1|# 業務マニュアル作成入門
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3|もしあなたが明日から休んだら、あなたの仕事を誰ができますか? ——「引き継ぎの資料、ありますか」と聞かれて、Excelの箇条書き1枚しか出せなかったら。あなたが休んだ時点で業務が止まる——それが、マニュアルを作る一番の理由です。
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5|「手順は全部書いたのに」「写真貼ればいいんでしょ?」「マニュアルなんて作ったことないし、何から書けばいいか分からない」——こういうふうに思っていると、書いた本人にしか分からないマニュアルが出来上がります。マニュアルは「書いて終わり」ではなく、読んだ人が再現できるかで決まるんです。この講座を読み終えたあなたは、次の4つができるようになります。
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7|1. マニュアルの3つの役割(引き継ぎ・均質化・属人化防止)を、自分の業務に当てはめて説明できる
8|2. 構成テンプレート(5W2H+手順+確認)を使って読む人視点の骨組みを作れる
9|3. 操作手順を読んだ人が再現できる文章で書ける(否定形禁止・1文1動作・画面名明記)
10|4. 書いたマニュアルを第三者に読んでもらい、フィードバックを反映して改訂できる
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12|この講座は最後まで、入社2年目の佐藤さんが経費精算のマニュアルを作る場面だけで説明します。読む人視点に気づいて、構成を作って、書き方を直して、検証して完成させる——佐藤さんの4ステップを辿りながら、自分のマニュアル作りに置き換えて読み進めてみてください。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分の業務に当てはめながら読み進めてみてください。マニュアル作成の基本を掴んだ後は、関連講座でさらに深められます。まずは、この1本で読む人視点の型を掴みましょう。
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14|## 第1章:マニュアルって何?——読む人の視点で書く
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16|まずは、マニュアルが何のためにあるのかを知る章です。「自分がやっている通りに書けばいい」——その思い込みを外し、読む人の視点の重要性を自覚します。
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18|### この章のゴール
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20|この章を読み終えると、マニュアルの3つの役割(引き継ぎ・均質化・属人化防止)を、自分の業務に当てはめて説明できるようになります。
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22|### 1-1 あなたが休んだら、動きますか?
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24|あなたが担当している業務——もし明日あなたが休んだら、誰ができますか? 「あの人に聞けば分かる」で回っているなら、その業務はあなたに属人化しています。属人化(一人の担当者に業務が集中している状態)が進むと、その人が休んだ時点で業務が止まる、あるいは品質が下がる——これが多くの企業で指摘されている課題です。経済産業省の中小企業白書でも、担当者の不在が業務停滞の直接的な原因になることが報告されています。
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26|マニュアルは、この属人化を防ぐための仕組みです。ISO 9001(品質マネジメントの国際規格)でも、「文書化された情報を維持すること」が求められています。つまり、マニュアルはなくても動く組織ではなく、文書化しているから動く組織が強いんです。
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28|### 1-2 マニュアルの3つの役割
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30|マニュアルには大きく3つの役割があります。
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32|①引き継ぎ——担当が変わっても業務が止まらない。異動・退職・休職の際、マニュアルがあれば次の担当者が即座に業務を開始できる。マニュアルがなければ、引き継ぎに数週間かかるケースも珍しくありません。
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34|②均質化——誰がやっても同じ品質。マニュアルがないと、AさんがやるときとBさんがやるときで手順が変わり、結果の品質にばらつきが出ます。マニュアルがあれば、手順が同じだから結果も同じ——これが均質化です。
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36|③属人化防止——一人の担当者に業務が集中しない。属人化が進むと、その人が休んだだけで業務が止まる。マニュアルがあれば、誰もが同じ手順を再現できるので、一人に負荷が集中しません。
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38|この3つの役割は、どれも「あなたが休んでも動く仕組み」を作るためのものです。
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40|### 1-3 悪いマニュアルの共通点
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42|マニュアルを作ったのに「使われない」——その原因の多くは、読む人視点が抜けていることです。悪いマニュアルに共通する3つのパターンを見てみましょう。
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44|- 書いた本人にしか分からない——「あのファイル」「いつもの場所」等、本人には自明でも初めての人には自明ではない表現が使われている
