プレゼンデザイン入門|1枚で伝わるスライド設計(メッセージ・根拠・図解) | マナビズ

プレゼンデザイン入門|1枚で伝わるスライド設計(メッセージ・根拠・図解)

プレゼンデザイン入門|1枚で伝わるスライド設計(メッセージ・根拠・図解)

キレイに作ったのに、「で、何が言いたいの?」と聞かれる。グラフはちゃんと貼ったのに、「これの何を見ればいいの?」と差し戻される。情報はぜんぶ揃っているはずなのに、なぜか伝わらない——もしあなたが、提案や社内報告のスライドでこんな経験を繰り返しているなら、原因はデザインの“見た目”ではありません。フォントの選び方でも、配色のセンスでもない。伝わらないスライドに共通しているのは、その1枚で「言いたいこと」が決まっていない、つまり“設計”がされていないことです。

スライドは、飾る前に決める。これがこの講座の背骨です。伝わるスライドは「飾る(デザイン=見た目)」よりも先に、「決める(設計=中身)」で決まります。1枚に対して言いたいこと(メッセージ)を1つに絞り、それを支える根拠だけを残し、数字や情報を“見て分かる図解”にする。この3つが一致したとき、聞き手は1枚を見ただけで主張を受け取れます。逆に、ここが決まっていないまま見た目をいくら整えても、「で、何が言いたいの?」は消えません。

この講座は、その「1枚のスライドの中身を設計する」ところだけに絞ります。見た目を美しく整える技術——余白の取り方、要素の揃え方、強調の付け方は資料デザインの基本が正本です。複数のスライドを束ねた資料全体の流れ・ストーリー構成はプレゼン資料の作り方が、本番で実際に話す順番や間の取り方はプレゼンの話し方が、それぞれ受け持ちます。本講座はそこには踏み込まず、1枚の中身の設計に集中します。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。1つ目は、1枚のスライドで言いたいこと(メッセージ)を主張の1文で書き出し、それを支える根拠だけを残して不要な要素を取り除けること。2つ目は、伝えたい主張に合わせて、数字や情報を「比較・推移・構成」のどの型で見せるかを選び、設計できること。3つ目は、メッセージ・根拠・図解が一致した、聞き手が一目で主張を受け取れるスライドを1枚設計できることです。覚えて帰る型は「メッセージを決める → 根拠を選ぶ → 図解にする → 1枚に統合する」。本講座では、「来期は新規顧客を増やすべき」という1枚の提案スライド——企画・営業担当が来期の方針会議で出す、よくある1枚を、4章を通してずっと使い回します。第1章で主張の1文を決め、第2章で支える根拠を絞り、第3章で数字を図解にし、第4章で1枚に統合する。同じ1枚が章ごとに研ぎ澄まされていく過程を、一緒に追いかけてください。

この講座のポイント

  • 1枚のスライドで言いたいこと(メッセージ)を、主張の1文で書き出せる。
  • メッセージを支える根拠だけを残し、主張に効かない要素を取り除ける。
  • 主張に合わせて、数字や情報を比較・推移・構成のどの型で見せるか選び、設計できる。
  • メッセージ・根拠・ビジュアルが一致した、聞き手が一目で主張を受け取れるスライドを1枚設計できる。

1枚のメッセージを決める——スライド設計の起点

この章のゴール

1枚のスライドで言いたいこと(メッセージ)を、主張の1文で書き出せる。

スライドは「飾る」前に「決める」——設計が見た目に先立つ

多くの人がスライド作りで最初に手をつけるのは、レイアウトやフォント、色といった“見た目”です。けれど、見た目から入ると、肝心の「このスライドで何を言いたいのか」が決まらないまま、きれいな器だけができあがります。器が立派でも中身が定まっていなければ、聞き手には何も届きません。

順番が逆なのです。スライド設計では、飾る前に「決める」。まず、この1枚で相手に受け取ってほしいことは何か、という中身を確定させる。それが決まって初めて、それをどう見せるか(見た目)の出番が来ます。プレゼン資料は、提案とその根拠を明確に示す、骨太でシンプルなストーリーが必要だとされています(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。骨太なストーリーとは、装飾の話ではなく、何を主張し何で支えるかという中身の話です。

メッセージとは「事実の説明」ではなく「主張の言い切り」

ここで言う「メッセージ」とは、事実の説明ではありません。「来期の市場が成長している」は事実の紹介であって、メッセージではありません。メッセージとは、「だから何が言えるか/何をしてほしいか」という主張の言い切りです。「来期は新規顧客の獲得に投資すべき」——ここまで述語を含めて言い切って、はじめてメッセージになります。

