担当していたお客さまの解約が、先月あたりから少しずつ増えている——。そんな問題を任されたとき、あなたはまず何をするでしょうか。解約しそうな相手に個別に連絡して引き止める、値引きを提案する、とにかく目についたところに手を打って、一旦おさめる。それで数週間は落ち着くものの、しばらくするとまた同じように解約が増える。上司に報告すると「で、原因は?」「それ、対症療法じゃない?」と返されて、返答に詰まる。担当業務に加えて「この問題なんとかして」と立て直しを任され始めた頃、こんな経験はありませんか。
同じ「解約が増えた」という問題に直面しても、その場で引き止めて一旦おさめる人と、原因をたどって再発まで止める人がいます。違いは能力や頑張りではなく、手順です。思いつきで対処に飛ぶか、それとも「ギャップ→原因→打ち手」の順に整理するか。上司の「で、原因は?」に詰まるのは、この順番を飛ばしているサインです。問題解決とは、目についた症状にその場で手を打つことではなく、「あるべき姿と現状の差(ギャップ)」を、原因に手を打って埋めていくことだからです。
この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- 問題を「あるべき姿と現状のギャップ」として、事実・数字で定義できる
- 「なぜ?」を2〜3段繰り返して、原因を掘り下げ真因に当たりをつけられる
- 真因に対応した打ち手を挙げて1つに絞り、原因→打ち手を1枚に整理できる
この講座は最後まで、「担当顧客の解約が増えている(立て直しを任される業務問題)」という、たった1つの題材だけで説明します。同じ問題を、ギャップで定義する→原因を掘る→打ち手を選ぶ→1枚に整理する、と順に組み上げていきます。手元に紙とペンを用意して、各章末の演習を一緒に書きながら進めると、読み終わる頃には自分の困りごと1つが「1枚」にまとまっているはずです。
この講座のポイント
- 問題を「あるべき姿と現状のギャップ」として、事実・数字で定義できる
- 「なぜ?」を2〜3段繰り返して、原因を掘り下げ真因に当たりをつけられる
- 真因に対応した打ち手を複数挙げ、効果と実行しやすさで1つに絞れる
- 問題・あるべき姿・現状・真因・打ち手を1枚のシートに整理し、人に説明できる形にできる
問題とは「あるべき姿と現状のギャップ」
まずは「で、原因は?」に詰まるモヤモヤの正体を、はっきりさせるところから始めましょう。問題解決の出発点は、原因探しでも打ち手でもなく、「そもそも何が問題なのか」を言葉にすることです。
この章のゴール
この章を読み終えると、問題を「あるべき姿と現状のギャップ」として、事実・数字で定義できるようになります。
「で、原因は?」に詰まる正体
あなたの動きが鈍いわけでも、頑張りが足りないわけでもありません。多くの場合、目についた症状にその場で手を打って、何を解いているのかを言葉にしないまま動いている、というのが原因です。
解約が増えたとき、「とりあえず解約しそうな人に連絡しよう」と動くのは自然な反応です。けれど、その連絡で止めているのは「今まさに解約しそうな個別のお客さま」だけ。なぜ解約が増えているのかには手がついていません。だから原因は残ったままで、同じ問題が数週間後にまた起きます。上司の「で、原因は?」は、まさにそこを突いています。何を解こうとしているのかが自分の中で言葉になっていないから、答えに詰まるのです。
ここで覚えてほしい背骨はひとつです。問題解決は、思いつきの対処ではなく、「ギャップ→原因→打ち手」の順に整理すること。いきなり対処に飛ぶ前に、まず「何が問題なのか」をギャップとして定義する。それがこの章のテーマです。
問題=あるべき姿(目標・基準)と現状の差(ギャップ)
