面接が終わって、「うん、いい人そうだったね」と言ったあと、上司や一緒に入った面接官に「で、どこが良かったんですか?」と聞かれて、言葉に詰まってしまった——面接官を任され始めた頃、こんな経験はありませんか。当日その場で職務経歴書をめくりながら、思いついた質問を投げる。第一印象と雰囲気で「なんとなく良さそう」と判断する。複数人で評価が割れると、結局いちばん声の大きい人の意見で決まる。気づいたら時間が足りなくて、聞きたいことを聞けないまま「では最後に、何か質問はありますか」で終わってしまう。面接を「会って話して人柄を見る場」だと思っていると、こうなります。
でも、安心してください。面接がうまい人と、毎回モヤモヤが残る人の違いは、人を見る目(センス)でも、こなした面接の数でもありません。面接を“その場の会話”でやるか、それとも“先に設計してから”やるかだけです。その設計の仕方こそが、この講座で渡す道具です。
面接とは、「会って話す」ことではなく、先に決めた評価項目を、質問で確かめる場です。そして設計の順番は、たった3つ。①評価項目(何を見極めるか)→②質問(どう確かめるか)→③進行表(どの順で、何分で確かめるか)。当日の思いつきや第一印象でなく、この3つを面接の前に組んでから臨むだけです。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- 面接を「会って話して人柄を見る場」ではなく、評価項目→質問→進行表の3ステップで設計する場として、自分の言葉で説明できる(その場の思いつきや第一印象で評価しない)
- 見極めたいこと(評価項目)を、「コミュ力が高い」のような抽象語ではなく、観察できる行動で3〜5個に絞り、各項目の合否の目安(基準)とあわせて作成できる
- 評価項目ごとに、過去の具体的な行動を聞く質問(行動質問)を準備でき、オープニング→質問→候補者からの質問→クロージングの進行表(時間配分つき)を作成できる
この講座は最後まで、「カスタマーサポート(CS)チームのリーダー・佐藤さんが、中途採用で1人を面接する」という、たった1つの場面だけで説明します。佐藤さんは、すでに「求める人物像」を決めています(求める人物像をまだ言葉にできていない方は、姉妹講座『採用の基礎』からどうぞ)。この同じ面接を、面接とは何か→何を見極めるか→どう確かめるか→どの順で何分か、と1ステップずつ設計していきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、書きながら読み進めてみてください。評価項目・質問・進行表をそのまま埋められるテンプレート(評価シート+質問リスト+進行表)もダウンロードできます。自分の次の面接に当てはめながら進めると、読み終えたときには、1枚の面接設計図が手元に残ります。
この講座のポイント
- 面接を「会って話して人柄を見る場」ではなく、先に決めた評価項目を、質問で確かめる場として、設計の3ステップ(評価項目→質問→進行表)で説明できる
- 見極めたいこと(評価項目)を、「コミュ力が高い」のような抽象語ではなく観察できる行動で3〜5個に絞り、各項目の合否の目安(基準)とあわせて作成できる
- 評価項目ごとに、過去の具体的な行動を聞く質問(行動質問)を準備でき、答えが浅いときに深掘りできる
- オープニング→質問→候補者からの質問→クロージングの進行表(時間配分つき)を作成でき、複数の面接官の分担と、面接直後の評価まで段取りできる
面接とは何か(評価項目を質問で確かめる場)
まずは、面接が終わったあとに残る「いい人そうだったけど、根拠は?」というモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。面接という言葉を、「会って話す場」というぼんやりしたイメージから、自分で組み立てられる1枚の設計図に変える土台の章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、面接を「会って話して人柄を見る場」ではなく、先に決めた評価項目を、質問で確かめる場として、設計の3ステップ(評価項目→質問→進行表)で説明できるようになります。
「どこが良かったの?」に詰まる正体
あなたのセンスが足りないわけではありません。「どこが良かったの?」に詰まるのは、面接を「会って話して人柄を見る場」だと捉えていて、何を見極めるかを先に決めていない——これが正体です。
