リーダーシップの基本 | マナビズ

リーダーシップの基本

リーダーシップの基本

「来月から、後輩の面倒を見てくれない?」——上司にそう言われて、うれしさよりも先に、不安がこみ上げてきた。そんな経験はありませんか。「自分にはリーダーの素質なんてない」「カリスマも、ぐいぐいみんなを引っ張る強さもない」。そう思うと、リーダーという役割が、急に自分には縁遠いもののように感じられます。

あるいは、もう後輩を持っていて、こんな空回りに心当たりがあるかもしれません。よかれと思って一から十まで教えたら、できる後輩に「いちいち細かいな」という顔をされた。逆に任せてみたら、入ったばかりの新人が何をしていいか分からず固まってしまった。一生懸命やっているのに、なぜかかみ合わない。

でも、安心してください。リーダーシップは、生まれ持った性格やカリスマではありません。相手の状況に合わせて、2つの行動を使い分ける“技術”です。だから、声が大きくなくても、引っ張るタイプでなくても、誰でも学んで身につけられます。できるリーダーとの違いは、性格や声の大きさではなく、相手かまわず同じ関わり方をするか、相手の状況を見て変えるかだけなのです。

この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. リーダーシップを「生まれ持った性格・カリスマ」ではなく、指示型・支援型の2つの行動を相手の状況で使い分ける“後から身につくスキル”として、自分の言葉で説明できる
  2. 指示型のリーダー行動(何を・どうやって・いつまでを具体的に伝える)と、支援型のリーダー行動(聞く・任せる・承認する)の中身と、それぞれが効く相手・状況を説明できる
  3. 相手の習熟度(その仕事にどれだけ慣れているか)を見て、指示型と支援型を使い分けられる

この講座は最後まで、「新しくオープンするカフェ店舗をはじめて任された若手店長のあなたが、先週入ったばかりの新人・ゆいさんと、別の店で3年やってきたベテラン・けんさんに、ラテ作りを覚えてもらう」という、たった1つの場面だけで説明します。この同じチームを、リーダーシップとは何か→新人にどう教えるか→ベテランをどう支えるか→相手の習熟度でどう使い分けるか、と1つずつ埋めていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分の後輩を思い浮かべながら読み進めてみてください。そして、この「指示型・支援型の使い分け」を、1on1や目標設定、フィードバックといった具体的な場面でも使えるようにしたくなったら、無料会員登録で続きの講座に進めます。まずは、この1本で全体像を掴みましょう。

この講座のポイント

  • リーダーシップを「生まれ持った性格・カリスマ」ではなく、指示型・支援型の2つの行動を相手の状況で使い分ける“後から身につくスキル”として、自分の言葉で説明できる
  • 指示型のリーダー行動(何を・どうやって・いつまでを具体的に伝え、手本を見せ、こまめに確認する)の中身と、それが効く相手・状況を説明できる
  • 支援型のリーダー行動(話を聞く・任せる・できたことを承認する)の中身と、それが効く相手・状況を説明できる
  • 相手の習熟度(その仕事にどれだけ慣れているか)を見て、指示型と支援型を使い分けられるようになります(同じ相手でも、成長に合わせて指示を減らし支援に移す、と判断できます)。

リーダーシップとは何か(性格でなく、指示型・支援型の使い分け)

まずは、「自分には素質がない」というモヤモヤの正体をはっきりさせましょう。リーダーシップという言葉を、ふわっとした「カリスマ」のイメージから、自分で使える具体的な“行動”に変える土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、リーダーシップを「生まれ持った性格・カリスマ」ではなく、指示型・支援型の2つの行動を相手の状況で使い分ける“後から身につくスキル”として、自分の言葉で説明できるようになります。

「自分には素質がない」というモヤモヤの正体

はじめて後輩を持ったとき、「自分にはリーダーの素質がない」と感じてしまうのは、あなたの能力が足りないからではありません。多くの場合、その正体は、リーダーシップを「生まれ持った性格やカリスマ」だと思い込んでいることにあります。

「リーダー」と聞いて、声が大きく、みんなをぐいぐい引っ張る人を思い浮かべると、物静かな自分とは別物に見えてしまいます。でも、それは「リーダーシップ=特別な性格」という、せまい思い込みです。この章で、その思い込みをほどきましょう。

ここで先に、この講座の背骨を渡しておきます。リーダーシップは“性格”ではなく“使い分け”。相手の状況に合わせて、教えることと支えることを配分するスキルです。性格は関係ありません。だから、あなたにもできます。

