「このリストにただ一斉メールを送るんじゃなくて、MAのシナリオを組んで、興味のありそうな人を営業に渡せる状態まで育ててほしい」——ある日、上司にそう任されたあなたは、MAツールの管理画面を開きました。ところが、そこに並んでいるのは「シナリオ」「トリガー」「分岐」「待機」といったブロックばかり。全員に同じメールを順番に送る一本道のステップメールなら組めるのに、「資料をダウンロードした人」と「価格ページを見た人」で送る内容を変える枝分かれになると、どのブロックを・どの順番で・どの条件でつなげばいいのか分からず、手が止まってしまった。そんな経験、ありませんか。
でも、安心してください。手が止まる原因は、知識やセンスの不足ではありません。シナリオを「どの起点から始め・どの行動で枝分かれさせ・どこをゴールにするか」という設計図(分岐図)を、先に描いていないだけです。これは、MAツールの操作の問題ではありません。MA シナリオ 設計とは、ひとことで言えば「リードの行動というきっかけ(トリガー)で始まり、行動・属性の条件で枝分かれし、待機時間を挟んでメールを段階配信し、ゴール(営業への引き渡し)に集約する流れ」を、1枚の分岐図として組み立てる仕事です。分岐の条件(開封・クリック・ページ閲覧・スコア)を選ぶときは、いつも「その行動が、リードの検討がどこまで進んだサインか」に紐づける——この地図を、本講座で1枚お渡しします。
この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- MAのシナリオを、「リードの行動というきっかけで始まり、行動・属性の条件で枝分かれし、待機時間を挟んで段階配信し、ゴール(営業への引き渡し)に集約する仕組み」として、一斉配信との違いと合わせて自分の言葉で説明できる
- 1つの獲得目的について、シナリオのトリガーとゴールを先に定義し、リードの行動条件(開封・クリック・ページ閲覧・スコア基準)で分岐を設計して、各枝に待機時間を挟んだステップメールを割り付けられる
- 設計したシナリオを1枚の分岐図として作成でき、配信前チェック(トリガー・分岐の網羅・無限ループ・配信停止の尊重・ゴールの出口)を1つずつ通して、行き止まり・堂々巡りのないシナリオに整えられる
この講座は最後まで、「あるBtoB SaaS企業が、自社の勤怠管理クラウドのお役立ち資料『失敗しない勤怠管理システムの選び方』をダウンロードしたリードを対象に、MAのステップメールシナリオを1本組んで、検討が進んだ人を営業に渡す(MQL化する)」という、たった1つの場面だけで説明します。この同じ獲得目的を、仕組み→トリガー/ゴール→分岐条件→メール/待機→分岐図/配信前チェック、と1段ずつ組み上げ、最後に「配信を有効化する前の分岐図」が1枚できあがる流れです。各章末には手を動かす演習もあります。なお、以下に出てくる待機日数・スコアの点数・配信件数などの数値は、すべて説明のための架空の設定です。上級講座として、一本道のシナリオが作れる人が「行動で出し分ける分岐」を設計できるところまでを1本で通します。シナリオ設計からナーチャリング・スコアリング・MQL/SQL基準まで一連で実務を学びたくなったら、有料プランの講座で続けて学べます。まずはこの1本で、分岐シナリオを配信前まで組み上げる地図を手に入れましょう。
この講座のポイント
- MAシナリオを「リードの行動というきっかけ(トリガー)で始まり、行動・属性の条件で枝分かれし、待機時間を挟んで段階配信し、ゴール(営業への引き渡し)に集約する仕組み」として、一斉配信との違いと合わせて説明できる
- 1つの獲得目的について、シナリオのトリガー(起点)とゴール(出口)を先に定義でき、その間を段階配信のメールで結ぶ一本道の骨組みを設計できる
- 一本道の骨組みに、リードの行動条件(開封・クリック・ページ閲覧・スコア基準)と属性条件を使った分岐を設計でき、「なぜその行動で分けるのか(=検討が進んだサインか)」を条件ごとに説明できる