共通例で考えましょう。あなたは来期の方針会議で、新規顧客への投資を提案する1枚を作ろうとしています。このとき頭の中にあるのが「来期の市場動向と当社の状況」だとしたら、それはまだテーマであって、主張ではありません。「市場は伸びている。一方で当社の新規顧客比率は低い。だから来期は新規顧客の獲得に投資すべきだ」——この最後の一言まで言い切ったものが、このスライドのメッセージです。

タイトルは“テーマ名”ではなく“言いたいこと1文”にする

決めたメッセージは、どこに置くか。答えは、スライドのタイトルです。中小機構の資料では、メッセージはシートのタイトル部分に記述し、本文はそのメッセージを裏付ける内容で構成する、と明確に示されています(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。つまり、タイトルこそが主張を言い切る場所なのです。

ところが、多くのスライドのタイトルは「来期の市場動向について」「新規顧客施策の検討」といった“テーマ名”になっています。テーマ名のタイトルは、何の話かは伝えますが、結局何が言いたいのかは伝えません。これを「来期は新規顧客の獲得に投資すべき」という主張の言い切りに書き換える。たったこれだけで、聞き手はタイトルを読んだ瞬間に、このスライドが何を主張しているかを受け取れます。

「1枚に主張を2つ以上盛る」「〜について」というつまずき

つまずきは2つあります。1つは、1枚に主張を2つ以上盛り込んでしまうこと。「新規顧客に投資すべき」と「既存顧客のフォローも強化すべき」を同じ1枚に詰め込むと、どちらも中途半端に伝わります。メッセージは、必ず1シートに1つにする。2つ以上含まれると、受け手が混乱するからです(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。言いたいことが2つあるなら、スライドを2枚に分けます。

もう1つのつまずきは、タイトルを「〜について」で止めてしまうこと。「〜について」は、主張を言い切ることから逃げる便利な逃げ道です。主張は本文のどこかに小さく埋もれ、聞き手は探さないと見つけられません。タイトルの「〜について」を禁止し、述語まで含めた主張の1文に置き換える——これが、設計の第一歩です。なお、「人はスライドを数秒しか見ない」といった視認時間の数値がよく語られますが、本講座では出典で確認できない数字は使いません。確かなのは、1枚に主張が2つ以上あれば受け手は混乱する、という1点です。

この章の確認(演習)

手元にある自分のスライドを1枚選んでください。そのスライドの「言いたいこと」を、述語まで含めた主張の1文で書き直します。ルールは1つ、「〜について」を使わないこと。「来期の売上計画について」ではなく「来期は◯◯に注力して売上を回復させるべき」のように、だから何が言えるか・何をしてほしいかまで言い切ってください。書けた1文が、そのスライドのタイトルになります。

根拠を選ぶ——主張を支える情報だけ残す

この章のゴール

メッセージを支える根拠だけを残し、主張に効かない要素を取り除ける。

設計とは「足す」より「引く」作業

メッセージが決まったら、次は中身です。ここで多くの人がやりがちなのが、「せっかくだから」と情報を足していくこと。調べた数字、念のための補足、関連しそうなグラフ——気づけば1枚が要素で埋め尽くされます。けれど、設計とは「足す」作業ではなく「引く」作業です。

中小機構の資料は、本文はメッセージを裏付ける内容とし、キーワードや図表・写真で構成する、と述べています(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。本文に置いてよいのは、メッセージを裏付けるものだけ。裏付けないものは、本文にいる資格がありません。総務省統計局も、1つのグラフでたくさんの事柄を示そうとするとかえって分かりにくくなる、グラフ1つにつき主題は1つに絞るように、と注意しています(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」グラフ作成の基本)。スライドも同じです。盛り込むほど主張は薄まります。

1枚に載る情報は、メッセージを支えるためだけに存在する

考え方をはっきりさせます。第1章で決めたメッセージが、この1枚の主役です。そして1枚に載るすべての要素は、その主役を支える脇役として存在します。脇役になれない要素——主役と関係のない情報、念のための補足、主張に効かない装飾——は、いてもらう理由がありません。

共通例の1枚を見てみましょう。「来期は新規顧客の獲得に投資すべき」というメッセージの1枚に、既存顧客の満足度調査、組織図、会社の沿革まで貼られているとします。どれも「会社の情報」ではありますが、「新規顧客に投資すべき」という主張を支えてはいません。支えるのは、たとえば「当社の新規顧客比率が低いこと」と「市場が伸びていること」の2点です。この2点だけに絞ると、主張がくっきり立ち上がります。

