SWOT分析の基本
「事業計画を作るから、SWOTやっといて」——上司にそう頼まれたあなたは、強み・弱み・機会・脅威の4つのマスを、一生懸命に埋めて提出しました。すると、表をながめた上司から「で、これ見て、結局どうするの?」と返されて、言葉に詰まってしまった。4つのマスはなんとか埋められたのに、そこから「で、何をやるか」が出てこない——SWOTという言葉を任され始めた頃、こんな経験はありませんか。
SWOT分析を「現状を4つのマスに並べる表」だと思っていると、埋めた瞬間に手が止まります。でも、安心してください。「SWOTやっといて」にきちんと打ち手まで答えられる人と、詰まってしまうあなたの違いは、センスでも経験年数でもありません。4つのマスを埋めて満足するか、それとも“掛け合わせて”取るべき一手まで出すかだけです。
実は、SWOT分析は、4つのマスを埋めて終わりではありません。埋めた4つを掛け合わせて、「取るべき一手」を1つ導くところからが本番です。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- SWOT分析を「強み・弱み・機会・脅威の4つを並べる表」ではなく、内部(強み・弱み)と外部(機会・脅威)を整理し、掛け合わせて“取るべき一手”を導く道具として、自分の言葉で説明できる
- ある身近な事業について、強み・弱み(内部=自分で変えられる)を外の目で、機会・脅威(外部=自分では変えられない世の中の変化)を機会と脅威に分けて、観察できる事実で書き出せる
- 整理した4つを掛け合わせ(クロスSWOT)、強み×機会=積極化/強み×脅威=差別化/弱み×機会=改善/弱み×脅威=防衛・撤退の中から、取るべき戦略を1つに絞って言葉にできる
この講座は最後まで、「駅前の小さな自転車屋さん『さくらサイクル』が、近くにできた大型量販店とネット通販に押される中、どう生き残るかを考える」という、たった1つの場面だけで説明します。この同じお店を、SWOTとは何か→強み・弱み(内部)→機会・脅威(外部)→掛け合わせ、と1マスずつ地図に埋め、最後に4つを掛け合わせて「取るべき一手」を1つに絞ります。各章末には手を動かす演習も置いているので、書きながら読み進めてください。この流れを自分の事業でも一周できるSWOT分析シート(クロスSWOT付き・テンプレート)を無料でダウンロードしておくと、各章の演習をそのまま埋めながら進められます。
第1章:SWOT分析とは何か(内部×外部の4マスと「掛け合わせて一手を導く」地図)
まずは、「SWOTやっといて」に4マスを埋めて出したのに「で、どうするの?」で詰まってしまう、そのモヤモヤの正体をはっきりさせましょう。SWOTという言葉を、「現状を並べる表」から、自分で使える1枚の地図に変える土台の章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、SWOT分析を「4つのマスを埋める作業」ではなく、内部(強み・弱み)×外部(機会・脅威)を整理し、掛け合わせて取るべき一手を導く道具として、自分の言葉で説明できるようになります。
1-1 「SWOT埋めといて」に4マス埋めて詰まる正体
あなたの実力が足りないわけではありません。「で、どうするの?」に詰まるのは、たいてい、SWOTを「現状を4つのマスに並べる表」だと思っていて、そこから取るべき一手を導く“本番”を知らない——これが正体です。
考えてみてください。強み・弱み・機会・脅威を、ただきれいに並べただけの表をながめても、「だから何をやるか」は浮かんできません。4つをバラバラに見ている限り、「分析した気にはなるけれど、結局いつもの“がんばる”しか出てこない」のは当然なのです。
ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。SWOTは“埋める”ではなく“掛ける”。4つを掛け合わせて、取るべき一手を1つ。マスを埋めるのは準備運動で、本番は、埋めた4つを掛け合わせて打ち手を出すところ。この順番さえ持てば、「SWOTやっといて」に、4マスだけでなく「掛け合わせると、この一手です」と答えられるようになります。
1-2 SWOT=内部(強み・弱み)×外部(機会・脅威)の4つ
では、SWOT分析とは何かを、きちんと押さえましょう。SWOTとは、次の4つの言葉の頭文字をとったものです。
| 頭文字 | 日本語 | 中身 |
|---|---|---|
| S:Strength | 強み | 自社の良いところ(他社に勝っているところ) |
| W:Weakness | 弱み | 自社の弱いところ(他社に負けているところ) |
| O:Opportunity | 機会 | 自社にとって追い風になる、世の中の変化 |
| T:Threat | 脅威 | 自社にとって向かい風になる、世の中の変化 |
ここで、いちばん大事な軸を渡します。この4つは、「内部」と「外部」の2つに分かれます。内部=自分たちで変えられること(強み・弱み)/外部=自分では変えられない、世の中の風(機会・脅威)です。
強み(S)と弱み(W)は、自社の商品・技術・人・価格・立地・サービスなど、自分たちの努力で変えられること。一方、機会(O)と脅威(T)は、市場の流行・お客さんの変化・競合の動き・技術の進歩・人口の増減など、自分の都合では変えられない、外から吹いてくる風です。内と外を分ける基準は、ひとことで言えば「自分たちでコントロールできるかどうか」。ここが、SWOTを使ううえで最初に押さえるべき土台になります。
1-3 4マスは「掛け合わせる」ための材料
そして、もうひとつ大事なこと。4つのマスを埋めることは、ゴールではなく準備です。本番は、内部(強み・弱み)と外部(機会・脅威)を掛け合わせて、「取るべき一手」を1つ導くこと。これを、第4章で「クロスSWOT(掛け合わせのSWOT)」として詳しく扱います。今は「4マスは、あとで掛け合わせるための材料を集める作業なんだな」とだけ掴んでください。
ちなみに、SWOTの4マスに入れる材料(自社のことや世の中のこと)は、3C分析(市場・顧客→競合→自社)や、世の中の大きな流れを見るPESTといった道具で集めることもできます。今は名前を覚えなくて大丈夫です。「SWOTは、集めた事実を4つに整理して掛け合わせる場所なんだな」と掴んでおけば十分です。手段(セール・品揃え)は、いちばん最後。そこから話を始めないのがコツです。
ここで、この講座を通して使う共通例に登場してもらいましょう。駅前の小さな自転車屋さん「さくらサイクル」です。さくらサイクルは、長年ご近所の人たちに自転車を売り、修理してきました。ところが最近、近くに大型量販店ができ、ネット通販も広がって、売上が落ち始めました。さて、どう生き残るか。地図を持たない状態だと、「とにかくセールしよう」「品揃えを増やそう」と、いきなり打ち手から動いてしまいます。そうではなく、「①うちの強み・弱みは? ②世の中の機会・脅威は? ③それを掛け合わせると、何をやるべき?」の順で考える——これがSWOT分析です。この章では、まだ中身は埋めません。4つのマスと、「掛け合わせて取るべき一手を1つ出す」というゴールの枠だけを立てておきます。
1-4 この章の確認(演習)
共通例「さくらサイクル」について、いきなり打ち手を考えるのをやめて、次の4つのマスを、中身は空欄のまま用意してみてください。
- 強み(内部):_____
- 弱み(内部):_____
- 機会(外部):_____
- 脅威(外部):_____
そして、その下にこう書きます。「この4つを掛け合わせて、取るべき一手を1つ出すのがゴール」。さらに、「SWOT分析とは、内部と外部を整理して掛け合わせ、取るべき一手を1つ導くことだ」を、自分の言葉で1〜2行に書いてみます。4マスを埋めて終わりにせず“掛ける”ゴールを、自分の手で言葉にできたら、この章はゴールです。空欄は、これから第2章・第3章・第4章で1つずつ埋めていきます。
