の給与明細(自分または共通例)を「支給/控除/差引支給」の3ブロックに分け、計算が進む順に①〜⑤の番号を振ってみることです。3ブロックに分けて番号を振るだけで、毎月の処理が「言われた通り」から「説明できる作業」に変わります。さらに、給与という支出を帳簿に記録する仕組み(仕訳)を知ると、流れがその先までつながります。次は会計の基礎(kouza-020-accounting-basic)へ進んでみてください。
給与計算の流れチェックシート(支給 → 控除 → 手取り → 納付の順序確認用と、控除2系統の仕分け欄つき)を配布しています。続編の案内とあわせて、メルマガ登録で受け取れます。
よくある質問
総支給額(額面)と手取りは何が違うのですか?
総支給額は基本給と各種手当を足した“引く前”の金額、手取りはそこから控除を引いた“あと”の金額です。差額が社会保険料と税金の控除合計にあたります。
給与から引かれる控除にはどんな種類がありますか?
大きく社会保険料(健康保険・厚生年金・雇用保険など)と税金(所得税・住民税)の2系統です。控除欄の項目はこのどちらかに仕分けて見分けられます。
社会保険料は誰がいつ決めているのですか?
料率は公的機関が定め、年度ごとに改定されます。健康保険料率は都道府県ごとに異なり、雇用保険料率も年度・事業の種類で変わるため、実務では毎年その年の公式の料額表を確認します。
給与計算は給与ソフトに任せれば、担当者は理解しなくてよいですか?
計算自体はソフトが行いますが、出てきた数字がどの段階の結果かを説明するのは担当者の役割です。問い合わせや差し戻しに根拠で答えるには、流れの理解が欠かせません。
会社が天引きした社会保険料や税金はどこへ行くのですか?
会社が社員から預かり、期限までに納付します。源泉所得税と住民税は原則として翌月10日まで、健康保険・厚生年金保険料は翌月末日までが納付期限です。