1|# 決算書の見方入門
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3|取引先の決算短信を開いたとき、あなたはどこを見ますか? 売上? 利益? たしかに大事な数字です。でも、売上が増えている会社が安全とは限らない。利益が出ている会社が倒産しないとも限らない。
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5|「決算書は数字がいっぱいでどこを見ればいいか分からない」「自社の決算短信は見るけれど、意味が分かるのは売上と利益だけ」「取引先の健全性を自分で判断できたらいいんだけど」——こういうふうに思っていませんか? 決算書は「財務部門だけのもの」ではありません。5つの指標を読めば、あなたでも会社の収益性と安全性を判断できます。 この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
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7|1. 決算書の3つの書類(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の役割の違いを説明できる
8|2. 売上高利益率・ROE・自己資本比率・流動比率の4つの指標を自分で計算できる
9|3. 計算した指標から会社の収益性と安全性を1文で評価できる
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11|この講座は最後まで、「テクノサポート株式会社」の決算書1社だけで説明します。第1章で3つの書類の全体像を掴み、第2章で安全性、第3章で収益性、第4章で組み合わせ評価——同じ1社の数字を追いかけていくので、迷子になりません。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分の取引先や自社の数字に置き換えながら読み進めてみてください。
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13|## 第1章:決算書の全体像——3つの書類と役割
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15|まずは、決算書に何が書いてあるのかを知る章です。「数字がいっぱいでどこを見ればいいか分からない」——その迷いを、3つの書類の役割を知ることで解消します。
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17|### この章のゴール
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19|この章を読み終えると、決算書の3つの書類(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の役割の違いを説明できるようになります。
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21|### 1-1 決算書=会社の健康診断書
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23|決算書は、会社の1年間の活動とある時点の状態をまとめた報告書です。会社法と金融商品取引法で作成が義務付けられていて、株主・取引先・金融機関が会社を判断するための共通言語になっています。あなたもその当事者になれる——取引先の健全性を見る立場でも、自社の経営数値を説明する立場でも。
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25|決算書のことを「会社の健康診断書」と考えると分かりやすいです。人間の健康診断書に身長・体重・血圧・血液検査があるように、決算書にも3つの書類があります。それぞれが違う視点で会社の状態を映しています。
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27|### 1-2 3つの書類と3つの視点
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29|決算書は、大きく3つの書類で構成されています。
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31|①貸借対照表(B/S:Balance Sheet)——ある時点の資産と負債の残高を映します。会社の体格と体力。持っているものと借りているものの残高。「今、何を持っているか」が分かる書類です。
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33|②損益計算書(P/L:Profit and Loss Statement)——1期間の収益と費用を映します。会社の稼ぐ力。売上から経費を引いて、いくら残ったか。「1年間でいくら稼いだか」が分かる書類です。
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35|③キャッシュフロー計算書(C/F:Cash Flow Statement)——1期間の現金の増減を映します。会社の現金回収力。売上があっても現金が入ってこなければ意味がない——その「現金の動き」を見る書類です。
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37|3つの書類が揃って初めて会社の全体像が見えます。体格(B/S)だけでは稼ぐ力が分からない。稼ぐ力(P/L)だけでは現金が回収されているか分からない。3つを並べて見る——それが決算書を読む第一歩です。
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39|### 1-3 テクノサポート株式会社の決算書を開く
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41|この講座を通して使う共通例「テクノサポート株式会社」の決算書を開いてみましょう。中堅のITサービス企業で、売上は約100億円規模です。
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43|決算短信(東京証券取引所の適時開示ルールに基づく、上場企業が発表する簡易版の決算報告書)を開くと、目次に3つの書類が並んでいます。
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45|| 書類 | 一番下の数字 | これが意味するもの |