「問題」とは何でしょうか。一般に問題解決の分野では、問題とは「あるべき姿(目標・基準)」と「現状(今の姿)」との差(ギャップ)のことだとされています。トラブルやクレームそのもの(症状)が問題なのではありません。「本来こうあるべき」という基準があって、それと今の状態がずれている、その差が問題です。
たとえば「売上は年100億円が目標なのに、今は60億円しかない」なら、その差の40億円が問題です。解約の話で言えば、「本来は月の解約をこれくらいに抑えたいのに、今はそれより多く出ている」、その超過分が問題ということになります。
ということは、問題を語るには順番があります。まずあるべき姿(目標・基準)を1つ決める。次に現状を事実・数字で押さえる。そしてその差を1文にする。この3つがそろって、はじめて「何が問題か」が言葉になります。差がはっきりすると、後の原因探しも打ち手も、その差を埋めるという的に向かって進められるので、的を外さなくなります。逆にここが曖昧なまま動くと、何のために手を打っているのか分からないまま、対処だけを繰り返すことになります。
気分で語る(NG)とギャップで定義する(OK)を並べて比べる
同じ解約の問題を、2通りの語り方で並べてみましょう。
気分で語る例:「最近なんだかクレームっぽい雰囲気で、解約も出ているし、なんとなくまずい気がする」。よく聞く言い方ですが、これでは「あるべき姿」も「現状」も数字になっていません。どれくらいまずいのか、どこまで戻せば解決なのかが、自分にも相手にも分かりません。だから打ち手も「とりあえず引き止める」と気分のままになります。
ギャップで定義する例:「あるべき姿=月の解約を5件以内に抑える/現状=先月7件・今月9件/差=目標より4件多い」。基準と現状を数字で置き、その差を1文にしました(この件数はあなたの仕事に合わせて決める架空の目安です)。こう書くと、「4件分の解約をなくせば解決」というゴールがはっきりします。
変えたのは情報の量ではなく、書き方だけです。ここでつまずきやすいのが2つあります。1つは、症状(クレーム・解約・遅れ)そのものを問題だと思い込み、あるべき姿を決めずに対処へ走ってしまうこと。「クレーム=問題、だから謝る」では、何を達成すれば解決なのかが永遠に決まりません。もう1つは、あるべき姿を「もっと良く」「ちゃんと減らす」のように曖昧に置いてしまうこと。これだと差が測れず、解決できたかどうかも分かりません。あるべき姿を描けなければ、そもそも問題は定義できないのです。だから、あるべき姿は数字か、はっきりした基準で置く——これが第1章のいちばんの勘どころです。
問題解決の第一歩は、この「あるべき姿/現状/差」の3行を書くことです。実は、この3行を含めて「問題→原因→打ち手→いつ・誰が」までを1枚に書き込める問題解決の1枚シートを無料で配布しています。記入欄と書き方のヒントが入っているので、まずは手元に開いて、これから出てくる演習をこのシートに書き込みながら読み進めてみてください。
この章の確認(演習):まず共通例の解約問題を「あるべき姿/現状/差」の3行で書いてみてください。次に、あなたが今いちばん気になっている困りごとを1つ選び、同じ3行で書いてみます。コツは、症状をそのまま書かず、先に「あるべき姿」を数字か基準で1つ決めてから、差を1文にすること。3行が書けたらゴール達成です。
原因を掘り下げる(「なぜ?」を繰り返して真因に当たりをつける)
ギャップを定義できたら、すぐ打ち手に飛びたくなります。でも、ここで一拍おきます。なぜそのギャップが起きているのか、原因を掘る番です。
この章のゴール
この章を読み終えると、「なぜ?」を2〜3段繰り返して、原因を掘り下げ真因に当たりをつけられるようになります。
ギャップが定義できたら、すぐ打ち手に飛ばない
第1章で「目標より4件多く解約が出ている」と定義できました。ここで多くの人がやってしまうのが、「じゃあ解約しそうな人に割引しよう」と、すぐ打ち手に飛ぶことです。