リーダーシップは「性格」でなく「行動」だから、後から身につく

では、リーダーシップとは何でしょうか。ひとことで言うと、メンバーが仕事をうまく進められるように、リーダーが取る“行動”のことです。カリスマ性や声の大きさといった「その人がどんな性格か」ではなく、「その人がどんな行動を取るか」。ここが出発点です。

実は、このとらえ方には背景があります。昔のリーダーシップ研究は、「優れたリーダーには生まれ持った資質がある」と考え、その資質を探していました。ところが、いくら探しても「リーダーに共通する性格」ははっきり見つからず、むしろ「優れたリーダーは、生まれつきではなく“取っている行動”が違う」という方向へ進んでいきました。この大事なところは、行動なら、経験と訓練で後から身につけられるということです。生まれつきの性格は変えられませんが、行動は学べます。リーダーシップは「向き・不向き」で終わる話ではないのです。

ここで、いちばんありがちな誤解を先回りで潰します。「リーダーシップ=カリスマ・生まれつきの性格」という思い込みです。「自分には素質がない」という言葉は、よく見ると、性格の話(カリスマがない)と、行動の話(リーダーとして何をするか)を混同しています。カリスマがなくても、取るべき行動を学べば、リーダーの役割は果たせます。素質の問題ではなく、行動の問題だ——まずここを握ってください。

リーダーの行動は2つ:指示型(教える)と支援型(支える)

「リーダーシップは行動だ」と言っても、行動は無数にあります。そこで、リーダーの行動を、大きく2つに分けて整理します。これが、この講座の地図になります。

リーダーの2つの行動何をするかひとことで言うと
① 指示型(タスクを教える)何を・どうやって・いつまでにやるかを具体的に伝え、手本を見せ、進み具合を確認する仕事を教える
② 支援型(人を支える)相手の話を聞き、本人に任せ、できたことを承認し、相談に乗る人を支える

指示型は、仕事の中身(タスク)をかみくだいて教える行動です。「何を、どうやって、いつまでに」をはっきり伝え、手本を見せ、ちゃんと進んでいるかを確認します。支援型は、相手を一人の人として支える行動です。話を聞き、やり方を任せ、できたことを認めます。なお、専門的にはこの2つを「指示的行動」「援助的行動」と呼びますが、名前は覚えなくて大丈夫です。「仕事を教える」と「人を支える」の2つだ、と掴んでください。

ここで大事なのは、この2つに「どちらが正しい」はないということです。「ぐいぐい指示するのが強いリーダー」でも、「何でも任せるのが優しいリーダー」でもありません。指示型と支援型は、相手の状況に合わせて、どんな配分で出すかを変えるための2つの道具です。この使い分けこそが、リーダーシップの中身です。

では、その共通例に登場してもらいましょう。あなたは、新しくオープンするカフェ店舗を、はじめて任された若手店長です。チームには2人。先週入ったばかりで、カフェの仕事は初めての新人・ゆいさんと、別の店で3年働いてきたベテラン・けんさんがいます。あなたの仕事は、二人に「店のドリンク(ラテ)を作れるようになってもらう」こと。

さて、ここで「自分はカリスマじゃないから無理だ」と尻込みするのでも、二人にまったく同じ調子で接するのでもありません。考えるのは、「ゆいさんには、どう関わる?」「けんさんには、どう関わる?」という2つの問いです。この章では、まだ中身は埋めません。この2つの“枠”だけを立てておきます。次の章から、この枠を1つずつ埋めていきます。

この章の確認(演習)

共通例の「カフェ店舗」について、新人・ゆいさんと、ベテラン・けんさんのそれぞれに、いまの自分なら、どんな言葉をかけるかを1つずつ書き出してみてください。正解はまだ気にしなくて大丈夫です。

そのうえで、「リーダーシップとは、相手の状況に合わせて“指示型(教える)”と“支援型(支える)”を使い分けることだ」を、自分の言葉で1〜2行に書いてみます。性格や「強い・優しい」ではなく、“相手×2つの行動”で考える——その感覚を、自分の手で言葉にできたら、この章はゴールです。

指示型のリーダー行動(何を・どうやって・いつまでを具体的に伝える)

地図の1つめ、指示型(仕事を教える)を埋めていきます。新人・ゆいさんへの関わり方を通して、「教える」とは具体的に何をすることかを掴みます。

この章のゴール

この章を読み終えると、指示型のリーダー行動(何を・どうやって・いつまでを具体的に伝え、手本を見せ、こまめに確認する)の中身と、それが効く相手・状況を説明できるようになります。

