AIで契約書をチェックする講座|観点で論点を洗い出し、原文に当てて確かめる | マナビズ

AIで契約書をチェックする講座|観点で論点を洗い出し、原文に当てて確かめる

AIで契約書をチェックする講座|観点で論点を洗い出し、原文に当てて確かめる

取引先から届いた契約書(案)にAIで「この契約書に問題はありますか?」と聞いたら、「特に問題ありません」と返ってきた——でも、本当にそのまま進めて大丈夫でしょうか。少人数や兼任で契約に目を通す立場だと、毎回どこを見ればいいか手探りで、見落としが怖い。だからAIに頼りたくなります。ところがAIは、聞き方しだいで肝心な点を見落としますし、まれに契約書に無い条文を“あること”にしてしまう(ハルシネーション)こともあります。この講座では、AIを「下読み」として安全に使う AI 契約書 チェック の型を、手を動かしながら身につけます。

最初に、この講座が扱う範囲をはっきりさせます。本講座は「既存の契約書(案)を読み、AIに観点付きで“下読み”させて確認すべき論点を洗い出し、人の判断に渡す」という一点に絞ります。AIへの指示文(プロンプト)の書き方そのものはAIプロンプトの基本が正本です。AIに任せてよい範囲とリスク(誤りの責任)の総論はAI倫理へ、機密の契約データを生成AIに入れてよいかという情報管理は情報セキュリティへ送客します。そして大前提として、本講座は「弁護士の代わり」ではなく「下準備」です。法的な有利不利の判断や最終承認は、人——法務担当や弁護士——が行います。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。契約書(案)の確認すべき論点を観点に沿って洗い出せること。AIの指摘を原文の条番号に当てて確かめ、鵜呑みにせず検証できること。そして、AIに任せてよい範囲と人が判断すべき範囲の線引きを説明できることです。

覚えて帰ってほしい型は、これだけです。観点を与える → 論点を洗い出す → 原文に当てて検証する(最終判断は人)。 全章を通して、ひとつの場面を追います。取引先から届いた業務委託契約書(案)を、AIに観点付きで下読みさせ、出てきた論点を原文の条番号に当てて「確認・修正依頼の一覧」にし、上司や弁護士に渡す——この一本の糸を、3章でたどります。

この講座のポイント

  • AIに任せてよい範囲と、人(法務・弁護士)が判断すべき範囲の線引きを説明できる。
  • AIで契約書(案)の確認すべき論点を、観点に沿って洗い出せる。
  • AIの指摘を原文の条番号に当てて確かめ、鵜呑みにせず検証する手順を実演できる。

AI 契約書 チェックを始める前に決める「役割と境界」

この章のゴール

AIに任せてよい範囲と、人(法務・弁護士)が判断すべき範囲の線引きを説明できる。

AIは「下読み」、最終判断は人

AIの契約書チェックで本領を発揮するのは、「観点に沿って論点を洗い出す=下読み」までです。法的な有効性や自社にとっての有利不利の最終判断、そして署名・承認は、人の領域から動かしてはいけません。AIの出力は、あくまで「確認すべき候補リスト」であって正解ではないからです。総務省の白書も、生成AIは「事実に基づかない誤った情報をもっともらしく生成することがあり、これをハルシネーション(幻覚)と呼ぶ」とし、「技術的な対策が検討されているものの完全に抑制できるものではない」と述べています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。AIは、契約書に無い条文をさももっともらしく作ることがある、と覚えておいてください。

法律で引かれている境界線

法的な境界も知っておくと安心です。法務省は、AI等を用いて契約書の作成・審査・管理を支援するサービスと、非弁護士による法律事務を禁じる弁護士法第72条との関係を整理したガイドラインを公表しています。そこでは、対象がいわゆる「法律事件」にあたるかを「個別の事案ごとに、契約の目的、当事者の関係、経緯や背景事情等を考慮し、法律上の権利関係に関し争いがあり、あるいは疑義を有するか否か」で判断するとされています(出典:法務省「弁護士法72条とAIリーガルテックサービス」)。

かみ砕くと、当事者間でまだ具体的な争いや疑義が生じていない、一般的な契約書の条項チェックは、直ちに問題となる場面ではないと考えられます。一方、すでに権利関係に争いのある個別の事案について法的な判断やアドバイスを行うことは、弁護士の領域です。同資料は「弁護士が自ら精査し、必要に応じ修正する方法で使用する場合は違反しない」とも整理しています。つまり、AIに下読みさせても、最後に人が精査して判断するという使い方が要になります。判断に迷う紛争性のある契約は、はじめから弁護士に相談してください。

この章でのつまずき

つまずきは3つです。AIの「問題なし」という総括を結論として受け取ってしまうこと。機密の契約書を、社内ルールを確認せずそのまま貼り付けてしまうこと。そして、有利不利の最終判断までAIに委ねてしまうことです。機密情報を生成AIに入れてよいかの判断は情報セキュリティが、AIに任せる範囲と責任の考え方はAI倫理が詳しく扱っています。

この章の確認(演習)

手元の契約書チェック業務を1つ思い浮かべ、「AIに任せる作業(観点出し・要約・気になる箇所の指摘)」と「人が判断する作業(有利不利の結論・承認)」を、2列に書き分けてみましょう。

