「今期は売上を伸ばします」「もっとがんばります」。会議でそう口にしたものの、達成できたのかどうか、あなたにも上司にも、誰にもはっきり分からない——。働き始めて、こんなもどかしさを感じていませんか。
会議で「KPI」という言葉が飛び交うのに、いまひとつピンとこない。そう感じるのは、KPIが「ノルマ」「数字に追われるもの」だと誤解されているからです。本当のKPIは、もっと味方になる道具です。KPIとは、その「がんばり」を「数字」に翻訳して、目標に近づいているかを誰にでも分かるようにするもの。最終目標から逆算した「測れる中間指標」を1つ決めるだけで、毎週の達成度が自分で確認できるようになります。
この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の違いを説明できる
- 良いKPIの条件(測れる・期限・行動につながる)で、KPIの良し悪しを見分けられる
- 最終目標(KGI)から逆算して、自分の業務のKPIを1つ作れる
この講座は最後まで、「営業チームの“売上を伸ばす”という曖昧な目標を、測れるKPIに落とす」という、たった1つの場面だけで説明します。
この講座のポイント
- KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の違いを説明できる
- 良いKPIの条件(測れる・期限・行動につながる)で、KPIの良し悪しを見分けられる
- 最終目標(KGI)から逆算して、自分の業務のKPIを1つ作れる
- 作ったKPIを定点観測し、振り返って見直せる
KPIとは何か(KGIとの違い)
「KPIって、結局なに?」。まずはこのモヤモヤを、一言で晴らすところから始めましょう。KPIとKGIの違いさえつかめれば、会議の言葉の半分は怖くなくなります。
この章のゴール
この章を読み終えると、KGI(最終目標)とKPI(中間指標)の違いを説明できるようになります。
「KPIって結局なに?」を一言で:がんばりを数字に変える道具
KPIにピンとこないのは、あなたの理解が足りないからではありません。多くの場合、KPIが「監視されるための数字」だと感じられているからです。
KPIを一言でいうと、目標に近づいているかを測るための数字です。「KPI」は Key Performance Indicator の略で、日本語では重要業績評価指標と呼ばれます。むずかしく聞こえますが、中身は「ゴールに向かって、いまどのくらい進んでいるか」を見るための物差しにすぎません。
ここがこの講座の背骨です。KPIは、がんばりを数字に変える道具。「がんばります」では進み具合が見えませんが、数字に翻訳すれば、本人にも周りにも進捗が見えます。この一点を、最後まで握っていてください。
KGIは最終ゴール、KPIはそこに近づく中間指標
KPIを理解するには、もう1つの言葉とセットで覚えると一気に楽になります。KGIです。
KGIは Key Goal Indicator の略で、日本語では重要目標達成指標。最終的に達成したいゴールを数値化したものです。たとえば「今期は売上1億円を達成する」がKGIにあたります。一般に、まず最終目標であるKGIを1つ決め、それを要素に分解してKPIを決めていく、という順序が基本とされています。
なお、KPIは海外でも広く使われる言葉ですが、KGIは日本のビジネスの現場でよく使われる言い方です。社内で飛び交う「KGI」は、ほぼ「最終目標の数字」と読みかえて差し支えありません。
共通の場面に入りましょう。あなたの営業チームの目標は「売上を伸ばす」。最終的に達成したいことなので、これがKGI(最終ゴール)です。では、それに近づくための中間指標は何か。「訪問件数」「商談数」——こうした、売上の手前にあって自分で数えられる数字が、KPIの候補です。この「売上を伸ばす」を、以降の全章で立ち戻る原点として使います。
なぜ数字にするのか:達成度が誰にでも分かるから
そもそも、なぜわざわざ数字にするのでしょうか。理由はシンプルで、「がんばる」では達成したかどうかを判定できないからです。
「今月はがんばった」と言っても、それが目標に近づいたのかは分かりません。一方、「今週は訪問15件」と数字で言えば、目標が週20件なら「あと5件足りない」と、本人にも上司にも一目で分かります。数字にした瞬間、進捗が共通の事実になるのです。これが、KPIがただのノルマではなく「道しるべ」と呼ばれる理由です。
ここでつまずきやすい
KGIとKPIを混同したり、いきなり測りたい指標をたくさん並べたりしてしまう。これがいちばん多い入口のつまずきです。順序を守りましょう。まず最終ゴール(KGI)は1つだけ決める。そこに効く中間指標(KPI)は、後からじっくり探せばよいのです。
