「うちの集客から契約までの流れ、どこで人が抜けてるのか一回ちゃんと整理して見せて。次にどこ直すか決めたい」——上司にそう任されたあなたは、手元のレポートを開きました。広告のクリック数、資料DL数、ウェビナー参加者、商談数、受注数……施策ごとの数字はバラバラのレポートには揃っているのに、それらを「入口→成果」の1本の流れの上に並べたことが、一度もない。「資料DLは多いのに商談が少ない気がする」までは分かっても、それがどの段差の落ち込みで、そこが本当に一番の問題なのかを根拠を持って言えず、手が止まってしまった。そんな経験、ありませんか。
この「手が止まる」の正体は、分析力やセンスの不足ではありません。集客〜成果を「段階に分けた1枚の地図(ファネル)」に落とし込んでいないだけです。マーケティングファネルとは、ひとことで言えば「大勢の入口から成果に向かって、段階を進むごとに人数が減っていく漏斗」のこと。段階に分けて図示し、段差ごとの落ち込みを数字で見れば、「どこで・何%抜けているか」が一目で分かり、印象ではなく数字で「次にどこを直すか」を決められます。この講座は、その地図の作り方——マーケティングファネル 設計の実務の型を、1枚お渡しします。
この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- マーケティングファネルを「段階を進むごとに人数が減っていく漏斗」として自分の言葉で説明でき、代表的な段階モデル(認知→検討→行動)が自社の何に当たるかを対応づけられる
- 自社の集客〜成果を段階に切り分け、各段階の「名称・入る条件・人数」を1枚のファネル図(縦に並ぶ段の表)に図示でき、段階間の転換率から離脱箇所を1つ特定できる
- 特定した離脱箇所について、「誰が・どこで・なぜ止まっているか」の仮説・確かめる観察・打ち手候補を1枚の改善仮説シートに作成でき、なぜそこを直すかを段差の数字に紐づけて説明できる
この講座は最後まで、「ある BtoB SaaS 企業(勤怠管理クラウドを月額で売る会社)のマーケ担当が、集客〜受注の流れをファネルに図示し、一番の離脱箇所を見つけて改善仮説を1枚にまとめる」という、たった1つの場面だけで説明します。この同じ会社を、ファネルとは何か→図示→離脱箇所の特定→改善仮説、と1段ずつ組み上げ、最後に「ファネル図1枚+改善仮説シート1枚」が手元に残る流れです。各章末には手を動かす演習もあります。なお、ここで使う数値(人数や転換率)はすべて説明のための架空の設定値で、実在サービスの実データではありません。ファネルの図示から改善仮説、その先の検証までを一連で学びたくなったら、有料プランの実務講座で続けて深められます。まずはこの1本で、離脱箇所を数字で見つける地図を手に入れましょう。
この講座のポイント
- マーケティングファネルを「大勢の入口から成果に向かって、段階を進むごとに人数が減っていく漏斗」として説明でき、代表的な段階モデル(認知→検討→行動)が自社の何に当たるかを対応づけられる
- 自社の集客〜成果を段階に切り分け、各段階の「名称・入る条件・人数」を1枚のファネル図(縦に並ぶ段の表)に図示できる
- 各段階の人数から段階間の転換率(次段階÷当該段階)を計算でき、落ち込みの大きい段差=離脱箇所を1つ特定できる
- 特定した離脱箇所について「誰が・どこで・なぜ止まっているか」の仮説・確かめる観察・打ち手候補を1枚の改善仮説シートに作成でき、なぜそこを直すかを段差の数字に紐づけて説明できる
マーケティングファネルとは何か(段階を進むごとに人数が減る漏斗を自社に対応づける)
最初に、「手が止まる」モヤモヤの正体を消しておきましょう。ファネルが「そもそも何を表した図なのか」を掴めば、この後の図示も、離脱箇所の特定も、ぐっと分かりやすくなります。
この章のゴール
この章を読み終えると、マーケティングファネルを「大勢の入口から成果に向かって、段階を進むごとに人数が減っていく漏斗」として説明でき、代表的な段階モデル(認知→検討→行動)が自社の何に当たるかを対応づけられるようになります。
ファネルは入口から成果へ段階を進むごとに人数が減る漏斗