46||---|---|---|
47|| B/S | 総資産 80億円 | 会社が持っているものの合計 |
48|| P/L | 当期純利益 5億円 | 1年間で最終的に残った利益 |
49|| C/F | 現金等期末残高 12億円 | 1年間の現金の増減を経て年末に手元にあった現金 |
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51|3つの「一番下の数字」を確認するだけで、この会社の規模感が掴めます。総資産80億円の会社が、1年間で5億円の利益を出し、年末に12億円の現金を持っている——まずはこの全体像を持ってください。
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53|### 1-4 P/Lの利益とC/Fの現金は違う
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55|ここで1つ、つまずきやすいポイントを押さえておきましょう。「P/Lで利益5億円が出ているなら、現金も5億円増えているはず」——そう思いがちですが、利益と現金の増減は必ずしも一致しません。
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57|なぜか? 売上があっても、まだ代金を受け取っていない「売掛金」があるかもしれない。在庫を積み増しているなら、現金が在庫に変わっている。設備に投資しているなら、現金が出ていっている。P/Lは「1年間でいくら稼いだか」、C/Fは「1年間で現金がいくら増えたか」——この2つは違う視点だからです。
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59|「利益が出ているのに現金が減っている」会社は、実は危ない信号になることがあります。この見方は第4章で活きてきます。今は「P/LとC/Fは違う」ということだけ覚えておいてください。
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61|### 1-5 この章の確認(演習)
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63|自社の決算短信(または公開企業の決算短信)を開き、3つの書類の「一番下の数字(当期純利益/総資産/現金等期末残高)」を3つ書き出してみてください。3つの書類がどこにあるか、それぞれ何を映しているか——それを自分で確認することが、この章のゴールです。
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65|## 第2章:貸借対照表(B/S)——会社の「体格」と「借金」を読む
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67|第1章で3つの書類の役割を知りました。この章では、B/Sに絞って会社の安全性を読む2つの指標を身につけます。
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69|### この章のゴール
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71|この章を読み終えると、自己資本比率と流動比率を自分で計算し、会社の安全性を評価できるようになります。
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73|### 2-1 B/Sの構造:資産=負債+純資産
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75|B/Sは1本の等式で成り立っています。
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77|資産=負債+純資産
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79|- 資産(左側)=会社が持っているもの。現金・売掛金・在庫・建物・設備等
80|- 負債(右側上)=他人から借りているもの。買掛金・借入金・社債等
81|- 純資産(右側下)=自分のお金。出資金+蓄積された利益。これが自己資本です
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83|この1本の等式がB/Sのすべてです。「持っているもの(資産)は、他人のお金(負債)と自分のお金(純資産)で賄われている」という関係。純資産の部の合計が自己資本——これが安全性を測る起点になります。
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85|### 2-2 自己資本比率:借金依存度を測る
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87|自己資本比率=純資産÷総資産×100
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89|この比率が高い=自分のお金で多くを賄っている=借金依存が低い。低い=他人のお金に依存している=借金依存が高い。
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91|一般的に、自己資本比率50%以上が安心圏とされます。ただし、これは明確な法定基準ではなく、経営分析上の目安です。業種により適正値が異なります——ITサービス業は設備投資が少ないので50%以上が多く、製造業は設備投資のために借金を活用するので30〜40%が普通です。
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92|### 2-3 流動比率:短期的な支払い余力を測る
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94|流動比率=流動資産÷流動負債×100
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96|1年以内に現金化できる資産(流動資産)で、1年以内に払うべき負債(流動負債)をどれだけカバーできるか。200%以上が安全の目安とされますが、これも旧・通商産業省の経営分析指標に由来する目安で、法定基準ではありません。
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98|- 200%以上=安全圏。流動資産が流動負債の2倍以上ある
