「読んだのに、身についた気がしない」。話題のビジネス書を買ったものの、最初の数章で止まったまま積んでいる。最後まで読み切っても、1週間後には内容をほとんど思い出せない。「勉強になった」とは思うのに、自分の仕事は何も変わっていない——心当たりはないでしょうか。
実は、本を読む人そのものが減っています。文化庁の令和5年度「国語に関する世論調査」では、1か月に本を「読まない」と答えた人が6割を超え(62.6%)、読書量が以前より「減っている」と感じる人は約7割(69.1%)にのぼりました(電子書籍を含み、雑誌・漫画は除く。出典:文化庁 令和5年度「国語に関する世論調査」)。だからこそ、読んだことを仕事にきちんと活かせる人は、それだけで一歩前に出られます。
ここで大事なのは、仕事に活きるかどうかは「読み方」よりも「読む前」で決まる、ということです。本講座がお伝えしたいのは1つだけ。仕事に活かす読書とは、読み終えることではなく、読んだ後に行動が1つ変わることです。 覚えて帰る型は「目的を決める → 目的に沿って必要な箇所を読む → 1つの行動に変える」。この3ステップを、「後輩への指示がうまく伝わらない」という1つの仕事の課題を例に、最後まで追いかけていきます。
この講座を終えると、次の3つができるようになります。自分の仕事の課題から「読書の目的」を1文で設定して本を選べること、目的に沿って必要な箇所を中心に読めること、そして読んだ内容を「明日からやる1つの行動」に変換して書き出せることです。
なお、本講座は「書籍を仕事の成果に変える読み方」だけに絞ります。依頼メールや資料といった業務文書を1回で正しく受け取る精度はビジネス読解力入門が、学び全般の進め方や継続は学習法入門が、それぞれの正本です。本講座はそこには踏み込みません。
この講座のポイント
- 自分の仕事の課題から「読書の目的」を1文で設定でき、それに合う本を選べる。
- 目的に沿って読む範囲を絞り、必要な箇所を中心に読む読み方を実行できる。
- 読んだ内容を「明日からやる1つの行動」に変換して書き出せる。
仕事に活かす読書は「目的」から始まる
この章のゴール
自分の仕事の課題から「読書の目的」を1文で設定でき、それに合う本を選べる。
ビジネス読書のゴールは「読み終えること」ではなく「仕事が変わること」
ビジネス書を最後まで読むこと自体が目的になっていないでしょうか。仕事に活かす読書のゴールは、ページを読み切ることではなく、読んだ後に仕事のやり方が変わることです。だから、何を読むかと同じくらい「何のために読むか」が効きます。
公的な場でも、目的を持って調べる読書の意義は高まっていると指摘されています。文部科学省の資料では、変化の激しい現代社会で自立して生きるには「必要な情報を収集し、取捨選択する能力」を誰もが身につける必要があり、「読み・調べることの意義は、増すことはあっても決して減ることはない」と述べられています(出典:文部科学省「これからの学校図書館の活用の在り方等について」)。仕事の文脈に引きつければ、目的を持って必要な情報を選び取る読書ほど、成果につながりやすいということです。
読む前に「この仕事の何を解決したいか」を1文で決める
そこで、本を開く前に1つだけ決めます。「今の自分の仕事の、何を解決したいか」です。手順はこうです。まず、今困っている仕事の課題を1つ書き出します。次に、それを「〜を知りたい/〜できるようになりたい」という1文に直します。これが「読書の目的」です。
共通例で考えましょう。課題は「後輩への指示がうまく伝わらない」。これを「後輩に過不足なく指示を伝える方法を知りたい」という1文にします。目的が1文になると、選ぶべき本も、読むべき箇所も、ぐっと絞れます。
目的に答えてくれる本を、目次とまえがきで見分ける
目的が決まったら、その目的に答えてくれそうな本を選びます。表紙の評判や話題性ではなく、目次とまえがきを見て、自分の目的(後輩への指示の伝え方)に触れている本かどうかを確かめます。まえがきには「この本で何が解決できるか」が書かれていることが多く、目次を見れば、目的に当たる章があるかどうかが分かります。
つまずきやすいのは、「話題だから」「みんな読んでいるから」で選んでしまうことです。目的を決めずに本棚の前に立つと、何を選べばいいか分からず迷い、結局いちばん目立つ1冊を手に取って、自分の課題とずれたまま読み始めてしまいます。目的が先、本選びは後です。
この章の確認(演習)
いま自分が抱えている仕事の課題を1つ挙げ、それを「〜を知りたい/〜できるようになりたい」という「読書の目的」の1文に書き出してください。書けたら、その目的に答えてくれそうな本を、目次とまえがきを手がかりに1冊選んでみましょう。
全部読まなくていい
この章のゴール
目的に沿って読む範囲を絞り、必要な箇所を中心に読む読み方を実行できる。
ビジネス書は頭から1ページずつ全部読む必要はない
小説は最初から順に読みますが、ビジネス書は違います。多くの場合、自分の目的に当たる箇所を中心に読めば足ります。第1章で「必要な情報を取捨選択する力」の意義に触れましたが、それは読み方にもそのまま当てはまります。全部を均等に読むのではなく、目的に必要な箇所を選び取る——これがビジネス書の読み方の基本です。