マーケティングファネルとは、集客の入口から成果(購入・契約)に向かう流れを、段階に分けて縦に積んだ図のことです。上の段ほど人数が多く、下の段(成果に近い)ほど人数が絞られていくので、全体が逆三角形の漏斗(ファネル)の形になります。多くの人が製品やブランドを知り、そのうち一部が興味を持ち、さらにその一部だけが実際の購入まで進む——段階を進むごとに残る人数が減っていく、この現象を表したのがファネルです。
ここで最初に手放してほしい思い込みがあります。それは「人数が減るのは悪いこと」という受け止め方です。段階を進むたびに人数が減るのは正常で、全員が最後まで残ることはありません。だから見るべきは、各段の人数そのものよりも「段と段の間で、何人が次に進んだか」です。この「段差の進み方」を数字で見る話は、第3章でくわしく扱います。
段階は「施策の種類」でなく「人の状態」で切る
ファネルの段階を切るときに、一番やりがちな失敗が「施策の種類で切る」ことです。広告・SEO・メール・ウェビナー……これらはやり方(施策)であって、段階ではありません。段階は、そこにいる人が「まだ知っただけ/比べている/今すぐ買う気」といった、前に進むほど購入に近づいていく“人の状態の変化”で切ります。
たとえば「まだ製品を知っただけの人」と「もう導入を具体的に考えている人」は、同じ検索やメールで動く相手でも、状態がまったく違います。施策で切ると「広告の数字」「メールの数字」がバラバラのまま並ぶだけですが、人の状態で切ると「知った人が、比べる人になり、話す人になり、契約する人になる」という1本の流れが見えてきます。この“人の状態”で段を切る感覚が、ファネル設計のすべての土台になります。
呼び名は複数あるが意味は「入口→検討→行動」で共通
ファネルの話をややこしく感じさせるのが、呼び名の多さです。TOFU/MOFU/BOFU、AIDA、AISAS、AARRR……名前がいくつも出てきて、「どれを覚えればいいの」と身構えてしまう。でも、ここは肩の力を抜いて大丈夫です。どのモデルも「認知に近い上位段階→検討→行動(成果)」という並びを、別の言葉で言っているだけだからです。
いくつか整理しておきましょう。TOFU/MOFU/BOFU は Top / Middle / Bottom of Funnel の略で、ファネルの上・中・下を指し、それぞれ認知(awareness)・検討(consideration)・決定(decision)の段階に対応します。AIDA は Attention(注意)→ Interest(関心)→ Desire(欲求)→ Action(行動)の4段で、19世紀末に St Elmo Lewis が広告の働きを説明するために示した古典的なモデルです。AISAS は電通が2004年に提唱した型で、AIDA に Search(検索)と Share(共有)を加えた、注意→関心→検索→行動→共有の5段——ネット時代に「調べる・共有する」が入った並びです。AARRR は Dave McClure(500 Startups)が示した Acquisition(獲得)→ Activation(活性化)→ Retention(継続)→ Referral(紹介)→ Revenue(収益)の5指標で、その独特な発音から「パイレートメトリクス」とも呼ばれます。
名前の由来は以上ですが、大事なのは名前を覚えることではありません。どれも「入口→検討→行動」を言い換えているだけなので、覚えるべきは並びの意味だけ。そして注意したいのは、これらの呼び名は“地図”であって“強制ルート”ではないということです。今の買い手は、必ずしも上から順にきれいに1段ずつ進むわけではなく、途中から入ってきたり、行き来したりします。呼び名の並びは「だいたいこういう順で購入に近づく」という目安と受け取り、次に進むべきは自社の実際の流れを段にすることです。
大事なのは名前でなく自社の実際の流れを段にすること
では、共通例で自社の流れを段にしてみましょう。題材は「勤怠管理クラウドを月額で売る BtoB SaaS 企業」です(この会社と、この後に出てくる人数はすべて架空の設定です)。
この会社で、知らない人が最終的に顧客になるまでに通る道を、人の状態で言い換えると、こうなります。広告や検索でサイトに来る(流入=まだ来ただけ)→資料をダウンロードしてメールを残す(資料DL=連絡先を残した見込み客)→インサイドセールスと話が始まる(商談=話が始まった)→契約する(受注=顧客になった)。これがこの会社のファネルの4段です。TOFU/MOFU/BOFU に当てはめれば、流入が上(TOFU)、資料DL〜商談が中(MOFU)、受注に近いところが下(BOFU)に、ざっくり対応します。