99|- 100〜200%=業種により判断が分かれる。製造業では150%程度が普通
100|- 100%未満=要注意。1年以内に払うべき負債を、1年以内に現金化できる資産でカバーできない
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102|### 2-4 テクノサポート株式会社の安全性を判定する
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104|テクノサポート株式会社的B/Sから、2つの指標を計算してみましょう。
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106|基本数値:
107|- 総資産:80億円
108|- 負債:45億円
109|- 純資産:35億円
110|- 流動資産:30億円
111|- 流動負債:20億円
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113|自己資本比率の計算:
114|35億÷80億×100=43.8%
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116|50%の安心圏を下回っています。借金依存はやや高めです。
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118|流動比率の計算:
119|30億÷20億×100=150%
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121|200%の安全目安を下回っていますが、100%未満ではありません。ITサービス業では150%程度なら許容範囲とも言えますが、余裕があるとは言えません。
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123|判定:
124|「借金依存はやや高め、短期的な支払い余力はやや不足」——2つの指標を合わせると、テクノサポート株式会社の安全性はやや注意が必要という評価になります。
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126|### 2-5 この章の確認(演習)
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128|テクノサポート株式会社のB/S数値を使って、自己資本比率と流動比率を自分で計算し、「安全/要注意」の判定を書いてみてください。計算式を1行ずつ書いて、結果を判定に翻訳する——この手順が、明日の仕事で使える型です。
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130|## 第3章:損益計算書(P/L)——会社の「稼ぐ力」を読む
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132|第2章で安全性を測りました。この章では、P/Lに絞って会社の収益性を読む2つの指標を身につけます。
133|
134|### この章のゴール
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136|この章を読み終えると、売上高営業利益率とROEを自分で計算し、会社の収益性を評価できるようになります。
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138|### 3-1 P/Lの構造:5つの利益で「どこで稼いで何に使っているか」を見る
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140|P/Lには、利益が5つの段階で書かれています。なぜ5段階もあるのか?——「どこで稼いで、何に使っているか」を段階的に見るためです。
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142|| 段階 | 計算式 | 意味 |
143||---|---|---|
144|| 売上総利益(粗利益) | 売上高-売上原価 | 商品・サービスでいくら儲けたか |
145|| 営業利益 | 売上総利益-販管費 | 本業でいくら儲けたか |
146|| 経常利益 | 営業利益+営業外損益 | 本業+財務でいくら儲けたか |
147|| 税引前当期純利益 | 経常利益+特別損益 | 臨時の損益も含めた利益 |
148|| 当期純利益 | 税引前当期純利益-法人税等 | 最終的にいくら残ったか |
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150|この5段階の中で、最も注目すべきは営業利益です。本業の儲けを映す数字だからです。経常利益や当期純利益は、財務の損益(受取利息・支払利息等)や特別損益(固定資産売却等)が混ざるので、本業の力を純粋に見るには営業利益が一番です。
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152|### 3-2 売上高営業利益率:本業の儲け方
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154|売上高営業利益率=営業利益÷売上高×100
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156|売上100円に対して本業で何円残るか。高い=本業が効率的。低い=原価や経費が重い。
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158|この指標は、同業他社との比較が基本です。ITサービス業界の平均は約6〜8%(経済産業省「企業活動基本調査」)。製造業の平均は約5〜6%。業界が違う会社を同じ基準で比べないことが大切です。
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160|### 3-3 ROE:株主の資金をどれだけ増やしたか
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162|ROE(Return on Equity)=当期純利益÷自己資本×100
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164|株主が預けた資金(自己資本)に対して、何%の利益を返したか。高い=資金効率がよい。低い=資金効率が悪い。
165|
