リモートマネジメント入門|在席監視ではなく仕事の状態を見える化する遠隔チーム運営 | マナビズ

リモートマネジメント入門|在席監視ではなく仕事の状態を見える化する遠隔チーム運営

リモートマネジメント入門|在席監視ではなく仕事の状態を見える化する遠隔チーム運営

在宅勤務が始まってから、チームの様子が見えなくなった。隣に座っていた頃は、一声かければ進捗が分かり、困っていそうな顔を見れば自分から声をかけられました。雑談のついでに相談が出てくることもありました。それが、メンバーが各自の家で働くようになった途端、すべて消えます。チャットで「進捗どう?」と聞けば監視しているようで気が引け、かといって放っておけば、納期の直前まで誰が何で詰まっているかに気づけない。「みんな、今ちゃんと動けているんだろうか」という不安が、管理職を過干渉と放任のあいだで揺らします。

この不安の正体は、メンバーの能力でもやる気でもありません。対面で働いていた頃、同じ場所にいることが「無料で」与えてくれていたものが、遠隔になって手に入らなくなった——それだけのことです。同じ部屋にいれば、相手の様子は見えました。会話は自然に伝わりました。一緒にいるから、なんとなく信頼できました。この3つは、わざわざ仕組みを作らなくても、出社という事実が勝手に提供してくれていたのです。遠隔ではそれが自動では手に入りません。

リモートマネジメントとは、この対面が無料でくれていた「見える・伝わる・信頼できる」を、ツールではなく仕組みで意図的に取り戻すことです。たくさんのツールを導入することでも、在席を監視してサボりを防ぐことでもありません。本講座は、この「遠隔ゆえに何をどう仕組み化するか」だけに絞ります。個別フォローの対話の中身そのものは1on1の基本、オンライン会議の進め方はオンライン会議の基本、安心して発言できる土台のつくり方は心理的安全性入門が、それぞれの正本です。本講座はそこには踏み込みません。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。遠隔チームで起きる課題の原因を「対面前提の何が崩れたか」で説明できること、情報共有と進捗の見える化を同期(会議)と非同期(書き置き)に切り分けて設計できること、そして過干渉にも放任にもならない遠隔チームの運営ルールを1枚に作成できること。覚えて帰る型は「見える・伝わる・信頼できる を取り戻す → 同期/非同期に振り分ける → 成果で見て1枚のルールにまとめる」。本講座では、在宅メンバーを含む5〜8名のチームで、誰が何で詰まっているか見えず納期直前まで遅れに気づけなかった管理職が、運営の仕組みを作り直す、という場面を通して追いかけます。

この講座のポイント

  • 遠隔チームで起きる課題の原因を、対面前提の何が崩れたかで説明できる。
  • 情報共有と進捗の見える化を、同期(会議)と非同期(書き置き)に切り分けて設計できる。
  • 遠隔で部下を信頼しつつ状況を把握する関わり方を、過干渉でも放任でもない形で設計できる。
  • 過干渉にも放任にもならない遠隔チームの運営ルール(成果での評価を含む)を1枚に作成できる。

遠隔で崩れるのは「見える・伝わる・信頼できる」——リモートマネジメントとは何か

この章のゴール

遠隔チームで起きる課題の原因を、対面前提の何が崩れたかで説明できる。

リモートマネジメントとは、対面が無料でくれていた3つを設計で取り戻すこと

まず、リモートマネジメントが「何をする仕事なのか」を定義しておきます。それは、対面で働いていた頃に自然と手に入っていたものを、遠隔でも手に入るように設計し直すことです。具体的には3つあります。相手の様子が見える、会話が自然に伝わる、一緒にいるから信頼できる。この3つは、出社というだけで勝手についてきていました。だから多くの管理職は、自分が「見える・伝わる・信頼できる」をどう確保しているかを意識したことがありません。意識する必要がなかったからです。

遠隔になると、この3つが自動では手に入らなくなります。総務省がまとめた企業の先進事例集も、この点を率直に指摘しています。「会社では同じ空間で見渡して『電話中』『忙しそう』と、状況を把握することができますが、テレワークでは、相手が集中しているか、外出中かなど、状況が分かりにくくなります」(出典:総務省「テレワーク時におけるコミュニケーション・マネジメント面の課題解決等に関する先進事例集」)。つまり、これまで「自然に把握できていた状況」が、遠隔では分からなくなるのです。リモートマネジメントとは、この消えた3つを仕組みで取り戻す仕事だと考えてください。

