「スライドはできたのに、本番で何を話すかが決まらない」——そんな経験はないでしょうか。前夜にぶっつけで話す内容を考え、当日は早口になったり話が飛んだり。かといってAIに「プレゼン原稿を作って」と頼むと、今度は“書き言葉”のカチカチした文章が出てきて、声に出して読むとどうにも不自然。これはAIの力不足ではありません。AIへの渡し方と、出てきた原稿の直し方を変えていないだけです。この講座では、AI プレゼン 原稿づくりの型——本番でそのまま読み上げられる“話す原稿”をAIに作らせ、自分が話せる形に仕上げるまでを、手を動かしながら身につけます。
最初に、この講座が扱う範囲をはっきりさせます。本講座は「AIで“話す原稿(しゃべるための文章)”を作る」という1点に絞ります。仕上げた原稿を本番でどう話すか(声・間・目線)はプレゼンの話し方が正本です。スライドや資料そのものの作り込みはプレゼン資料デザインへ、AIでスライドそのものを生成するのはGammaでスライド作成へ、AIへの指示文の汎用的な作り方はAIプロンプト基礎へ、それぞれ送客します。本講座は“スライドに乗せる前のしゃべる言葉”だけを扱い、話し方やスライド作りには立ち入りません。
この講座を終えると、次の3つができるようになります。プレゼン原稿をAIに作らせるための前提(聞き手・目的・要点・持ち時間・話し言葉指定)を、指示文として書き出せること。AIに「話し言葉のプレゼン原稿」のドラフトを作らせられること。そして、AIが出した原稿を、持ち時間・自分の口調・事実確認の観点で直して仕上げられることです。
覚えて帰ってほしい型は、これだけです。前提5点を渡す → 話し言葉の原稿を作らせる → 持ち時間・口調・事実の3点で直す。 AIでプレゼン原稿を作るとは、AIに丸投げすることではありません。前提を渡して叩き台を作らせ、自分の言葉と事実確認で仕上げることです。AIには下書きを、自分には言葉と事実確認を、というのが基本姿勢です。
全章を通して追うのは、次の場面です。あなたが(例)5分の社内進捗報告で話す原稿を、AIに作らせて仕上げる。聞き手は上司とチーム、目的は今週の遅れと来週の対策を理解してもらうこと——この一本の糸を、3章で追いかけます。
この講座のポイント
- プレゼン原稿をAIに作らせるために必要な前提(聞き手・目的・要点・持ち時間・話し言葉指定)を、AIに渡せる指示文として書き出せる。
- AIに「話し言葉のプレゼン原稿」のドラフトを作らせられる(声に出して読んで自然な原稿を出力させられる)。
- AIが出した原稿を、持ち時間・自分の口調・事実確認の3つの観点で直して、自分が話せる原稿に仕上げられる。
プレゼン原稿をAIに作らせる前の「前提5点」を言語化する
この章のゴール
プレゼン原稿をAIに作らせるために必要な前提(聞き手・目的・要点・持ち時間・話し言葉指定)を、AIに渡せる指示文として書き出せる。
AIが当たり障りのない原稿を返すのには理由がある
AIに「プレゼン原稿を作って」とだけ頼むと、当たり障りのない一般論が返ってきます。これはAIの性能のせいではなく、前提が空っぽのまま頼んでいるからです。AIは渡された情報の範囲でしか書けません。あなたの聞き手も、持ち時間も、伝えたいことも知らないまま書けば、誰にでも当てはまる無難な文章になるのは当然なのです。
そこで、原稿を作らせる前に次の5点を言語化します。①聞き手は誰か(上司か、他部署か、新人か)②目的(聞き手にどうしてほしいのか)③要点(伝えたいことを2〜3つ)④持ち時間(何分で話すか)⑤「話し言葉で」という指定。この5点が、AIに渡す材料になります。
共通例で書き出してみましょう。①聞き手=上司とチーム ②目的=今週の遅れと来週の対策を理解してもらう ③要点=今の進捗・遅れた原因・来週の対策 ④持ち時間=(例)5分 ⑤話し言葉のプレゼン原稿で。手順はこの順番どおりで、誰に話すかを1行、どうしてほしいかを1文、要点を2〜3つ、持ち時間を数字、最後に「話し言葉で」を足すだけです。