第2章:内部環境(強み・弱み)を、外の目で書き出す
地図の最初のマス、内部(強み・弱み)を埋めていきます。SWOTは自分たちで変えられること、つまり自社のことから整理していきます。
この章のゴール
この章を読み終えると、ある事業について、強み・弱み(内部=自分で変えられる)を、自己評価でなく外(顧客・競合)の目で書き出せるようになります。
2-1 内部とは「自分たちで変えられること」
まず、内部(強み・弱み)に書くのは、自分たちで変えられることだけです。自社の商品、修理の技術、接客、価格の付け方、お店の場所、サービスの中身——こうした「自分たちの努力次第で変わるもの」が内部です。
ここで早くも、よくあるつまずきを潰しておきます。「ネット通販が安い」「電動アシスト自転車が流行っている」——これらは、内部に書いてはいけません。なぜなら、ネット通販の価格も、世の中の流行も、あなたの会社の努力では変えられない、外の話だからです。それは外部(機会・脅威)のマスに入ります。「これは自分たちで変えられること? それとも外から来る話?」——この問いで、内と外をきっぱり分けるのが、第一歩です。
2-2 強みは「自己評価」では決まらない:外の目で測る
内部の中身を書くとき、いちばん気をつけたいのが、強みを自己評価で書かないことです。
「うちは品質が良い」「うちは親切だ」。こう書きたくなる気持ちは、よく分かります。でも、それだけでは、まだ強みとは言えません。強みになるのは、お客さんがそれを求めていて、かつ競合がやれていないときだけです。たとえば「品質の良さ」も、お客さんが求めているのが「とにかく安いこと」で、競合がもっと安く売っているなら、品質はその場面では強みになりません。
つまり、強み・弱みは、外(お客さんの求め・競合との比較)の目で測るものなのです。整理すると、こうなります。
| | 測り方 |
|---|---|
| 強み | 外(お客さん・競合)から見て、自社が勝っていること |
| 弱み | 外(お客さん・競合)から見て、自社が負けていること |
「うちは○○が良い」と書いたら、必ず「お客さんがそれを求めていて、競合がやれていないか?」と自問する。これだけで、ひとりよがりの自己評価が、外から見た本物の強みに変わります。
2-3 弱みは隠さず、正直に書く
もうひとつ。弱みを書くとき、つい「きれいごと」で埋めたり、書くのをためらったりしがちです。でも、弱みこそ、正直に書くほど後で効きます。なぜなら、第4章の掛け合わせで、「弱みをどう克服するか(弱み×機会)」「弱みでどう最悪を避けるか(弱み×脅威)」という打ち手の材料になるからです。弱みを隠すと、その分、取れる打ち手が減ってしまいます。
では、共通例「さくらサイクル」の強み・弱みを、外の目で書いてみましょう。
| 強み(外から見て勝っている) | 弱み(外から見て負けている) |
|---|---|
| 自転車の修理・整備の技術が高い | 価格はネット通販より高い |
| 対面で乗り方や選び方を相談できる | 品揃えはネット・量販店より少ない |
| 常連客の顔が見え、要望を聞ける | 店主一人で手が回らない |
| 駅前にあり、立ち寄りやすい | 店の存在を知らない人が多い(知名度が低い) |
ここで「うちは親切」で止めず、「対面で相談できる(=ネットや量販店ではやりにくいこと)」というように、お客さん・競合から見て勝っているか負けているかを基準に、観察できる事実の形にしているのがポイントです。この強み・弱みが、第4章で機会・脅威と掛け合わさる材料になります。
2-4 この章の確認(演習)