「見える」が消える——様子が見えないと過干渉か放任に振れる

3つの中で、まず崩れるのが「見える」です。隣にいれば、相手が手を止めて悩んでいるのも、電話中で話しかけられないのも、ひと目で分かりました。遠隔ではそれが分かりません。すると管理職は2つの方向に振れます。不安に駆られて頻繁に「どう?」と確認しに行く過干渉か、聞くのが気まずくて放っておく放任か。どちらも「見えない」から生まれます。

共通例の管理職は、最初、思いついた時にチャットで個別に「進捗どうなってる?」と聞いていました。Aさんには月曜に、Bさんには水曜に、Cさんにはふと思い出した金曜の夜に。情報はメンバーごとにバラバラのチャットに散らばり、チーム全体で「今どこまで進んでいるか」がどこにもまとまっていません。結局、納期の直前になって、あるメンバーが3日前から1か所で詰まっていたと判明します。聞いてはいたのに、全体が見えていなかったのです。

「伝わる」「信頼できる」も消える——相談のハードルと雑談の喪失

崩れるのは「見える」だけではありません。「伝わる」も崩れます。対面なら、ただ声をかければ済んだ相談が、遠隔では「わざわざ連絡をとらなければならない」ものに変わります。J-Net21も、この心理的なハードルを指摘しています。「ただ声をかければよかったオフィスでのコミュニケーションと異なり、テレワーク下では『わざわざ連絡をとらなければならない』というハードルがあります。作業の手間に加えて、相手が何をしているか見えないからこその心理的なハードルも大きいです」(出典:J-Net21「テレワーク下でもコミュニケーションを促進するための工夫を教えてください。」)。結果、メンバーは「これを聞くためだけに連絡するのは気が引ける」と考え、一人で抱え込みます。報連相が自然には起きなくなるのです。

「信頼できる」も自動では続きません。厚生労働省のテレワークガイドラインは、「テレワークでは、周囲に上司や同僚がいない環境で働くことになるため、労働者が上司等とコミュニケーションを取りにくい、上司等が労働者の心身の変調に気づきにくいという状況となる場合が多い」と述べています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。上司から見えないだけでなく、部下の側も声を上げにくく、上司は不調や遅れに気づけません。安心して「詰まっています」と言い出せる土台そのものをどう作るかは心理的安全性入門に譲りますが、まず押さえてほしいのは、遠隔では信頼が放っておいて維持されるものではない、という事実です。

なお、テレワークでどのくらいの人がコミュニケーションに困っているかは、調査でも裏づけられています。総務省の調査では、テレワーク実施の課題・障壁として「社員同士のコミュニケーション」が17.8%、「上司からの確認・指示を得にくい」が10.8%挙げられました(出典:総務省・令和3年版情報通信白書〔2021年〕)。これはコロナ禍の特定時点の数値ですが、遠隔のマネジメントで多くの管理職が同じ壁にぶつかっていることを示しています。

ツールを増やせば解決する/見えない=サボり、というつまずき

ここでのつまずきは2つあります。1つは「ツールを増やせば解決する」という思い込みです。チャットを入れ、Web会議を入れ、タスク管理を入れる。それ自体は有効ですが、ツールを導入しただけでは使われ方が定まらず、かえって情報が増えた分だけ散らばります。大事なのは、後の章で扱う「どの情報をどこに流すか」のルールです。

もう1つは「見えない=サボっているのでは」という疑いから、監視に走ることです。在席の可視化ツールで常にオンライン状態を確認する、頻繁にチャットで居場所を尋ねる。これは「見える」を取り戻したつもりで、実は信頼を削っています。見るべきなのは在席ではなく、仕事の状態です。この転換は第3章で詳しく扱います。

この章の確認(演習)

自分のチームについて、「対面なら自然にできていたのに、遠隔になってやりにくくなったこと」を3つ書き出してください。たとえば「困っている人に気づいて声をかける」「ちょっとした相談を受ける」「全体の進み具合を把握する」などです。そのうえで、それぞれが「見える」「伝わる」「信頼できる」のどれが崩れたことによるものかを分類し、「なぜ遠隔だと管理職が不安になるのか」を自分の言葉で1文にまとめてみましょう。