166|ITサービス業界の平均ROEは約10〜14%です。日本企業全体の平均は長らく低水準(約6〜10%)で、東京証券取引所はROEの改善を上場企業に促しています。
167|
168|ただし、ROEには見かけの罠があります。自己資本比率が低い(=借金が多い)会社は、当期純利益が同じでも分母(自己資本)が小さいのでROEが高くなります。これが「財務レバレッジ(てこの効果)」——借金でROEを押し上げている場合、安全性(第2章)とセットで見ないと誤読します。
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170|### 3-4 テクノサポート株式会社の収益性を判定する
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172|テクノサポート株式会社のP/Lから、2つの指標を計算してみましょう。
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174|基本数値:
175|- 売上高:100億円
176|- 営業利益:8億円
177|- 当期純利益:5億円
178|- 自己資本:35億円(第2章と同一)
179|
180|売上高営業利益率の計算:
181|8億÷100億×100=8%
182|
183|ITサービス業界の平均(約6〜8%)の上限に位置しています。本業の儲け方は業界平均以上です。
184|
185|ROEの計算:
186|5億÷35億×100=14.3%
187|
188|ITサービス業界の平均(約10〜14%)の上限を超えています。ただし——第2章で計算した自己資本比率43.8%を踏まえると、借金のてこでROEが押し上げられている面もあります。
189|
190|判定:
191|「本業の儲け方は業界平均以上。ROEも水準以上だが、自己資本比率が50%未満なので借金のてこ効果で押し上げられている可能性がある」——安全性と収益性はセットで見る、という原則がここで活きてきます。
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193|### 3-5 この章の確認(演習)
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195|テクノサポート株式会社のP/L数値を使って、売上高営業利益率とROEを自分で計算し、「収益性は高い/低い」の判定を書いてみてください。ROEの判定では、第2章の自己資本比率も併せて振り返る——この2軸で見る習慣が、決算書を読む型です。
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197|## 第4章:5つの指標を組み合わせて会社を評価する
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199|第2章で安全性を、第3章で収益性を測りました。最後の章は、5つの指標を並べて会社を1文で評価する到達点に辿り着きます。
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201|### この章のゴール
202|
202|この章を読み終えると、4つの指標+EBITDAを使って、会社の収益性と安全性を1文で評価できるようになります。
203|
204|### 4-1 5つの指標を並べる
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206|これまでの4指標を1つの表に並べてみましょう。テクノサポート株式会社の数字です。
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208|| 指標 | 値 | 判定 |
209||---|---|---|
210|| 自己資本比率 | 43.8% | やや低い(50%未満) |
211|| 流動比率 | 150% | やや不足(200%未満) |
212|| 売上高営業利益率 | 8% | 業界平均以上 |
213|| ROE | 14.3% | 水準以上(ただしレバレッジ注意) |
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215|4つの数字が並ぶと、会社の姿が立体的に見えてきます。稼ぐ力はあるが、安全余力が薄い——。でも、まだ1つ足りない。借金返済の余力です。そこで5番目の指標「EBITDA利払い倍数」を加えます。
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217|### 4-2 EBITDA利払い倍数:借金返済の余力
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219|EBITDA=営業利益+減価償却費
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221|EBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization)は、本業のキャッシュ生成力の近似値です。営業利益に減価償却費を足す——なぜか? 減価償却費は会計上の費用ですが、実際に現金が出ていくわけではない(すでに過去に現金が出ている)ので、これを足し戻すと「本業でどれだけ現金を生み出したか」が近似的に分かります。
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223|日本の決算書では、減価償却費はキャッシュフロー計算書の「営業活動によるキャッシュフロー」の調整項目に記載されています。EBITDAは日本の会計基準では法定指標ではありませんが、実務で広く使われます。
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225|EBITDA利払い倍数=EBITDA÷利払い費用
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227|何倍の利息を支払えるか。2倍以上が安心圏とされます(格付機関の基準)。1倍未満=利払い不能のリスクあり。
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229|テクノサポート株式会社で計算してみましょう。
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231|- 営業利益:8億円
232|- 減価償却費:3億円(C/Fの営業CFの調整項目から取得)
233|- 利払い費用:2億円
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235|EBITDA:8+3=11億円
