予算管理入門 | マナビズ

予算管理入門

予算管理入門

「予算に対して、今月どうだった?」——月次会議でそう聞かれて、言葉に詰まってしまった。予算は期初にちゃんと立てたのに、月が終わってからは実績と見比べていなかったので、いくら足りなかったのか(差異額)も、何%届いたのか(達成率)も、その場で数字で言えない。「売上が伸びなかったので…」とだけ答えると、「だから、それは数のせい?単価のせい?費用は?」と重ねて聞かれ、また詰まる——担当の予算を持たされ始めた頃、こんな経験はありませんか。

同じ「予算に対してどうだった?」という問いに、「売上が伸びなかったので」としか言えない人と、「売上は予算100万に対し実績90万で差異マイナス10万・達成率90%、費用は2万少なく有利、結果として利益はマイナス8万・達成率80%。未達の主因は数量です」と数字で即答できる人がいます。違いは、数字に強いかどうかでも、会計の専門知識があるかどうかでもありません。予算と実績を並べて、引き算と割り算で差を出し、その差を売上と費用に切り分けているかだけです。これができるようになることが、予算管理の本番です。

kouza-020 で「利益=売上−費用」を学びました。その自然な次の一歩が、立てた予算と実績の差(予実差異)を計算し、その原因を要因別に説明する予算管理です。予算は立てて終わりではありません。立てて・比べて・原因を見て・次に活かす——この後半を飛ばさないのがコツです。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. 予算管理を「予算を立てる→実績と比べる→差異の原因を見て対策する」というサイクルとして説明できる(立てて終わりでないことを説明できる)
  2. 予算と実績の差異を、差異額=実績−予算達成率=実績÷予算×100% で実際の数値で計算できる(有利差異/不利差異を区別できる)
  3. 差異の原因を売上要因・費用要因に分け、売上の差異をさらに数量の差・単価の差に切り分けて説明できる(「売上が伸びなかった」で終わらせず内訳を言える)

この講座は最後まで、「ある店舗の1か月の予算と実績」という、たった1つの単純な場面だけで説明します。期初に立てた予算は、売上100万円・費用60万円・利益40万円。月が終わっての実績は、売上90万円・費用58万円・利益32万円。売上の中身は、予算が単価1,000円×数量1,000個、実績が単価1,000円×数量900個(単価は据え置き、数量だけ100個減った)です。この同じ店舗を、予算管理とは何か→差異を計算する→原因を要因別に分ける→次の打ち手を考える、と1段ずつ組み上げていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、書きながら読み進めてみてください。まずは、この計算を自分の数字でも回せるよう、予実差異テンプレートを無料でダウンロードしておくと、各章の計算をそのまま埋めながら進められます。

この講座のポイント

  • 予算管理が「予算を立てる→実績と比べる→差異の原因を見て対策する」を回すサイクルだと、kouza-020 の利益=売上−費用やPDCAの型(kouza-017)と結びつけて説明できる
  • 予算と実績の差異を、差異額=実績−予算・達成率=実績÷予算×100% で実際の数値で計算でき、有利差異/不利差異を区別できる
  • 差異の原因を売上要因・費用要因に分け、売上の差異をさらに数量の差・単価の差に切り分けて説明できる
  • 要因別に分けた差異をもとに、次の対策を要因にひもづけて考えられるようになります(差異=悪いことと決めつけず、予算の見直しも選べる)。

予算管理とは(立てて終わりでなく、実績と比べて回すもの)

まずは「予算に対してどうだった?」に詰まるモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。予算管理という言葉を、自分の数字で使えるようにする土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、予算管理が「予算を立てる→実績と比べる→差異の原因を見て対策する」を回すサイクルだと、kouza-020 の利益=売上−費用やPDCAの型(kouza-017)と結びつけて説明できるようになります。

「予算に対してどうだった?」に詰まる正体

あなたの数字の力が足りないわけではありません。多くの場合、予算は立てたのに、月が終わってから実績と並べて見比べていない——これが「予算に対してどうだった?」に詰まる正体です。

予算を立てた時点と、月が終わった時点で、紙の上には「予算100万」と「実績90万」という2つの数字があります。けれど、この2つを並べて差を見ないかぎり、「予算に対してどうだったか」は分かりません。だから、いくら足りないのか(差異額)も、何%届いたのか(達成率)も即答できず、差が出ても「売上が伸びなかった」の一言で片づけてしまうのです。これは予算を立てっぱなしにして、予算管理の後半——比べる→原因を見る→対策する——を飛ばしているサインです。