確認の観点に沿ってAIに論点を洗い出させる

この章のゴール

AIで契約書(案)の確認すべき論点を、観点に沿って洗い出せる。

「チェックして」では浅い指摘しか出ない

AIにただ「この契約書をチェックして」と頼むと、表面的な指摘しか返ってきません。AIには、どこを重点的に見てほしいのかが伝わっていないからです。そこで、確認の観点を先に人が与えます。契約書を読むときによく確認される観点は、たとえば次の6つです。①当事者(誰と誰の契約か)、②期間・更新(いつからいつまで・自動更新の有無)、③金額・支払(額・支払時期・遅延時の扱い)、④責任・損害賠償(賠償の範囲や上限)、⑤解除・中途解約(できる条件・予告期間)、⑥秘密保持・知的財産(成果物の権利の所在)。この観点リストを渡し、観点ごとに論点を出させます。

共通例で観点を渡してみる

業務委託契約書(案)に対して、こう指示します。「次の観点ごとに、確認・修正を検討すべき点を、条番号を添えて挙げてください。断定ではなく『確認した方がよい点』として書いてください:当事者/期間・更新/金額・支払/責任・損害賠償/解除/秘密保持・知財」。すると、観点ごとに整理された論点の一覧が返ってきます。「特に問題ありません」という総括だけの回答は採点せず、必ず観点ごとに分解させるのがコツです。出力が浅ければ、観点を1つずつ取り出して深掘りで聞き直します。

なお、こうした「役割・制約・出力形式」を指定して指示の精度を上げる書き方そのものは、AIプロンプトの基本で型として学べます。本講座では、観点を渡して論点を出させるところに集中します。

この章でのつまずき

つまずきは2つです。観点を与えず丸投げして、表面的な指摘で満足してしまうこと。もう1つは、AIが付けた条番号を取り違えたまま受け取ってしまうことです。条番号が本当に合っているかは、次の章で原文に当てて確かめます。

この章の確認(演習)

自社でよく扱う契約を1種類選び、AIに渡す「確認観点リスト(6項目程度)」を作ってみましょう。これが下読みを依頼するときの土台になります。

AIの指摘を原文に当てて検証し、人の判断に渡す

この章のゴール

AIの指摘を原文の条番号に当てて確かめ、鵜呑みにせず検証する手順を実演できる。

AIの指摘は「候補」、原文に当てて初めて使える

ここが一番大事な章です。AIが出した論点は、あくまで“候補”です。必ず原文の該当条文に戻り、その指摘が本当にその条にあるか、条番号は合っているか、指摘の前提(法令や事実)は正しいかを、人が確かめてから採否を決めます。総務省の白書も、ハルシネーションが起こる可能性を念頭に置き、「ユーザーは生成AIの出力した答えが正しいかどうかを確認することが望ましい」としています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。AIの指摘をそのまま信じて先方への依頼文に貼る、というのが一番危ない使い方です。

共通例で検証して仕分ける

第2章で得た論点一覧を、原文の条番号に1件ずつ当てていきます。たとえば「(例)第8条に賠償上限の記載がない」という指摘なら、原文の第8条を開いて確認します。指摘どおり記載が見当たらなければ「要確認」、AIが挙げた条が原文に存在しなければ「これはAIの作り話=除外」、原文どおりで自社に不利なら「要修正」と判定します。こうして各論点を「要確認・要修正・問題なし」に仕分け、裏が取れない指摘や古い前提に立つ指摘は除外または保留します。残った論点を「先方へ確認・修正依頼する点」の一覧にまとめ、最終的な判断・承認は上司や弁護士に回します。

機密情報の扱いに注意

検証以前の注意として、機密情報の入力があります。白書は「個人情報や機密情報がプロンプトとして入力され、そのAIからの出力等を通じて流出してしまうリスク」を指摘しています(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。取引先の契約書をそのまま無料で誰でも使えるAIに貼らない、社内のルールを必ず確認する、という線は守ってください。無い条文を“ある”ことにするリスクや、AIに任せる責任の範囲はAI倫理で一段深く学べます。

この章の確認(演習)

第2章でAIに出させた論点一覧から1つ選び、原文の条番号に当てて「その条が原文に存在するか/対応区分は要確認・要修正・問題なしのどれか」を、1セット書き出してみましょう。

まとめ

AIの契約書チェックは、丸投げでも全部手作業でもありません。観点を与える → 論点を洗い出す → 原文に当てて検証する、そして最終判断は人(法務・弁護士)が行う。この3ステップでした。AIは下読み、最終判断は人。指摘は条文に当てて確かめてから——この線を引けると、限られた時間でも見落としを減らし、自分の言葉で「ここは確認・修正が必要」と整理して渡せるようになります。

明日の一歩として、次に届く契約書(案)で、観点リストを添えてAIに論点を出させ、出た指摘を1件だけ原文の条番号に当てて確かめてみてください。論点出しの指示精度をさらに上げたいときはAIプロンプトの基本へ、機密の契約データを入れてよいかは情報セキュリティへ進みましょう。

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よくある質問

AIが「問題ありません」と言えば、契約書チェックは終わりですか

終わりにしないでください。総括だけの回答は採点せず、観点ごとに論点を分解させ、原文の条番号に当てて人が確かめます。最終判断は人が行います。

AIに契約書をチェックさせるのは弁護士法に触れませんか

当事者間でまだ争いのない一般的な契約書の条項チェックは、直ちに問題となる場面ではないと考えられます。ただし紛争性のある個別事案の法的判断や最終承認は弁護士の領域です(出典:法務省資料)。本講座は下準備に限ります。

取引先の契約書をそのままAIに貼ってよいですか

機密情報や個人情報の入力には流出リスクがあります(出典:総務省「令和6年版 情報通信白書」)。社内ルールに従い、詳しくは情報セキュリティを確認してください。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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