ある仕事で売上100万円、売上原価60万円、その他の経費(販管費)30万円だった。営業利益はいくらか。
ポイント
営業利益は「売上 − 売上原価 − 販管費」という1本の式で覚えると速く、確実です。ただし暗記するだけでなく、その中身が2段階の引き算でできていることを理解しておきましょう。第1段階は「売上 − 売上原価 = 売上総利益(粗利)」で、商品やサービスそのものでどれだけ稼げたかを表します。第2段階は「売上総利益 − 販管費 = 営業利益」で、会社を動かす経費まで払ってなお本業で残ったかを表します。今回の設問では、100 − 60 = 40(粗利)、40 − 30 = 10(営業利益)となり、答えは10万円です。覚えておくべき核心は3つです。1つ、売上は利益ではない(費用を引く前の総額)。2つ、粗利と営業利益は別物で、粗利から販管費を引いたものが営業利益。3つ、人件費や家賃など「売るための・会社を回すための経費」は販管費に入り、ここで利益が削られる。この3点を押さえれば、「100万円の仕事なのに残りは10万円」という結果にも納得でき、数字の小ささに動揺せず実態を正しくとらえられるようになります。さらに、費用がどちらの段階に属するかを見分ける軸も一緒に覚えておきましょう。売った商品やサービスに直接ひもづく費用は売上原価、それを売るための活動や会社全体を支えるためにかかる費用は販管費です。同じ人件費でも、製品を作る現場の人件費は売上原価、本社の管理部門の人件費は販管費というように、費目の名前ではなく「何のためにかかったか」で区分される点を意識すると、引き算の対象を取り違えにくくなります。
ワンポイントアドバイス
明日からは、自分が関わる仕事の金額を見たときに「これは売上なのか、利益なのか」を口に出して確認する癖をつけてみてください。たとえば「今回の案件は100万円」と聞いたら、すぐに「ではここから売上原価と販管費を引いたら、本業の利益はいくら残るのだろう」と一歩踏み込んで考えるのです。最初は正確な金額がわからなくても構いません。「売上 → 売上原価を引いて粗利 → 販管費を引いて営業利益」という引き算の順番を頭の中でなぞるだけで、数字の見え方が変わってきます。さらにおすすめなのが、答えを出したら必ず足し戻して検算することです。営業利益に販管費を足し、さらに売上原価を足して、元の売上に戻れば計算は正しいと確認できます。この一手間を習慣にすると、会議で出てくる数字に振り回されず、「その金額のどこまでが費用で、どこからが手元に残る利益なのか」を落ち着いて見分けられるようになります。自分の人件費や作業時間も会社にとっては販管費という費用であることを思い出せば、日々の仕事の重みも違って感じられるはずです。慣れてきたら、自社や取引先の決算資料を一度開いて、売上高・売上総利益・営業利益という3つの行を上から順に指でたどってみてください。実際の数字でこの2段階の引き算をなぞると、教材の例題が一気に現実の話として腑に落ちます。会議で誰かが「売上が伸びた」と言ったときに、心の中で「では営業利益はどう動いたのだろう」と一歩先まで考えられるようになれば、あなたは数字に使われる側ではなく、数字を読み解く側へ確実に近づいています。
解説詳細
営業利益は「2段階の引き算」で求める
この設問の答えは C)10万円です。営業利益は、売上からいきなり1回引き算をして出すものではなく、決まった順番で2段階の引き算をして求めます。まず売上から売上原価を引いて「売上総利益(粗利)」を出し、次にその粗利からその他の経費(販管費)を引いて「営業利益」を出します。順番を踏むと、この問題は次のように計算できます。第1段階は、売上100万円 − 売上原価60万円 = 売上総利益40万円。第2段階は、売上総利益40万円 − 販管費30万円 = 営業利益10万円。したがって正解は10万円です。最後の数字だけを見ると小さく感じるかもしれませんが、これは「100万円の仕事をして、手元の段階利益として10万円が残った」という意味であり、決して計算ミスではありません。中小企業庁の損益計算書の解説でも、利益は売上総利益・営業利益などへ段階を追って計算されることが示されています。
なぜ「2段階」なのかという考え方
そもそも、なぜわざわざ2段階に分けるのでしょうか。それは、売上から差し引く費用に2つの性質の違うものがあるからです。1つ目は「売上原価」で、これは売ったモノやサービスそのものを用意するためにかかった費用です。2つ目は「販管費(販売費及び一般管理費)」で、これは売るための活動や会社全体を回すためにかかった費用、たとえば広告費・事務所の家賃・販売スタッフ以外の人件費などが含まれます。性質が違うので、まず「商品そのものでどれだけ稼げたか」を粗利として見て、そのあとで「会社を動かす経費を払ってもなお本業で残ったか」を営業利益として見る、という二段構えになっているのです。この順番を体にしみこませておくと、本業がどこで利益を生み、どこで利益を削っているのかを切り分けて読めるようになります。
売上原価と販管費を見分ける軸
売上原価と販管費の線引きは、慣れないうちは迷いやすいところです。判断のコツは「その費用が、売った商品やサービスに直接ひもづくかどうか」を考えることです。たとえば飲食店であれば、料理に使った食材の仕入れは売上原価に入ります。一方で、店内に流すBGMの利用料や、求人広告の掲載料、店長の事務作業にかかる時間は、特定の一皿に直接ひもづけにくいため販管費として扱われます。同じ「人件費」でも、工場で製品を組み立てる作業者の賃金は売上原価(製造原価)に含まれ、本社で経理や採用を担当する社員の給与は販管費に含まれます。つまり費目の名前ではなく「何のためにかかった費用か」で区分が決まる、という点が押さえどころです。この区分を理解しておくと、今回の設問のように「原価」と「その他の経費」が別々に提示されたとき、迷わず2段階の引き算へ落とし込めます。
