会社が事業を続けるために最も欠かせないものはどれか。
ポイント
「目的」と「続けるための条件」を分けて覚える
この設問でいちばん大切なのは、会社の「目的」と、事業を「続けるための条件」を分けて考えることです。会社の目的は、お金儲けそのものではなく、顧客の創造、すなわち誰かの困りごとを解決することにあります。一方で、その目的を明日も続けていくために欠かせない条件が、利益を出し続けることです。利益は目的ではなく、事業継続の条件であり、明日もっと良い仕事をするためのコストである、という位置づけを押さえておきましょう。
そのうえで、利益の正体を正確につかんでおくことが重要です。利益とは、売上そのものではなく、売上から費用を引いたあとに残るお金です。だから「売上が大きい=儲かっている」とは限らず、費用がかさめば売上が大きくても赤字になり得ます。社員数・広告量・役職の数といった「規模を大きくすること」は、増やせば費用が増える方向に働くため、それ自体が事業を続ける条件にはなりません。会社が来年も再来年も活動を続けられるかどうかは、ただ一点、費用を引いたあとに利益がきちんと残り、それを継続できるかにかかっている、と覚えておけば、この種の問題で迷うことはなくなります。
ワンポイントアドバイス
自分の仕事を「売上」と「費用」の両面で見てみよう
明日から、自分が関わっている仕事を「この活動はどこで売上につながり、どこで費用がかかっているのか」という両面の目で眺めてみてください。たとえば、自分が使っている時間にも給料という費用がかかっています。その費用に見合うだけの価値を、最終的にお客様に届けられているか、と問い直してみると、日々の作業の意味が立体的に見えてきます。これは難しい会計知識がなくてもできる、いちばん身近な「利益の感覚」の鍛え方です。
会議で何か施策が提案されたときも、「この施策は売上を増やすのか、費用を増やすのか、差し引きで利益は残るのか」と頭の中で一度整理してみるとよいでしょう。人を増やす、広告を増やす、新しいことに投資する。どれも費用を伴いますから、その費用を上回る売上や価値の向上が見込めるかどうかが判断の軸になります。「規模を大きくすること」と「利益を残すこと」を切り分けて考える習慣がつくと、提案の良し悪しを自分の頭で判断できるようになります。まずは目の前の一つの仕事から、「これは会社が事業を続けるための利益に、どうつながっているのか」を言葉にしてみることから始めてみましょう。
解説詳細
会社の目的は「お金儲け」そのものではない、という出発点
会社はなんのためにあるのか、と問われると、多くの人は「お金を儲けるため」と答えたくなります。しかし、経営学者のドラッカーは、企業の目的として有効な定義はただ一つしかなく、それは「顧客の創造」である、と述べました。会社の存在理由は、誰かの困りごとを解決し、その人を自分のお客様としてつくり出すことにある、という考え方です。お金そのものを生み出すことが目的なのではなく、価値を届けた結果としてお金を受け取る、という順番でとらえると、会社という仕組みがぐっと分かりやすくなります。
では、利益はどう位置づけられるのでしょうか。ここが本設問の核心です。ドラッカーは、利益は目的でも動機でもなく、事業を継続・発展させていくための「条件」であり、明日さらに優れた事業を行なうための「コスト」だと整理しました。つまり利益は、会社が顧客の創造という目的を明日も続けるために、どうしても必要になる前提条件なのです。だからこそ、設問が問うているのは「会社の真の目的」ではなく「事業を続けるために最も欠かせないもの」であり、その答えとして、売上から費用を引いた利益を出し続けること(選択肢A)が正解になります。
なぜ「利益を出し続けること」が事業継続に欠かせないのか