気持ちは分かります。でも、表面に見えている理由(一次原因)にその場で手を打つやり方を、対症療法(応急処置)といいます。熱が出たから解熱剤で下げる、のと同じで、急場はしのげますが、熱を出している本当の原因が残っているので、また熱が出ます。割引で一時的に解約が止まっても、解約が増える元の原因が残っていれば、来月もまた増えます。「とりあえず止めた」あとに同じ問題が再発するのは、たいていこのパターンです。
だから、打ち手の前に「なぜそのギャップが起きているのか」を掘ります。手を打てば再発まで止まるおおもとの原因=真因に当てること。これを恒久対策といいます。症状でなくギャップ(その奥の真因)を解く、というこの講座の背骨は、ここでも効いてきます。
「なぜ?」を2〜3段重ねて真因に当たりをつける
真因に当たりをつける、いちばん素朴で強い方法が、「なぜ?」を繰り返すことです。1つの理由が出たら、それで止めずに「では、なぜそうなるのか?」とさらに問う。これを何段か重ねていきます。
共通例でやってみましょう。
- 解約が目標より多い。なぜ? → 初めて使ったあとにつまずいて、そのまま放置されているお客さまが多いから。
- なぜ? → 困ったときに、どこに聞けばいいのか分からないから。
- なぜ? → こちらからの初回サポートの連絡が遅い、あるいは届いていないから。
3段掘ったところで、「初回サポート連絡の遅れ」という、手を打てば再発が止まりそうな原因に行き当たりました。ここに真因の当たりをつけます。最初に飛びつきそうだった「解約しそうな人に割引する」は、この真因にはまったく当たっていません。割引は今いるお客さまを一時的に引き止めるだけで、「初回サポートが遅い→つまずいて放置→解約」という流れそのものは止められないからです。真因に当てるほうが、同じ問題が繰り返されにくくなります。
(参考までに、この「なぜ?」を繰り返して根本原因に迫る考え方は、トヨタ生産方式で使われてきた「なぜなぜ分析(5 Whys)」として知られ、大野耐一が著書で広めたものです。原因が1本道ではなく複数あるときは、結果に対して要因を魚の骨のように枝分かれで整理する「特性要因図(フィッシュボーン図)」という図もあります〔石川馨が考案〕。手法の名前を覚える必要はありません。大事なのは「なぜ?」で一段ずつ奥へ進む動き、そして原因が枝分かれするときは広げて見る、という感覚です。原因の分け方そのものを図でていねいに広げたい場合は、ロジックツリー〔kouza-018〕で深められます。)
掘る深さの目安(人のせいで止めない・遡りすぎない)
では、「なぜ?」は何段掘ればいいのでしょうか。「5回繰り返す」とよく言われますが、回数自体が目的ではありません。初級のうちは、まず2〜3段ほど掘れば、「ここに手を打てば再発が止まりそう」という所に当たりがつくことが多いです。回数より、その所に届いたかどうかが大切です。
掘るときに気をつけたいことが2つあります。1つは、人のせいで止めないこと。「なぜ放置されるのか→担当者の確認不足だから」で止めると、原因が「あの人が悪い」になって、仕組みに手が入りません。「では、なぜ確認が漏れるのか→初回連絡のタイミングが決まっていないから」と、もう一段、仕組みのほうへ掘ります。もう1つは、逆に遡りすぎないこと。「なぜ解約が多いのか→景気が悪いから」「業界全体が縮んでいるから」まで行ってしまうと、正しくても自分の手が届きません。自分やチームで来週から動かせる範囲で、手を打てば再発が止まりそうな所に印を付けます。一次原因(表面の理由)で浅く止めるのも、手の届かない所まで深く遡りすぎるのも、どちらも避ける——これが掘る深さの目安です。