ここで覚えてほしい背骨はひとつです。予算は、立てるより“比べて要因で説明する”が本番。立てた予算と実績を並べ、差を計算し、その差を売上と費用に切り分けて「なぜズレたか」を言えるようにする——それが、この講座のゴールです。

予算管理=立てて終わりでなく、実績と比べて差の原因を見て次に活かす

予算管理とは、予算(これだけ売る・これだけに費用を抑えるという計画の数字)を立て、月や四半期が終わったら実績(実際の数字)と見比べ、差(差異)が出た原因を見て、次の対策に活かすことです。立てて終わりではありません。

この流れ、どこかで見覚えがありませんか。kouza-017 で学んだ「立てる→実行→振り返る→対策(PDCA)」の型を、お金の計画=予算に当てはめたものだと考えると、すっきり掴めます。Plan(予算を立てる)→Do(実行する)→Check(実績と比べて差を見る)→Action(原因に手を打つ・次の予算に活かす)。予算管理は、このサイクルをお金の数字で回すことだと言ってよいのです。

ここで先回りして潰しておきたい誤解があります。「予算=上から降ってくるノルマで、立てたら終わり」という受け止め方です。予算は、受け取って眺めるだけのノルマではなく、自分で立てて自分で振り返る道具です。だからこの講座は、「予算をどう立てるか」よりも、立てた予算と実績の差をどう計算し、どう原因を説明するかに重心を置きます。立てるのは入口で、比べて要因で説明するのが本番だからです。

まずは予算と実績を並べて見比べる

差を計算する前に、いちばん大事な一手があります。予算と実績を、同じ表に並べることです。立てっぱなしだと、予算と実績は別々の場所にバラバラに存在するだけで、何も語ってくれません。並べて初めて、「予算に対してどうだったか」が見えてきます。

ここで、共通例の「ある店舗の1か月」に初めて登場してもらいましょう。この店舗では、期初に売上予算100万円・費用予算60万円を立てました。利益は、kouza-020 の利益=売上−費用で、100万−60万=予算40万円です。そして月が終わると、実績は売上90万円・費用58万円、利益は90万−58万=32万円でした。これを並べてみます。

項目予算(計画)実績(実際)
売上1,000,000円900,000円
費用600,000円580,000円
利益400,000円320,000円

こうして並べると、立てっぱなしでは見えなかったことが見えます。予算では利益40万円のはずが、実績は32万円。予算に対して、利益が8万円足りない——並べて初めて、これに気づけるわけです。この章では細かい計算はまだしません。「予算と実績を並べて差を見る」という姿勢だけ掴めれば十分です。この店舗を、これから全部の章で「立ち戻る原点」として使い回します。

この章の確認(演習):共通例「店舗」について、「予算(計画)」と「実績(実際)」を、売上・費用・利益でそれぞれ書き出してみてください(利益=売上−費用 で、予算40万・実績32万になることも確かめます)。そのうえで、「予算管理とは、これを並べて差を見て次に活かすことだ」を、自分の言葉で1〜2行に書いてみます。差の計算はまだしません。予算管理が「立てて終わりでなく、実績と比べて回すサイクル」だと、利益=売上−費用と結びつけて自分の手で言語化できたら、ゴール達成です。

予算と実績の差異を計算する(差異額=実績−予算、達成率=実績÷予算×100%)

第1章で「予算に対して利益が8万円足りない」と並べて気づきました。その差を、誰が見ても同じになるように数字で測るのが、この章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、予算と実績の差異を、差異額=実績−予算達成率=実績÷予算×100% で実際の数値で計算でき、有利差異/不利差異を区別できるようになります。

差を測るものさしは2つ:差異額(金額)と達成率(割合)

差を測るものさしは、2つあります。差異額達成率です。

ひとつめが差異額。これは「金額でいくらズレたか」を表します。式は、差異額=実績−予算。ここで大事な約束をひとつ。本講座では、差異額を「実績−予算」に統一します。つまり、実績が予算より多ければプラス、少なければマイナスです。実は差異の符号の取り方は媒体によって分かれることがある(予算−実績で取る流儀もある)のですが、混乱を避けるため、この講座は最後まで「実績−予算」で固定します。一度この向きを決めたら、その都度ひっくり返さないこと。これだけで、プラス・マイナスが信用できる数字になります。