情報の流れを設計する——同期と非同期を分ける

この章のゴール

情報共有と進捗の見える化を、同期(会議)と非同期(書き置き)に切り分けて設計できる。

「いつでも声をかける」が使えない遠隔では、情報の流れを設計する

第1章で崩れた3つのうち、「伝わる」を取り戻すのがこの章です。対面では「いつでも声をかける」が使えました。遠隔ではそれが使えないので、情報の流れ方を自分で設計する必要があります。設計の軸になるのが、同期と非同期という分け方です。

同期とは、同じ時間にその場に集まって話すこと。Web会議や定例ミーティングがこれにあたります。非同期とは、各自の都合のいいタイミングで読み書きすること。チャットや、決まった置き場への書き込みがこれです。遠隔のマネジメントがうまくいかない管理職の多くは、この2つを区別せず、なんでもチャットで個別に聞くか、なんでも会議に持ち込むかのどちらかに偏っています。情報の性質に応じて、同期と非同期に意図的に振り分けることが、会議を増やさずに「伝わる」を取り戻す鍵です。導入にあたっては、連絡方法や頻度をあらかじめチームで話し合って決めておくことが望ましいとされています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。

報告・共有・記録は非同期に、即断・温度が要るものは同期に寄せる

では、どの情報をどちらに寄せるのか。基準はシンプルです。

進捗の報告、情報の共有、決定事項の記録など「相手がすぐ読まなくても困らないもの」は、非同期に寄せます。チャットや決まった置き場に各自が書き込めば、相手の手を止めずに伝わります。総務省の事例集も、チャットツールは「メンバー同士やチーム内での簡易かつ即応性・リアルタイム性のあるコミュニケーションに向いている」とし、「変更箇所や進捗など、情報共有に活用します」と整理しています(出典:総務省 先進事例集)。

一方、その場で判断が要る相談、文字では誤解されそうな複雑な話、温度や表情が要る議論は、同期に寄せます。J-Net21は、「文字だけではちょっと伝えづらい場合にはWeb会議システムを使うのもよい」とし、さらに「部やチームなどの単位で定例のWebミーティングを設けてみましょう」と勧めています。定例があると、「わざわざ相談の時間をとってもらうことではないけど、定例会があるからそこで聞いてみよう」と行動に移しやすくなり、一人で問題を抱え込むことを避けられるからです(出典:J-Net21「テレワーク下でもコミュニケーションを促進するための工夫を教えてください。」)。第1章で見た「相談のハードル」を下げる装置が、この短い定例なのです。

共通例の管理職は、ここで運用を変えます。これまでの散発的な個別チャットをやめ、(a)進捗は決まった置き場に各自が非同期で書く、(b)その場で判断が要る詰まりや相談は週1回の短い定例で同期して捌く、の2つに切り分けました。すると、Aさんに月曜、Bさんに水曜と聞いて回らなくても、置き場を見れば全員の進捗が一目で分かるようになります。

どこを見れば全員の進捗が分かるかを、1か所に定める

切り分けと並んで重要なのが、情報を1か所に集約することです。バラバラのチャットに散らばった情報は、結局「見えない」のと同じです。J-Net21は、チャットなどのツールについて「複数の人間に手軽に同時に文字情報が送れるので、『伝言ゲーム』のように人づてで正しく情報が伝わらないトラブルを防ぎやすい。履歴が残るので、過去のやり取りや進捗を時系列で確認することも可能だ」と述べています(出典:J-Net21「従業員間コミュニケーション」)。

集約には、もう1つ大事な意味があります。出社しているメンバーと在宅のメンバーの間で「情報格差」を作らないことです。先進事例集は、「テレワーク勤務者と出社者での情報格差等が生じないよう、報告や指示については対面ではなくメール・ビデオ会議で一斉に行うこと原則にする」というルールを紹介しています(出典:総務省 先進事例集)。口頭でこっそり伝わる情報があると、その場にいない在宅メンバーだけが取り残されます。報告も指示も、決まった置き場に一斉に流す。これが情報格差を防ぐ基本です。

進捗そのものを見える化するには、担当者と期限を決めてタスクを並べる方法が有効です。先進事例集の企業も、「担当者・期限を明確に示し、プロジェクトの進捗が見える化され、テレワークでも進捗管理がしっかり行えている」と報告しています(出典:総務省 先進事例集)。ここで管理職が決めるべきは「どこを見れば全員の進捗が分かるか」を1か所に定めることです。なお、本講座は「どの情報を同期/非同期に振り分けるか」の設計に絞ります。その同期の場であるオンライン会議そのものの準備や進行のしかたは、オンライン会議の基本を参照してください。