当てはめること自体が目的ではありません。代表モデルに照らすのは、「あれ、うちには“比較検討している段階”を受け止める段が抜けていないか」といった抜けている段階に気づくためです。名前合わせに時間を使うより、「自社では人がこの順に進む」を掴むことが第一歩になります。
この章の確認(演習)
共通例を参考に、自分(自社/身近な商材)で「知らない人が顧客になるまで」に通る節目を、4段前後で書き出してください。そのうえで、各段を「人の状態」で1行ずつ言い換えます(例:来ただけ→連絡先を残した→話が始まった→契約した)。このとき、名前(TOFU 等)は付けなくてかまいません。段を施策の種類(広告・メール)で切っていないか、人の状態で切れているかだけ確認してください。ここで書き出した段が、次章で作るファネル図の材料になります。
自社のファネルを段階に分けて図示する(名称・入る条件・人数を1枚の表に並べる)
段が並んだら、いよいよ図にします。とはいえ、凝ったデザインは要りません。この章は、第1章で並べた段を「1枚の表」に固定し、施策ごとにバラバラだった数字を同じ土台の上に並べる章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、自社の集客〜成果を段階に切り分け、各段階の「名称・入る条件・人数」を1枚のファネル図(縦に並ぶ段の表)に図示できるようになります。
ファネル図に最低限入れる3要素は名称・入る条件・人数
ファネル図に入れる要素は、最低限これだけです。①段階の名称(流入/資料DL/商談/受注 など、その会社が実際に使っている言葉で)、②その段に入る条件(どうなったら、この段の1人としてカウントするか)、③その段の人数(同じ期間・同じ定義で数えた実数)。この3つを、上(入口・多い)から下(成果・少ない)へ縦に並べた表が、そのままファネル図になります。
図示のメリットは、施策ごとにバラバラだった数字が、同じ縦軸(人の流れ)の上に並ぶことです。「広告のレポート」「メールのレポート」「営業のレポート」と別々に見ていたときには気づけなかった「上流は多いのに、下流に行くほど細い」という全体像が、ここで初めて目に見えるようになります。
入る条件を先に決めないと人数が数えられない
3要素のなかで、意外と飛ばされがちなのが②の「入る条件」です。ここを先に決めないと、人によって数え方がブレて、人数が意味を持たなくなります。たとえば「商談」を、ある人は「問い合わせが来た数」で数え、別の人は「日程が確定した打合せの数」で数えていたら、同じ「商談20件」でも中身が違い、比べようがありません。
だから、各段に「何をもってこの段にカウントするか」を、数え方が一意に決まる言い方で1文ずつ書きます。「資料DL=資料請求フォームを送信完了した」「商談=日程が確定した打合せを実施した」のように、誰が数えても同じ数になる条件にしておく。条件を先に固めてから人数を入れる、この順番を守ってください。
凝った図は要らない — 段の名前・入る条件・人数の3列表で十分
ファネル図というと、色分けした逆三角形のグラフを思い浮かべるかもしれませんが、実務ではその必要はありません。段の名前・入る条件・人数の3列の表があれば、それが立派な「1枚の地図」です。見た目に凝るより、条件と人数の中身を揃えることに力を使いましょう。
共通例を、実際に1枚の表にしてみます。段は上から〔流入〕〔資料DL〕〔商談〕〔受注〕。入る条件と人数(直近1ヶ月・すべて架空の設定値)は、次のとおりです。
| 段階 | 入る条件(何をもってこの段にカウントするか) | 人数(架空・月次) |
|---|---|---|
| 流入 | 広告・検索・SNS 経由でサイトに訪問した | 1,000 |
| 資料DL | 資料請求フォームを送信完了した(連絡先を残した) | 200 |
| 商談 | 日程が確定した打合せを実施した | 20 |
| 受注 | 契約を締結した | 4 |