ふたつめが達成率。これは「割合で何%届いたか」を表します。式は、達成率=実績÷予算×100%。ここも向きが命です。必ず実績÷予算で、予算÷実績と逆にしないでください。分母が予算、分子が実績です。

差異額(金額・いくらズレたか)と達成率(割合・何%届いたか)は、別のものさしです。どちらか一方ではなく、両方をセットで出すと、「8万円足りない(金額)/80%しか届いていない(割合)」のように、ズレの大きさを2つの角度から言えるようになります。

有利差異/不利差異:費用だけは符号の読み方が逆

差異額が出たら、次は「そのズレは良い方か、悪い方か」を判定します。良い方のズレを有利差異、悪い方のズレを不利差異と呼びます。

ここに、いちばん引っかかりやすい落とし穴があります。差異額の符号(プラス・マイナス)が、そのまま良し悪しではないのです。判定の基準は、いつでも「利益が増えるか・減るか」です。

売上と利益は、素直です。実績が予算より多い(差異がプラス)ほど良い=有利。売上が予算を上回れば利益が増えるからです。

ところが費用は逆です。費用は、実績が予算より少ない(差異がマイナス)方が良い=有利になります。費用が予算より少なく済めば、その分だけ利益は増えるからです。つまり、費用の差異がマイナスでも、それは「悪い」のではなく「良い(有利)」。マイナスが出たから不利だ、と早合点しないこと。これが費用差異を読むときの最大の注意点です。売上の差異と費用の差異では、有利・不利が逆さまになる、と覚えておいてください。

共通例で差異額・達成率を出して有利/不利を判定する

では、第1章で並べた店舗の表に、差異額と達成率を当てていきましょう。

売上:差異額=実績−予算=900,000−1,000,000=−100,000円。達成率=実績÷予算×100=900,000÷1,000,000×100=90%。予算より10万円少なく、90%しか届いていないので、これは不利です。

費用:差異額=580,000−600,000=−20,000円。達成率=580,000÷600,000×100=96.7%(厳密には96.666…%なので、小数第1位で四捨五入して約96.7%とします)。差異額はマイナスですが、費用は予算より少ない方が良いので、これは有利。費用が2万円少なく済んだ、という良い結果です。ここで「マイナスだから悪い」と読まないのがポイントでした。

利益:差異額=320,000−400,000=−80,000円。達成率=320,000÷400,000×100=80%。予算より8万円少なく、80%しか届いていないので、不利です。

ここまでを表にまとめると、こうなります。

項目予算実績差異額(実績−予算)達成率有利/不利
売上1,000,000円900,000円−100,000円90%不利
費用600,000円580,000円−20,000円96.7%有利
利益400,000円320,000円−80,000円80%不利

最後に検算をしておきましょう。利益の差異−80,000円は、売上の差異と費用の差異から、ちゃんと説明がつくはずです。費用が2万円少ない(−20,000円)のは、利益にとってはプラス2万円。だから、利益差異=売上差異−費用差異=(−100,000)−(−20,000)=−80,000円。きれいに一致しました。1円もズレていません。差異額を出したら、こうして利益差異=売上差異−費用差異が合うかを確かめる癖をつけると、計算ミスにその場で気づけます。

この章の確認(演習):共通例「店舗」の売上・費用・利益それぞれで、差異額=実績−予算 と 達成率=実績÷予算×100% を自分の手で計算し、有利/不利を判定してみてください(費用だけは少ない方が有利、と符号を読み替えるのを忘れずに)。次に、達成率の90%・80%・96.7%のうち「一番マズいのはどれか」を、金額の差異額と合わせて読み取ってみます(答えは利益で、達成率80%・差異額−8万)。差異額・達成率を手で出し、費用の符号を読み替える感覚が定着したら、ゴール達成です。

差異の原因を要因別に分ける(売上の差異/費用の差異、数量・単価)

第2章で「利益が8万円足りない(80%)」と数字で測れました。でも、これだけだと「で、なぜ?」には答えられません。その「なぜ」を要因別に割っていくのが、この章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、差異の原因を売上要因・費用要因に分け、売上の差異をさらに数量の差・単価の差に切り分けて説明できるようになります。