- 分岐で分かれた各ルートに、待機時間を挟んだステップメールの順番・役割・件名の方向性を割り付けられ、「なぜこの間隔・この順番か」を検討段階に紐づけて説明できる
- トリガー→メール→分岐条件→待機→ゴールを線でつないだ分岐図を1枚作成でき、配信前チェック(トリガー・分岐の網羅・無限ループ・配信停止の尊重・ゴールの出口)を1つずつ通して、行き止まり・堂々巡りのないシナリオに整えられる
MAシナリオとは何か(一斉配信との違い・トリガーで始まりゴールに集約する流れ)
最初に、「手が止まる」モヤモヤの正体を消しておきましょう。MAシナリオが「何をきっかけに始まり、どう枝分かれし、どこに向かうのか」を掴めば、この後の設計がぐっと分かりやすくなります。
この章のゴール
この章を読み終えると、MAシナリオを「リードの行動というきっかけ(トリガー)で始まり、行動・属性の条件で枝分かれし、待機時間を挟んで段階配信し、ゴール(営業への引き渡し)に集約する仕組み」として、一斉配信との違いと合わせて説明できるようになります。
シナリオは送り手の都合ではなくリードの行動で始まる
MAのシナリオとは、あらかじめ組んだ流れに沿って、リード一人ひとりの行動に応じて、自動でメールを送り分ける仕組みのことです。製品によって「シナリオ」「ジャーニー(カスタマージャーニー)」「ワークフロー」などと呼び方が異なりますが、やっていることは同じ。「いつ・誰に・どんなアクションを行うか」をあらかじめルール化し、自動で実行します。
これを、いつも送ってきた一斉配信(全員に同じメールを同時に1回送る配信。ブロードキャストとも呼びます)と比べると、違いの1つ目がはっきりします。それは起点が違うことです。一斉配信は、送り手であるあなたが「送りたいとき」に送ります。一方シナリオは、リードの行動(資料をダウンロードした、フォームを送信した、など=トリガー)をきっかけに、その人ごとにタイミングがずれて始まります。誰かが今日資料をダウンロードすれば今日その人のシナリオが始まり、明日ダウンロードした人は明日始まる。送り手ではなく、リードの行動が引き金なのです。
同じ入口でも行動で送る内容が枝分かれする
違いの2つ目は、枝分かれすることです。一斉配信は全員に同じ1通が届きます。シナリオは、メールを開封したか・リンクをクリックしたか・どのページを見たか・スコアが何点かといったリードの行動に応じて、送る内容が枝分かれします。開封しなかった人には件名を変えて再送し、価格ページを見た人には導入事例を送る——同じ入口から入っても、その後の行動によって届くメールが変わるわけです。
ここで、最初のつまずきポイントを1つ潰しておきます。「シナリオ=一斉メールを予約送信で何通か並べるだけ」と思っている人がいますが、それは違います。予約送信は「全員に、決めた日時に、同じ内容を送る」だけで、リードの行動では変わりません。シナリオの本質は、行動を起点に始まり、行動で分岐することにあります。
シナリオには出口がある——ゴールは営業への引き渡し
違いの3つ目は、ゴールがあることです。一斉配信は「送ったら終わり」ですが、シナリオは「配信して終わり」ではありません。検討が進んだリードを営業に渡せる状態にする、という出口(ゴール)に集約する流れです。マーケティングが獲得したリードにメールで情報を届けて検討を進めてもらい、営業が動くべきタイミングになったリードを引き渡す。この「営業に渡せる状態になったリード」を一般にMQL(Marketing Qualified Lead)と呼びます。何点で・どの行動でMQLとするかという基準の作り方そのものは、この先のMQL・SQL基準づくりの講座で深掘りします。本講座では「ゴール=検討が進んだリードを営業に渡すこと」という接続点として押さえておけば十分です。
3つの違いをまとめると、こうなります。
| 見る軸 | 一斉配信 | シナリオ |
|---|---|---|
| 起点 | 送り手が送りたいとき | リードの行動(トリガー)で人ごとに始まる |
| 分岐 | 全員に同じ1通 | 開封・クリック・閲覧・スコアで枝分かれ |
| 出口 | 送ったら終わり | 営業に渡せる状態(ゴール)へ集約 |