この人数はすべて説明のための作り物ですが、この1枚があるだけで「流入は1,000もあるのに、受注は4」という全体像が一目で見えます。そして、この同じ土台の上で、次章では「どの段差で一番落ちているか」を計算していきます。
各段の人数をどこから拾うかも触れておきましょう。サイト上で計測できる段(流入・資料DL)は計測ツールから、商談・受注のような営業段階は CRM などから拾います。ファネルの数字を取れるようにする計測の入口はGA4 の設定で、そうして取った数字を GA4 のレポートで読み解く進め方はGA4 レポートの読み方で身につけられます。まだ計測できていない段があっても、この章では「未計測」と正直に書けば大丈夫です。
この章の確認(演習)
第1章で書いた自社の段に、各段の「入る条件」を1文ずつ付け、同じ期間の人数を入れて、〔段階|入る条件|人数〕の3列の表(ファネル図)を1枚作ってください。入る条件は「誰が数えても同じ数になる」言い方になっているか確認します。人数がまだ取れない段は、無理に埋めず「未計測」と書いてください。どの段が計測できていないかが分かること自体も、この演習の成果です。ここで1枚できた表が、次章で離脱箇所を特定する材料になります。
段階の数字を並べて離脱箇所を特定する(段階間の転換率で一番の段差を1つ選ぶ)
ファネル図が1枚になったら、次はいよいよ「どこで一番落ちているか」を見つけます。ここで、印象で「なんとなく商談が弱い」と言うのをやめ、数字で1つの段差を名指しできるようにします。
この章のゴール
この章を読み終えると、各段階の人数から段階間の転換率(次段階÷当該段階)を計算でき、落ち込みの大きい段差=離脱箇所を1つ特定できるようになります。
段階間の転換率は「次の段÷その段」で出す
段と段の間で「何人が次に進んだか」を割合にしたものを、この講座では段階間の転換率と呼びます。計算はシンプルで、(次の段の人数)÷(その段の人数)です。たとえば流入1,000のうち資料DLが200なら、流入→DL の転換率は 200÷1,000=20%。分母がその段(当該段)、分子が次の段——ここを取り違えて、当該段÷次段にしないよう気をつけてください。
なお「転換率(コンバージョン率)」という言葉は、計測ツールでは分母をセッションで取るか人で取るかなど、細かい定義の違いがあります。ここではそこには踏み込まず、「段階間で次に進んだ割合=次段÷当該段」という算術で自明な意味で通します。転換率の裏返しが「離脱」——つまり、次の段に進まなかった割合です。流入→DL が20%なら、残りの80%はその段で流れから外れた(離脱した)ことになります。
見るのは各段の人数でなく段差の転換率
ここが、この章で一番やりがちな早合点を潰すところです。ファネル図を見ると、どうしても一番人数が少ない段(受注など漏斗の底)に目が行き、「ここが一番の問題だ」と思ってしまいます。でも、下の段ほど人数が少ないのは漏斗だから当たり前であって、少ないこと自体は問題ではありません。
見るべきは、各段の人数そのものではなく、「前の段に対して、極端に落ち込んでいる段差はどこか」——つまり転換率が低い段差です。人数の絶対数に引っ張られず、段差の割合で比べる。この目の付けどころを持つだけで、「受注が少ないから受注をなんとかしよう」という的外れな結論を避けられます。
離脱箇所は一番低い転換率の段差を1つに絞る
減っている段差を全部「改善対象」に挙げても、手が回りません。だから、最も落ち込みの大きい1段差を選び、そこに集中するのが鉄則です。そして、なぜその段差を選んだのかを「他の段差より転換率が◯ポイント低いから」と、数字で言えるようにしておきます。「なんとなく」ではなく「この段差が一番低いから」——この一言が言えるかどうかが、印象と根拠の分かれ目です。
共通例(すべて架空の設定値)で、段差ごとの転換率を計算してみましょう。
| 段差 | 計算 | 転換率(架空) |
|---|---|---|
| 流入 → 資料DL | 200 ÷ 1,000 | 20% |
| 資料DL → 商談 | 20 ÷ 200 | 10% |
| 商談 → 受注 | 4 ÷ 20 | 20% |