会社は、お客様に価値を届けるために、さまざまな費用を使います。商品の材料を仕入れ、働く人に給料を払い、家賃や光熱費を支払い、新しい設備を整えます。これらの費用を、お客様から受け取る売上でまかなえているうちは事業を続けられますが、費用が売上を上回る状態が続けば、やがて手元のお金が尽きて、会社は活動を止めざるを得なくなります。利益とは、売上から費用を引いて手元に残るお金のことですから、利益が出ているということは、かかった費用をすべて回収したうえで、次の活動に回せる余力が残っている、という状態を意味します。
しかも重要なのは、利益を「一度だけ」出すことではなく、「出し続けること」です。たまたまある月だけ黒字になっても、その後ずっと赤字が続けば事業は立ち行きません。利益を継続的に生み出せて初めて、会社は来年も再来年も顧客の創造を続けられます。利益を、会社が走り続けるための燃料のようなものだとイメージすると分かりやすいかもしれません(これはあくまで理解を助けるためのたとえで、ドラッカー自身がそう呼んだわけではありません)。燃料が尽きれば車が止まるように、利益が出続けなければ会社は活動を止めてしまう、というイメージです。だからこそ、事業を続けるために最も欠かせないものは、利益を出し続けることなのです。
そもそも「費用」とは何か、利益とどうつながるのか
利益を正しく理解するために、その引き算の相手である「費用」を少していねいに見ておきましょう。費用とは、会社が売上をあげるために使ったお金のことです。材料の仕入れ代、働く人に払う給料、お店や事務所の家賃、電気やガスの料金、商品を運ぶ送料、広告にかける宣伝費など、その中身は多岐にわたります。これらをすべて足し合わせたものが費用であり、売上からこの費用の合計を引いた残りが利益になります。式にすると、売上から費用を引いて利益が出る、というとてもシンプルな関係です。
ここで一つ知っておくと役立つのが、費用には「売上が増えても減ってもあまり変わらない費用」と「売上に応じて増えたり減ったりする費用」がある、という見方です。たとえば家賃は、商品がたくさん売れた月でもあまり売れなかった月でも、毎月ほぼ同じ金額がかかります。一方、材料の仕入れ代は、たくさん作って売ろうとすればそれだけ多くかかります。この二つの性質の違いを意識すると、なぜ「売れているのに利益が残らない」という事態が起きるのかが見えてきます。売上が伸びても、それに合わせて増えていく費用や、もともと毎月決まってかかる費用を上回るだけの売上を確保できなければ、手元に利益は残らないからです。だからこそ、会社は売上を増やす工夫と同時に、費用をむやみにふくらませない工夫の両方を続ける必要があるのです。
「売上が大きいこと」と「利益が出ること」は別物
ここで一つ、多くの人がつまずきやすい誤解を整理しておきます。それは「売上が大きい=儲かっている」という思い込みです。売上は、お客様から受け取った総額であって、そこから費用を差し引く前の数字です。一方の利益は、その売上から、仕入れや給料や家賃といったすべての費用を引いたあとに残る金額です。したがって、いくら売上が大きくても、それ以上に費用がかさんでいれば、利益はゼロになったり、赤字になったりします。
たとえば、たくさん売れているお店でも、大量の在庫を抱えたり、人手を増やしすぎたり、広告にお金をかけすぎたりすれば、売上の大きさとは裏腹に手元にお金が残らない、ということが起こり得ます。事業を続けられるかどうかを決めるのは売上の大きさではなく、費用を引いたあとに利益がきちんと残るか、そしてそれを続けられるか、です。本設問の選択肢Aが「売上から費用を引いた利益」とわざわざ言い切っているのは、この「売上そのものではなく、費用を引いたあとに残る利益こそが事業継続の鍵だ」という点を正確に押さえているからです。
身近な例で「割合」としてつかんでみる
数字のイメージをつかむために、一つたとえを挙げてみましょう。ここで出す数字は、しくみを分かりやすくするためのたとえの割合であって、実際の店や商品によって大きく変わります。食品を扱うお店を思い浮かべてください。お客様から受け取った代金のうち、商品そのものを仕入れたり作ったりするためにかかるお金は、ざっくり全体の三割から四割ほどを占めることがあります。残りの六割から七割は、まるごと手元に残るわけではありません。そこから、働く人の給料、お店の家賃、電気代、広告費といったさまざまな費用が支払われ、それらをすべて引いたあとに、ようやく利益が残ります。