各選択肢がなぜ誤りなのか
ここで、A)100万円は、売上の金額そのものです。売上は「お客様から受け取った総額」であって、そこからまだ1円も費用を引いていない数字なので、利益ではありません。売上と利益を同じものだと考えてしまう、最も典型的な勘違いがこの選択肢です。日常会話で「100万円の仕事をした」と言うとき、私たちはつい売上の大きさを成果のように感じてしまいますが、その100万円の中には、これから支払うべき原価60万円と経費30万円が含まれています。残るのはあくまで10万円です。B)40万円は、第1段階の引き算で止まってしまった数字、つまり売上総利益(粗利)です。粗利は確かに正しい途中の利益ですが、まだ販管費30万円を引いていないため「営業利益」ではありません。設問が問うているのは営業利益なので、粗利で答えを止めてしまうと誤りになります。粗利は「商品そのものの強さ」を示す大切な指標ですが、家賃も広告費も払う前の数字である点に注意が必要です。D)70万円は、売上100万円から販管費30万円だけを引いた数字です。一番大きな費用である売上原価60万円を引き忘れているため、実態よりはるかに大きな利益に見えてしまいます。引き算の対象を1つ飛ばすだけで、利益が7倍に膨らんで見えるという、数字の怖さがよく表れた誤答です。3つの誤答はいずれも「どこかの引き算を飛ばす」「途中で止める」ことから生まれており、段階を最後まで踏めば自然に消えていきます。逆に言えば、正しい順番さえ守れば、この種の問題でつまずくことはなくなります。
検算で自分の答えを守る
ビジネスの数字は、答えを出したあとに逆からたどって確かめる「検算」をする習慣がとても大切です。今回なら、出した営業利益10万円に、引いた費用を足し戻してみます。営業利益10万円 + 販管費30万円 = 売上総利益40万円、さらに 売上総利益40万円 + 売上原価60万円 = 売上100万円。きちんと最初の売上に戻れば、引き算の順番と金額が合っていたと確認できます。もし足し戻して100万円にならなければ、どこかの段階を飛ばしたか、足し引きを取り違えています。この「足し戻して元の売上に帰ってくるか」というチェックは、桁の多い実際の決算書でも同じように使える、シンプルで強力な検算方法です。電卓や表計算ソフトで計算した場合でも、入力ミスや費用の取りこぼしは起こり得ます。最後に足し戻して元の数字へ戻るかを確認するひと手間が、思わぬ計算ミスを防ぐ最後の砦になります。
よくある誤解の整理
最後に、よくある誤解を2つ整理しておきます。1つ目は、「売上が大きいほど儲かっている」という思い込みです。売上はあくまで稼いだ総額にすぎず、費用がかさめば、売上が大きくても利益はわずか、あるいは赤字になります。今回も売上は100万円と立派ですが、費用を2段階引くと営業利益は10万円です。売上の大きさと、手元に残る利益の大きさは、別の話だと切り分けて見る必要があります。2つ目の誤解は、「粗利=最終的な儲け」と考えてしまうことです。売上総利益(粗利)は売上高から売上原価を引いた段階の利益であり、ここから販管費を引いて初めて本業の利益である営業利益が出ます。粗利の40万円で安心してしまうと、家賃や人件費といった会社を動かす費用を払っていない、いわば「払う前の数字」を儲けと勘違いすることになります。なお、営業利益のさらに先には、本業以外の損益や税金を反映した経常利益・当期純利益といった段階の利益も続きます。利益には段階があり、いま自分がどの段階の話をしているのかを常に意識することが、数字を正しく読む第一歩です。今回の設問で問われた営業利益は、その段階のうち「本業でどれだけ稼げたか」を示す、最も実務で使う場面の多い利益だと覚えておきましょう。
数字が変わっても同じ式で解ける
この2段階の引き算は、数字が変わっても同じように使えます。たとえば売上が200万円、売上原価が140万円、販管費が40万円の仕事を考えてみましょう。第1段階で 200万円 − 140万円 = 60万円(粗利)、第2段階で 60万円 − 40万円 = 20万円(営業利益)となります。売上だけを見れば200万円と今回の設問の2倍ですが、原価率が高いため、手元に残る営業利益は20万円にとどまります。逆に、売上が80万円でも、原価が30万円・販管費が20万円なら、80万円 − 30万円 = 50万円(粗利)、50万円 − 20万円 = 30万円(営業利益)となり、売上が小さくても営業利益は大きくなることもあります。このように、営業利益は売上の大きさだけでは決まらず、原価と販管費をどれだけ抑えられたかで大きく変わります。だからこそ、売上の数字に一喜一憂するのではなく、必ず2段階の引き算をして「最後にいくら残るか」まで見届ける習慣が役に立ちます。同じ式と同じ順番を当てはめれば、業種や金額がどう変わっても、本業の利益を自分の手で導き出せるようになります。
慣れてくれば、原価率(売上に対する売上原価の割合)や、販管費が売上に占める割合にも自然と目が向くようになります。今回の設問なら、原価は売上の6割、販管費は3割を占め、残った営業利益は1割です。割合で捉えておくと、別の仕事の数字を見たときにも「この商売は原価が重いのか、それとも経費がかさんでいるのか」を素早く見抜けるようになり、改善すべきポイントの当たりをつけやすくなります。