「粗利(売上総利益)」の説明として正しいものはどれか。
ポイント
「売上 − 売上原価 = 粗利」は、儲けを読む第一歩
覚えるべき核心は、たったひとつの式です。「売上高 − 売上原価 = 売上総利益(粗利)」。会社の利益は一度に出てくるのではなく、売上を起点に性質の違う費用を一段ずつ引いていって、段階ごとに姿を変えます。その第一段目が粗利です。粗利は「売ったものの元手(売上原価)」だけを引いた、いわば「商品そのものでいくら上乗せできたか」を表す数字であり、まだ人件費や家賃などの販管費も税金も引いていません。だから粗利は「最終的な儲け」ではなく「儲けの出発点」です。この一点を押さえると、選択肢の見分けも簡単になります。「すべての経費と税金を引いた最終利益」(A)は計算の最後の数字で粗利とは別もの、「売上そのもの」(C)は引き算をする前の金額、「利益に税金を足したもの」(D)は足し算になっていて計算の向きが逆。粗利は「売上から、まず売上原価を引く」――この引き算の最初の一歩だ、と覚えておけば迷いません。あわせて、「原価(売ったものの元手)」と「費用・コスト(商売を回すためのお金)」は分類が違うことも意識しておきましょう。たとえば小売店の人件費は原価ではなく販管費に入ります。この区別ができると、粗利の次の段階である営業利益の話にもスムーズに進めます。
ワンポイントアドバイス
明日、身近な数字を「売上・原価・粗利」に分けて見てみよう
明日からできる一歩として、まずは身の回りの商売を「売上・売上原価・粗利」の3つのレンズで眺めてみることをおすすめします。たとえば自分の関わる商品やサービスについて、「これはいくらで売っているのか(売上)」「その元手はだいたい何にいくらかかっているのか(売上原価)」「差し引きでいくら上乗せできているのか(粗利)」と、ざっくりでよいので頭の中で分けてみてください。最初は正確な金額が分からなくても構いません。「受け取ったお金は、まるごと儲けではない」という感覚を持つだけで、数字の見え方が変わってきます。次に、自社や取引先の決算資料・損益計算書に触れる機会があれば、一番上の「売上高」と、その下の「売上原価」「売上総利益(粗利)」の3行を探してみましょう。この3行の関係(売上 − 原価 = 粗利)が読めれば、その下に続く営業利益や最終利益も「ここからさらに費用を引いていくんだな」と筋道立てて読めるようになります。会議で「粗利」「原価率」といった言葉が出たときも、「それは儲けの最初の段階の話だな」と置き場所が分かるはずです。さらに一歩進めたい人は、自分の仕事の中で「原価を下げる工夫(元手を抑える)」と「販管費を抑える工夫(商売を回す費用を抑える)」は別の話だと意識してみてください。どちらも利益には効きますが、効く場所が違います。粗利という出発点を押さえておけば、日々の改善が「会社のどの利益に効くのか」を自分の言葉で説明できるようになります。
解説詳細
粗利(売上総利益)とは「売上から売上原価を引いたもの」
正解はBです。粗利(売上総利益)とは、その期間の売上高から「売上原価」を差し引いて残った金額のことを指します。式で書くと「売上高 − 売上原価 = 売上総利益(粗利)」となり、これが会社の儲けを測る出発点になります。「売上原価」とは、売ったモノやサービスそのものを用意するためにかかったコスト、たとえば商品の仕入れ代金や、製品をつくるための材料費・製造にかかった費用などです。売上というのはお客様から受け取った金額の総額にすぎず、その中には「仕入れや製造にかかったお金」がまるごと含まれています。だから売上をそのまま儲けと考えてはいけません。受け取った売上から、まず「売ったものの元手」である売上原価を引いて、はじめて「商売そのもので、いくら上乗せできたのか」が見えてきます。この最初の段階の利益が粗利です。粗利は「売上総利益」とも呼ばれ、損益計算書(PL)という会社の成績表の一番上の方に登場します。会社の利益はいくつかの段階に分けて計算されますが、その最初の一段目がこの売上総利益であり、ここを理解しておくと、後に続く営業利益・経常利益・最終利益といった言葉も筋道立てて読めるようになります。
なぜ「最初の段階の利益」なのか — 利益は一段ずつ削られていく
会社の利益は、一度に「はい、これが儲けです」と出てくるわけではありません。売上を起点に、性質の違う費用を順番に引いていき、段階ごとに利益の名前が変わっていきます。一番最初に引くのが、いま見た「売上原価」です。売上から売上原価を引くと、売上総利益(粗利)になります。次に、ここから「販売費及び一般管理費(販管費)」を引きます。販管費とは、商品そのものの元手ではないけれど商売を回すためにかかる費用で、たとえばお店や事務所の家賃、広告宣伝費、そして従業員の給料(人件費)などが含まれます。粗利から販管費を引いたものが「営業利益」、つまり本業でいくら稼げたかを表す利益になります。さらにここから本業以外の収支や、税金などを順番に反映していくと、最終的に会社の手元に残る「当期純利益」にたどり着きます。粗利が「最初の段階の利益」と言われるのは、こうした一段ずつ削られていく計算の、まさに第一段目だからです。だからこそ粗利の大小は重要で、ここが薄いと、後ろの販管費や税金を引いていく過程で利益がすぐに消えてしまいます。逆に粗利がしっかり確保できていれば、その後の費用を支払うだけの体力がある、ということになります。
売上原価には何が入るのか — 「売れた分の元手」を見分ける