何でも会議に持ち込む/全部チャットに流す、というつまずき

つまずきは両極に出ます。1つは、何でも会議に持ち込んで会議過多になること。報告や共有まで集めて話そうとすると、定例が長くなり、メンバーの作業時間を奪います。報告・共有は非同期に逃がすのが鉄則です。もう1つは、逆に全部チャットに流して、重要な相談が日々の雑多な投稿に埋もれること。判断が要る話をチャットの流れに任せると、見落とされ、決まらないまま時間が過ぎます。即断・温度が要るものは同期に引き上げる。この振り分けの感覚を、チームで共有しておきましょう。

この章の確認(演習)

自分のチームで今行っている「定例会議」「チャットでのやり取り」「報告」のうち1つを選んでください。それを、同期(会議)に残すべきか、非同期(書き置き)に移すべきかを、理由付きで決めます。たとえば「毎朝の口頭報告は非同期の書き込みに移す。理由は記録が残り、出社・在宅の差がなくなるから」のように。そのうえで、自分のチームにとっての進捗の「見える置き場」を1か所、具体的に指定してみましょう。

見えない不安を信頼に変える——過干渉と放任のあいだ

この章のゴール

遠隔で部下を信頼しつつ状況を把握する関わり方を、過干渉でも放任でもない形で設計できる。

「見えない」は管理職を過干渉と放任に振らせる

第1章で触れたとおり、遠隔の「見えない」は、管理職を2つの極に振らせます。一方の極は過干渉です。不安から、頻繁に確認し、常時オンラインを求め、時間を問わずに「どうなってる?」と連絡してしまう。厚生労働省のガイドラインは、テレワークでは「業務に関する指示や報告が時間帯にかかわらず行われやすくなり、労働者の仕事と生活の時間の区別が曖昧となり、労働者の生活時間帯の確保に支障が生ずる」おそれがあると注意を促しています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。よかれと思った頻繁な確認が、メンバーの生活時間を侵食し、監視されている感覚を生むのです。

もう一方の極は放任です。聞くのが気まずいからと任せきりにして、何も見ない。その結果、すでに見たとおり、上司は部下の変調や遅れに気づけません。過干渉と放任は正反対に見えて、どちらも「見えないから、どう関わっていいか分からない」という同じ不安から生まれています。

「人の在席を見る」から「仕事の状態を見える化する」へ視点を移す

過干渉と放任のあいだを通る道は、関わり方の対象を変えることです。「人が今オンラインか、席にいるか」を見るのをやめ、「仕事が今どういう状態か」を見えるようにする。これが本講座でいちばん覚えて帰ってほしい転換です——見るのは「在席」ではなく「仕事の状態」。

この方向性は、公的資料もはっきり示しています。先進事例集は、ある企業の方針として「テレワークでのマネジメントは監視の強化ではなく、見守られながら、社員一人一人が自律的にマネジメントできることを目指す」を紹介しています(出典:総務省 先進事例集)。監視を強めるのではなく、仕事の状態が自然に見えるようにして、メンバーが自分で進められるようにする。そのために有効なのが、第2章で触れたタスクの見える化です。明確な目標を設定して定期的にフィードバックし、タスクの担当者・期限・進捗を可視化すれば、上司は在席を確認しなくても「課題があれば早めに対処」できます(出典:総務省 先進事例集)。在席を見張る必要が、そもそもなくなるのです。

何を・いつ共有するかを、あらかじめ決めておく

仕事の状態を見えるようにする具体策は、「何を・いつ共有するか」をあらかじめ決めておくことです。共通例の管理職は、在席監視や思いつきのチャット確認をやめ、シンプルなルールに変えました。「着手したとき・詰まったとき・完了したとき」の3つのタイミングで、各自が決まった置き場に一言書く、というルールです。すると、上司はいちいち聞かなくても状況が分かり、詰まりにも早く気づけます。メンバーの側も、決められたタイミングで書くだけなので、監視されている感覚を持ちません。聞かれて答えるのではなく、決めたとおりに共有する。この切り替えが、過干渉でも放任でもない関わりを作ります。

あわせて、上司の指示の出し方も変える必要があります。一挙手一投足を指示していては過干渉に戻ってしまうからです。ガイドラインは、「仕事の進め方として最初に大枠の方針を示す等、部下が自律的に仕事を進めることができるような指示の仕方」を勧めています(出典:厚生労働省 ガイドライン)。細かく管理するのではなく、最初に方針を示し、あとは状態の共有で見守る。これが遠隔での信頼の作り方です。なお、仕事そのものを任せる「権限委譲」の設計は権限委譲入門が、安心して詰まりを言い出せる土台づくりは心理的安全性入門が正本です。本講座は「何を・いつ共有するか」という仕組みの側に絞ります。