この見方の大事なところは、お客様が払った金額のうち、自由に使えるお金や最終的に残る利益は、思っているよりずっと小さい、という点です。商品の仕入れ代を引いた残りを見て「こんなに残るのか」と感じても、そこからお店を動かすための費用が次々と引かれていきます。なお、お店で働く人の給料は、商品そのものの仕入れ代とは別の費用として扱われるのがふつうで、商品の原価とは区別して考えます。原価と、お店全体を動かすための費用は、ひとくくりに「費用」とは呼べても、中身としては別のものだ、と押さえておくと、後で会計の話に触れたときにつまずきません。こうして割合で眺めると、利益を出し続けることがいかに地道で、いかに大切かが実感としてつかめるはずです。
誤答B「社員の人数を毎年増やすこと」がなぜ違うのか
選択肢Bは、一見すると「会社が成長している証拠」のように思えるため、選びたくなるかもしれません。しかし、社員の人数を毎年増やすことは、事業継続の条件ではありません。むしろ逆で、人を雇えば人件費という費用が増えます。人件費は会計上、会社の費用にあたり、売上から差し引かれる側の数字です。つまり、利益を出せる見込みがないまま人数だけを増やせば、費用がふくらんで利益を圧迫し、かえって事業の継続を危うくします。
人を増やすこと自体が悪いわけではありません。増えた人手によって、より多くの顧客の困りごとを解決でき、その結果として売上と利益が伸びるのであれば、それは健全な成長です。しかし、それはあくまで「利益を出し続けられること」という条件の上に成り立つ話であって、人数を増やすこと自体が目的になってしまうと順番が逆転します。事業を続けるために欠かせないのは人数の多さではなく、費用を回収して利益を残せることなのです。
誤答C「同業他社より多く広告を出すこと」がなぜ違うのか
選択肢Cも、ビジネスの世界では「目立ったほうが勝つ」というイメージがあるため、もっともらしく感じられます。しかし、広告はお客様に価値を知ってもらうための手段の一つにすぎず、それ自体が事業継続の条件ではありません。そして広告には費用がかかります。同業他社より多く広告を出すこと、つまり広告費を競うように増やすことは、費用を増やす行為です。
広告をたくさん出して売上が増えたとしても、その売上の増加分を上回る広告費を使ってしまえば、利益はかえって減ってしまいます。大切なのは、かけた費用に見合うだけのお客様と売上を得て、最終的に利益が残るかどうかです。広告は、利益を出し続けるという目的に貢献する範囲で意味を持つのであって、他社より多く出すこと自体に価値があるわけではありません。費用をかけることと、利益を残すことを取り違えると、この選択肢を選んでしまいます。
誤答D「役職者の数を増やすこと」がなぜ違うのか
選択肢Dは、組織が大きく立派になっていく様子を連想させますが、これも事業継続の条件ではありません。役職者を増やすことは、組織の形を変える話であって、利益を生み出すこととは直接結びつきません。むしろ、役職に応じた給料が増えれば、これも人件費という費用の増加につながります。肩書きの数や組織の階層の多さは、会社が顧客の困りごとをよりよく解決できるようになって初めて意味を持つのであって、それ自体が会社を存続させる力になるわけではありません。
選択肢B・C・Dには共通する落とし穴があります。それは、いずれも「規模を大きくすること」「数を増やすこと」を成果と取り違えている点です。人数、広告量、役職の数。どれも増やせば費用が増える方向に働きますが、費用を回収して利益を残せるかどうかには直結しません。会社が事業を続けられるかを最終的に決めるのは、これらの規模ではなく、売上から費用を引いた利益を出し続けられるかどうかなのです。だからこそ、正解は選択肢Aになります。