見極める基準を決めずに面接に入ると、頼れるのは結局「第一印象」と「その場の雰囲気」だけになります。だから、終わったあとに「良かった気はするけど、何が良かったのか」を言葉にできない。複数人で面接すれば、それぞれが別々の(しかも自覚していない)基準で見ているので評価が割れ、根拠が言葉になっていないぶん、いちばん声の大きい人の意見で決まってしまうのです。
ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。面接は“会って話す”のではなく、“決めて確かめる”。そして、設計の順番は、評価項目→質問→進行表。この順番さえ持てば、面接後に「どこが良かったの?」と聞かれても、「この項目を、この実話で確かめられたから」と、事実で答えられるようになります。
面接の目的は「入社後に活躍できるか」を見極めること
そもそも、面接は何のためにやるのでしょうか。人柄を見るため? 会話を楽しむため? 違います。面接の目的は、この人が、入社後にこの仕事で活躍できるかを、限られた時間で見極めることです。45分という短い時間で、入社後の何か月・何年を左右する判断をするのですから、行き当たりばったりではなく、設計が要ります。
ここで、「設計された面接」と「設計しない面接」の差を押さえておきましょう。当日その場で思いついた質問を投げる面接を、専門的には非構造化面接(いわゆる雑談面接)と呼びます。一方、見極めることと質問を先にそろえて、どの候補者にも同じように聞き、共通の基準で評価する面接を、構造化面接と呼びます。難しい言葉ですが、中身は「設計してから面接するか、しないか」の違いだけです。
そして、設計された面接(構造化面接)のほうが、入社後の活躍を読み違えにくいことが、複数の研究や、Googleのような企業の実践で、一貫して示されています。Googleは採用の仕組みを公開しており、その中で「構造化面接は、構造化されていない面接よりも、優秀な人を見極める予測の精度が高く、よくある落とし穴にも陥りにくい」と述べています。雑談で打ち解けると「いい人そうだ」とは感じられますが、それは「入社後に活躍できるか」とは別の話なのです。
設計は1枚の地図:評価項目→質問→進行表
では、面接をどう設計するのか。やることは、次の3ステップです。
| 順番 | 設計すること | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| ① 評価項目 | この面接で何を見極めるか | 何を? |
| ② 質問 | それをどう確かめるか | どう? |
| ③ 進行表 | どの順で、何分で確かめるか | いつ・何分? |
これが、面接設計の全体像=1枚の地図です。①評価項目から始めて、②質問、③進行表の順に埋めていきます。当日その場の思いつきや第一印象から入らないのがコツです。
なぜ第一印象から入ってはいけないのか。人は、第一印象に引きずられやすいからです。たとえばハキハキ話す候補者を見ると、「話し方が良い」という1つの印象だけで、「仕事もできそう」「気もきくだろう」と、関係ないところまで高く見えてしまう。これをハロー効果と呼びます(1つの目立つ良い印象が、全体の評価を引き上げてしまう思い込みのクセです)。さらに、いったん「良さそう」と思うと、その印象を裏づける情報ばかり拾い、引っかかる情報には目をつぶる。これが確証バイアスです。第一印象から入ると、この2つのワナにはまり、「設計したつもりが、最初の印象を後追いで正当化しただけ」になってしまいます。だからこそ、印象でなく、先に決めた評価項目から入ります。
ここで、この講座を通して使う共通例に登場してもらいましょう。CSチームのリーダー・佐藤さんです。佐藤さんのチームは問い合わせが増えてきて、中途で1人を採ることになりました。求める人物像は、すでに決めてあります——「問い合わせ対応の経験があり、クレームでも感情的にならず、自分で対応手順を改善できる人」。さて、この人を面接でどう見極めるか。地図を持たない状態だと、「とりあえず会って話して、ウチに合いそうか見よう」と、当日アドリブで臨んでしまいます。そうではなく、「①何を見極める? ②どう確かめる? ③どの順で何分?」の順で設計するのが面接です。この章では、まだ中身は埋めません。3つの枠だけを立てておきます。
この章の確認(演習)
共通例「佐藤さんの面接」について、いきなり質問を考えるのをやめて、次の3つの枠を、答えは空欄のまま書き出してみてください。
- ① 何を見極める(評価項目):_____
- ② どう確かめる(質問):_____
- ③ どの順で何分(進行表):_____