監視ツールで在席を可視化する/「任せた」と言って放任する、というつまずき

ここでのつまずきも両極です。1つは、信頼の代わりに監視ツールで在席を可視化してしまうこと。常時オンラインを求めたり、操作ログを見張ったりすると、たとえ進捗が見えても信頼は失われます。見るべきは在席ではなく仕事の状態だ、という原則に立ち返ってください。もう1つは、「任せた」と言ったきり、何も見ずに放任すること。任せることと、状態を共有してもらうことは両立します。任せたうえで「着手・詰まり・完了を共有してもらう」のが、放任とは違う「任せ方」です。

この章の確認(演習)

最近の自分の関わりを振り返り、「これは過干渉だったかも」と思う場面と、「これは放任だったかも」と思う場面を1つずつ挙げてください。そのうえで、それぞれを「仕事の状態を共有するルール」に置き換える形で書き直します。たとえば過干渉なら「1日に何度も進捗を聞いていた」を「着手・詰まり・完了の3点を各自が書き込むルールにする」に、放任なら「任せたきり見ていなかった」を「週次で成果物を置き場に出してもらう」に。在席ではなく仕事の状態を見る形になっているかを確認しましょう。

成果で見て、ルールにまとめる——遠隔チームの運営ルールを作る

この章のゴール

過干渉にも放任にもならない遠隔チームの運営ルール(成果での評価を含む)を1枚に作成できる。

評価の軸を「在席・がんばり」から「成果・アウトプット」へ寄せる

最後に取り戻すのが「信頼できる」の仕上げ、評価です。遠隔では「働いている姿」が見えません。だから「長く席にいた」「夜遅くまでオンラインだった」といった在席やがんばりを評価の軸にすると、見えないものを無理に評価することになり、結局は在席監視に逆戻りします。軸を、見える成果・アウトプットへ寄せる必要があります。

厚生労働省のガイドラインは、この点で明確です。第一に、テレワークしていること自体を評価で不利にしてはいけません。「テレワークを実施せずにオフィスで勤務していることを理由として、オフィスに出勤している労働者を高く評価すること等も、…適切な人事評価とはいえない」とされています(出典:厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」)。第二に、成果で見るには、何を成果とするかを先に示す必要があります。ガイドラインは、「上司は、部下に求める内容や水準等をあらかじめ具体的に示しておくとともに、評価対象期間中には、必要に応じてその達成状況について労使共通の認識を持つための機会を柔軟に設けることが望ましい」と述べています(出典:厚生労働省 ガイドライン)。「成果で見る」と言うなら、その成果が何かを曖昧にしてはいけない、ということです。ただし、人事評価制度そのものの設計は本講座の射程を超えます。ここで管理職がやるのは、チームの運営ルールの中に「何を成果として見るか」を1行で書き込むところまでです。

定例・見える化・非同期・評価の4要素を、1枚にまとめる

ここまでの章で決めてきたことを、1枚の「チーム運営ルール」にまとめます。要素は4つです。

1つ目は定例の置き方。第2章で決めた、同期で捌く短い定例を、頻度と目的とセットで書きます(例:週1回30分、詰まりと判断の相談に使う)。2つ目は進捗の見える置き場。第2章で1か所に定めた置き場を、どこに何を書くかも含めて明記します。3つ目は非同期で共有するルール。第3章で決めた「何を・いつ共有するか」、たとえば着手・詰まり・完了のタイミングで一言書く、というルールを書きます。4つ目は評価で見るもの。在席ではなく、何を成果・アウトプットとして見るかを書きます。この4つが揃って初めて、過干渉にも放任にもならない運営が回り始めます。

共通例の管理職は、第1章から第3章までに決めた要素をこの4つの枠に当てはめ、1枚にまとめました。バラバラに変えてきた運用が、ここで1つの合意可能な文書になります。

メンバーに合意を取り、1〜2週間後に見直す前提を添える

作った1枚は、管理職が一方的に配って終わりではありません。メンバーに提示し、合意を取ります。厚生労働省のガイドラインも、テレワークのルールは労使で話し合って定め、明文化して周知することが望ましいとしています。「使用者は労使で協議して策定したテレワークのルールを就業規則に定め、労働者に適切に周知することが望ましい」(出典:厚生労働省 ガイドライン)。就業規則という制度の手続きは人事や社労士の領域ですが、チーム単位でできることは、ルールを文章にして、メンバーと「この理解で運用したい」と確認し合うことです。