つまりシナリオは「行動で始まり・行動で分かれ・ゴールに集める」自動フローなのです。
勤怠管理クラウドで、一斉配信では作れない流れを掴む
共通例で確かめましょう。あなたの会社は勤怠管理クラウドを提供していて、お役立ち資料『失敗しない勤怠管理システムの選び方』をダウンロードしたリードのリストを持っています。あなたは、このリストに一斉メールを1通送ることはできます。でも上司が求めているのは、「資料をダウンロードした瞬間に自動でお礼メールが飛び、数日後に次のメールが届き、価格ページを見た人にはさらに導入事例が届き、検討が進んだ人が営業に通知される」という流れです。
これは一斉配信では作れません。なぜなら、資料ダウンロードで人ごとに始まり(トリガー)、価格ページを見たかどうかで届く内容が分かれ(分岐)、検討が進んだ人を営業に渡す(ゴール)——この3つが必要だからです。だからこそシナリオが要る。この後の章では、この共通例を1段ずつ組み上げていきます。
この章の確認(演習)
共通例の勤怠管理クラウドについて、次の3つを書き出してください。①このシナリオのトリガー(何をきっかけに始まるか)を1つ書く。②ゴール(何をもって成功=営業に渡すとするか)を1文で書く。③同じリードに「一斉配信で1通送る場合」と「シナリオで育てる場合」の違いを、「起点」「分岐の有無」「ゴールの有無」の3点で1〜2行に書き分ける。ここが書ければ、シナリオを「行動起点+分岐+ゴール」の仕組みとして、自分の言葉で説明できています。
シナリオのトリガーとゴールを設計する(起点・出口・一本道の骨組み)
仕組みが分かったら、いよいよ設計です。ただし、いきなり分岐から作り始めると全体像を見失います。この章では、まずシナリオの両端——トリガーとゴール——を先に固定し、その間を分岐なしの一本道でつなぐ骨組みを作ります。
この章のゴール
この章を読み終えると、1つの獲得目的について、シナリオのトリガー(起点)とゴール(出口)を先に定義でき、その間を段階配信のメールで結ぶ一本道の骨組みを設計できるようになります。
分岐を組む前にシナリオの両端を先に固定する
分岐から作り始めると、枝がどんどん増えて全体が追えなくなります。だから設計の順番は、先にトリガー(起点)とゴール(出口)を固定することから始めます。
トリガーは、シナリオが始まる条件です。フォームの送信、特定資料のダウンロード、特定ページの閲覧、リストへの追加など、リードの行動を起点にできます。ここで大事なのは、1つのシナリオでは、トリガーを明確に1つに絞ること。起点が曖昧だと「誰がこのシナリオに入るのか」が定まらず、送る相手が特定できません。「資料をダウンロードした人向け」なのか「セミナーに申し込んだ人向け」なのか、入口を1つに決めるところから始めます。
ゴールはメール送りきりでなくリードの状態で置く
ゴールは、シナリオが目指す出口です。ここで気をつけたいのが、ゴールの置き方です。ありがちなのが、ゴールを「メールを4通送りきる」に置いてしまうこと。これは送り手の都合であって、リードがどうなったかを見ていません。
ゴールは、リードの状態で置きます。たとえば「検討が進んだサインを出したリードを営業に通知する(MQL化する)」「個別相談に申し込む」「商談化する」といった、リード側の到達点です。ゴールを先に置くからこそ、「そこに向かって何を送るか」が決まります。逆にゴールを決めずにメールだけ並べると、出口が無いまま配信が発散していきます。なお、MQLの基準そのもの(何点で・どの行動でMQLとするか)の作り方は、この先のMQL・SQL基準づくりの講座の領域です。本章では「ゴール=営業に渡せる状態」を1つ置ければ十分です。
両端の間を分岐なしの一本道で並べる
トリガーとゴールという両端が立ったら、まず分岐なしの一本道で「トリガー→メール1→(待機)→メール2→……→ゴール」を並べます。このとき、各メールに役割を1つずつ与えるのがコツです。おすすめの流れは「お礼→教育→事例→案内」。最初はお礼で信頼をつくり、次に相手の課題に役立つ情報で教育し、導入事例で「うちでも使えそう」と感じてもらい、最後に個別相談などの行動へ案内する、という順です。分岐は次の章で足します——先に骨組み、後から枝、の順で作れば、全体像を見失いません。