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237|EBITDA利払い倍数:11÷2=5.5倍
238|
239|2倍を大きく上回っています。借金返済の余力は十分です。
240|
241|### 4-3 稼ぐ力 × 安全余力——1文で評価する
242|
243|5指標が揃いました。「稼ぐ力(収益性)」と「安全余力(安全性)」の2軸に整理しましょう。
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245|テクノサポート株式会社の5指標まとめ:
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247|| 軸 | 指標 | 値 | 判定 |
248||---|---|---|---|
249|| 稼ぐ力(収益性) | 売上高営業利益率 | 8% | 業界平均以上 |
250|| 稼ぐ力(収益性) | ROE | 14.3% | 水準以上(レバレッジ注意) |
251|| 安全余力(安全性) | 自己資本比率 | 43.8% | やや低い |
252|| 安全余力(安全性) | 流動比率 | 150% | やや不足 |
253|| 安全余力(安全性) | EBITDA利払い倍数 | 5.5倍 | 十分 |
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255|これを1文にまとめます。
256|
257|「テクノサポート株式会社は、本業の稼ぐ力は業界平均以上だが、安全余力はやや不足している。短期支払いに注意し、自己資本の積み増しを急ぐべきだ」
258|
259|これが、5つの指標で会社を評価する到達点です。売上と利益だけを見るのではなく、稼ぐ力と安全余力の2軸で判断する——この型を持てば、あなたは決算書を自分の仕事の武器にできます。
260|
261|### 4-4 5分でできる会社評価の手順
262|
262|明日の業務で使える型として、5つのステップをまとめます。
263|
264|1. 決算短信を開く——目次で3つの書類の場所を確認
265|2. B/Sから自己資本比率と流動比率を計算——純資産÷総資産、流動資産÷流動負債
266|3. P/Lから売上高営業利益率を計算——営業利益÷売上高
267|4. P/L+B/SからROEを計算——当期純利益÷自己資本
268|5. C/FからEBITDA利払い倍数を計算——(営業利益+減価償却費)÷利払い費用
269|
270|5つの数字を並べて、「稼ぐ力」と「安全余力」の2軸で1文にまとめる。5分でできる会社評価——これがこの講座で身につける型です。
271|
272|### 4-5 この章の確認(演習)
273|
274|自社または取引先の決算短信から5指標を計算し、収益性と安全性を1文で評価してみてください。5分でできます。計算式を1行ずつ書き、結果を「稼ぐ力」と「安全余力」の2軸に整理して1文にまとめる——これが、5つの指標を自分の仕事の武器にする練習です。
275|
276|## まとめ:5つの指標があれば、決算書はあなたの仕事の武器になる
277|
278|4章を1本の線で並べ直しましょう。
279|
280|3つの書類の役割を知る——B/Sは体格・P/Lは稼ぐ力・C/Fは現金回収力。3つが揃って初めて会社の全体像が見える。
281|
282|安全性を測る——自己資本比率で借金依存度を、流動比率で短期支払い余力を測る。50%以上・200%以上が目安だが、業種差がある。
283|
284|収益性を測る——売上高営業利益率で本業的儲け方を、ROEで資金効率を測る。ただしROEは借金のてこで押し上げられている可能性がある——安全性とセットで見る。
285|
286|組み合わせて評価する——5指標を「稼ぐ力」と「安全余力」の2軸で整理し、1文にまとめる。EBITDA利払い倍数で借金返済の余力を補完する。
287|
288|決算書は「財務部門だけのもの」ではありません。すべての判断は「この会社は稼ぐ力があるか、安全余力は十分か」に戻ります。
289|
290|「5つの指標があれば、決算書はあなたの仕事の武器になる」——このひと言を、明日のデスクに持っていってください。
291|
292|### 明日の最初の一歩
293|
294|取引先の決算短信を開き、5つの指標を5分で計算してみる。それだけで、あなたの取引先との付き合い方が変わる。きれいでなくてよい。1社計算することが、決算書を読む始まりです。
295|
296|### さらに深める導線
297|
298|この講座は「決算書の見方入門(3書類/5指標)」という入口です。さらに深めるなら——連結決算や国際会計基準(IFRS)の理解は、関連講座へ進んでください。
299|
300|5つの指標をすぐに計算できるテンプレートをDLして、明日の業務で5分評価を始めましょう。
301|
302|テンプレートDL→ 5指標の計算式付きExcel。決算短信の数字を入力するだけで、2軸の評価が自動で出ます。
よくある質問
決算書と決算短信はどう違いますか
決算短信は上場企業が証券取引所に提出する簡易版の決算報告書で、決算書(貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書)の数値を含んでいます。この講座では決算短信を入口として3つの書類を読む手順を解説しています。
貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書の違いは何ですか
貸借対照表はある時点の資産と負債の残高、損益計算書は1期間の収益と費用、キャッシュフロー計算書は1期間の現金の増減をそれぞれ映します。3つが揃って初めて会社の収益性・安全性・現金回収力の全体像が見えます。
自己資本比率と流動比率はどう使い分けますか
自己資本比率は借金への依存度(長期的な安全性)を、流動比率は1年以内の支払い余力(短期的な安全性)を測ります。どちらか一方だけでなく2つを並べて評価することで、会社の安全性を立体的に判断できます。
ROEが高い会社は必ず優良ですか
ROEは自己資本比率が低い(借金が多い)会社ほど高く見える「財務レバレッジの効果」があります。ROEが高くても自己資本比率が低い場合は、借金のてこでROEが押し上げられている可能性があるため、安全性の指標とセットで判断することが重要です。
初心者でも5つの指標を計算できますか
はい。各指標の計算式は四則演算のみで、決算短信に記載された数値を当てはめるだけです。この講座では「テクノサポート株式会社」の数字を1社使い通すので、各章の演習で手を動かすことで5分で計算できる型が身につきます。