指示型とは、タスクを「迷わず動ける」レベルまで具体的に渡すこと

指示型のリーダー行動とは、仕事の中身を、相手が迷わずに動けるレベルまで、具体的に伝えることです。「ちゃんとやっといて」では、相手は何をどうすればいいか分かりません。指示型では、次の4つをはっきり渡します。

指示型の4つの中身伝えること
① 何をこの仕事のゴール・完成形(どうなったら「できた」か)
② どうやって手順・やり方(迷わない粒度で、1ステップずつ)
③ いつまでに期限・タイミング
④ 手本+確認まず手本を見せ、進み具合をこまめに確認し、ズレたら早めに直す

この4つがそろうと、相手は「何を目指して、どう動き、いつまでに、どこを見てもらえるのか」が分かり、安心して手を動かせます。逆に、どれかが抜けると、相手は止まったり、見当違いの方向に進んだりします。指示型とは、この4つをセットで渡すことだと覚えてください。

指示型が効くのは「その仕事に不慣れな相手」

ここで大事なのが、指示型は「いつでも正しい」わけではないということです。指示型がはっきり効くのは、その仕事に不慣れな相手——入ったばかりの新人、はじめてやる作業、まだ慣れていない人です。

なぜなら、不慣れな人は、そもそも「何を、どうやればいいか」を知りません。そこへ「いい感じにやっといて」と任せるのは、優しさでも支援でもなく、ただの放置です。本人は何から手をつけていいか分からず不安になり、ミスをして自信をなくします。不慣れな相手には、4つを具体的に渡すことこそが、いちばんの“支え”になります。

一方で、裏返しも覚えておいてください。すでに慣れている相手に、同じ細かさで指示し続けると、逆効果です。「いちいち細かいな」「信用されていないのかな」と、かえってやる気を削いでしまいます。だから指示型は、「悪いこと」でも「常に正しいこと」でもなく、不慣れな相手・新しい仕事に効く道具だと位置づけてください。「指示は上から目線だ」と遠慮して新人にまで教えないと、今度は新人が困ります。

共通例:新人・ゆいさんにラテ作りを教える

では、新人・ゆいさんにラテ作りを教える場面を、指示型でやってみましょう。ゆいさんは先週入ったばかりで、カフェの仕事は初めて。まさに「不慣れな相手」です。

  • ① 何を:お客さまに出せるラテを、1杯きちんと作れるようになる。
  • ② どうやって:この手順カードのとおりにやってみよう。まずミルクを分量どおりに量って、次に…と、1ステップずつ。
  • ③ いつまでに:今日は、私が横について一緒に3杯作ろう。来週には一人で作れるように。
  • ④ 手本+確認:まず私が1杯、手本を作って見せるね。そのあとゆいさんが作るのを横で見ているから、1杯ごとに見せてもらえる?

ここまで具体的だと、ゆいさんは「何をどうすればいいか」が分かり、安心して始められます。これを「ラテ、よろしく」の一言で済ませたら、ゆいさんは何から手をつけていいか分からず、固まってしまうはずです。第1章で立てた「ゆいさんにどう関わる?」の枠が、これで「指示型」と埋まりました。

この章の確認(演習)

共通例の新人・ゆいさんに、ラテ作り以外の仕事を1つ選んでみてください(たとえば「レジ締め」や「開店準備」など)。そして、その仕事について、① 何を ② どうやって ③ いつまでにを、ゆいさんが迷わず動ける具体度で書き出してみます。

書けたら、最後にひとつ。それを「よろしく」の一言に縮めたら、ゆいさんに何が起きるかを、1行で書いてみてください。不慣れな相手にとって、具体的な指示がなぜ“放置”ではなく“支え”になるのか——その違いが、自分の手で見えてきたら、ゴールです。

支援型のリーダー行動(聞く・任せる・承認する)

地図の2つめ、支援型(人を支える)を埋めます。今度は、ベテラン・けんさんへの関わり方を通して、「支える」とは具体的に何をすることかを掴みます。

この章のゴール

この章を読み終えると、支援型のリーダー行動(話を聞く・任せる・できたことを承認する)の中身と、それが効く相手・状況を説明できるようになります。

支援型とは、相手が自分で動けるように、人として支えること

支援型のリーダー行動とは、相手が自分で考えて動けるように、人として支えることです。手取り足取り教えるのではなく、相手の力を信じて、後ろから支えます。中身は、次の3つです。