勤怠管理クラウドで、資料DLからMQL化までの骨組みを組む
共通例で骨組みを組んでみましょう。トリガー=お役立ち資料『失敗しない勤怠管理システムの選び方』のダウンロード。ゴール=リードのスコアが基準値(仮に50点)以上になる、または個別相談に申し込む=MQL化して営業に通知。この両端の間を、分岐なしの一本道で並べます。
| メール | 送るタイミング | 役割 | 中身の方向性 |
|---|---|---|---|
| メール1 | 即時 | お礼 | 資料ダウンロードのお礼+「選び方チェックリスト」 |
| メール2 | 3日後 | 教育 | 勤怠管理システム選びのよくある失敗と回避策 |
| メール3 | メール2からさらに4日後 | 事例 | 導入事例の紹介 |
| メール4 | 分岐後に配信 | 案内 | 個別相談・トライアルの案内 |
このスコア50点や待機日数は、すべて説明のための架空の設定です。この時点では、まだ全員が同じ順に流れる一本道でかまいません。トリガーとゴールが両端に立ったことで、間に何を・どんな役割で置くかが決まりました。これが分岐を足す土台になります。
この章の確認(演習)
共通例で、次の3つを書いてください。①トリガーを1つ書く。②ゴールを1つ(リードの状態で)書く。③その間をメール3〜4通の一本道で並べ、各メールの役割(お礼/教育/事例/案内)を1語ずつ添える。書けたら、自分(自社)の商材でも、「トリガー1つ・ゴール1つ・一本道メール3通」の同じ骨組みを埋めてみましょう。「両端を先に固定してから中を並べる」という順番を、手を動かして体で覚えてください。
リードの行動条件で分岐を設計する(開封・クリック・ページ閲覧・スコアで枝分かれ)
一本道の骨組みができたら、いよいよこの講座の核である分岐の設計です。ここが、一斉配信では作れない「行動で出し分ける流れ」の心臓部。この章で、リードの行動を条件にした枝分かれを、根拠を持って組めるようになりましょう。
この章のゴール
この章を読み終えると、一本道の骨組みに、リードの行動条件(開封・クリック・ページ閲覧・スコア基準)と属性条件を使った分岐を設計でき、「なぜその行動で分けるのか(=検討が進んだサインか)」を条件ごとに説明できるようになります。
分岐に使える条件は行動と属性の2種類
骨組みができたら、リードの行動を条件に枝分かれ(分岐。製品によっては「条件」と呼び、条件に一致するか/しないかで進む先が変わります)を足していきます。分岐に使える条件は、大きく2種類です。
1つ目は行動条件。メールを開封したか、リンクをクリックしたか、特定のページ(たとえば価格ページ)を閲覧したか、スコアが基準値以上か——リードが実際に取った行動です。2つ目は属性条件。業種、従業員規模、役職など、フォームで取得済みの情報です。本章では主に行動条件で分岐を組みます。なお、スコアが何で貯まるかという配点ルールの設計は、この先のリードスコアリング設計の講座の領域です。本講座では「スコアが基準値以上か」を分岐条件の1つとして使うだけにとどめます。
分岐条件は検討がどこまで進んだサインかで選ぶ
分岐を設計するときの合言葉は、「その行動は、検討がどこまで進んだサインか」です。同じ行動でも、示す検討の深さは違います。メールをただ開封しただけの人と、価格ページまで見た人とでは、導入への近さが違いますよね。
一般に、リードの行動は「認知→興味・関心→比較・検討」と検討段階が進むにつれて濃くなっていきます。これを行動に対応づけると、おおよそ開封<クリック<ページ閲覧(特に価格ページ)<スコア基準到達という濃さの順で並びます。開封は「タイトルが目に留まった」程度の弱いサイン。価格ページの閲覧は「価格を確かめたい=導入を具体的に検討し始めた」比較・検討段階の濃いサインです。