差異額・達成率の次は「なぜズレたか」を要因に分ける

差異額・達成率で「いくら・何%ズレたか」が出たら、次はなぜズレたかを要因別に分ける番です。ここで「売上が伸びなかったので」の一言で止めてしまうと、月次会議で「だから、それは何のせい?」と聞かれて、また詰まります。止めずに、もう一段、原因を割っていきます。

最初の割り方は、利益の差異を、売上の差異と費用の差異に分けることです。第2章の検算でやったとおり、利益差異=売上差異−費用差異 でした。共通例なら、利益の未達8万円は、売上が10万円少なかったこと(−100,000円)と、費用が2万円少なく済んだこと(−20,000円、利益にはプラス)の差し引きで生まれた、と分けられます。「利益が8万円足りない」が、「売上が10万円足りなくて、費用が2万円浮いた結果だ」まで分解できた——これが第一段階です。

売上の差異を数量差異・単価差異に分ける

次に、売上の差異−10万円を、もう一段割ります。売上は「単価×数量」でできているので、売上の差異も数量の差(売れた数)と単価の差(売値)に分けられます。式は、この1通りに固定して覚えてください。

売上差異 = 数量差異 + 単価差異
数量差異 =(実績数量 − 予算数量)× 予算単価
単価差異 =(実績単価 − 予算単価)× 実績数量

ここで取り違えやすいのが、掛ける相手です。数量差異には「予算側の単価」を掛け、単価差異には「実績側の数量」を掛ける。逆にしないでください。数量の差を見るときは単価を予算で固定して数だけ動かす、単価の差を見るときは数量を実績で固定して値段だけ動かす、とイメージすると取り違えにくくなります。そして、分けた金額の合計が、必ず元の売上差異と一致するかを検算します。合わなければ、どこかで掛ける相手を間違えています。

費用も費目ごとに分け、内訳で言えるようにする

費用の差異も、同じ発想で割れます。ただし費用は、売上のように「単価×数量」に分けるのではなく、費目ごと(材料費・人件費・水道光熱費など)に分けて、「どの費目が予算より増えた/減った」を見ます。「費用が増えた/減った」で止めず、どの費目が効いたかまで言えると、打ち手につなげやすくなります。費用を売れた数や単価にまで割る各論には、この講座では踏み込みません(費用そのものを減らす見方は kouza-026 でくわしく扱います)。ここでは「費用は費目で分ける」だけ押さえておけば十分です。

こうして要因に分けると、「予算未達」を内訳で言えるようになります。「未達8万円の内訳は、売上が10万円少なく(しかもそれは数量によるもので、単価は予算どおり)、費用は2万円少なく済んだ結果です」——ここまで言えれば、「売上が伸びなかった」の一言とは、説明の質がまるで違います。

共通例で要因分解して検算する

では、共通例の店舗で実際に分けてみましょう。まず売上差異−100,000円を、数量差異と単価差異に割ります。予算は単価1,000円×数量1,000個=1,000,000円、実績は単価1,000円×数量900個=900,000円でした。

数量差異=(実績数量−予算数量)×予算単価=(900−1,000)×1,000=−100,000円
単価差異=(実績単価−予算単価)×実績数量=(1,000−1,000)×900=0円
合計=−100,000+0=−100,000円。元の売上差異−100,000円と、ぴったり一致しました。

要因計算差異額
数量差異(900−1,000)×1,000−100,000円
単価差異(1,000−1,000)×9000円
合計(=売上差異)−100,000円

つまり、今回の売上未達10万円は、単価は予算どおりで、まるごと数量(売れた個数が100個少なかった)が原因だと特定できました。「売上が伸びなかった」ではなく、「数量が100個足りなかったから売上が10万円未達、単価は予算どおり」——ここまで言えるのが、要因に分けるということです。

この章の確認(演習):共通例「店舗」の売上差異−100,000円を、数量差異と単価差異に分けて式で出し、合計が−100,000円になるか検算してみてください。次に、もし実績が「単価950円×数量900個」だったら、数量差異・単価差異がどう変わるかを計算します。このとき売上実績=950×900=855,000円、売上差異=855,000−1,000,000=−145,000円。数量差異=(900−1,000)×1,000=−100,000円、単価差異=(950−1,000)×900=−45,000円、合計−145,000円で、ちゃんと一致します(今度は数量と単価の両方が効いた例です)。別の数値でも、必ず合計=元の差異 で検算してから書く——この習慣が、要因分解を信用できるものにします。手元の予実差異テンプレートを使えば、数量・単価の欄に数字を入れるだけで、この分解と検算がそのまま埋められます。