そのうえで、「面接とは、先に決めた評価項目を、質問で確かめる場だ」を、自分の言葉で1〜2行に書いてみます。その場の思いつきからではなく“枠”から入る感覚を、自分の手で言葉にできたら、この章はゴールです。空欄は、これから第2章・第3章・第4章で1つずつ埋めていきます。
評価項目を決める(見極めたいことを観察できる行動に)
設計の1ステップ目、評価項目(何を見極めるか)を埋めます。質問から考えたくなるのをぐっとこらえて、まず「何を確かめれば、活躍できるか判断できるのか」を決める章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、見極めたいこと(評価項目)を、「コミュ力が高い」のような抽象語ではなく観察できる行動で3〜5個に絞り、各項目の合否の目安(基準)とあわせて作成できるようになります。
「コミュ力が高い」では、評価が割れる
評価項目を決めるとき、多くの面接官が最初につまずくのが、こういう言葉です。「コミュニケーション能力が高い人がいい」「主体性がある人がいい」「ストレス耐性がある人がいい」。一見、ちゃんと基準を決めているように見えます。でも、これらはすべて抽象語です。そして、抽象語は人によって意味が違います。
たとえば「コミュ力が高い」と聞いて、ある面接官は「明るくよく話す人」を思い浮かべ、別の面接官は「相手の話を正確に聞き取って返せる人」を思い浮かべます。基準そのものがズレているので、同じ候補者を見ても評価が割れる。これが、面接官どうしで意見が食い違う、いちばんの原因です。
抽象語を、観察できる行動に翻訳する
ではどうするか。評価項目は、「その人が実際に何をしたら“できている”と言えるのか」という、観察できる行動に翻訳します。
たとえば「コミュ力が高い」を、CSの仕事に引きつけて翻訳すると、こうなります——「クレーム対応で、怒っている相手の要望を自分の言葉で言い換えて確認し、対応の手順を1つ提案できる」。どうでしょう。「コミュ力が高い」のままだと人によってブレますが、ここまで行動で書くと、誰が面接しても「その行動ができたエピソードがあるか/ないか」で判断できます。これが、評価項目を「観察できる行動」にするということです。
そして、各項目には、合否の目安(基準)を1行つけておきます。基準とは、「どんなエピソードが出れば満たす/出なければ満たさない」のラインです。たとえば先ほどの項目なら、「実際に怒っている相手の要望を言い換えて確認し、手順を提案した実話を、具体的に語れれば満たす」。基準があると、面接の最中に「今のは満たした、満たさない」をその場で判断でき、あとで事実をもとに振り返れます。
ひとつ、やってはいけないことがあります。「良い人かどうか」「ウチに合うか」といった全体の印象を、そのまま1つの評価項目にしないことです。それは観察できる行動ではなく、第一印象そのもの。ハロー効果をそのまま評価項目にしているようなもので、必ずブレます。
項目は3〜5個に絞る
評価項目は、いくつ作ればいいのでしょうか。答えは、3〜5個に絞るです。たくさん見極めたい気持ちは分かりますが、項目が10個もあると、45分の面接では1つも深く確かめられず、どれも上っ面で終わります。「あれもこれも」より、「この3〜5個だけは、実話で確かめて帰る」と決めるほうが、はるかに精度が上がります。
評価項目は、ゼロから考えるものではありません。すでに決めてある「求める人物像」を、面接で確かめられる行動に割り付けたものです。人物像づくりそのものは、この講座の前段(姉妹講座『採用の基礎』)の話なので、ここでは「人物像は決まっている」を出発点にします。手順はこうです。①求める人物像を書き出す→②各要素を「実際に何ができたら“できている”か」の観察できる行動に翻訳する→③似た項目をまとめて、最重要の3〜5個に絞る→④各項目に「どんなエピソードが出れば満たすか」の基準を1行つける。
では、佐藤さんの面接で、実際にやってみましょう。求める人物像「問い合わせ対応の経験/クレームでも感情的にならない/自分で手順を改善できる」を、観察できる評価項目に翻訳すると、こうなります。
| 評価項目(観察できる行動) | 合否の目安(基準) |
|---|---|
| ① 問い合わせ対応の実務経験 | 対応した問い合わせの種類・件数・1人で対応した範囲を、具体的に語れる |
| ② 感情的にならない対応 | 理不尽な相手にどう対応し、自分の感情をどう扱ったかを、具体的な実話で語れる |
| ③ 自分で手順を改善した経験 | 自分で気づいて変えた手順と、その結果を、具体的に語れる |