三つの段差を並べると、DL→商談が10%で最も低いとすぐ分かります。受注が4件で絶対数は一番少ないですが、段差の転換率で見れば商談→受注は20%あり、底が少ないのは漏斗ゆえで問題ではありません。人数の絶対数に惑わされず転換率で比べると、「資料DL は取れているのに、そこから商談に進んでいない DL→商談」が、この会社の一番の離脱箇所だと特定できます。ここを1つに絞って、第4章で改善仮説を作ります。なお、これらの段差の数字を GA4 のレポート上でたどる進め方は、GA4 レポートの読み方で具体的に学べます。
この章の確認(演習)
第2章で作った自社のファネル表に、段差ごとの転換率の列を足して計算してください(各段差で、次段÷当該段)。%を並べたら、一番低い段差を1つだけ選び、「この段差を離脱箇所にした理由」を、他の段差との比較で1〜2行書きます(例:「DL→商談が10%で、次に低い段差より◯ポイント低いから」)。人数が未計測で転換率が出せない段差があれば、「計測できれば分かる」として、計測の優先箇所に印を付けておきましょう。ここで選んだ1段差が、次章で作る改善仮説の「事実」欄になります。
離脱箇所の改善仮説を作成する(事実→誰が・どこで・なぜ→確かめ方→打ち手候補)
離脱箇所が1つに決まったら、最後はそこを直すための「改善仮説」を作ります。ここで「じゃあメールを改善しよう」と打ち手から飛びつくと、当たったか外れたか判断できない“思いつきの施策”になります。順番を守って、確かめられる形の仮説を1枚に組み上げましょう。
この章のゴール
この章を読み終えると、特定した離脱箇所について「誰が・どこで・なぜ止まっているか」の仮説・確かめる観察・打ち手候補を1枚の改善仮説シートに作成でき、なぜそこを直すかを段差の数字に紐づけて説明できるようになります。
改善仮説シートに入れる4要素は事実・仮説・確かめる観察・打ち手候補
改善仮説シートに入れる要素は、4つです。①事実——どの段差が、どれだけ落ちているか(第3章で選んだ段差と転換率)。②仮説:誰が・どこで・なぜ止まっているか。③確かめる観察——その仮説が本当かを見るための数字や声。④打ち手候補——仮説が当たっていた場合に直す案。この4つを、①→②→③→④の順に埋めます。
大事なのは順番です。事実→仮説→確かめる観察→打ち手候補の順に土台を作ってから打ち手を出す。打ち手から入ると、「なぜそれをやるのか」「本当に効いたのか」を後から言えなくなります。
「なぜ」は後で確かめられる1つの具体的な原因文で言い切る
このシートの肝は、②の「なぜ」です。ここを「フォローが弱いから」といった曖昧な一般論で済ませると、後で確かめようがありません。誰が・どこで・なぜ止まっているかを、1つの具体的な原因文で言い切るのがコツです。
「誰が」は、その段で止まっている人の状態(例:比較検討中の担当者)。「どこで」は、流れのどの地点か(例:資料DL の直後)。「なぜ」は、その人が次に進まない理由の仮説(例:次の一歩に進む理由を受け取れていない)。この3点を1文にすると、「比較検討中の担当者が、資料DL 後に次の一歩の理由を受け取れず、検討が止まっている」といった、後で観察して確かめられる形になります。
打つ前に確かめる観察を必ずセットにする
仮説は、あくまで仮説——思い込みかもしれません。だから、打ち手を打つ前に「その仮説が本当かを確かめる材料」を必ずセットにします。見る数字(例:DL 後7日間のサイト再訪や料金ページの閲覧があるか)と、聞く声(例:未商談・失注の理由を営業にヒアリングする)。この確かめる観察を用意しておくことで、「仮説どおりだったから、この打ち手を打つ」と根拠を持って動けます。ここを飛ばして、いきなり施策を打つと、当たっても外れても理由が分からないまま次に進むことになります。
仮説を検証する工程(A/B テスト)は次の講座へ
一点、この講座の範囲を明確にしておきます。本講座は「確かめられる形の改善仮説を1枚作るまで」です。作った打ち手候補を実際に試し、A/B テストの検証設計や判定基準に落として「本当に効いたか」を確かめる工程は、この先の A/B テスト実践の講座で深掘りできます。ファネルで離脱箇所を数字で見つけ、確かめられる仮説を作る——ここまでを1本で通しきることが、この講座のゴールです。
共通例の離脱箇所=DL→商談10%(すべて架空の設定値)について、改善仮説シートを埋めると、こうなります。
| 欄 | 中身(共通例・架空) |
|---|---|