差異から次の打ち手を考える(予算の見直しを含む)

第3章で「未達の主因は数量だ」と要因まで特定できました。要因が分かったら、最後は次の一手につなげます。これが「立てて終わりでない」予算管理の締めです。

この章のゴール

この章を読み終えると、要因別に分けた差異をもとに、次の対策を要因にひもづけて考えられるようになります(差異=悪いことと決めつけず、予算の見直しも選べる)。

原因の要因に効く打ち手を選ぶ

打ち手は、思いつきで決めるものではありません。特定した要因に、ひもづけて決めるものです。主因が数量なら「数量を戻す打ち手」、単価なら「単価を守る打ち手」、費用のある費目が不利なら「その費目を見直す打ち手」。原因と対策を一本の線でつなぐのがコツです。

共通例の店舗で考えましょう。未達の主因は「売上の数量(100個少ない)」、一方で費用はむしろ有利(2万円少なく済んだ)でした。だとすると、打つべき手は明らかです。費用を削るのではなく、数量を戻す方向(来店数や販売数を戻す施策)に向けるべきです。ここで「とにかく費用を削ろう」と動いてしまうと、せっかく有利だった費用に手を入れることになり、しかも本当の原因である数量には何も手を打てていない——要因と切り離して打ち手を決めると、こういうズレた対策に飛んでしまいます。

差異=悪いことと決めつけない(有利差異は次も活かす)

ここで、もうひとつ大事な姿勢があります。差異=悪いこと、と決めつけないことです。差異分析は、犯人探しではありません。次に活かすための材料です。

共通例の費用は、予算より2万円少なく済んだ有利差異でした。これは「叱られる差異」ではなく、「予算より良かった結果」です。だったら問うべきは、「何が効いて2万円浮いたのか」。その要因が分かれば、来月もそれを続ければいい。有利差異は、責めるのではなく、要因を特定して次も活かす——これも立派な打ち手です。差異が出たら反省、と一律に捉えず、良いズレはその要因を伸ばす、悪いズレはその要因に手を打つ、と振り分けてください。

不利差異が続くなら予算(計画)そのものを見直す

最後に、見落としやすい選択肢を1つ。不利差異が毎月のように続くなら、現場の打ち手だけでなく、予算(計画の数字)そのものが現実離れしている可能性を疑ってください。

共通例で言えば、数量未達が今月だけの一時的なものなら、数量を戻す施策で十分です。けれど、売上予算1,000個に対して毎月900個前後しか出ない状態が続くなら、そもそも「1,000個」という計画自体が高すぎるのかもしれません。その場合は、次期の予算を現実的な数字に見直すのも、正しい打ち手です。毎月「未達」を繰り返しながら計画を放置するより、計画を実態に合わせる方が、健全に回ります。打ち手の選択肢を、①要因に効く施策 ②有利差異の要因を次も活かす ③続く不利差異なら予算そのものの見直し、と3つ持っておくと、差異を必ず次の一手に変換できます。

なお、決めた打ち手を回し続ける運用(PDCAをどう継続するか)は kouza-017、費用そのものを減らす見方は kouza-026 で深められます。本講座は、差を測って要因に分け、打ち手にひもづけるところまでに絞っています。

この章の確認(演習):共通例「店舗」の「数量が主因の売上未達/費用は有利」という結果に対し、次の打ち手を要因にひもづけて1〜2個書いてみてください(数量を戻す施策を1つ、費用の有利を次も活かす方法を1つ、など)。次に、自分の担当する予算(売上でも費用でもかまいません)で、実際の予算と実績を1組置き、差異額=実績−予算・達成率=実績÷予算×100% を出し、要因をざっくり分けて、次の打ち手を1つ書いてみます。要因→打ち手のひもづけを自分の数字で確かめられたら、ゴール達成です。

まとめ:予算は、立てるより“比べて要因で説明する”が本番

おつかれさまでした。「ある店舗の1か月の予算と実績」という、たった1つの場面を、予算管理とは何か→差異を計算する→原因を要因別に分ける→次の打ち手を考える、と1段ずつ組み上げてきました。歩いてきた道を振り返ります。

