「AIに『競合を調べて』と頼んだのに、出てきた会社名や数字が正しいか判断できず、結局使えなかった」——企画書や施策提案に競合の状況を載せようとして、こんな壁にぶつかったことはないでしょうか。1社ずつサイトを開いて読み、メモがバラバラのまま貼り込み、「この競合、結局どこが強いの?」と聞かれて即答できない。AI 競合調査が空回りするのは、AIの性能が低いからではなく、頼み方と整理の手順が決まっていないからかもしれません。この講座は、その「使えない」を解消する手順を、手を動かしながら身につけるためのものです。
最初に、この講座が扱う範囲と扱わない範囲をはっきりさせておきます。本講座は「生成AIを競合調査の作業道具として回す——AIに競合情報を出させ、信頼できる形に整理し、人が確認する」という運用ひとつに絞ります。自社・競合・顧客を体系的に見る分析フレームそのものは3C分析が正本です。集めた競合情報を自社の戦略の優位性につなげる考え方は競争優位性へ、出典付きで調べるAIリサーチツールの操作はPerplexity入門へ、数値データの集計・可視化はAIデータ分析へ、それぞれ送客します。フレーム理論や戦略の意思決定には、本講座では踏み込みません。
この講座を終えると、次の3つができるようになります。競合調査でAIに渡す指示を「誰を・どの観点で・どの形式で出すか」の形で作成できること。AIが出した競合情報を、事実(裏取りできる)か推測(AIの生成)かで見分けられること。そして、複数社の情報を共通の比較軸で1枚の比較表に整理できることです。
覚えて帰ってほしい型は、これだけです。誰を・どの観点で・どの形式で指示する → 事実か推測かで確認する → 共通軸で1枚に整理する。 AI競合調査は「AIに丸投げ」ではありません。AIは調べる手間を減らす道具で、確認と整理の判断は人が持つ。この役割分担で進めます。
全章を通して追うのは、次の場面です。自社サービスの競合3社を、価格・主な機能・ターゲット・訴求メッセージの4観点で比較表にして、企画書に貼りたい。この1つの仕事を、3章で追いかけます。
この講座のポイント
- 競合調査でAIに渡す指示を「誰を・どの観点で・どの形式で出すか」の形で、自分の担当サービスについて作成できる。
- AIが出した競合情報を、事実(裏取りできる)か推測(AIの生成)かで見分けられる。
- 複数社の競合情報を共通の比較軸で1枚の比較表に整理できる。
AI 競合調査でAIに渡す指示を設計する
この章のゴール
競合調査でAIに渡す指示を「誰を・どの観点で・どの形式で出すか」の形で、自分の担当サービスについて作成できる。
「競合を調べて」では使えない情報しか返らない
AIに「競合を調べて」とだけ頼むと、誰のことか分からない雑多な情報が、比較もできない形で返ってきます。これはAIの力不足ではなく、渡した指示が漠然としているからです。情報が足りないぶんを、AIは「それっぽい一般論」で埋めてしまいます。
逆に、指示の3点をそろえれば、出力はぐっと使えるものになります。①誰を——対象の競合を社名や事業で具体的に指定します。②どの観点で——価格・機能・ターゲットなど、比較したい軸を先に人が決めます。③どの形式で——箇条書きか表か、出典を付けるか。この3点を、AIに向かう前に決めておきます。
共通例で指示文を組み立てる
共通例で考えてみましょう。「競合を調べて」ではなく、「自社の○○というサービスの競合3社を、価格・主な機能・ターゲット・訴求メッセージの4観点で、観点ごとに比較できる表形式で、根拠URLを併記して出して」と指示します。誰を(競合3社)・どの観点で(4観点)・どの形式で(表+出典)が、すべて1文に入っています。
つまずきは3つです。「競合」とだけ書いて対象がぶれること、観点を決めずに頼んで雑多な情報が返ること、そして一度の出力で完成させようとすることです。観点が足りなければ足して指示し直す、という前提で臨んでください。なお、自社・競合・顧客をどんな軸で見るかという分析フレームそのものは3C分析が詳しく、Webから出典付きで調べるツールの操作はPerplexity入門が土台になります。
この章の確認(演習)
自分の担当サービスについて、「競合(誰を)・観点・出力形式」の3点を埋めたAIへの指示文を、1つ書き出してみましょう。これが次章で確認する出力のもとになります。
AIの出力を確認する(事実と推測を見分ける)
この章のゴール
AIが出した競合情報を、事実(裏取りできる)か推測(AIの生成)かで見分けられる。
AIの競合情報は、そのまま信じない
ここが一番大事な章です。AIが出した比較表は便利ですが、そのまま企画書に載せてはいけません。生成AIには「ハルシネーション」という性質があるからです。これは、AIが事実に基づかない誤った内容を、もっともらしく作ってしまう現象を指します。総務省の白書も「生成AIは事実に基づかない誤った情報をもっともらしく生成することがあり、これをハルシネーション(幻覚)と呼ぶ」とし、「技術的な対策が検討されているものの完全に抑制できるものではない」ため、「検索を併用するなど、ユーザーは生成AIの出力した答えが正しいかどうかを確認することが望ましい」と述べています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。