売上原価の中身は、商売の形によって変わります。お店が仕入れた商品をそのまま売る小売業なら、売上原価は基本的に「仕入れた商品の代金」です。100個仕入れて80個売れたなら、売れた80個分の仕入れ代金がその期間の売上原価になり、売れ残った20個分は原価には入れず「在庫(棚卸資産)」として翌期に持ち越します。つまり売上原価は「仕入れた金額」ではなく「売れた分の元手」だという点が大切です。一方、自社で製品をつくる製造業なら、売上原価には材料費だけでなく、工場で製品をつくる人の労務費や、工場の設備にかかる費用なども含まれます。ここで注意したいのは、同じ「人の給料」でも、工場で製品をつくる人の給料は売上原価に入るのに対し、本社の事務や営業、販売の人の給料は売上原価ではなく販管費に入る、という分かれ方です。「売ったモノそのものを生み出すのに直接かかったか」が、原価に入るか販管費に入るかの分かれ目になります。この区別がつくと、なぜ小売店の店員さんの給料が「原価」ではなく「販管費」なのかも納得できるはずです。店員さんは商品そのものを生み出しているのではなく、その商品を「売る」という商売を回す仕事をしているからです。
選択肢A・C・Dがなぜ誤りか
選択肢Aの「売上からすべての経費と税金を引いた、最終的な利益」は、粗利ではなく最終段階の利益、いわゆる「当期純利益(最終利益)」に近い説明です。粗利は売上原価という「ひとつ目の費用」だけを引いた最初の段階の利益であって、人件費や家賃などの販管費も、税金もまだ引いていません。すべての費用を引き切ったあとの最後の数字とは別物なので、Aは誤りです。粗利とその先の最終利益を混同しやすいので、ここははっきり区別しておきましょう。選択肢Cの「売上そのもの」は、引き算をする前の金額にすぎません。売上はお客様から受け取った総額であり、そこには原価がまるごと含まれているため、儲け(利益)とは別の概念です。「売上が大きい=儲かっている」とは限らない、という考え方そのものを取り違えているのがCで、これも誤りです。選択肢Dの「利益に税金を足したもの」は、引き算ではなく足し算になってしまっている点で根本的に誤っています。利益は売上から費用を「引いて」求めるものであり、税金を足して大きくするような計算は存在しません。粗利は売上から売上原価を「引く」ものであって、Dのように何かを足して計算するものではないので、これも誤りです。
たとえで理解する — 受け取ったお金は、まるごと儲けではない
イメージしやすいように、たとえの数字で考えてみましょう(実際の割合はお店や商品によって変わります)。あるお店が商品を100円で売ったとします。このとき、その商品を仕入れるのに40円かかっていたとすると、これが「売上原価」にあたります。売上100円から売上原価40円を引いた60円が、このお店の粗利(売上総利益)です。ここで大事なのは、この60円がそのまま「お店に残るお金」ではない、ということです。粗利の60円の中から、これからお店の家賃や、働く人の給料、宣伝にかかる費用などを支払っていきます。これらは商品の元手(原価)ではなく、商売を回すための費用(販管費)です。たとえば働く人の給料は、小売店では商品の原価ではなく販管費として扱われます。原価と費用(コスト)は似ているようで分類が違うので、ここは混同しないようにしましょう。粗利は「商品そのもので、いくら上乗せできたか」を示す数字であり、そこからさらに商売を回すための費用を払って、ようやく本当に手元に残るお金が決まっていく、という順番になります。
粗利率と原価率 — 割合で見ると比べやすくなる
粗利を語るとき、よく一緒に出てくるのが「粗利率(売上総利益率)」という言葉です。これは「粗利 ÷ 売上 × 100」で計算する、売上に対して粗利が何パーセントを占めるかという割合です。たとえば売上100円・粗利60円なら粗利率は60パーセントになります。なぜ金額だけでなく割合でも見るのかというと、規模の違う商売どうしを並べて比べたり、去年と今年で「上乗せの効率」が良くなったか悪くなったかを確かめたりするのに、割合のほうが分かりやすいからです。同じ粗利率なら、売上が大きいほど粗利の金額も大きくなります。逆に、売上が伸びていても粗利率が下がっていれば、「たくさん売れているのに、一個あたりの上乗せは薄くなっている」というサインかもしれません。粗利率と表裏の関係にあるのが「原価率」で、これは「売上原価 ÷ 売上 × 100」、つまり売上のうち元手が占める割合です。粗利率と原価率を足すとちょうど100パーセントになります。先ほどの例なら、粗利率60パーセントに対して原価率は40パーセントです。原価率を下げられれば(同じ売上でより安く仕入れられれば)粗利率は上がり、逆に仕入れ値が上がって原価率が上がれば粗利率は下がります。日々のニュースで「原材料の値上がりで利益が圧迫されている」と言われるのは、まさにこの原価率が上がって粗利が薄くなる現象を指しています。
よくある誤解 — 「粗利=最終的な儲け」ではない
実務でつまずきやすいのが、「粗利が出ているのだから黒字だ」と思い込んでしまうことです。粗利はあくまで最初の段階の利益で、ここから販管費を引き、さらに税金などを反映してはじめて最終的な利益が決まります。粗利がプラスでも、家賃や人件費といった費用がそれを上回れば、営業利益や最終利益はマイナス(赤字)になることは十分にありえます。だからこそ「粗利=最終的な儲け」と早合点せず、「粗利は儲けの出発点で、ここから費用を引いていく」と段階で捉える習慣が大切です。もうひとつの誤解は、粗利率(売上に対する粗利の割合)を一律に高ければ良い、低ければ悪いと決めつけることです。実際には、薄い粗利でも回転数(たくさん売ること)でカバーする商売もあれば、高い粗利でじっくり売る商売もあり、業種やビジネスモデルによって適正な水準は異なります。粗利の絶対額だけでなく、その水準が自社の商売の型に合っているかという視点を持つと、数字の意味がぐっと立体的に見えてきます。