「コミュ力が高い人」という1行のままだったら、面接官ごとにバラバラだったはずです。でも、この3項目+基準にそろえると、佐藤さんが面接しても、別の面接官が面接しても、同じものを確かめられます。これが、評価項目を設計するということです。
この章の確認(演習)
共通例「佐藤さんの求める人物像」を、観察できる評価項目に翻訳して、3〜5個に絞り、各項目に1行の基準(どんなエピソードが出れば満たすか)を付けてみてください。
このとき、書いた項目に「コミュ力が高い」「主体性がある」のような抽象語が残っていたら、要注意です。「実際に何ができたら、それが満たせたと言えるのか?」と自分に問い直して、観察できる行動に書き換えてください。抽象語を、観察できる行動に翻訳できたら、ゴールです。
質問を準備する(過去の行動を聞く=行動質問)
設計の2ステップ目、質問(どう確かめるか)を埋めます。第2章で決めた評価項目を、どんな質問で確かめるか。ここで「質問の作り方」を間違えると、せっかくの評価項目が宙に浮きます。
この章のゴール
この章を読み終えると、評価項目ごとに、過去の具体的な行動を聞く質問(行動質問)を準備でき、答えが浅いときに深掘りできるようになります。
自己申告と仮定では、確かめられない
評価項目が決まったら、それぞれを確かめる質問を1〜2問ずつ用意します。ここで、いちばんやりがちな失敗を先に潰しておきましょう。それは、「ストレス耐性はありますか?」のような、自己申告で答えられる質問と、「もし理不尽なクレームが来たら、どうしますか?」のような、仮定の質問です。
なぜダメなのか。自己申告も仮定も、“盛れる”からです。「ストレス耐性はありますか?」と聞けば、ほぼ全員が「あります」と答えます。それで何が分かるでしょうか。「もしクレームが来たら?」と聞けば、候補者は理想的な対応を“その場で考えて”語ります。でも、頭で描く理想と、実際にやれることは別物です。「『ストレス耐性ありますか?』と聞いて『あります』と言われ、分かった気になっていた」なら、まさにこのワナにはまっていたわけです。
過去に実際にやった行動を聞く(行動質問)
ではどう聞くか。過去に、実際にやった行動を聞きます。「これまでで、いちばん大変だったクレーム対応は何ですか? そのとき、あなたは具体的に何をしましたか? 結果はどうなりましたか?」。このように、過去の具体的な経験を尋ねる質問を、行動質問と呼びます。ひとことで言えば、「『〜できますか?』と聞くのではなく、『これまでで実際に〜したときのこと』を聞く質問」です。
なぜ過去の行動を聞くのか。過去に実際にやったことは、その人が本当にできることの“証拠”だからです。理想は誰でも語れますが、実際にやったことは事実なので盛りにくい。そして、過去にやれた人は、入社後の似た場面でも、また同じようにやれる可能性が高い。「過去の行動から、将来の行動を予測する」——これが行動質問の考え方です。「頑張ります」という意気込みではなく、「実際に、こういう状況で、こう動いて、こうなった」という事実を集めにいくわけです。
浅い答えは、深掘りする
行動質問を投げても、最初の答えが浅いことはよくあります。たとえば「チームで協力して、クレームを乗り越えました」。一見よさそうですが、これでは“あなた自身が”何をしたのかが見えません。「チームで」の中で、お茶を出していただけかもしれないし、対応の中心だったかもしれない。だから、浅い答えには深掘りをします。
深掘りのコツは、「状況→あなたがやったこと→結果」の順に、具体を引き出すことです。「そのクレームは、どんな状況でしたか?(状況)」「その中で、“あなたは”具体的に何をしましたか?(行動)」「結果は、数字や事実でいうと、どうなりましたか?(結果)」。こうした聞き方は、頭文字をとってSTAR(状況・課題・行動・結果)と呼ばれます。名前は覚えなくて大丈夫です。「主語を“あなた”に戻して、具体的な行動と結果まで掘る」と掴んでおけば十分です。「冷静に対応しました」と言われたら、「“冷静に”とは、具体的にどんな言葉や、どんな行動でしたか?」と、必ず具体に戻します。
もうひとつ、大事なルールがあります。同じ評価項目は、すべての候補者に、同じ質問で聞くことです。Aさんには厳しい質問、Bさんには優しい質問、とバラバラにすると、比べようがなくなります。同じ質問でそろえるからこそ、「この項目は、AさんよりBさんのほうが具体的だった」と、横並びで比べられるのです。
では、佐藤さんの面接で、評価項目②「感情的にならない対応」を確かめる質問を作ってみましょう。
| 質問の例 | なぜそうなるか | |
|---|---|---|
| NG(自己申告) | 「ストレス耐性はありますか?」 | 「あります」で終わり、確かめられない |