45|- 写真だけ貼って手順がない——スクリーンショットを貼り付けただけのマニュアル。写真には操作の順序や判断基準が書かれていないので、読む人は「この写真の次に何をするか」が分からない
46|- 抽象語で書いてある——「適切に処理する」「分かりやすく説明する」「注意して入力する」——これらは読む人にとって「どうすればいいか」が分からない語です
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48|これら3つに共通するのは、書いた人視点で書かれていること。「自分には分かるから」省略した表現や写真だけのマニュアルは、書いた人には便利でも、読む人には不便なんです。
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50|### 1-4 佐藤さんのマニュアル——読む人視点が抜けている
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52|ここで、この講座を通して使う共通例「入社2年目の佐藤さん」のマニュアルを見てみましょう。
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54|佐藤さんは経費精算を毎月担当しています。先輩から「マニュアル作っておいてよ」と言われて、こう書きました。
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56|> 経費精算マニュアル
57|> 1. 領収書を貼る
58|> 2. システムに入力する
59|> 3. 提出する
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61|これで再現できるでしょうか? 初めて経費精算をする人が読んだら——「どこに貼るの?」「どのシステム? どうやって入力するの?」「誰に提出するの?」——質問だらけになるはずです。佐藤さんには自明でも、読む人には自明ではない。これが、読む人視点が抜けている典型例です。
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63|### 1-5 この章の確認(演習)
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65|自分が毎月やっている定例業務を1つ選び、「他の人に口頭で説明するつもりで」3ステップで書き出してみてください。たとえば「月次レポートの提出:①データを集める ②Excelに転記する ③メールで送る」のように。まずは自分の言葉で書く——これがスタートラインです。次章では、この3ステップを「読む人視点の骨組み」に組み替えていきます。
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66a|「マニュアルは、あなたが休んでも動く仕組み」。読む人視点で書くのは、その仕組みの第一歩です。
67|## 第2章:構成の型——5W2Hで骨組みを作る
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69|第1章で「読む人視点が大事」と分かりました。では、読む人視点で書くには、どう構成すればいいのでしょうか。この章では、5W2Hという整理の型を使って、マニュアルの骨組みを作ります。
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71|### この章のゴール
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73|この章を読み終えると、構成テンプレート(5W2H+手順+確認)を使って、読む人視点の骨組みを作れるようになります。
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75|### 2-1 前提情報がないと手順も伝わらない
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77|「手順さえ書けばいい」と思いがちです。でも、読む人はまず「これは自分に関係あるか」を判断します。いつやるのか、誰がやるのか、どこでやるのか——この前提が分からないと、手順の意味が伝わりません。
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79|佐藤さんのマニュアル「領収書を貼る→システムに入力する→提出する」も、前提情報がありません。読む人は「私もやるの?」「いつまでに?」と迷ってしまいます。
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81|### 2-2 5W2Hで前提情報を整理する
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83|5W2Hは、品質管理分野で広く使われる業務整理の型です。7つの要素で前提情報を整理すると、読む人は「自分に関係あるか」を即座に判断できます。
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85|| 要素 | 意味 | 確認すること |
86||---|---|---|
87|| Who(誰が) | 対象者 | 全社員?特定部署? |
88|| When(いつ) | タイミング | 毎月25日?都度? |
89|| Where(どこで) | 場所・システム | 経費精算システム?紙? |
90|| What(何を) | 対象業務 | 交通費・会議費? |
91|| Why(なぜ) | 目的・理由 | 月末の経理処理のため? |
92|| How(どうやって) | 手順の概要 | システム入力→印鑑→提出? |
93|| How much(いくら) | 予算・数量 | 上限は?予算内? |
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95|佐藤さんの経費精算マニュアルに5W2Hを当てはめてみましょう。
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97|- Who:全社員
98|- When:毎月25日締め(翌月5日までに提出)
99|- Where:経費精算システム(https://expense.company.co.jp)
100|- What:交通費・会議費・消耗品費の精算
101|- Why:月末の経理処理のため
102|- How:システムに入力→印鑑をもらう→経理に提出
103|- How much:1件5,000円未満は直属上司承認、5,000円以上は部長承認