この章の確認(演習):第1章で定義したあなたのギャップに、「なぜ?」を2〜3段書いてみてください。1段ごとに「では、なぜそうなる?」と問い、出てきた理由にさらに問います。人のせい(担当者が悪い)で止めず、かといって景気や業界全体まで遡らず、「手を打てば再発が止まりそう」な所まで掘ったら、その真因の候補1つに印を付けます。印が付けられたらゴール達成です。
打ち手を考えて選ぶ
真因に当たりがついたら、ようやく打ち手です。ここでも、いきなり1つに飛びつかず、いったん選ぶ作業を挟みます。
この章のゴール
この章を読み終えると、真因に対応した打ち手を複数挙げ、効果と実行しやすさで1つに絞れるようになります。
打ち手は症状でなく真因に対して考える
打ち手を考えるときの原則は、症状でなく真因に対して考えることです。第2章で当たりをつけた真因「初回サポート連絡の遅れ」に効く案を考えます。
そしてもう1つ大事なのが、最初の1案に飛びつかないこと。思いついた1つだけで進めると、それが本当に真因に効くのか、もっと良い手はないのかを比べられません。だから、真因に効きそうな案を2〜3個出してから選びます。共通例では、こんな案が出てきました。
- (a) 初回サポートの連絡を、契約後◯日以内に必ず入れる仕組みにする
- (b) 初めての人がつまずきやすい点をまとめた「つまずきFAQ」を用意する
- (c) 解約しそうなお客さまに割引を提案する
ここで(c)を見てください。割引は、真因「初回サポート連絡の遅れ」にはまったく当たっていません。すでに解約しそうになっている症状に手を打つ、対症療法です。だから今回の打ち手候補からは外します。打ち手は必ず原因とひもづけて、「この原因だから、この手を打つ」と一言で言える状態にしておく。(c)はその一言が言えないので、外れるわけです。
効果と実行しやすさの2つで見比べて1つに絞る
残った(a)(b)を、どう選べばいいでしょうか。打ち手を選ぶときは、「効果」と「実行しやすさ」の2つで見比べるのが基本です。
- 効果……これをやると、定義したギャップ(目標より多い解約)が埋まりそうか。真因にどれくらい効くか。
- 実行しやすさ……自分やチームで、今すぐ着手できるか。お金・人手・時間がかかりすぎないか。
(a)初回連絡を◯日以内に必ず入れる仕組みは、真因そのものに直接当たるので効果が高い。しかも、連絡のタイミングをルールとして決めるだけなので、来週から自分たちで始められて実行しやすい。一方(b)FAQの用意は、効果はありそうですが、つくるのに時間と手間がかかり、すぐには動かしにくい。そこで、効果が高く実行もしやすい(a)を、まず動かす最初の打ち手に選びます。(b)は、(a)を回しながら次の手として温めておけばよいのです。
効果と実行しやすさは、できれば「高い・中・低い」くらいの大まかな見当でかまわないので、数字や事実をもとにざっくり置いてみると、思い込みで選びにくくなります。ここでつまずきやすいのは3つ。原因を飛ばして打ち手から考える(思いつき対処)/効果は大きいけれど今は到底実行できない案に飛びつく/案を1つしか出さず、そもそも比較しない。いずれも、「真因に効く案を2〜3個出してから、効果と実行しやすさで見比べる」という手順を踏めば防げます。
これで、ギャップ・真因・打ち手がそろいました。あとは、これを人に伝わる形に並べるだけです。次の章で使う問題解決の1枚シートは、ここまで書いてきた「あるべき姿/現状/差」「なぜ?の2〜3段」「打ち手2〜3案と効果・実行しやすさ」を、そのまま流し込めるように作ってあります。第1章で開いたシートを手元に置いて、この後の清書に使ってください。
この章の確認(演習):第2章で印を付けた真因に対して、効きそうな打ち手を2〜3個書いてみてください。症状にだけ当たる案(割引のような対症療法)が混じっていたら外します。残った案を「効果(ギャップが埋まりそうか)」「実行しやすさ(今すぐ着手できるか)」の2つで見比べ、まず動かす1つに丸を付けます。選んだ打ち手が真因と線でつながるか確かめられたら、ゴール達成です。