そしてもう1つ、見直しの前提を添えます。1枚のルールは、一度決めたら固定するものではありません。先進事例集に登場するある企業は、「完全に最適化されたコミュニケーションというものは存在せず、常にブラッシュアップし続ける必要があると考えている」と述べています(出典:総務省 先進事例集)。だから運営ルールには「1〜2週間後に見直す」と書き添えておきます。やってみて回らなければ直す、という前提があると、メンバーも安心して合意できます。共通例の管理職は、1枚を提示するとき「まずこれで2週間やって、また話しましょう」と添えました。運用後の個別フォロー、つまり1on1で何を話すかは、1on1の基本で深めてください。

つまずき——一方的に押し付ける/成果の定義が曖昧なまま「成果で見る」

最後のつまずきも2つあります。1つは、管理職が一方的に決めて押し付けること。合意のないルールは守られず、監視と受け取られます。提示して合意を取る一手間を省かないでください。もう1つは、成果の定義が曖昧なまま「成果で見る」と言ってしまうこと。何が成果か示さずに成果評価をすると、メンバーは何を出せばいいか分からず、結局「長く働いた人」を評価することに逆戻りします。求める成果の内容と水準を先に示す——この順番を守りましょう。

この章の確認(演習)

自分のチームの「チーム運営ルール」を、①定例の置き方(頻度・目的)②進捗の見える置き場 ③非同期で共有するルール(何を・いつ)④評価で見るもの(成果・アウトプット)の4要素で、1枚に書き出してください。4つすべてが、第2章・第3章で決めたことと矛盾していないかを確認します。そのうえで、次の定例でメンバーに提示するための切り出しの1文(例:「在席を見るのをやめて、仕事の状態を共有する形に変えたいので、このルールで2週間やってみませんか」)まで用意しましょう。

まとめ

リモートマネジメントとは、対面が無料で提供していた「見える・伝わる・信頼できる」を、ツールではなく仕組みで取り戻すことです。情報を同期(会議)と非同期(書き置き)に振り分けて「伝わる」を取り戻し、在席ではなく仕事の状態を見える化して「見える」と「信頼できる」を取り戻し、成果で評価する運営ルールを1枚にまとめて合意する。覚えて帰る型は「見える・伝わる・信頼できる を取り戻す → 同期/非同期に振り分ける → 成果で見て1枚のルールにまとめる」です。そして、いちばん大事なひと言は——見るのは「在席」ではなく「仕事の状態」。

明日の一歩として、まず「進捗の見える置き場」を1か所だけ決め、次の定例でメンバーに共有してみてください。4要素すべてを一度に整えなくても、置き場が1つ決まれば、散らばっていた情報が集まり始めます。そこからルールを足していけば十分です。運営ルールが形になったら、次は遠隔での個別フォローの「対話の中身」を1on1の基本で深めるのが次のステップです。

本講座の特典として、定例・見える化・非同期・評価の4要素を埋めるだけで完成する「遠隔チーム運営ルールの1枚テンプレート」をご用意しています。テンプレートの入手案内と、遠隔チーム運営に役立つ実務情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

リモートマネジメントとは、在席監視ツールを導入することですか

違います。見るのは在席ではなく仕事の状態です。タスクの担当者・期限・進捗を見える化し、成果で評価する仕組みを設計することが本質で、常時オンラインの監視はかえって信頼を損ないます。

チャットと会議は、どう使い分ければよいですか

報告・共有・記録は非同期のチャットや書き置きに、その場で判断が要る相談や複雑な話は同期のWeb会議に寄せます。報告まで会議に集めると会議が増え、判断をチャットに流すと埋もれて決まりません。

部下を信頼したいのに、放っておくと遅れに気づけません。どうすればよいですか

「着手・詰まり・完了」など、何を・いつ共有するかをあらかじめ決めておきます。聞いて回らなくても状況が分かり、詰まりに早く気づけます。任せることと、状態を共有してもらうことは両立します。

働く姿が見えない中で、評価はどう考えればよいですか

在席やがんばりではなく、成果・アウトプットを軸にします。求める内容と水準を先に具体的に示すのが前提で、テレワークしていること自体を評価で不利にしてはいけません(出典:厚生労働省テレワークガイドライン)。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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