共通例「さくらサイクル」の強み・弱みを、外(顧客・競合)の目で、それぞれ2〜3個ずつ書き出してみてください。「うちは○○が良い」と書いたら、必ず「お客さんがそれを求めていて、競合がやれていないか?」を自問して、観察できる事実の形に直します。弱みも、きれいごとにせず正直に。自己評価ではなく外の目で測る感覚が、自分の手でつかめたら、ゴールです。
第3章:外部環境(機会・脅威)を、自分では変えられない「外の風」として分ける
地図の2つめのマス、外部(機会・脅威)を埋めます。第2章の内部とは反対に、ここでは「自分では変えられない、外から来る話」を扱います。
この章のゴール
この章を読み終えると、ある事業について、機会・脅威(外部=自分では変えられない世の中の変化)を、機会と脅威に分けて書き出せるようになります。
3-1 外部とは「自分では変えられない外の風」
外部(機会・脅威)に書くのは、自分では変えられない、世の中の風です。市場や流行の動き、お客さんの暮らしの変化、競合の動き、新しい技術、法律や規制、人口の増減——こうした「自分の会社ではどうにもできない、外から吹いてくる変化」が外部です。
ここでも、よくあるつまずきを先に潰します。「セールをする」「SNSを始める」は、機会・脅威に書いてはいけません。これらは、あなたの会社が自分の意思でやる打ち手であって、「外から吹いてくる風」ではないからです。自社のやることは、内部の話。外部に書くのは、あくまで「世の中で起きている変化」だけ、と覚えてください。
3-2 同じ風でも、追い風なら機会・向かい風なら脅威
外の変化を見つけたら、それを2つに仕分けます。自社にとって追い風になるなら機会(O)、向かい風になるなら脅威(T)です。
ここで面白いのは、同じ風が、その会社の強み次第で、機会にも脅威にもなるということです。たとえば「電動アシスト自転車が広まってきた」という同じ変化も、修理や相談に強いお店にとっては「高くて手入れの要る自転車が増える=出番が増える追い風(機会)」になりますが、修理ができないお店にとっては「高機能な自転車を売れない向かい風(脅威)」になります。つまり、機会・脅威は、それ単体で良い悪いが決まるのではなく、自社の強み・弱みと掛け合わせて初めて意味を持つのです。これが、次の第4章への伏線です。
3-3 共通例:さくらサイクルの外の風を分ける
では、共通例「さくらサイクル」の外の風を、機会と脅威に分けてみましょう。
| 機会(自社への追い風) | 脅威(自社への向かい風) |
|---|---|
| 電動アシスト自転車が広まり、買う人が増えている(高価で手入れも要る) | ネット通販の安さ |
| 健康志向で、自転車通勤をする人が増えている | 大型量販店の品揃えと価格 |
| 近所に大きなマンションができ、ファミリー層が増えた | 街全体の人口が少しずつ減っている |
どれも「さくらサイクルが自分では変えられない、外の変化」になっているのが分かりますか。そして、「電動アシスト自転車が広まる」は、修理・相談という強みを持つさくらサイクルにとっては追い風(機会)です。同じ変化でも、強み次第で意味が変わる——この感覚を持っておくと、第4章の掛け合わせが、ぐっとやりやすくなります。
3-4 この章の確認(演習)
共通例「さくらサイクル」の外の風を、機会(追い風)と脅威(向かい風)に、それぞれ2〜3個ずつ書き出してみてください。1つ書くごとに、「これは自社では変えられない外の話か?」「うちにとって追い風か、向かい風か?」の2つを必ず自問します。自社の打ち手(セール・SNS)を混ぜず、外の変化だけを追い風・向かい風に仕分けられたら、ゴールです。
第4章:4つを掛け合わせる(クロスSWOT)=取るべき一手を1つ導く
地図の最後、いよいよSWOT分析の本番です。第1章から集めてきた4つを掛け合わせて、「取るべき一手」を1つに絞ります。
この章のゴール