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105|5W2Hを埋めると、読む人は「私もやるんだ」「いつまでにやればいいんだ」と即座に分かるようになります。
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107|### 2-3 骨組みのテンプレート=前提+手順+確認
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109|5W2Hで前提情報を整理したら、次は3ブロックの骨組みでマニュアルを組み立てます。
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111|①前提情報(5W2H)——読む人が「自分に関係あるか」を判断する冒頭
112|②手順(操作の箇条書き)——読む人が再現する操作
113|③確認(チェックリスト)——完了の判定基準
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115|チェックリストは、医療や航空の分野で見落としを防ぐ手段として実績があります。Atul Gawandeの著書「The Checklist Manifesto」では、チェックリストの導入で手術後の合併症が大幅に低下した事例が報告されています。マニュアルでも、最後にチェックリストを置くことで「提出前に見落としがないか」を確認できます。
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117|佐藤さんのマニュアルの骨組みを作ってみましょう。
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119|> 経費精算マニュアル
120|>
121|> 【前提情報】
122|> - 対象:全社員
123|> - 締め日:毎月25日(翌月5日までに提出)
124|> - 場所:経費精算システム
125|> - 対象経費:交通費・会議費・消耗品費
126|>
127|> 【手順】
128|> 1. (あとで詳しく書く)
129|> 2. (あとで詳しく書く)
130|> 3. (あとで詳しく書く)
131|>
132|> 【確認】
133|> - [ ] 入力金額と領収書の合計が一致している
134|> - [ ] 承認者の印鑑が押されている
135|> - [ ] 提出期限を過ぎていない
136|
137|手順の部分は「あとで詳しく書く」で構いません。まずは骨組みを作る——それが、読む人視点のマニュアルの第一歩です。
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139|### 2-4 この章の確認(演習)
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141|第1章で選んだ業務の5W2Hシートを埋めてみてください。手順を操作単位で箇条書きにしてください。最後に「完了の確認」をチェックリスト形式で3つ書いてください。5W2Hを埋めるだけで、自分が省略していた前提に気づくはずです。
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142a|「マニュアルは、あなたが休んでも動く仕組み」。5W2Hで骨組みを作るのは、読む人が迷わないようにする仕組み作りです。
143|## 第3章:書き方のコツ——操作が再現できる文章にする
144|
145|第1章で読む人視点の重要性を知り、第2章で骨組みを作りました。この章では、骨組みの手順部分を、読んだ人が再現できる文章で書く3つのルールを身につけます。
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147|### この章のゴール
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149|この章を読み終えると、操作手順を読んだ人が再現できる文章で書けるようになります。3つのルールは——否定形禁止・1文1動作・画面名明記です。
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151|### 3-1 3つの書き方ルール
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153|MicrosoftやGoogleの技術文書スタイルガイド、JIS(日本工業規格)の分かりやすい表記の原則——これらに共通する3つのルールを、マニュアル作成に持ち込みます。
154|
155|①否定形禁止——「〇〇しない」ではなく「〇〇する」と書きます。読む人は「何をすべきか」を探しています。「間違えないように注意する」→「入力後、金額が合っているか目視で確認する」。「再入力しない」→「入力内容を確認したら[登録]ボタンをクリックする」。読む人が次にやることを書く——それが肯定形です。
156|
157|②1文1動作——1つの文に複数の動作を詰め込みません。「保存して送信する」→「[保存]ボタンをクリックする。[送信]ボタンをクリックする」。1文に詰め込むと、読む人がどの動作で失敗したか分からなくなります。1文1動作で書くと、読む人は1つずつ確認しながら進められます。
158|
159|③画面名・ボタン名を明記——「クリック」「入力」の対象を明確にします。「クリック」→「[送信]ボタンをクリックする」。「入力」→「金額欄に領収書の金額を入力する」。操作に慣れていない人は、画面上のどのボタンが[送信]なのか、どの欄が金額欄なのかが分からない。画面名やボタン名を書くことで、読む人は迷わずに操作できます。
160|
161|### 3-2 佐藤さんのマニュアル改善前→改善後
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163|佐藤さんの経費精算マニュアルの手順部分を、3つのルールで書き直してみましょう。
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165|改善前(読む人が迷う書き方):
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167|> 1. 領収書を貼る
168|> 2. システムに入力する
169|> 3. 間違えないように注意する
170|> 4. 保存して送信する
171|> 5. 提出する
172|
173|改善後(読んだ人が再現できる書き方):
174|
175|> 1. A4用紙に領収書を貼り付ける(左上から順に)