「この要素はメッセージを支えるか?」を1つずつ問う

具体的な手順はこうです。まず、第1章で書いたメッセージを1枚の一番上(タイトル)に置きます。次に、いま載っている要素を1つずつ取り上げ、「これはメッセージを支えるか、支えないか」と問います。支えるものは残す。支えないものは、その場で削るか、別の置き場所に回します。

回す先は3つあります。1つは別のスライドです。中小機構の資料でも、言い足りないことは別途作成して関連するシートに追加する、とされています(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。2つ目は口頭です。スライドに書かず、話すときに補足すればいい情報は少なくありません。実際、提案の場ではプレゼン資料すべてを説明する必要はなく、相手の状況に合わせてシートを取捨選択するのが基本だとされています(出典:同上)。3つ目は送客、つまり別の資料に委ねることです。複数のスライドにどう振り分け、資料全体としてどう流すかという全体構成の手順は、本講座の範囲を超えます。プレゼン資料の作り方で扱うので、そちらに委ねてかまいません。

「せっかく調べたから」「念のため全部」というつまずき

引く作業を邪魔するのが、2つの気持ちです。1つは「せっかく調べたから載せたい」。調査にかけた手間を見せたくなりますが、調査量の誇示は主張を薄めるだけです。聞き手は、あなたがどれだけ調べたかではなく、結局何を主張しているかを知りたいのです。もう1つは「念のため全部載せておこう」。念のための情報は、相手の判断を助けるどころか、どれを見ればいいか分からなくして判断を遅らせます。

引く勇気を持つための基準は、シンプルです。「この要素はメッセージを支えるか」。支えるならYES、支えないならNO。NOのものは、どれだけ手間をかけた情報でも、この1枚からは外す。それが、伝わる1枚への近道です。

この章の確認(演習)

第1章で書き直したスライドを開いてください。そのスライドに載っているすべての要素(文章・数字・グラフ・図・画像)を1つずつ取り上げ、「これはメッセージを支えるか/支えないか」で仕分けます。支えない要素には、削除マークを付けてください。そのうえで、削除マークを付けた要素それぞれについて、「削る」「別スライドに回す」「口頭で補う」のどれにするかを決めます。残った要素だけが、この1枚の本当の中身です。

数字と情報を図解にする——見て分かる形に設計する

この章のゴール

主張に合わせて、数字や情報を比較・推移・構成のどの型で見せるか選び、設計できる。

数字は「載せる」のではなく「主張が見える形」に変換する

残した根拠の中には、たいてい数字が含まれます。ここでありがちなのが、数字をそのまま表で貼ること。けれど、表に並んだ数字は、見ただけでは主張が浮かび上がってきません。聞き手は数字を1つずつ読み、頭の中で比べ、ようやく「ああ、増えているのか」と気づく——その手間を聞き手に押し付けているのです。

数字は「載せる」のではなく、「主張が見える形」に変換します。総務省統計局は、グラフは結果を視覚的に表す便利な道具であり、自分が伝えたい目的に応じて適切なグラフを使うことで説明力が高まる、と述べています(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」グラフの種類)。同じ数字でも、見せ方を変えれば、聞き手は読まずに「見て」主張を受け取れます。

伝えたい関係で型が決まる——比較・推移・構成

では、どう見せ方を選ぶか。総務省統計局によれば、グラフにはそれぞれ特徴があり、データの種類や分析の目的によって使い分ける必要があります(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」グラフ作成の基本)。つまり、伝えたい関係によって、使う型が決まるのです。代表的な3つを押さえましょう。

第1に、量の大小を比べたいとき——「比較」です。棒グラフを使えば、量の大小を棒の高さで表せます(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」グラフの種類)。第2に、増えているか減っているか、変化の方向を見せたいとき——「推移」です。折れ線グラフを使えば、線の傾きで増減を表せます(出典:同上)。第3に、全体の中で何がどれだけを占めるかを見せたいとき——「構成」です。割合を表すときには、円グラフや帯グラフを使います(出典:同上)。

共通例に当てはめます。「市場が伸びている」を伝えたいなら、これは推移ですから、数字を並べた表ではなく、右肩上がりが一目で分かる折れ線の形に設計し直します。「当社の新規顧客比率が低い」を伝えたいなら、これは全体に占める割合の話=構成ですから、円グラフや帯グラフで「新規がこれだけしかない」を一目で見せます。重要なのは、グラフを作る操作そのものより、「この数字でどの関係を見せたいのか」を決め、それに合う型を選ぶという設計判断のほうです。