つまずきやすいのは2つ。要点を絞らず、思いつくことを全部入れてしまって原稿が膨らむこと。もう1つは「いい感じにまとめて」と曖昧に投げてしまうことです。要点は2〜3つに削るほど、原稿は伝わるものになります。なお、この「前提を渡す指示文」をテンプレ化して使い回したくなったら、AIプロンプト基礎が役に立ちます。本章は、あくまでプレゼン原稿のための前提5点を渡すところに絞ります。
この章の確認(演習)
自分が近く人前で話す予定の場面を1つ選んでください。その場面について、聞き手・目的・要点(2〜3つ)・持ち時間・話し言葉指定の5点を、箇条書きで書き出してみましょう。これが次章でAIに渡す材料になります。
AI プレゼン 原稿を「話し言葉のドラフト」として作らせる
この章のゴール
AIに「話し言葉のプレゼン原稿」のドラフトを作らせられる(声に出して読んで自然な原稿を出力させられる)。
「話し言葉で・持ち時間内で・この順番で」を明示する
第1章で書いた前提5点を、1つの指示文にまとめてAIに渡します。このとき外せないコツが2つあります。1つは「書き言葉ではなく、声に出して読む前提の話し言葉で」と明示すること。もう1つは「持ち時間に収まる分量で」と長さを指定することです。さらに、話す順番の“型”(例:結論→理由→具体例の順)を指定すると、話が前後せず安定します。
共通例なら、こう渡します。「(例)5分で読み上げられる、話し言葉のプレゼン原稿を作ってください。聞き手は上司とチーム。目的は今週の遅れと来週の対策を理解してもらうこと。要点は、今の進捗・遅れた原因・来週の対策の3つ。冒頭で結論、次に遅れの原因、最後に来週の対策の順でお願いします」。前提5点と「話し言葉・持ち時間・順番」が1つの指示文に入っているのがポイントです。
出てくる原稿の違いも見ておきましょう。前提を渡さず「進捗を報告する原稿」とだけ頼むと、たとえば「本プロジェクトの進捗状況につきましてご報告申し上げます」のような書き言葉が返りがちです。話し言葉を指定すると「今週の進捗を報告します。結論からお伝えすると、一部に遅れが出ています」のように、読み上げて自然な文へ近づきます(いずれも例)。
注意したいのは、1回の出力で完璧を求めないことです。最初に出てくるのはあくまで叩き台。長さも口調も、この後の第3章で直します。出力されたら、まず一度声に出して読み、長さと自然さをざっと確かめてください。なお、話の順番の型そのものを体系的に学びたいときはPREP法が、スライド自体をAIで作りたいときはGammaでスライド作成が参考になります。
この章の確認(演習)
第1章で書き出した前提5点を、1つの指示文にまとめてAIに渡し、話し言葉のプレゼン原稿ドラフトを1本作らせてみましょう。出てきたら、声に出して一度読んでみてください。
AIが出した原稿を「持ち時間・口調・事実」の3点で直して仕上げる
この章のゴール
AIが出した原稿を、持ち時間・自分の口調・事実確認の3つの観点で直して、自分が話せる原稿に仕上げられる。
叩き台を“自分が話せる原稿”に変える3つの直し
ここが一番大事な章です。AIが出した原稿は、そのまま読み上げてはいけません。叩き台を次の3点で直して、はじめて“自分が話せる原稿”になります。
1つ目は持ち時間です。原稿を声に出して読み、時間を測ります。(例)6分かかったなら、AIに「5分に縮めてください」と再依頼するか、自分で要点の薄い部分を削ります。逆に短ければ、要点に一言ずつ足します。声に出して測るのが大事で、文字数を眺めるだけでは実際の長さはわかりません。