176|> 2. 経費精算システム(https://expense.company.co.jp)にログインする
177|> 3. [新規作成]ボタンをクリックする
178|> 4. 日付欄に領収書の日付を入力する
179|> 5. 科目欄の[▼]ボタンをクリックし、該当する科目を選ぶ(交通費/会議費/消耗品費)
180|> 6. 金額欄に領収書の金額を入力する
181|> 7. 入力後、合計金額が領収書の合計と一致しているか確認する
182|> 8. [保存]ボタンをクリックする
183|> 9. [送信]ボタンをクリックする
184|> 10. 承認者に印鑑をもらう(5,000円未満は直属上司、5,000円以上は部長)
185|> 11. 経理部の宛名で社内便に提出する
186|
187|改善前は5行、改善後は11行。行数は増えましたが、読む人は迷わずに最後までたどり着けるようになりました。行数が増えることを恐れないでください——読む人が再現できるかが、マニュアルの価値です。
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189|### 3-3 抽象語を禁止語にする
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191|もう一つ、マニュアルでよく出る抽象語を「禁止語」にしましょう。
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193|| 禁止語(抽象語) | 書き換え例(具体的にどうするか) |
194||---|---|
195|| 「適切に処理する」 | 「入力後、金額が合っているか目視で確認する」 |
196|| 「分かりやすく説明する」 | 「A4用紙1枚に、項目・金額・日付を箇条書きで書く」 |
197|| 「迅速に対応する」 | 「受信後24時間以内に返信する」 |
198|| 「注意して入力する」 | 「入力後、画面のエラーメッセージがないか確認する」 |
199|
200|「適切に」「分かりやすく」「迅速に」「注意して」——これらは書いた人には意味が通じていても、読む人には「どうすればいいか」が分からない語です。すべて「具体的にどうするか」に書き換えます。
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202|### 3-4 この章の確認(演習)
203|
204|第2章で箇条書きにした手順を、3つのルール(否定形禁止・1文1動作・画面名明記)で書き直してみてください。たとえば「保存して送信する」→「[保存]ボタンをクリックする.[送信]ボタンをクリックする」のように。抽象語も「具体的にどうするか」に書き換えてみてください。行数は増えても大丈夫——読む人が再現できるかが、マニュアルの価値です。
205|
205a|「マニュアルは、あなたが休んでも動く仕組み」。再現できる書き方に直すのは、誰が読んでも動く仕組みにするためです。
206|## 第4章:検証して完成——読んでもらって直す
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208|第1章で役割を知り、第2章で構成を作り、第3章で書き方を直しました。最後の章は、書いたマニュアルを検証して完成させるステップです。
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210|### この章のゴール
211|
212|この章を読み終えると、書いたマニュアルを第三者に読んでもらい、フィードバックを反映して改訂できるようになります。
213|
214|### 4-1 「書いて終わり」が一番の罠
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216|マニュアルは書いた時点では未完成です。書いた人には自明でも、読む人には自明でないことが、検証で初めて分かります。ユーザビリティ(使い勝手)の研究者 Jakob Nielsen は、「5人のユーザーでテストすれば、発見できる問題の約85%が検出される」と報告しています(nngroup.com、2000年)。少数の読者に読んでもらうだけで、大部分の分かりにくさを見つけられる——これが、検証の根拠です。
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218|### 4-2 検証の3ステップ
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220|マニュアルの検証は、3つのステップで行います。
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222|①自己読み返し——書いた直後に、手順通りに自分で操作して再現できるか確認します。「あ、ここ画面名書いてない」「この手順、抜けてる」——自分で操作し直すと、意外と見つかります。
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224|②他者読み——初めてその作業をする人に、マニュアルだけを見て操作してもらいます。ここで「ここでどのボタンを押すか分からない」「この画面、私のパソコンと違うんだけど」等の指摘が出ます。書いた本人には気づかない視点が浮き彫りになります。
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226|③改訂——指摘された分かりにくい箇所を書き直します。1箇所直すだけで、読む人の迷いが減ります。改訂したら、版数と更新日を記録します。
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228|### 4-3 佐藤さんのマニュアルを検証する
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230|佐藤さんは、書き上げた経費精算マニュアルを同僚の鈴木さんに読んでもらいました。鈴木さんは経費精算を初めてやる担当です。
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232|鈴木さんの指摘:
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234|- 「手順2の『ログインする』——IDとパスワードはどこにありますか?」
235|- 「手順5の科目欄——私の画面だと[▼]ボタンじゃなくて[選択]ボタンになってるんですが」
236|- 「手順10の印鑑——直属上司って誰ですか? 部長って誰ですか?」