なお、複数の時点の割合の変化を見せたいときは、帯グラフを並べると効果的です。帯グラフを並べることで、項目の構成比の変化を捉えられます。このとき注意したいのは、項目の順序を入れ替えないこと。途中で順番を変えると、割合の変化がグラフを見て分からなくなってしまうからです(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」帯グラフ)。「新規顧客比率が3年で増えてきた/減ってきた」を見せたいなら、各年の帯グラフを同じ項目順で並べます。

図解には「何を見ればいいか」の要点を添える

型を選んだら、もう一手間。図解には「何を見ればいいか」が伝わる一言を添えます。グラフを置いただけでは、聞き手は「で、これのどこを見るの?」となりかねません。総務省統計局も、説明文字などの表現も工夫して理解しやすいグラフにするように、と述べています(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」グラフ作成の基本)。

たとえば、市場の伸びを示した折れ線には「市場は3年で右肩上がり」、新規比率の構成図には「新規はわずか◯割」といった、結論を一言で示すラベルを添える。第1章で「メッセージはタイトルに書く」と学びましたが、図解の世界でも同じで、その図で何を受け取ってほしいかを言葉で示すのです。

なお、図そのものの見せ方にも基本ルールがあります。プロセスや時間の流れを示す図は左から右へ、階層構造を示す図は上下を合わせて表します(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。一方で、その図解をさらに「見やすく美しく整える」技術——余白の取り方、要素の揃え方、強調の付け方は、設計の次の段階の話です。本講座では深入りせず、資料デザインの基本に委ねます。本章で固めたいのは、あくまで「どの型で見せるか」という設計判断です。

「グラフを貼れば伝わる」「数字を全部表で」というつまずき

つまずきは2つです。1つは「グラフさえ貼れば伝わる」という思い込み。型が主張と合っていないグラフは、かえって分かりにくくします。グラフは縦横比やデザインで受け手に与える印象が変わるため、誤った印象を与えない適切な見せ方を選ぶ必要があるのです(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」グラフ作成の基本)。比較したいのに円グラフ、構成を見せたいのに折れ線、では主張は伝わりません。もう1つは「数字を全部、表で見せる」こと。表は数字を正確に置けますが、見ただけでは主張が浮かびません。主張を見せたいなら、表ではなく、関係に合った図解を選びます。

この章の確認(演習)

第2章で残した根拠の数字を1つ選んでください。その数字で見せたい関係は「比較(大小)」「推移(変化)」「構成(割合)」のどれかを決めます。決めたら、それに対応する型——比較なら棒、推移なら折れ線、構成なら円・帯——のどれで見せるかを選びます。最後に、その図解に添える要点ラベル(聞き手に何を見てほしいかを示す一言)を、結論の形で1文書いてください。

1枚に統合する——メッセージ・根拠・図解を一致させる

この章のゴール

メッセージ・根拠・ビジュアルが一致した、聞き手が一目で主張を受け取れるスライドを1枚設計できる。

設計の完成=3つが矛盾なく揃うこと

ここまでで、第1章でメッセージを決め、第2章で支える根拠を絞り、第3章で数字を図解にしました。最後は、この3つを1枚に統合します。設計の完成とは、3つが矛盾なく揃うこと。すなわち、①メッセージ(主張の1文)が一番上にある、②残した根拠がそのメッセージを支えている、③図解がそのメッセージを一目で見せている——この3つがズレていなければ、聞き手は1枚を見るだけで主張を受け取れます。

中小機構の資料は、メッセージをタイトルに置き、本文はそのメッセージを裏付ける内容で構成する、と述べています(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。さらに、機能→効果→顧客のメリット、というように因果関係を明確にすることが求められています(出典:同上)。タイトル(メッセージ)と本文(根拠・図解)が、因果でまっすぐつながっていること。これが「一致した1枚」の正体です。

メッセージを最上部に置き、根拠を支える順に並べる

統合の手順は4ステップです。第1に、メッセージの1文を最上部(タイトル)に置く。「来期は新規顧客の獲得に投資すべき」を、1枚の一番上に主張として掲げます。第2に、残した根拠を、メッセージを支える順に並べる。共通例なら「市場は伸びている(だからチャンスがある)」「当社の新規顧客比率は低い(だから取りこぼしている)」の2点を、主張へとつながる順序で配置します。

第3に、各根拠を、第3章で選んだ図解の型で見せる。「市場は伸びている」は推移の折れ線に、「新規比率が低い」は構成の図に。そしてそれぞれに「市場は3年で右肩上がり」「新規はわずか◯割」といった要点ラベルを添えます。第4に、最後の仕上げとして、「この1枚を見て主張が伝わるか」を自分でチェックします。タイトルの主張、並んだ根拠、図解が示すこと——この3つが同じ方向を向いているかを確かめるのです。