支援型の3つの中身何をするか
① 聞く相手の話・困りごと・やりたいことに、まず耳を傾ける(自分が話す前に)
② 任せるやり方を細かく指示せず、判断とやり方を本人にゆだねる
③ 承認するできたこと・努力を、具体的に認めて言葉で返す

聞くとは、自分が指示を出す前に、まず相手の話を最後まで聞くこと。任せるとは、やり方の細部まで指定せず、「どうやるか」を本人に決めてもらうこと。承認するとは、できたことや頑張りを、「すごいね」で流さず、何がどうよかったかまで言葉にして返すことです。専門的にはこうした関わりを「援助的行動」と呼びますが、名前は覚えなくて大丈夫。「聞く・任せる・承認する」の3つだ、と掴んでください。

支援型が効くのは「その仕事に慣れた相手」

支援型が効くのは、その仕事に慣れていて、自分でできる(できつつある)相手です。すでにやり方が分かっている人に、細かく指示する必要はありません。むしろ細かく指示し続けると、「自分は信用されていないのかな」と感じさせ、やる気を削いでしまいます。

慣れた相手には、指示を引いて、「任せる・聞く・認める」を増やすほうが効きます。任されると人は「自分で工夫してみよう」と考え始め、聞いてもらえると改善のアイデアを出しやすくなり、認められると「次もがんばろう」と思えます。こうして本人の主体性とやる気が伸びていく——これが、慣れた相手に支援型が効く理由です。指示型とは、効く相手がちょうど裏返しになっています。

いちばんの肝:「任せる」は「放置」ではない

ここが、支援型でいちばん間違えやすいところです。「任せる」は「放置」ではありません。

「任せる=もう何も言わない・関わらない」だと思って仕事を丸投げし、その後は声もかけず、できても何も言わない——これは支援ではなく、ただの放任です。支援型の「任せる」は、必ず「聞く」と「承認する」とセットです。やり方は任せるけれど、いつでも相談に乗れる状態を示し、困っていないか気にかけ、できたら認める。この支えがあるから、相手は安心して任された仕事に踏み出せます。

ここで、第1章で触れた誤解を1つ潰します。「優しいリーダー=何でも任せて口出ししない人」という思い込みです。「任せる」の後ろに「聞く・承認する」があるかどうか——それが、支援と放任の分かれ目です。

共通例:ベテラン・けんさんを支援型で支える

では、ベテラン・けんさんへの関わりを、支援型でやってみましょう。けんさんは別の店で3年やってきたので、ラテ作りはまったく問題ありません。新人と同じように細かく指示したら、「3年やってるのに信用されていないのかな」と感じさせてしまいます。そこで、支援型です。

  • ① 聞く:「最近どう? この店、やりにくいところや、こう変えたいってところある?」
  • ② 任せる:「店のドリンクまわりは、けんさんに任せます。やり方はけんさんのいいと思う形で大丈夫。」
  • ③ 承認する:「この前の混んでた時間帯のさばき方、すごく助かった。お客さんを待たせない動き、さすがだなと思った。ありがとう。」

任せると同時に、聞いて、具体的に承認している——だから、これは「放置」ではありません。けんさんは「信頼して任されている」と感じ、自分から店をよくする工夫を始めてくれるはずです。第1章で立てた「けんさんにどう関わる?」の枠が、これで「支援型」と埋まりました。

この章の確認(演習)

共通例のベテラン・けんさんに向けて、「最近どう?」から始めて、① 聞く ② 任せる ③ 承認するを1つずつ、実際のセリフの形で書いてみてください。

このとき、③の承認は、「すごい」「えらい」の一言で終わらせないのがコツです。「何が・どうよかったか」まで、具体的に言葉にしてみましょう。たとえば「混雑時に注文を聞く順番を工夫してくれたから、列がスムーズに進んだ」のように。承認を具体的にできたら、ゴールです。

状況で使い分ける(相手の習熟度で、指示と支援の配分を変える)

最後の章では、ここまで分けて見てきた指示型と支援型を、どう使い分けるかをまとめます。カギになるのは、相手の「習熟度」です。

この章のゴール

この章を読み終えると、相手の習熟度(その仕事にどれだけ慣れているか)を見て、指示型と支援型を使い分けられるようになります(同じ相手でも、成長に合わせて指示を減らし支援に移す、と判断できます)。