原因→打ち手を1枚に整理する
ここまでで、定義・原因・打ち手の材料はそろいました。最後は、それを1枚に並べて、人に説明できる形に整えます。これができると、上司に「で、原因は?」と返されなくなります。
この章のゴール
この章を読み終えると、問題・あるべき姿・現状・真因・打ち手を1枚のシートに整理し、人に説明できる形にできるようになります。
ギャップ定義→真因→打ち手を1枚に左から右へ並べる
問題解決には、おおまかな流れがあります。あるべき姿と現状のギャップで問題を定義する → 原因を掘って真因に当たりをつける → 真因に効く打ち手を選ぶ → 実行する、という順序です(何ステップと数えるかは人によって違うので、数より順序を覚えてください)。この講座は、その流れを「1枚に整理して説明できる」ところまでを扱います。
第1章から第3章で書いてきたものを、1枚に左から右へ並べてみましょう。
- 問題(あるべき姿/現状/ギャップ):あるべき姿=月の解約を5件以内/現状=今月9件/ギャップ=目標より4件多い
- 真因:初回サポート連絡の遅れ
- 打ち手:初回サポートの連絡を、契約後◯日以内に必ず入れる仕組みにする
- いつ・誰が:来週から、自分が
こう1枚に並べると、上司や周りに「問題はこのギャップで、原因はここ、だからこの手を打ちます」と、左から右へ筋道で説明できます。「で、原因は?」は、真ん中に原因(真因)が書いてあるので、もう返されません。一度で「これで進めて」と通りやすくなります。バラバラに口頭で話すのと、1枚で見せるのとでは、伝わり方がまるで違います。
原因と打ち手のつながりを左右で確認し、ズレたら前章に戻して直す
1枚に並べたら、最後にひと手間。原因と打ち手が線でつながっているかを、左右で指で追って確かめます。「初回サポート連絡の遅れ(原因)」だから「初回連絡を◯日以内に必ず入れる(打ち手)」——ここがまっすぐつながっていればOKです。
もし、原因は「連絡の遅れ」なのに打ち手が「割引する」のように飛んでいたら、それはどこかでズレています。そのときは、無理にこの1枚で押し通さず、前の章に戻って直します。打ち手がズレているなら第3章へ、真因が違いそうなら第2章へ、そもそもあるべき姿が曖昧なら第1章へ。問題解決は一直線で進むものではなく、行ったり来たりしてかまいません。1枚にしてみて初めて「ここ、つながっていないな」と気づくこともよくあります。
もう1つ、忘れてはいけないのが「いつ・誰が」まで書くことです。きれいに整理できても、「来週から、自分が」が空欄だと、整理しただけで実行に移らずに終わってしまいます。枠を埋めること自体が目的になってしまうと、いちばん肝心の「実際にやる」が抜けます。1枚の右端に「いつ・誰が」を必ず置いて、明日からの行動につなげてください。なお、こうして決めた打ち手を実際に回しながら見直し続ける段階(計画→実行→確認→改善のサイクル)は、PDCA(kouza-017)で深められます。本講座は「1枚に整理して説明できる」までが範囲です。
この章の確認(演習):第1〜3章で書いてきたあなたの問題を、1枚シート(あるべき姿/現状/ギャップ → 真因 → 打ち手 → いつ・誰が)に清書してみてください。書けたら、原因と打ち手が線でつながるかを左から右へ指で追って確認します。つながっていない箇所が見つかったら、その1点だけ、前の章に戻して直します。「いつ・誰が」まで埋まって、左右がまっすぐつながったら、ゴール達成です。
まとめ:症状でなく、ギャップを解く
おつかれさまでした。「担当顧客の解約が増えている」という、たった1つの題材を、ギャップで定義する→原因を掘る→打ち手を選ぶ→1枚に整理する、と1工程ずつ組み上げてきました。最後に、歩いてきた道を1枚にまとめます。