| ①事実(段差と転換率) | DL→商談が10%で、3段差中もっとも低い(DL200→商談20) |
| ②仮説:誰が・どこで・なぜ | 比較検討中の担当者が、資料DL 後に届くのが自動メール1通だけで、商談に進む理由(導入事例・他社比較・初回相談のしやすさ)を受け取れず、検討が止まっている |
| ③確かめる観察(見る数字・聞く声) | DL 後7日間のサイト再訪・料金ページ閲覧の有無/未商談・失注理由の営業ヒアリング |
| ④打ち手候補 | 導入事例メールの追加/インサイドセールスの初回架電/料金・比較ページへの導線をメールに追加 |
このシートが1枚あれば、上司に「なぜ DL→商談を直すのか」と聞かれても、「そこが3段差で一番落ちている段差だから(事実)。原因はDL後のフォロー不足という仮説で、DL後7日間の行動と営業ヒアリングで確かめます(確かめ方つき)」と、事実→仮説→確かめ方→打ち手を1本の筋で説明できます。これが、印象ではなく数字で語るということです。
この章の確認(演習)
第3章で選んだ自社の離脱箇所について、〔①事実(段差と転換率)|②仮説:誰が・どこで・なぜ|③確かめる観察|④打ち手候補〕の4欄の改善仮説シートを1枚作成してください。②の「なぜ」は、曖昧な一般論ではなく、誰が・どこで・なぜを1つの具体的な原因文で言い切ります。③は「打つ前に確かめる材料」を1〜2個、④は仮説に直結する候補を1〜3個に絞ります。最後に「なぜこの段差を直すのか」を段差の数字に紐づけて1文で書き、上司に見せる想定で声に出して説明してみましょう。ここまでできれば、この後は作った仮説を検証する工程へ進むだけです。
まとめ:どこを直すかは“どの段差で何%落ちているか”で決める
おつかれさまでした。「勤怠管理クラウドの集客〜受注の流れを整理する」という1つの場面を、ファネルとは何か→図示→離脱箇所の特定→改善仮説と、1段ずつ組み上げてきました。マーケティングファネル 設計の4ステップを、1枚に振り返ります。
- 段階に切る……集客〜成果を、施策の種類ではなく“人の状態”で段に切る。認知→検討→行動を自社(流入→資料DL→商談→受注)に対応づける。呼び名は複数あっても意味は「入口→検討→行動」で共通(第1章)
- 図示する……段階|入る条件|人数の3列の表を1枚に。入る条件を先に決めてから人数を入れる。凝った図は要らない(第2章)
- 離脱箇所を特定する……段差ごとの転換率(次段÷当該段)を計算し、人数の絶対数でなく転換率で比べて、一番低い段差を1つに絞る(第3章)
- 改善仮説を作る……事実→誰が/どこで/なぜ→確かめる観察→打ち手候補、の順に1枚のシートを埋める。打ち手から入らない(第4章)
この4つは、すべて1つの合言葉に戻ります——「どこを直すかは、“どの段差で何%落ちているか”で決める」。ファネルは、施策ごとの数字をただ眺めるための図ではありません。どの段差で何%落ちているかを見て、直す所を1つに絞るための地図です。この地図さえあれば、「なんとなく商談が弱い気がする」と印象で施策を選ぶことは、もうありません。
明日の最初の一歩:自分(自社)の集客〜成果を1つ選び、①4段前後のファネル図(段階|入る条件|人数)を1枚描き ②段差ごとの転換率を計算し ③一番低い段差を1つ離脱箇所に選び ④その改善仮説シート(事実→誰が/どこで/なぜ→確かめ方→打ち手候補)を1枚作る——ここまでを紙1枚ずつ書き出してみてください。「ファネル図1枚+改善仮説シート1枚」が手元に残ります。
そして、今日つかんだこの地図を、実際の数字で回せるようになりたくなったら、その先の道も用意されています。ファネルの数字を取るための計測の入口はGA4 の設定、そのファネルの数字を GA4 で読むのはGA4 レポートの読み方、そして上位段階(流入)を増やす一例はSEO コンテンツ設計で深められます。さらにこの先には、作った改善仮説を A/B テストで確かめる検証設計、AARRR を軸にした施策づくり(グロースハック)、プロダクト主導成長(PLG)、プロダクトマーケティングを深掘りする講座も続きます。ファネルの図示から改善仮説、その検証までを一連で学べる実務講座は、有料プランで続けて受けられます。まずは今日の4ステップで、自分のファネルを1本、手で通してみてください。