ここで、ありがちな誤解を潰しておきます。「開封で分ければいい。開封した人=濃い見込み客」と考えてしまう人がいますが、開封は弱いサインです。開封しただけの人を営業に渡すと、まだ温まっていないリードを渡すことになります。開封は、ページ閲覧やスコアと組み合わせて判断するもの——単独で「濃い」と見なさないでください。
濃いサインには濃いルート、薄いサインには取り返す枝
分岐設計には、3つの原則があります。
- 検討が進んだサインを出した行動で、より濃いルートに送る(例:価格ページ閲覧=比較・検討に入った→導入事例+個別相談へ)
- 反応が薄い行動には、取り返す枝を用意する(例:開封しない→件名を変えて再送。無反応が続く→休眠ルートへ退避)
- 分岐は増やしすぎない(1つのシナリオでは主要な分岐を2〜3に絞る)
3つ目について補足します。分岐条件は細かくするほど丁寧に見えますが、「分岐は多いほど丁寧」というのは誤解です。枝が増えるほど全体像が追えなくなり、検証やメンテナンスに手が回らず、設定が形だけになりがちです。まずはシンプルに、成果につながりやすい主要分岐2〜3本から始めるのが実務的です。
勤怠管理クラウドの一本道に分岐を足す
共通例の一本道に、3つの分岐を足してみましょう。
| 分岐点 | 使う行動条件 | 示す検討段階 | 送る先のルート |
|---|---|---|---|
| メール2の後 | メール2を開封したか | 薄い(弱いサイン) | 開封しない→件名を変えて再送/開封→次へ |
| メール2の後 | 価格ページを閲覧したか | 濃い(比較・検討) | 閲覧→導入事例+個別相談の濃いルートへ |
| 全体を通して | スコアが50点(仮)以上か | 最も濃い(引き渡し可) | 到達→ゴール(MQL化・営業通知)へ集約 |
読み方はこうです。まず開封の有無で分けます。メール2を開封しなかった人は件名を変えて再送する枝へ(開封を取りに行く)。開封した人はそのまま次へ進みます。次に価格ページの閲覧で分けます。閲覧した人は「検討が進んだ」と見なし、メール3を通常の導入事例から「導入事例+個別相談の案内」に寄せた濃いルートへ送ります。そしてスコア基準。資料ダウンロード・開封・クリック・ページ閲覧の積み上げでスコアが50点(仮)以上になった人は、メールの続きに関わらずゴール(MQL化・営業通知)へ集約します。無反応が続く人は休眠ルートへ退避させます。
なぜ価格ページの閲覧で分けるのか。それは、価格を確かめる=導入を具体的に検討し始めたサインだからです。ここが第3章の背骨です。分岐条件を「なんとなく」で置くのではなく、いつも「その行動は、検討がどこまで進んだサインか」に紐づけて選んでください。
この章の確認(演習)
共通例の一本道に、分岐を2つ足してください。各分岐について「使う行動条件(開封/クリック/ページ閲覧/スコア)」「その行動が示す検討段階(濃い/薄い)」「送る先のルート」の3つを書きます。次に、自社の商材で「検討が進んだサインになる行動」を1つ挙げ、それを分岐条件にした枝を1本設計してみましょう。分岐条件を「検討段階のサイン」に紐づけて選べるようになったら、この章はゴールです。
ステップメールの中身と待機時間を割り付ける(各枝に何を・何日空けて送るか)
分岐の骨格ができたら、次は各枝の中身を埋めます。「どのルートに・何を・何日空けて送るか」を割り付けて、分岐図を「描ける実体」にしていきましょう。
この章のゴール
この章を読み終えると、分岐で分かれた各ルートに、待機時間を挟んだステップメールの順番・役割・件名の方向性を割り付けられ、「なぜこの間隔・この順番か」を検討段階に紐づけて説明できるようになります。
ステップメールは1通で売り込まず役割を分けて順に届ける
各枝に中身を割り付ける前に、ステップメールの考え方を押さえます。ステップメールとは、特定の行動を取ったリードに対して、役割の違うメールを複数回に分けて順に届ける配信です。共通例なら「お礼→教育→事例→案内」の順でした。