この章の確認(演習)
お題:自分(自チーム)のKGI(最終ゴール)を1つ、書き出してみてください。
「売上を伸ばす」のように、まずは最終的に達成したいことを1行で書きます。きれいな言葉でなくてかまいません。最終ゴールを1つ決められたら、ゴール達成です。次の章で、これを「測れる形」にしていきます。
良いKPIの条件
KGIとKPIの違いがつかめたら、次は「良いKPIを見分ける目」を持ちましょう。同じ「数字」でも、道しるべになるものと、ただ追われるだけのものがあります。
この章のゴール
この章を読み終えると、良いKPIの条件(測れる・期限・行動につながる)で、KPIの良し悪しを見分けられるようになります。
「数字に追われる」KPIと「道しるべになる」KPIの違い
「数字に追われるのは苦手」。その気持ちは自然なものです。ただ、苦しいKPIと味方になるKPIは、性格が悪いか良いかではなく、条件を満たしているかどうかが違うだけです。
追われるだけのKPIは、たいてい「測れない」「いつまでにか分からない」「自分ではどうにもできない」のどれかに当てはまります。逆に、道しるべになるKPIは、この3つをクリアしています。条件を知れば、悪いKPIは自分で弾けるようになります。
良いKPIの3条件:①測れる ②期限がある ③自分の行動で動かせる
良いKPIの条件を、3つの型としてお渡しします。
- 測れる……数字で数えられること。「がんばる」は測れませんが、「訪問件数」は数えられます。
- 期限がある……いつまでに、という区切りがあること。「いつか売上を上げる」ではなく「今週中に」と区切ります。
- 自分の行動で動かせる……自分の動きで増やしたり減らしたりできること。景気や他部署任せの数字は、ここで外れます。
この3条件には、背景になっている有名な考え方があります。SMARTです。これは George T. Doran が1981年に雑誌『Management Review』で提唱した、目標の書き方の枠組みで、Specific(具体的)・Measurable(測れる)・Time-related(期限)などの頭文字をとったものです。ちなみにSMARTの各語は使う人や時代で少しずつ変わってきており(たとえばAは「Achievable=達成可能」とされることも多いです)、暗記する必要はありません。本講座では、このうち「測れる(Measurable)」「期限(Time)」「自分で動かせる」の3つだけ押さえれば十分です。
候補を3条件でチェックする
では、第1章で出した候補を、実際に3条件で点検してみましょう。「売上を伸ばす」まわりの言葉を並べます。
- 「がんばる」……測れません。KPIにはなりません。
- 「売上を上げる」……方向は正しいですが、これは最終目標(KGI)そのもので、自分が今日何をするかが見えません。中間指標としては曖昧です。
- 「今週、訪問を20件する」……測れて、期限があり、自分の行動で動かせます。良いKPIです。
並べてみると、良し悪しがはっきりします。手順はこれだけです。候補を1つずつ、「①測れる? ②期限はある? ③自分の行動で動く?」と問いにかけ、3つともYESなら採用、1つでもNOなら言い換える。これで、追われるだけの数字をふるい落とせます。
ここでつまずきやすい
「景気が良くなる」「他部署が早く動いてくれる」のような、自分ではコントロールできない指標をKPIにしてしまう。これだと、達成・未達が自分の努力と結びつかず、ただ振り回されます。3条件のうち、特に「自分の行動で動かせるか」で厳しく弾いてください。
💡 KPI設計テンプレを、無料会員登録でDL
この3条件のチェックリストと、次の章で作るKPIの分解シートをそのまま書き込めるKPI設計テンプレを、無料会員登録でダウンロードできます。白紙からではなく、型に沿って自分のKPIを組み立てられます。
▶ 無料で会員登録して、KPI設計テンプレをダウンロードする
この章の確認(演習)
お題:曖昧な目標を1つ選び、良いKPIの3条件を満たす形に書き直してみてください。
「売上を上げる」のような曖昧な目標を、「今週、訪問を○件する」のように、測れて・期限があり・自分で動かせる形に直します。1つ書き直せたら、ゴール達成です。
KGIから逆算してKPIを作る
良いKPIを見分けられるようになったら、いよいよ自分で作ります。この章が、この講座のいちばんの山場です。「売上を伸ばす」という曖昧な目標を、追える1つの数字まで具体化します。
この章のゴール
この章を読み終えると、最終目標(KGI)から逆算して、自分の業務のKPIを1つ作れるようになります。