競合調査では、実在しない会社名や、捏造された売上・シェア・沿革が、平然と表に並ぶことがあります。だから、各情報を「出典で確かめられるか」で仕分けます。やり方は、まずAIに「根拠URLを併記して」と指示すること。次に、数値・固有名詞・固有の機能名を優先して確認すること。そして、確認できない箇所には「要確認」と印を付け、企画書には載せないか「未確認」と明記することです。
共通例で仕分ける
共通例の比較表で言えば、「価格」「主な機能」の各セルを、競合の公式サイトやプレスリリースで確認します。確認できたものは残し、出典が見つからないものには「要確認」と印を付けます。
つまずきは3つ。AIの断定口調をそのまま事実と受け取ること、全部を確認しようとして手が止まること(数値・社名・固有機能に絞れば十分です)、そして自社や競合の機密情報をAIに入力してしまうことです。白書も「個人情報や機密情報がプロンプトとして入力され、そのAIからの出力等を通じて流出してしまうリスク」を指摘しています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。無料で誰でも使えるAIに社外秘や未公開情報を入れない、社内ルールを確認する、という線は必ず守ってください。確認した数値をさらに集計・可視化したいときはAIデータ分析へ、出典付きで調べ直すならPerplexity入門へ進めます。
この章の確認(演習)
AIが出した競合情報のうち、数値・社名・固有の機能を3つ選び、それぞれ出典で確認できるかを調べて、確認できないものに「要確認」と印を付けてみましょう。
複数社の情報を1枚の比較表に整理する
この章のゴール
複数社の競合情報を共通の比較軸で1枚の比較表に整理できる。
「集めた」だけでは比較にならない
競合情報は、集めただけでは企画書で使えません。全社を同じ観点(軸)で並べて、初めて比較になるからです。整理できた状態には、3つの条件があります。軸を社ごとに変えないこと、空欄は無理に埋めず空欄のまま残すこと、そして確認済みか未確認かが分かる形にすることです。
手順はこうです。①比較軸(観点)を全社共通で固定する。②AIに同じ軸で全社分を表に整形させる。③第2章で確認した情報だけを埋め、確認済みと未確認をセルで区別する。④比較表から読み取れる差——どこが強く、どこが弱いか——を一言メモする。表は作ることがゴールではなく、差を読み取るための道具です。
共通例で1枚に仕上げる
共通例なら、3社×4観点(価格・主な機能・ターゲット・訴求メッセージ)の表に、確認できた情報だけを埋めます。裏取りできなかったセルは「未確認」と残したまま、企画書に貼れる1枚に仕上げます。未確認のセルがあっても、憶測で埋めないことが、信頼できる比較表の条件です。
つまずきは3つ。社ごとに観点がずれて比較にならないこと、未確認の欄を憶測で埋めること、そして表を作って満足し、差の解釈をしないことです。比較表から「自社はどこで勝てるか」を考える戦略づくりは競争優位性へ、自社・競合・顧客を体系的に見る分析フレームは3C分析へ進むと、一段広い視点で活かせます。
この章の確認(演習)
共通具体例の3社×4観点で、確認済みの情報だけを埋めた比較表を1枚作り、未確認のセルに印を残してみましょう。最後に、表から読み取れる差を一言で書き添えてください。
まとめ
AI競合調査は「AIに丸投げ」ではありません。誰を・どの観点で・どの形式で指示する → 事実か推測かで確認する → 共通軸で1枚に整理する の3ステップでした。AIは調べる手間を減らす道具で、確認と整理の判断は人が持つ。AIが出した数値や社名は、出典で確かめられたものだけを残し、確かめられないものは「未確認」と印を付ける——これが、企画書で使える比較表と、使えない比較表の分かれ目です。
明日の一歩として、次の競合調査で、対象・観点・出力形式の3点を書いた指示文をAIに渡し、返ってきた表を出典で確認してから企画書に貼ってみてください。一度この型を通すと、毎回ゼロから手作業だった競合調査が、驚くほど軽くなります。整理した競合情報を自社の優位性づくりに活かすステップは、競争優位性へ進みましょう。
AI競合調査の指示テンプレ(誰を・観点・形式の穴あき)と、確認済み/未確認の印つき比較表フォーマットを、メルマガ登録でお配りしています。次の競合調査からそのまま使えます。
よくある質問
AIが出した競合情報は、そのまま企画書に使っていいですか
おすすめしません。数値・社名・固有の機能はハルシネーション(AIの事実誤り)の可能性があるため、公式サイトやプレスリリースで確認してから使います。確かめられない情報は載せないか「未確認」と明記します。
競合の売上やシェアの数字をAIが出してきたら
鵜呑みにせず、一次情報で確認してください。生成AIは事実に基づかない数字をもっともらしく作ることがあります。裏取りできない数字は、本文にも企画書にも断定で載せないのが原則です。
どのAIを使えばいいですか
対話型の生成AI(ChatGPT・Claude・Gemini など)であれば進められます。本講座は特定の製品を勧めません。なお、自社や競合の機密情報は入力しないこと、社内で使ってよいAIの範囲は社内ルールに従うことを守ってください。