- 問題をギャップで定義する……問題は症状そのものではなく、あるべき姿と現状の差。あるべき姿を数字・基準で置き、差を1文にする(第1章)。
- 「なぜ?」を繰り返して真因に当たりをつける……すぐ打ち手に飛ばず、「なぜ?」を2〜3段掘る。人のせいで止めず、遡りすぎず、手を打てば再発が止まりそうな所に印を付ける(第2章)。
- 真因に効く打ち手を選ぶ……症状でなく真因に対して案を2〜3個出し、効果と実行しやすさで見比べて1つに絞る(第3章)。
- 原因→打ち手を1枚に整理する……定義・真因・打ち手・いつ誰がを左から右へ並べ、つながりを確認する。ズレたら前章に戻す(第4章)。
この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「症状にだけ手を打っていないか、ギャップ(あるべき姿との差)を解いているか?」。この問題解決の講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——症状でなく、ギャップを解く。この順番を踏めば、上司の「で、原因は?」に筋道で答えられ、同じ問題の再発まで止められます。
明日の最初の一歩:明日いちばん気になっている困りごとを1つ選び、いきなり対処に飛ぶ前に、まず「あるべき姿/現状/差」の3行を書いてから手を打ってみてください。この3行を書くだけで、何を解こうとしているのかが言葉になり、「で、原因は?」に詰まらなくなります。
最後に、その3行から「いつ・誰が」までを1枚で書き切れる問題解決の1枚シートを無料でダウンロードできます。あるべき姿/現状/ギャップ → 「なぜ?」を2〜3段書く欄 → 真因 → 打ち手2〜3案+効果・実行しやすさ → 選んだ打ち手 → いつ・誰が、までの枠がそろっているので、明日の困りごとをそのまま流し込めます。ぜひ手元に置いて、最初の一歩に使ってください。
問題解決の「型」が身についたら、次は各工程を深める番です。原因の分け方を整えたいなら、モレなく・ダブりなく分けるMECE(kouza-013)や、原因を図に枝分かれで広げるロジックツリー(kouza-018)へ。決めた打ち手を回し続ける段階はPDCA(kouza-017)で、考え全体の組み立て方はロジカルシンキング(kouza-010)で深められます。本講座はあくまで「あるべき姿とのギャップを定義し、原因を掘って打ち手に落とす」プロセスに絞っています。関連講座へ進んで、この型を「原因の分け方」と「回し続ける実行」へつなげていきましょう。
よくある質問
問題解決とは何ですか?
問題解決とは、目についた症状にその場で手を打つことではなく、「あるべき姿と現状の差(ギャップ)」を定義し、原因を掘り下げて真因に対する打ち手を選ぶことで、再発まで止めるプロセスです。
「なぜ?」は何回繰り返せばよいですか?
回数そのものが目的ではなく、「手を打てば再発が止まりそうな原因」に当たりがつくことが大切です。初級では2〜3段掘ることで、真因の候補に行き当たることが多いです。
対症療法と恒久対策はどう違いますか?
対症療法は表面に見えている症状に手を打って急場をしのぐ方法で、原因が残るため問題が再発します。恒久対策は真因に直接手を打つことで、同じ問題が繰り返されにくくなります。
あるべき姿はどのように決めればよいですか?
「もっと良く」のような曖昧な言い方ではなく、数字またははっきりした基準で置くことが重要です。差が測れて、解決できたかどうかが判断できる形にすることが目安です。
この講座を修了するとどんなことができるようになりますか?
問題を「あるべき姿と現状のギャップ」として事実・数字で定義し、「なぜ?」を2〜3段繰り返して真因に当たりをつけ、真因に対応した打ち手を1枚のシートに整理して説明できるようになります。