KGIをいきなり追っても動けない:プロセスに分解する
「売上を伸ばせ」と言われても、明日の朝、机に向かって何をすればいいかは決まりません。KGIは最終ゴールなので、そのままでは大きすぎて手が出ないのです。
だから、ゴールにたどり着くまでのプロセスに分解します。最終目標を、それを生み出している小さな要素に切り分け、その1つひとつを「測れる数字」にしていく。この「大きな目標を要素に分ける」やり方は、第10講で学んだロジカルな分解をそのまま使います。ここでは、その分解を「KPIを作る」ために応用します。
売上を式に分解する:訪問件数×商談化率×受注率×単価
具体的に、共通例の「売上」を分解してみましょう。営業の売上は、たとえば次のような掛け算で説明できます。
売上 = 訪問件数 × 商談化率 × 受注率 × 単価(※あくまで一例です)
訪問した件数のうち何件が商談になり、そのうち何件が受注になり、1件いくらか。これを掛け合わせると売上になる、という見方です。こうして要素に分けると、それぞれが「測れる中間指標」になっていることに気づきます。訪問件数も、受注率も、数えられる数字だからです。最終目標(KGI)から逆算して、こうした要素を木の枝のように分けていく図は、KPIツリーと呼ばれます。
ここで大事な注意を1つ。この式は唯一の正解ではありません。売上の分け方は1つではなく、「客数×単価」を起点にしたり、「新規からの売上+リピートからの売上」と分けたりと、切り口はいくつもあります。大事なのは式を暗記することではなく、「最終目標は、測れる要素の掛け算に分けられる」という発想を持つことです。
動かせる1つを選んでKPIにする
要素に分解できたら、最後のステップです。分けた要素を全部追おうとしないでください。全部を同時に追うと、結局どれに力を入れればいいか分からなくなります。
選ぶ基準は、第2章の3条件——なかでも「自分の行動で動かせるか」です。たとえば「単価」は価格や商品で決まり、若手の自分ひとりでは動かしにくい。一方「訪問件数」は、明日からの自分の動きで増やせます。そこで、動かせて、効きそうな1つ=訪問件数をKPIに選びます。「売上を伸ばす」という曖昧な目標が、「今週、訪問を○件する」という追える1つの数字に変わりました。これが、KGIから逆算してKPIを作る、ということです。
ここでつまずきやすい
分解したのが嬉しくて、KPIを5つも6つも設定してしまう。すると、どれを優先すればいいか分からなくなり、結局どれも中途半端になります。最初から完璧を目指さず、まずは動かせる1つに絞る。慣れてから増やせば十分です。
この章の確認(演習)
お題:共通例の「売上」を式に分解し、自分が追うKPIを1つ選んでみてください。
「訪問件数×商談化率×受注率×単価」のうち、自分の行動でいちばん動かせそうな要素はどこか。1つに丸をつけます。丸を1つつけられたら、ゴール達成です。
KPIを運用する
KPIを1つ作れたら、あと一歩です。KPIは、作って終わりではありません。最後に、作ったKPIを実際に回し続ける方法を見ていきます。
この章のゴール
この章を読み終えると、作ったKPIを定点観測し、振り返って見直せるようになります。
KPIは作って終わりではない:測って初めて意味が出る
苦労して作ったKPIも、設定しただけで放置すれば、ただの紙の上の数字です。KPIは、定期的に測って初めて道しるべになります。
「今週、訪問を20件する」と決めても、実際に何件できたかを数えなければ、近づいているのか分かりません。KPIの運用は、設定がスタート地点です。ここからが本番だと考えてください。
定点観測する:週次など決まったタイミングで測る
測り方のコツは、「いつ・どう測るか」をあらかじめ決めておくことです。気が向いたときに測るのでは、すぐ続かなくなります。
たとえば「毎週金曜の夕方に、その週の訪問件数を数える」と決めてしまう。こうして決まったタイミングで記録することを、定点観測と呼びます。共通例なら、毎週金曜に「今週は18件、目標20件には2件足りない」と確認する。これを繰り返すだけで、達成・未達がその場で見え、手応えが毎週もらえます。測る頻度は週次に限らず、お勤め先のやり方に合わせて決めて大丈夫です。
振り返って見直す:ズレたら打ち手かKPI自体を変える
定点観測で未達が分かったら、そこで終わりません。原因を見て、次の打ち手を1つ決めます。「今週は2件足りなかった。来週は移動の少ない地域をまとめて回ろう」というように、行動を1つ変える。これが振り返りです。