「最後まで読まないと損だ」と感じて、目的と関係のない章まで力を入れて読み、途中で疲れて挫折する。これがいちばんよくあるつまずきです。全ページに同じ力を注ぐと、肝心の要点がかえって埋もれてしまいます。
まえがきと目次で「目的に当たる章」へ当たりをつける
具体的な手順はこうです。まず、まえがきと目次に目を通して、本の全体像と「自分の目的に当たる章」を見つけます。共通例なら、「後輩への指示」を扱っていそうな章を目次から探し、そこへ直行します。次に、その章を中心に読みます。事例集や付録など、今回の目的に関係が薄い部分は後回しで構いません。読みながら、「これは使えそうだ」と思った箇所には印をつけておきます。
そして、目的が満たせたと感じたら、無理に最後まで読み切ろうとしないことです。「後輩への指示の伝え方が分かった」なら、その本での今回の目的は達成です。残りは、別の目的ができたときに、また必要な箇所だけ読めばいいのです。
なお、印をつけた箇所を読書メモとして残す具体的なやり方はノート術入門が、読んだ内容を短くまとめ直すコツは要約スキル入門が詳しく扱います。本講座では「目的に沿って必要な箇所を読む」までを押さえます。
この章の確認(演習)
第1章で選んだ本(または手元にある1冊)の目次とまえがきを見て、自分の目的に当たる章を1つ特定してください。そのうえで、今回の目的には関係が薄く「後回しでよい」と判断した部分も、あわせて挙げてみましょう。
読んで終わりにしない
この章のゴール
読んだ内容を「明日からやる1つの行動」に変換して書き出せる。
読書が仕事に活きるかは「読んだ後に行動が1つ変わるか」で決まる
ここが本講座の山場です。どれだけ丁寧に読んでも、読んだ後に何も変わらなければ、仕事には活きません。逆に、行動が1つ変われば、その読書は確かに仕事を動かしたことになります。本講座の考え方は、たくさんの学びを抱え込むより、「明日からやる1アクション」を1つに絞って実行するほうが、結局は身につく、というものです。
学びを10個も書き出して、結局1つも実行しない。「いい話だった」で読書を終える。これがもっとも多い、もったいないつまずきです。1冊から1つで十分です。
「いつ・どの場面で・何をする」の形に書き換える
手順は3つです。まず、読んで「使えそう」と思ったことを1つだけ選びます。次に、それを「明日(次回)、〜の場面で、〜する」という具体的な行動の1文に書き換えます。最後に、実際にその場面で試し、結果を一言メモします。
共通例で言えば、「後輩への指示」の本から学んだことを、「次に仕事を頼むときは、“いつまでに・何を”を最初に伝える」という1文にします。「指示を分かりやすくする」では曖昧で動けません。「いつ・どの場面で・何をする」まで具体的に書くから、翌日の仕事でそのまま試せるのです。
読書をその場限りで終わらせず、こうした行動化を学びの習慣として続けていく進め方は学習法入門が正本です。本講座は「1冊を1つの行動に変える」ところまでをお伝えします。
この章の確認(演習)
手元の本(または最近読んだ本)から、仕事で「使えそう」と思ったことを1つ選び、「明日(次回)、〜の場面で、〜する」という形の1文に書き出してください。書いた行動を、実際にその場面で試す日を、いますぐ1つ決めましょう。
まとめ
仕事に活かす読書とは、読み終えることではなく、読んだ後に行動が1つ変わることです。覚えて帰る型は「目的を決める → 目的に沿って必要な箇所を読む → 1つの行動に変える」。読む前に「この仕事の何を解決したいか」を1文で決め、目的に当たる箇所を中心に読み、「明日からやる1つの行動」を「いつ・どの場面で・何をする」の形で書き出す——この流れが、読書を仕事の成果に変える最短ルートです。
明日の一歩として、いま抱えている仕事の課題に合う本を1冊選び、目的に当たる章を読んで、「明日やる1アクション」を1文書き出してみてください。読んだ内容をメモとして残したくなったらノート術入門へ、読書を学びの習慣に育てたくなったら学習法入門へ進むのが、次のステップです。
本講座の特典として、「読書の目的 → 読む箇所 → 明日やる1アクション」を順に書き込むだけで、読書を仕事の行動に変えられる「ビジネス読書ワークシート」をご用意しています。無料会員登録でダウンロードいただけます。
よくある質問
ビジネス書は最後まで読まないといけませんか
いいえ。目的に当たる箇所を中心に読み、目的が満たせたら無理に読み切らなくて構いません。全部を均等に読むより、必要な箇所を選んで読むほうが仕事に活きます。
どんな本を選べばいいか分かりません
まず「今の仕事の何を解決したいか」を1文で決めます。その目的に答えてくれそうな本を、目次とまえがきを見て選びます。話題性ではなく目的との一致で選ぶのがコツです。
読んでもすぐ忘れてしまいます
読んで終わりにせず、「明日からやる1つの行動」に変えるのが本講座の考え方です。学びを1つに絞り、「いつ・どの場面で・何をする」の形で書き出して、実際に試してみてください。
読書メモの取り方も知りたいです
メモや記録の具体的な取り方はノート術入門が詳しく扱います。本講座は「目的を決めて読み、1つの行動に変える」までに絞っているため、メモ技術はそちらへ進んでください。