「この1枚を見て主張が伝わるか」を自分でチェックする

統合できたら、共通例のBeforeとAfterを並べて確かめてみましょう。Beforeは、タイトルが「来期の市場動向について」というテーマ名で、既存顧客満足度から沿革まで要素が詰め込まれ、数字は表で羅列されている1枚。Afterは、タイトルが「来期は新規顧客の獲得に投資すべき」という主張の言い切りで、根拠は市場の伸びと新規比率の低さの2点に絞られ、それぞれが推移の図と構成の図に要点ラベル付きで見せられている1枚。同じ題材でも、伝わり方はまるで違います。

チェックの観点はシンプルです。タイトルを読むだけで主張が分かるか。並んでいる要素は、すべてその主張を支えているか。図解は、その主張を一目で見せているか。3つともYESなら、その1枚は設計が完成しています。

整える作業に入って設計を見失わない

最後に、つまずきを2つ。1つは「図解はキレイだが、メッセージと別のことを言っている」状態。見た目の作り込みに夢中になると、図解が主張からずれていても気づけません。だからこそ、最後に3つの一致を必ず確認します。もう1つは「整える作業に入って、設計を見失う」こと。色やフォントを調整し始めると、つい中身の検討がおろそかになります。

順番を守りましょう。中身(設計)が固まってから、見た目(装飾)に入る。中小機構の資料でも、体裁やレイアウト——様式・配置・色調・フォントなどは「Tone & Manner」と呼ばれ、中身とは別の整える工程として位置づけられています(出典:中小企業基盤整備機構「伝わるプレゼン資料作成のポイント」)。設計が固まった1枚を、余白・揃え・色で美しく仕上げる技術は資料デザインの基本が正本です。本講座で1枚の設計を固めたら、仕上げはそちらへ進んでください。

この章の確認(演習)

第1章で決めたメッセージ、第2章で残した根拠、第3章で選んだ図解の型を、1枚のスライドに統合してください。①メッセージを最上部のタイトルに、②根拠を支える順に並べ、③各根拠を選んだ図解の型と要点ラベルで見せます。組み上がったら、「この1枚を見て主張が伝わるか」を自分でチェックします。タイトル・根拠・図解の3つが同じ主張を向いているかを確かめ、ズレている箇所があれば、ズレている要素のほうを直してください。

まとめ

伝わるスライドは、「飾る(デザイン=見た目)」前に「決める(設計=中身)」で決まります。1枚=1メッセージを決め、それを支える根拠だけを残し、数字を見て分かる図解にする。この設計が一致したとき、聞き手は1枚で主張を受け取ります。覚えて帰る型は「メッセージを決める → 根拠を選ぶ → 図解にする → 1枚に統合する」。記憶に残るひと言は、これです——スライドは、飾る前に決める。

明日の最初の一歩は、たった1つで構いません。次に作るスライド1枚で、まずタイトルを「〜について」ではなく、述語まで含めた主張の1文に書き直してみてください。それだけで、その1枚は「設計された1枚」へと一歩進みます。そこから、根拠を絞り、図解を選び、統合する——という型を順に回していけば、「で、何が言いたいの?」と聞かれる回数は確実に減っていきます。

設計が固まったら、次のステップへ。1枚を余白・揃え・色で美しく整えるなら資料デザインの基本、複数のスライドを束ねた資料全体の流れを作るならプレゼン資料の作り方、本番で実際に話すならプレゼンの話し方へ進んでください。

本講座の特典として、メッセージ・根拠・図解の一致を1枚ごとに確認できる「スライド設計チェックシート」をご用意しています。チェックシートの入手案内と、伝わる資料づくりに役立つ実務情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

スライドのデザインと設計は何が違うのですか

設計は「何を載せるか・どう見せるか」という中身、デザインは「載せたものをどう美しく整えるか」という見た目です。本講座は設計を扱い、伝わらない原因の多くはこの設計にあります。

1枚のスライドに主張は1つだけにすべきですか

はい。メッセージは1シートに1つが基本です。2つ以上含めると受け手が混乱するため、言いたいことが複数あるならスライドを分けます(出典:中小企業基盤整備機構)。

グラフはどう選べばよいですか

伝えたい関係で決まります。量の大小の比較は棒グラフ、増減の推移は折れ線グラフ、割合の構成は円・帯グラフが目安です(出典:総務省統計局「なるほど統計学園」)。

見た目を整えるのはいつやればよいですか

メッセージ・根拠・図解という中身の設計が固まってからです。先に色やフォントを整えると設計を見失います。整える技術は資料デザインの講座に委ねます。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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