打ち手を変えても何度も外れるなら、KPIそのものがズレているかもしれません。たとえば訪問件数は達成しているのに売上が伸びないなら、追うべきは訪問件数ではなく別の要素だった、という見直しもありえます。設定→測定→振り返り→見直しを回し続ける。これで「KGI→分解→KPI→測って振り返る」の1周が完成します。
ここでつまずきやすい
数字を追うこと自体が目的になり、何のための数字か(KGI)を見失うこと。訪問件数を増やすために中身の薄い訪問を量産しても、売上というゴールには近づきません。「測る指標が目標そのものになると、良い指標でなくなる」という指摘はグッドハートの法則として知られます。振り返りのたびに、「この数字は、最終目標に近づいているか?」とKGIに立ち戻ってください。
この章の確認(演習)
お題:第3章で選んだKPIを、「いつ・どう測るか」を1つ決めてみてください。
「毎週金曜に訪問件数を数える」のように、観測のタイミングと方法を1行で書きます。1つ決められたら、ゴール達成です。
まとめ:がんばりを、数字に翻訳する
おつかれさまでした。「営業チームの“売上を伸ばす”」という、たった1つの曖昧な目標を、意味を知り、見分け、作り、回すところまで歩いてきました。最後に、その道を1枚の地図にまとめます。
- KPIとは何か……KPIは、がんばりを数字に変える道具。KGI(最終目標)に近づくための中間指標(第1章)。
- 良いKPIの条件……測れる・期限がある・自分の行動で動かせる。この3条件で良し悪しを見分ける(第2章)。
- KGIから逆算して作る……最終目標を要素の掛け算に分解し、動かせる1つをKPIに選ぶ(第3章)。
- 測って振り返る……定点観測し、未達なら打ち手かKPI自体を見直す(第4章)。
この4つは、バラバラの手順ではありません。すべてたった1つの問いに戻ります。
その数字は、最終目標(KGI)に近づくための、測れる中間指標になっているか?
KGIから逆算した数字を、測って、振り返る。これだけで、曖昧な「がんばる」が、毎週確認できる手応えに変わります。この講座でいちばん覚えてほしいひと言は、これです。
がんばりを、数字に翻訳する。
明日の最初の一歩:自分の仕事の「最終ゴール(KGI)」を1つ決め、それに効く測れる指標(KPI)を1つ書いてみてください。第1章と第3章の演習を、実際の仕事で1回やってみる。曖昧な目標を、追える1つの数字に変えるだけで、毎週の達成度が自分で分かるようになります。
ロードマップの一区切り:そして、これで新入社員ロードマップは一区切りです。仕事の進め方、ロジカルな分解、資料作成、時間管理、そしてKPI——仕事の基礎をひととおり歩いてきました。KPIで「自分の目標を数字で持てる」ようになったら、あとは現場で回しながら磨いていくフェーズです。ここまで来たあなたは、もう「がんばります」だけで終わる人ではありません。
🎓 KPI設計テンプレも、各講座の続きも、無料会員登録で
今日のKGI→分解→KPI→運用をそのまま1枚で組み立てられるKPI設計テンプレと、各講座のテンプレ・続編教材が、無料会員登録で受けられます。会員登録は無料です。
▶ 無料で会員登録して、KPI設計テンプレをダウンロードする
🏢 チーム全体で底上げするなら、法人研修を
「若手みんなにKPIの基礎を持たせたい」「現場で回せる目標設計を体系的に教えたい」——そんなときは、法人向けの研修プログラムをご用意しています。本ロードマップの内容を、貴社の業務に合わせた育成プログラムとしてお届けします。
▶ 法人研修について問い合わせる
よくある質問
KPIとKGIはどう違いますか
KGIは「最終的に達成したいゴールを数値化したもの」で、KPIは「そのKGIに近づくための中間指標」です。まずKGIを1つ決め、そこから逆算してKPIを設計するのが基本の順序です。
良いKPIにはどんな条件が必要ですか
良いKPIの条件は「①数字で測れる」「②期限がある」「③自分の行動で動かせる」の3つです。この3条件をすべて満たすかどうかで、候補をふるいにかけてください。
KPIはいくつ設定すればよいですか
最初は動かせる1つに絞るのが基本です。複数設定すると優先順位が分からなくなり、結局どれも中途半端になりやすいため、慣れてから少しずつ増やすことを推奨します。
KPIを達成できなかったときはどうすればよいですか
まず原因を見て次の打ち手を1つ決めます。打ち手を変えても未達が続く場合は、KPIそのものがKGIに効いていない可能性があるため、分解し直して別の指標に切り替えることも検討してください。
KPIを設定すると数字に追われてしまいませんか
KPIを追うこと自体が目的になると、本来のKGI(最終目標)を見失うことがあります。振り返りのたびに「この数字は最終目標に近づいているか」とKGIに立ち返ることで、数字を道しるべとして使い続けられます。