ここで、ありがちな誤解を1つ潰します。「1通のメールに、お礼も、失敗事例も、導入事例も、個別相談の案内も全部盛り込んで売り込もう」とすると、情報が詰まりすぎて何も伝わらず、いきなりの売り込みで警戒されます。ステップメールは、1通で売り込まず、役割を分けて順に届けることで、リードの検討を1段ずつ進める設計です。1通に詰め込むのは、この設計を壊してしまいます。
待機時間は消化して次に進む間で置く
各メールの間には、待機時間(次のメールまでどれだけ空けるか。製品によっては「タイミング」などと呼び、指定した間隔に達するまでそのリードは待機します)を置きます。待機時間の置き方には原則があります。
まず、間隔が短すぎると「しつこい」と感じられ、長すぎると忘れられます。リードが内容を消化して次に進む程度に空けるのが基本です(共通例では数日単位。これも架空の設定です)。次に、行動を待つ分岐の直前には、行動が起きる猶予を待機で確保します。たとえばメール2を送ってすぐ「開封しなかった人」の枝を発火させると、まだ開封していないだけの人まで再送に流してしまいます。開封を判定するまでに数日待ってから、分岐を発火させます。
そしてもう1つ、濃いルートは間隔を詰め、薄いルートは間隔を空けて休眠へという原則です。価格ページを見た濃いリードには、機を逃さないよう間隔を詰めて次を送る。無反応が続く薄いリードには、間隔を大きく空けて休眠ルートへ移します。同じシナリオの中でも、検討段階によって間隔を出し分けるわけです。
配信停止リンクを入れ、配信停止者はシナリオから外す
待機と中身を割り付けるとき、忘れてはならない機能が1つあります。すべてのメールに配信停止(オプトアウト)の仕組みを入れ、配信停止した人はシナリオから外すことです。そもそも広告・宣伝メールは、承諾を得た相手にだけ送るのが原則です(あらかじめ承諾していない相手への広告メールは原則禁止とされています)。配信頻度が高すぎて迷惑メールと受け取られると、配信停止されるだけでなく信頼も失います。配信停止リンクを必ず入れ、配信停止した人には以後送らない——これを機能としてシナリオに組み込んでおきます。なお、配信停止や同意取得の具体的な要件は、消費者庁・総務省のガイドラインで最新のものを確認してください。
勤怠管理クラウドの各枝に割り付ける
共通例の各ルートに、メールの役割・待機時間・件名の方向性を割り付けます。
| ルート | メール | 待機時間 | 件名の方向性 |
|---|---|---|---|
| 共通(入口) | メール1(お礼+チェックリスト) | 即時 | 「資料ダウンロードありがとうございます」 |
| 共通(入口) | メール2(よくある失敗と回避策) | 3日後 | 「勤怠管理システム選びでつまずく3つの失敗」 |
| 再送ルート(開封なし) | メール2を件名変えて再送 | 開封判定の猶予後 | 「【再送】選定でつまずく前に」 |
| 通常ルート(開封あり・価格ページ見ず) | メール3(通常の導入事例) | メール2から4日後 | 「同じ規模の会社の導入事例」 |
| 濃いルート(価格ページ閲覧) | メール3(導入事例+個別相談) | 間隔を詰めて翌日など | 「価格をご覧の方へ:事例と個別相談のご案内」 |
| 休眠ルート(無反応継続) | 配信間隔を大きく空ける | 大きく空ける | 頻度を落として休眠 |
スコアが50点(仮)に到達したリードは、どのルートにいてもゴール(MQL化・営業通知)へ集約します。この待機日数や件名は、すべて説明のための架空の作例です。ポイントは、「濃い人には詰めて濃い内容、薄い人には空けて休眠」という出し分けが、待機時間と中身の両方で表現されていること。なぜその間隔・順番なのかを問われたら、いつも「そのリードの検討段階に合わせたから」と答えられる状態を目指します。
この章の確認(演習)
共通例の各枝(通常ルート/再送ルート/価格ページ閲覧ルート/休眠ルート)に、メールの役割と待機時間を割り付ける表を1つ作ってください。そして「なぜこの間隔・順番か」を、検討段階に紐づけて1行ずつ書きます。あわせて、全メールに配信停止リンクを入れ、配信停止者を外す設計になっているか確認しましょう。書けたら、自分の商材で1ルート分(メール3通+各待機時間)を割り付けてみてください。「検討段階に応じて中身と間隔を出し分ける」を、表で表現できたら合格です。