2つ目は口調です。AIの原稿には、自分が普段使わない硬い言い回しが混じります。「〜であります」「〜という所存です」のような表現を、「〜です」「〜しようと思います」と、自分が口に出して違和感のない言葉に直します。普段の自分のしゃべり方に寄せるほど、当日つっかえません。
3つ目は事実確認です。ここは必ず守ってください。原稿に出てくる数字・固有名詞・日付は、AIが間違えることがあります。生成AIには「ハルシネーション」という性質があるからです。これは、AIが事実に基づかない内容をもっともらしく作ってしまう現象を指します。総務省の白書も「生成AIは事実に基づかない誤った情報をもっともらしく生成することがあり、これをハルシネーション(幻覚)と呼ぶ」とし、「技術的な対策が検討されているものの完全に抑制できるものではない」ため、利用者は「検索を併用するなど、生成AIの出力した答えが正しいかどうかを確認することが望ましい」と述べています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。原稿の進捗の数字や日付は、自分の手元の資料と突き合わせてから話しましょう。
もう1つ、進捗報告の原稿をAIに作らせるとき、あなたは社内のまだ公開していない情報をAIに渡すことになります。白書は「個人情報や機密情報がプロンプトとして入力され、そのAIからの出力等を通じて流出してしまうリスク」も指摘しています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。未公開の数字や社外秘は、必要なところだけぼかして渡す、社内で使ってよいAIと入れてよい情報の範囲を確認する、という線は守ってください。つまずきは、AIの出力を無検証でそのまま読むこと(特に数字の見逃し)と、逆に直しすぎて時間をかけ過ぎることです。3点だけ直せば十分です。仕上げた原稿を本番でどう話すか(声・間・目線)は、プレゼンの話し方へ進んでください。
この章の確認(演習)
第2章で作った原稿を声に出して読み、(1)時間を測って長ければ削る、(2)硬い言い回しを自分の口調に直す、(3)数字・固有名詞・日付を自分の資料で確認する、の3点で直してみましょう。最後にもう一度通しで読んで仕上げます。
まとめ
AIでプレゼン原稿を作るとは、AIに丸投げすることではありませんでした。前提5点を渡す(聞き手・目的・要点・持ち時間・話し言葉指定)→ 話し言葉の原稿を作らせる → 持ち時間・口調・事実の3点で直す、この3工程です。AIは叩き台を高速で出してくれる相棒で、自分の言葉に直し、事実を確かめて仕上げるのは自分の仕事です。
明日の一歩として、次に人前で話す場面を1つ選び、聞き手・目的・要点・持ち時間・話し言葉指定の5点をAIに渡して、原稿ドラフトを1本出してみてください。出てきたら声に出して読み、長さと口調を直し、数字を確認する。それだけで、本番の手応えが変わります。作った原稿を本番でうまく話すコツは、プレゼンの話し方へ進みましょう。
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よくある質問
AIに「プレゼン原稿を作って」と頼めば、そのまま使える原稿が出ますか
出ません。前提が空だと当たり障りのない書き言葉が返ります。聞き手・目的・要点・持ち時間・話し言葉指定の5点を渡すと、使える叩き台に近づきます。
AIが書いた原稿は、そのまま読み上げていいですか
そのままは避けてください。持ち時間・口調・事実の3点で直してから読み上げます。特に数字・固有名詞・日付は、AIが間違えることがあるので自分で確認します。
出てきた原稿が硬くて読みにくいときは、どうすればいいですか
「声に出して読む前提の話し言葉で」と指定して作り直させ、語尾や言い回しを自分が普段使う言葉に直します。一度声に出して読むと、直すべき箇所が見つかります。