使い分けの目安は「相手の習熟度」:4段階で配分を変える

指示型と支援型は、「どちらが正しい」ではなく、相手がその仕事にどれだけ慣れているか(習熟度)に合わせて、配分を変えるものでした。その目安を、習熟度の段階ごとに4つに整理すると、こうなります。

相手の習熟度指示と支援の配分関わり方
① まったくの新人(やり方を知らない)指示◎・支援は控えめ指示型:とにかく具体的に教える
② 少し慣れたが、まだ自信がない指示◎・支援◎コーチ型:手順は教えつつ、励ます
③ ほぼできるが、不安が残る指示は引く・支援◎支援型:任せて、聞いて、支える
④ 一人で安心して回せる指示も支援も最小委任型:任せきる

ポイントは、①から④へ、相手の成長に合わせて、だんだん指示を減らし、支援に移していくことです。コーチ型は「指示も支援も多い関わり」、委任型は「指示も支援も最小の関わり」と思ってください。

なお、こうした「相手の状況に合わせてリーダーの関わり方を変える」という考え方は、ハーシーとブランチャードという研究者が提唱したSL理論(状況対応リーダーシップ)として知られています。日本でも、リーダーの行動を「成果に向ける行動」と「人間関係に向ける行動」の2つで捉えるPM理論(三隅二不二)という考え方があります。理論の名前は覚えなくて大丈夫です。「相手の習熟度で、指示と支援の配分を変える」——これだけ持って帰ってください。

同じ人でも「仕事が変われば段階は戻る」

ここで、勘違いしやすい点を2つ、つぶしておきます。1つめは、配分は「その人」で決まるのではなく、「その人 × その仕事」で決まるということです。

「けんさんはベテランだから、いつも委任型でいい」とは限りません。たとえば、店に新しいレジ機が導入されたとします。その操作は、けんさんにとっても初めて。この仕事に関しては“新人”なので、いったん指示型に戻して具体的に教える必要があります。逆に、新人のゆいさんでも、もう慣れた仕事は支援型でかまいません。「この人はベテランだから」と人で固定するのではなく、いま任せている“その仕事”に、その人がどれだけ慣れているかで見るのです。

使い分けは「えこひいき」ではない/自分の“型”に固定しない

2つめの勘違いは、相手によって関わり方を変えるのは「えこひいき」ではないか、という心配です。結論から言うと、えこひいきではありません。ゆいさんに細かく教え、けんさんに任せるのは、好き嫌いで差をつけているのではなく、二人の「その仕事への慣れ」が違うから、それに合わせているだけです。むしろ全員に同じ関わり方をするほうが、一人ひとりに合っていません。「相手の状況に合わせて配分を変えているだけ」と、自分でも説明できるようにしておきましょう。

もう1つ。「自分は指示型タイプだ」「支援型タイプだ」と、自分の関わり方を固定しないことも大切です。リーダーシップの研究でも、「どんな状況にも効く、唯一最高のやり方は存在しない」ことが分かっています。大事なのは、自分の好みを貫くことではなく、相手の状況に合わせて、自分のスタイルのほうを変えられること。必要なのはカリスマではなく、相手を見て配分を選ぶ、この使い分けだけなのです。

共通例:ゆいさんの成長と、けんさんのレジ機

では、共通例で総まとめです。同じチームでも、新人ゆいさん=指示型、ベテランけんさん=委任型に近い支援型と配分が違います。二人の「ラテ作りへの慣れ」が違うからです。

さらに、同じゆいさん1人を、時間を追って見てみましょう。

時期ゆいさんの習熟度関わり方
入店初日やり方を知らない指示型:手順を全部、具体的に教える
2週間後手順は覚えたが、まだ不安コーチ型:手順を確認しつつ「いいね、その調子」と励ます
1か月後ほぼ一人でできる支援型:「自分ならどう改善したい?」と任せて聞く
3か月後安心して任せられる委任型:「ドリンクは任せたよ」

同じゆいさんでも、成長に合わせて、指示型からだんだん委任型へと移していきます。一方、けんさんも、新しく入ったレジ機の操作については、いったん指示型に戻す。こうして「相手と仕事の状況を見て、指示と支援の配分を変える」のが、この講座でお伝えしてきたリーダーシップです。

この章の確認(演習)

まず、共通例の「ゆいさんの成長(初日→2週間後→1か月後→3か月後)」に、指示型/コーチ型/支援型/委任型のどれが合うかを、4-4の表を見ずに並べてみてください。