分岐図に落として配信前チェックをする(1枚の図・行き止まり/堂々巡りの点検)
トリガー・ゴール・分岐・メールと待機がそろいました。最後に、全体を1枚の分岐図に落として点検し、配信ボタンを押す前に「行き止まり・堂々巡り」を潰します。この章で、シナリオを配信前まで仕上げる工程を通しましょう。
この章のゴール
この章を読み終えると、トリガー→メール→分岐条件→待機→ゴールを線でつないだ分岐図を1枚作成でき、配信前チェック(トリガー・分岐の網羅・無限ループ・配信停止の尊重・ゴールの出口)を1つずつ通して、行き止まり・堂々巡りのないシナリオに整えられるようになります。
頭の中の分岐は必ず抜け・堂々巡り・行き止まりを含む
ここまでの設計がそろったら、全体を1枚の分岐図に落とします。分岐図とは、トリガー(起点)→メール→〔分岐条件で枝分かれ〕→待機→……→ゴール(出口)を線でつないだ図のこと。本講座では、これをmarkdownの表と箇条書きで1枚に表現します。
なぜわざわざ図にするのか。それは、頭の中で組んだ分岐は、必ず抜け・堂々巡り・行き止まりを含むからです。「作って配信すれば完成」と思って図にせず配信すると、片方の枝しか描けていなかったり、どこにも行き着かない枝が残っていたりします。図にして目で追うことで、初めてその抜けに気づけます。
配信前チェックの6観点
図を目で追うときは、次の6つの観点で点検します。
| チェック項目 | 見るポイント |
|---|---|
| ①トリガーが1つか | 起点が1つに定まっているか(複数まざっていないか) |
| ②各分岐がYes/No両方の行き先を持つか | 片方の枝しか描いていない=網羅漏れがないか |
| ③無限ループが無いか | AがBへ、BがAへ戻って永久に回る箇所が無いか |
| ④行き止まりが無いか | どの枝も最後はゴールか休眠(明確な出口)に着くか |
| ⑤配信停止者が抜けるか | 配信停止した人が全ルートから抜ける設計か |
| ⑥ゴール到達者が営業へ通知されるか | 到達者が確実に営業へ引き渡される出口があるか |
この6点を、図の上で指でなぞるように1つずつ確認していきます。
勤怠管理クラウドを分岐図にして6観点で点検する
共通例を分岐図にしてみましょう(すべて架空の設定です)。
- トリガー=資料ダウンロード
- →メール1(即時)→待機3日→メール2
- →〔分岐:メール2を開封した?〕
- No=件名を変えて再送→待機→開封判定に戻す
- Yes=待機4日→次へ
- →〔分岐:価格ページを見た?〕
- Yes=メール3を「導入事例+個別相談」に寄せ、間隔を詰めて送る
- No=メール3は通常の導入事例
- →〔分岐:スコアが50点(仮)以上?〕
- Yes=ゴール(MQL化・営業通知)へ集約
- No かつ無反応が続く=休眠ルート(配信頻度を落として停止)
この図を、先ほどの6観点で点検します。「開封した?」のYes/No両方に行き先があるか(②)。再送の枝が「また未開封→また再送→……」と永久に回らないか(③。回りそうなら再送は1回までにして、その後は休眠へ落とす、と決めておきます)。休眠ルートが明確な出口(配信頻度を落として止まる)に着くか(④)。配信停止した人が全ルートから抜けるか(⑤)。スコア到達者が本当に営業通知に集約するか(⑥)。1つでも抜けが見つかったら、そこを塞いでから配信します。
配信後は初回の数字を図の上で読む
配信を有効化したら、初回の数字を図の上で読みます。共通例の架空の数字で練習しましょう。
- 対象リード:100件
- メール1の開封:40件(開封率=40÷100=40%)
- メール2のリンククリック:10件(クリック率は分母の取り方で変わります。開封を分母にすると10÷40=25%、配信を分母にすると10÷100=10%)
- 価格ページ閲覧:5件
- MQL到達:2件