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238|佐藤さんは、この指摘を反映して第2版を作りました。
239|
240|- 「ログインする」→「経費精算システムのID・パスワードは、入社時に情報システム部から配布された『アカウント情報シート』に記載されています」
241|- [▼]ボタン→「科目欄の選択ボタンをクリックする」(※画面のバージョン差異は注記に追加)
242|- 「直属上司」→「直属上司=チームのグループリーダー(氏名は社内電話帳を参照)」
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244|書いた本人には気づかない視点が、読んでもらうことで初めて見える——それが、マニュアルを完成させる最後のステップです。
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246|### 4-4 バージョン管理も忘れずに
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248|改訂したら、版数と更新日を記録します。
249|
250|> 経費精算マニュアル v2.0 / 更新日:2026年6月18日 / 変更箇所:ログイン方法・科目選択ボタン・承認者の明記
251|
252|これをヘッダーに書くだけで、読む人は「これが最新か」を判断できます。古いマニュアルが回り続けると、手順が現状と合わずに使われなくなる——バージョン管理は、マニュアルが「生きている文書」であるための仕組みです。
253|
254|### 4-5 この章の確認(演習)
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256|書いたマニュアルを同僚・家族に読んでもらい、「分からなかった箇所」を3つ以上書き出してみてください。その指摘を1つ反映して改訂版を作ってください。版数と更新日も記録してください。読んでもらうことで初めて見える視点がある——それが、マニュアルを完成させる最後のステップです。
257|
257a|「マニュアルは、あなたが休んでも動く仕組み」。検証して直すのは、その仕組みを本物にする最後の関門です。
258|## まとめ:マニュアルは、あなたが休んでも動く仕組み
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260|4章を1本の線で並べ直しましょう。
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262|役割を知る——マニュアルの3つの役割(引き継ぎ・均質化・属人化防止)は、どれも「あなたが休んでも動く仕組み」を作るためのもの。読む人視点が抜けていると、書いた本人にしか分からないマニュアルになる。
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264|構成を作る——5W2Hで前提情報を整理し、3ブロック(前提+手順+確認)で骨組みを作る。読む人はまず「自分に関係あるか」を判断する——前提がないと手順も伝わらない。
265|
266|書き方を直す——否定形禁止・1文1動作・画面名明記の3ルールで、読んだ人が再現できる文章にする。行数が増えても大丈夫——読む人が迷わずに最後までたどり着けるかが、マニュアルの価値。
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268|検証して完成——自己読み返し→他者読み→改訂の3ステップで検証する。書いた本人には気づかない視点が、読んでもらうことで初めて見える。版数と更新日を記録して、マニュアルを「生きている文書」にする。
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270|マニュアルは「書いて終わり」ではありません。すべての判断は「読んだ人は、これだけで再現できるか?」に戻ります。
271|
272|「マニュアルは、あなたが休んでも動く仕組み」——このひと言を、明日のデスクに持っていってください。
273|
274|### 明日の最初の一歩
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276|自分が毎月やっている定例業務のマニュアルを、5W2Hシートから書き始める。きれいでなくてよい。1つの業務の骨組みを作るだけで、あなたの仕事は「あなたがいなくても動く」方向に進みます。
277|
278|### さらに深める導線
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280|この講座は「マニュアル作成の基本(役割・構成・書き方・検証)」という入口です。さらに深めるなら——
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282|- 業務全体の効率を上げる手法は業務改善入門(関連講座)
283|
284|マニュアル作成に使えるテンプレート(5W2Hシート+書き方ルール早見表+検証チェックリスト)は、テンプレートDLからダウンロードできます。
よくある質問
業務マニュアルとは何ですか?
業務マニュアルとは、担当者が変わっても同じ手順で業務を再現できるように、前提情報(誰が・いつ・どこで)と操作手順・確認チェックリストを文書化したものです。引き継ぎ・均質化・属人化防止の3つの役割を果たします。
マニュアルを作るとき、何から始めればいいですか?
まず5W2H(Who/When/Where/What/Why/How/How much)で前提情報を整理し、骨組み(前提+手順+確認)を作るところから始めます。手順の詳細は後から埋められるので、最初は骨組みを完成させることを優先してください。
手順の書き方で気をつけることはありますか?
「否定形禁止・1文1動作・画面名明記」の3ルールを守ることが重要です。「間違えないように注意する」という否定形や抽象語は避け、「[保存]ボタンをクリックする」のように読んだ人が次にやる動作を具体的に書きます。
初心者でも業務マニュアルを作れますか?
はい。この講座では入社2年目の佐藤さんが経費精算マニュアルを作る場面を通して、読む人視点での骨組み作り・書き方ルール・検証の手順を順番に学べます。専門知識がなくても、型に沿って書くことで再現性の高いマニュアルを作れます。
作ったマニュアルはどうやって改善すればいいですか?
自己読み返し→他者読み→改訂の3ステップで検証します。初めてその業務をする人にマニュアルだけを見て操作してもらい、「分からなかった箇所」を指摘してもらうことで、書いた本人には気づかない分かりにくさを発見できます。改訂後は版数と更新日を記録してください。