  1. 予算管理とは……予算を立てて終わりにせず、実績と比べて差の原因を見て次に活かすサイクル。kouza-017 のPDCAをお金の計画=予算に当てはめた型。予算は降ってくるノルマでなく、自分で立てて自分で振り返る道具(第1章)。
  2. 差異を計算する……差異額=実績−予算(本講座は実績−予算に統一)、達成率=実績÷予算×100%。有利/不利は「利益が増えるか」で判定し、費用だけは少ない方が有利と符号を読み替える。共通例なら売上−10万/90%・費用−2万[有利]/96.7%・利益−8万/80%(第2章)。
  3. 原因を要因別に分ける……利益差異=売上差異−費用差異。売上差異はさらに 数量差異=(実績数量−予算数量)×予算単価・単価差異=(実績単価−予算単価)×実績数量 に分ける。共通例は 数量差異−10万・単価差異0 で、未達は数量要因。費用は費目ごとに分ける。必ず合計=元の差異を検算(第3章)。
  4. 次の打ち手を考える……打ち手は要因にひもづける(主因が数量なら数量を戻す)。差異=悪いことと決めつけず、有利差異は要因を次も活かす。続く不利差異なら予算そのものの見直しも選択肢(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「『予算未達』を、差異額・達成率で測り、売上要因・費用要因(数量・単価)に分けて、内訳と対策で説明できているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——予算は、立てるより“比べて要因で説明する”が本番。これが身につくと、「予算に対してどうだった?」に「売上は90%・差異−10万、主因は数量で…」と数字で即答でき、次の打ち手まで筋道で示せるようになります。

明日の最初の一歩:自分の担当する予算(売上でも費用でもかまいません)を1つ取り、直近の実績と並べてみてください。そして、差異額=実績−予算 と 達成率=実績÷予算×100% を、1回だけ計算します。さらに、差の主因を売上か費用か、売上ならそれが数量か単価か、まで一段だけ分けてみてください。きれいな数字でなくてかまいません。「予算未達」を「売上が伸びなかった」の一言でなく、内訳で説明できること——それが、感覚で片づける癖から抜け出す第一歩です。予実差異テンプレートを無料でダウンロードすれば、予算欄と実績欄を入れるだけで、差異額・達成率・有利/不利の判定、売上を数量差異・単価差異に分ける欄、費目別の費用差異欄、主因と次の打ち手欄まで、一通り埋められます。

もっと深めたくなったら、その先の道も用意されています。売上・費用・利益の基本(利益=売上−費用)をもう一度押さえたいなら kouza-020(会計の基礎)、費用そのものを減らす見方は kouza-026(コスト意識)、決めた対策を回し続ける運用(PDCA)は kouza-017 で深められます。本講座はあくまで「予実差異の計算と要因分析=予算と実績の差を測り、売上要因・費用要因(数量・単価)に分けて説明し、要因にひもづけて次の打ち手につなぐこと」に絞っています。まずはこの流れを、自分の数字で回せるようにしておきましょう。

よくある質問

予算管理とはどういう意味ですか

予算を立てて終わりにせず、月が終わったら実績と並べて差(予実差異)を計算し、原因を要因別に見て次の対策に活かすサイクルのことです。立てること自体より、比べて要因で説明するステップが本番です。

差異額と達成率はどう計算しますか

差異額は「実績−予算」、達成率は「実績÷予算×100%」で計算します。本講座では差異額の向きを「実績−予算」に固定しているため、実績が予算を下回ればマイナス、上回ればプラスになります。

費用の差異額がマイナスでも不利差異にならないのはなぜですか

費用は予算より少なく済んだ方が利益が増えるため、差異額がマイナス(費用が予算を下回った)のは有利差異です。有利・不利の判定は符号ではなく「利益が増えるか減るか」で行うため、費用だけは符号の読み方が逆になります。

売上の差異を数量と単価に分けるにはどうすればいいですか

数量差異=(実績数量−予算数量)×予算単価、単価差異=(実績単価−予算単価)×実績数量の2式で分けます。分けた後は合計が元の売上差異と一致するか検算し、一致しない場合は掛ける相手(予算単価・実績数量)を取り違えていないか確認してください。

不利差異が毎月続く場合はどう対処すればよいですか

毎月不利差異が続く場合は、現場の施策だけでなく予算(計画の数字)そのものが現実から乖離している可能性を検討してください。計画を実態に合わせて見直すことも、有効な打ち手の一つです。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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