この章を読み終えると、整理した4つを掛け合わせ(クロスSWOT)、強み×機会=積極化/強み×脅威=差別化/弱み×機会=改善/弱み×脅威=防衛・撤退の中から、取るべき戦略を1つに絞って言葉にできるようになります。
4-1 本番は「掛け合わせ」:4マスを眺めても打ち手は出ない
ここまでで、強み・弱み・機会・脅威の4つのマスが埋まりました。でも、ここで終わってしまうのが、冒頭の「で、どうするの?」で詰まる正体です。4つを別々に眺めているだけでは、打ち手は出てきません。
打ち手を出すには、内部(強み・弱み)と外部(機会・脅威)を“掛け合わせる”必要があります。掛け合わせると、初めて「やるべきこと」が見えてくるのです。この「掛け合わせるSWOT」を、クロスSWOTと呼びます(ハインツ・ワイリックという研究者が1982年に示した「TOWSマトリクス」とも呼ばれます)。名前は覚えなくて大丈夫。大事なのは、「SWOTは埋めて終わりではなく、掛け合わせるのが本番」ということです。
4-2 掛け合わせは4通り:積極化・差別化・改善・防衛
では、何と何を掛けるのか。内部の2つ(強み・弱み)と、外部の2つ(機会・脅威)を組み合わせると、掛け合わせは4通りになります。それぞれに、取るべき打ち手の方向があります。
| 掛け合わせ | 戦略の方向 | 考え方 |
|---|---|---|
| 強み × 機会 | 積極化(最優先) | 強みを、追い風に全力で当てる |
| 強み × 脅威 | 差別化 | 強みで、向かい風に対抗する |
| 弱み × 機会 | 改善 | 弱みを直して、追い風に乗る |
| 弱み × 脅威 | 防衛・撤退 | 最悪を避ける(守る・手を引く) |
4つもあると身構えるかもしれませんが、初級のうちは、まず「強み×機会=積極化」だけに集中して大丈夫です。自社の強みを、世の中の追い風に全力で当てる——これがいちばん攻めの効く、最優先の掛け合わせだからです。残りの3つは、余裕が出てきたら考えれば十分です。
4-3 共通例:さくらサイクルを掛け合わせ、一手を1つ導く
では、共通例「さくらサイクル」で、実際に掛け合わせてみましょう。第2章・第3章で埋めた4マスから、強みと機会を1つずつ取り出して掛けます。
強み「修理・整備の技術と、対面の相談力」 × 機会「電動アシスト自転車が広まっている(高価で手入れも要る)」。この2つを掛け合わせると——「電動アシスト自転車の“買った後も安心”を売りにして、販売とメンテナンスをセットにした専門店になる」。これが、さくらサイクルの取るべき一手(積極化戦略)です。高くて手入れの要る電動アシスト自転車が増えるという追い風に、修理の技術と対面の相談力という強みを、まっすぐ当てています。
残りの3つも、簡単に見ておきましょう。
| 掛け合わせ | さくらサイクルの打ち手 |
|---|---|
| 強み「対面の相談力」 × 脅威「ネットの安さ」=差別化 | ネットでは選べない・直せない。「相談して選べて、買った後も直せる」で対抗する |
| 弱み「知名度が低い」 × 機会「近所にマンション」=改善 | 新しい住民に、試乗会やチラシで店を知ってもらう |
| 弱み「店主一人で手が回らない」 × 脅威「人口減」=防衛 | むやみに手を広げず、得意な修理に絞って守る |
4通りを出したうえで、最優先は「強み×機会=積極化」の“電動アシスト専門店化”、と1つに絞ります。ここで、冒頭の「とにかくセールしよう」を思い出してください。セール(値下げ)は、大型量販店やネット通販という強い相手の土俵(安さ)に、正面からぶつかる打ち手でした。さくらサイクルの強み(修理・相談)にも、機会(電動アシスト普及)にも、まったくひもづいていません。だから、地図を持たずに「とにかくセール」と動くと、空回りしていたのです。掛け合わせの地図があれば、「その一手は、うちの強みと機会にひもづいているか?」と確かめてから動けます。
4-4 この章の確認(演習)