次に、自分の身近な後輩やメンバーを1人思い浮かべてください。そして、「いま任せている仕事に、その人はどれくらい慣れているか(習熟度)」と、「だから、指示型と支援型をどんな配分にするか」を、1〜2行で書いてみます。学んだ使い分けを、自分の現場に当てられたら、ゴールです。

まとめ:リーダーシップは“性格”でなく“使い分け”

おつかれさまでした。「カフェ店舗の新人ゆいさんとベテランけんさん」という1つの場面を通して、リーダーシップとは何か→新人にどう教えるか→ベテランをどう支えるか→相手の習熟度でどう使い分けるか、と1つずつ埋めてきました。第1章で立てた2つの問いを、ここで振り返ります。

  1. リーダーシップとは……生まれ持った性格やカリスマではなく、リーダーが取る“行動”。行動だから、経験と訓練で後から身につけられる。その行動は、指示型(仕事を教える)と支援型(人を支える)の2つに分けられる(第1章)。
  2. 指示型(教える)……何を・どうやって・いつまでにを具体的に伝え、手本を見せ、こまめに確認する。不慣れな相手に効く。不慣れな人への丸投げは、支援ではなく放置(第2章)。
  3. 支援型(支える)……聞く・任せる・承認する。慣れた相手に効く。ただし「任せる」は「放置」ではなく、聞く・承認するとセット(第3章)。
  4. 使い分け……相手の習熟度に合わせて、指示と支援の配分を変える。新人=指示型→コーチ型→支援型→委任型と、成長に合わせて指示を減らす。同じ人でも、仕事が変われば段階は戻る。相手で配分を変えるのは、えこひいきではなく状況対応(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「『この後輩に、どう関わる?』に、自分の性格や“強い・優しい”ではなく、“相手の習熟度→指示と支援の配分”で答えられているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——リーダーシップは“性格”でなく“使い分け”。相手の状況に合わせて、教えることと支えることを配分する。これが身につくと、「後輩の面倒を見て」と言われても、「自分には素質がない」ではなく、「この子はこの仕事にどれくらい慣れているかな。だったら、まずは指示型で…」と、落ち着いて考えられるようになります。

明日の最初の一歩:自分の身近な後輩やメンバーを1人選び、① その人が、いま任せている仕事にどれくらい慣れているか(習熟度)② だから、指示型(教える)と支援型(聞く・任せる・承認する)をどんな配分にするか ③ 明日かける言葉を1つ、書いてみてください。きれいにまとめる必要はありません。「この後輩にどう関わる?」に、自分の性格からではなく、相手の状況から答えられたら、それが第一歩です。

そして、この「指示型・支援型の使い分け」を、もっと具体的な場面で使いたくなったら、その先の道も用意されています。相手の話を引き出す1on1ミーティング、何を目指すかを揃える目標設定、できたこと・直すことを伝えるフィードバック、教えると引き出すを切り替えるティーチングとコーチング、一人ひとりを伸ばす部下育成——これらは、今日学んだ「使い分け」を、それぞれの場面で具体的にする技術です。続きは、無料会員登録で次の講座に進めます。まずは、この「相手の状況に合わせて、教えると支えるを配分する」という土台を、自分の後輩で1回、試してみてください。それが、すべての出発点になります。

よくある質問

リーダーシップとは何ですか?

生まれ持った性格やカリスマではなく、メンバーが仕事をうまく進められるようにリーダーが取る「行動」のことです。行動は経験と訓練で後から身につけられるため、声が大きくなくても誰でも学べます。

指示型と支援型はどう使い分ければよいですか?

相手の「習熟度」、つまりその仕事にどれだけ慣れているかで配分を変えます。不慣れな相手には具体的に教える指示型、慣れた相手には聞く・任せる・承認する支援型が効きます。

「任せる」と「放置」は何が違いますか?

支援型の「任せる」は、やり方を本人に委ねながらも、いつでも相談に乗れる状態を示し、できたことを具体的に承認するセットです。声をかけず何も認めない「放置」や「放任」とは異なります。

同じメンバーに対して関わり方を変えるのはえこひいきではないですか?

えこひいきではありません。好き嫌いで差をつけるのではなく、その人がその仕事にどれだけ慣れているかという「習熟度」に合わせて配分を変えているだけです。全員に同じ関わり方をする方が、一人ひとりの状況に合っていません。

リーダーシップは初心者でも身につけられますか?

はい。この講座で解説したとおり、リーダーシップは生まれつきの素質ではなく「指示型と支援型の使い分け」という行動スキルです。相手の習熟度を見て配分を変える、という考え方を繰り返し実践することで身につけられます。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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