ここで大事なのは、この40%を「良い/悪い」で判断しないことです。これらは説明のための架空の数字で、業界平均やベンチマークと比べるためのものではありません。数字の使い方は、「上流(開封)は来ているのに、下流(クリック→ページ閲覧→MQL)でどこが落ちているか」を、分岐図の上で順にたどることにあります。上の例なら、開封40件からクリック10件、閲覧5件、MQL2件へと減っていく流れを図でたどり、「どの分岐で人が減ったか」を見ます。そして、初回の少ないデータでいきなり図を大改造しないこと。まずは配信前チェックで見つけた抜けを塞ぐのが先です。
この章の確認(演習)
共通例のシナリオを、markdownの表または箇条書きで1枚の分岐図に描いてください。そして配信前チェック6項目(①トリガー1つ/②各分岐Yes/No両方/③無限ループ無し/④行き止まり無し/⑤配信停止で離脱/⑥ゴールの通知)を、それぞれ「済/未」で点検します。1つでも「未」があれば、修正案を1行書きましょう。次に、自社のシナリオを同じ6項目で点検するためのチェックリストを作ってください。分岐図を1枚仕上げ、配信前チェックで「行き止まり・堂々巡りのない」状態に整えられたら、この講座のゴールに到達です。
まとめ:MAシナリオは「メールを並べる」でなく、行動で枝分かれさせ1枚の図でゴールに集約させる
おつかれさまでした。「勤怠管理クラウドの資料ダウンロードリードを営業に渡す」という1つの場面を、仕組み→トリガー/ゴール→分岐条件→メール/待機→分岐図/配信前チェックと、1段ずつ組み上げてきました。最後に、MA シナリオ 設計の5ステップを1枚に振り返ります。
- 仕組み……シナリオはリードの行動(トリガー)で人ごとに始まり、行動で枝分かれし、ゴール(営業への引き渡し)に集約する。一斉配信とは起点・分岐・出口が違う(第1章)
- トリガーとゴール……分岐を組む前に両端を固定する。トリガーは1つに絞り、ゴールは「メール送りきり」でなくリードの状態(MQL化)で置く。まず分岐なしの一本道(お礼→教育→事例→案内)で骨組みを組む(第2章)
- 行動条件で分岐……開封<クリック<ページ閲覧<スコア基準の濃さの順で、「その行動は検討がどこまで進んだサインか」に紐づけて分岐を選ぶ。濃いサインは濃いルート、薄いサインは取り返す枝。主要分岐は2〜3に絞る(第3章)
- メールと待機……各枝に役割の違うステップメールと待機時間を割り付ける。濃いルートは詰める、薄いルートは空けて休眠へ。配信停止リンクを入れ、配信停止者は外す(第4章)
- 分岐図と配信前チェック……全体を1枚の分岐図に落とし、トリガー1つ/分岐Yes-No両方/無限ループ無し/行き止まり無し/配信停止で離脱/ゴールの通知の6項目を点検する(第5章)
この5つは、すべて1つの合言葉に戻ります——「その行動は、リードの検討がどこまで進んだサインか」。どの行動で分けるのも、どのルートに送るのも、判断の軸はいつもこれです。この地図さえあれば、管理画面のブロックに圧倒されることはもうありません。
明日の最初の一歩:自分(自社)の獲得目的を1つ選び、①トリガー(起点)とゴール(出口=MQL化)を1つずつ定義する ②メール3〜4通の一本道の骨組みを作る ③検討が進んだサインになる行動で分岐を2つ足す ④各枝に待機時間とメールの役割を割り付ける ⑤markdownの表で1枚の分岐図に描いて配信前チェック6項目を通す——ここまでを紙1枚に書き出してみてください。「配信を有効化する前の分岐図」が1枚できあがります。
そして、今日つかんだこの分岐図を土台に、さらに一歩踏み込みたくなったら、その先の道も用意されています。検討段階別にどんなコンテンツを出すかの対応表づくり(リードナーチャリングのコンテンツ設計)、分岐に使うスコアそのものの配点ルールづくり(リードスコアリング設計)、営業への引き渡し基準の定義(MQL・SQL基準づくり)——これらを実務レベルで深掘りする講座が続きます。本講座で作った分岐図が、それぞれの各論を差し込む土台になります。続きは有料プランで学べます。まずは今日の5ステップで、行動分岐シナリオを配信前まで組み上げる1本道を、自分の手で通してみてください。