共通例「さくらサイクル」で、「強み×機会=積極化」を必ず1つ作ってみてください。第2章の強みから1つ、第3章の機会から1つを選んで掛け合わせ、取るべき一手を1文で書きます。余裕があれば、強み×脅威=差別化、弱み×機会=改善、弱み×脅威=防衛も、1つずつ。
最後に、書いた一手について「この一手は、強みと機会にちゃんとひもづいているか?」を確かめます。「とにかくがんばる」「とにかくセール」のような、強みにも機会にもひもづかない打ち手になっていないか、チェックしましょう。4マスを“掛けて”打ち手まで出せたら、ゴールです。
まとめ:SWOTは“埋める”ではなく“掛ける”。取るべき一手を1つ
おつかれさまでした。「駅前の自転車屋さくらサイクル」という、たった1つの場面を、SWOTとは何か→強み・弱み(内部)→機会・脅威(外部)→掛け合わせ、と1マスずつ地図に埋め、最後に4つを掛け合わせてきました。第1章で空欄だった4つのマスを、ここで振り返ります。
- SWOT分析とは……強み・弱み・機会・脅威の4つを並べる表ではなく、内部(強み・弱み)と外部(機会・脅威)を整理し、掛け合わせて「取るべき一手」を1つ導く道具。マスを埋めるのは準備、掛け合わせが本番(第1章)。
- 内部(強み・弱み)……自分たちで変えられること。強みは自己評価でなく、外(お客さん・競合)の目で「勝っているか」で測る。弱みは隠さず正直に。さくらサイクルなら、強み=修理技術・対面相談、弱み=価格・品揃え・知名度(第2章)。
- 外部(機会・脅威)……自分では変えられない外の風。自社の打ち手は混ぜず、追い風なら機会、向かい風なら脅威に分ける。同じ風でも強み次第で意味が変わる。さくらサイクルなら、機会=電動アシスト普及・健康志向、脅威=ネットの安さ・量販店・人口減(第3章)。
- 掛け合わせ(クロスSWOT)……強み×機会=積極化(最優先)/強み×脅威=差別化/弱み×機会=改善/弱み×脅威=防衛・撤退。さくらサイクルなら、強み×機会で「電動アシスト専門店化」という一手が出た(第4章)。
この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「『SWOT埋めといて』に、4マスだけでなく、“掛け合わせるとこの一手です”と打ち手まで答えられているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——SWOTは“埋める”ではなく“掛ける”。4つを掛け合わせて、取るべき一手を1つ。これが身につくと、「SWOTやっといて」と言われたとき、表を指さしながら「ここ(強み)とここ(機会)を掛けると、これ(取るべき一手)です」と、筋道立てて答えられるようになります。
明日の最初の一歩:自分の会社・お店・チームの事業を1つ選び、①強み・弱み(外の目で) ②機会・脅威(外の風を、追い風・向かい風に)を書き、③強み×機会を掛けて「取るべき一手」を1つ書いてみてください。きれいにまとめる必要はありません。「SWOT埋めといて」に、4マスだけでなく「掛け合わせると、この一手です」と答えられたら、それが第一歩です。
この流れを、自分の事業で何度も回せるように、強み・弱み・機会・脅威に加えて、クロスSWOT(4つの掛け合わせ)まで1枚で埋められるSWOT分析シート(クロスSWOT付き・テンプレート)を無料でダウンロードできます。マスを埋めて、掛け合わせて、取るべき一手を1つ——という流れを、そのままなぞれるようになっています。さらに深めたくなったら、その先の道も用意されています。SWOTの4マスに入れる事実を集める3C分析、顧客→価値→届け方の全体像をつかむマーケティングの基礎、顧客を絞り込むSTP、届け方を決める4P——いずれも、今日描いた地図をひとつずつ深掘りするものです。まずはこの「整理する→掛け合わせて取るべき一手を1つ導く」を、自分の手で一周できるようにしておきましょう。それが、すべての土台になります。