| NG(仮定) | 「理不尽なクレームが来たら、どうしますか?」 | その場の理想論しか出てこない |
| OK(行動質問) | 「これまでで、いちばん理不尽だと感じたクレーム対応を教えてください。そのとき、あなたは具体的にどう動きましたか? 自分の感情はどう扱いましたか? 最終的にどうなりましたか?」 | 過去の事実なので盛りにくく、実際の対応が見える |
候補者が「冷静に対応しました」とだけ答えたら、「“冷静に”とは、具体的にどんな言葉や行動でしたか?」と深掘りします。これを全候補者に同じ質問で聞けば、誰が基準を満たしているか、横並びで判断できます。
この章の確認(演習)
共通例「佐藤さんの評価項目」から1つ選び、それを確かめる行動質問を1問作ってみてください。形は、「これまでで〜したときのことを教えてください。そのとき、具体的に何をしましたか? 結果はどうなりましたか?」です。自己申告(〜できますか)や仮定(もし〜なら)になっていないか、チェックしてください。
あわせて、その質問に「チームで頑張りました」と浅く答えられたときの、深掘り質問を1つ書いてみましょう。「“あなたは”具体的に何を?」「結果は?」のように、主語を本人に戻して、行動と結果まで掘る一言です。過去の行動を聞き、浅ければ深掘りする感覚を、自分の手で定着させられたら、ゴールです。
進行表を作る(タイムテーブルと時間配分)
設計の3ステップ目、進行表(どの順で、何分で確かめるか)を埋めます。評価項目も質問もそろったのに、当日うまく聞けない——その最後の落とし穴を、ここで埋めます。
この章のゴール
この章を読み終えると、オープニング→質問→候補者からの質問→クロージングの進行表(時間配分つき)を作成でき、複数の面接官の分担と、面接直後の評価まで段取りできるようになります。
時間を決めないと、肝心の質問にたどり着けない
評価項目と質問が用意できても、もうひとつ決めることがあります。当日の時間配分です。これを決めずに面接に入ると、どうなるか。場をほぐそうとした雑談が思いのほか弾んだり、自分のチームの話をしているうちに、気づけば残り5分。肝心の評価項目を確かめる質問に、たどり着けないまま終わります。「気づいたら時間が足りなくて、聞きたいことを聞けずに終わった」——これは、進行表がないために起きていたのです。
だから、面接の流れを時間で区切った進行表を作ります。進行表は、第2章で決めた評価項目と、第3章で作った質問を、当日の45分という枠に落とし込む“時間の地図”です。
45分の型:オープニング→質問→候補者からの質問→クロージング
たとえば45分の面接なら、次のように時間を配分します。
| ブロック | 時間 | やること |
|---|---|---|
| オープニング | 5分 | 軽く場をほぐし、「今日は○○な経験を中心にうかがいます」と面接の流れを伝える |
| 評価項目の質問 | 30分 | 準備した行動質問で、評価項目を1つずつ確かめる(+深掘り) |
| 候補者からの質問 | 5分 | 逆質問。何を聞いてくるかで、関心や準備度が見える |
| クロージング | 5分 | 合否でなく、今後の連絡の流れを伝える |
この型のポイントは2つあります。1つは、質問の30分を、評価項目ごとに割り振ること。佐藤さんの面接なら、①問い合わせ経験に10分、②感情的にならない対応に10分、③手順の改善に10分、という具合です。こう決めておくと、1つの項目に話し込みすぎて、別の項目を聞けなくなる、という事故が防げます。
もう1つは、オープニングとクロージングを省かないこと。いきなり評価項目の質問から入って詰問のようになると、候補者は緊張で固まり、本当はできる人でも、過去の行動をうまく語れなくなります。最初に場をほぐすのは、愛想ではなく、本音の行動を引き出すための設計の一部です。
複数の面接官の分担と、「面接直後」の評価
面接官が複数いるなら、もうひと工夫します。誰が、どの評価項目を担当するかを、先に決めておくのです。決めずに臨むと、2人で同じことを二重に聞いてしまい、別の項目がまるごと抜ける、ということが起きます。佐藤さんの面接なら、佐藤さんが①②を担当し、もう1人が③を担当する、というように分けます。
そして、最後にいちばん大事なことを。面接が終わったら、その場で、評価項目ごとに事実と合否をメモします。「①問い合わせ経験は、○○という実話が出たので基準を満たす」「③手順の改善は、具体的なエピソードが出ず、基準未満」というように、出たエピソード(事実)とセットで記録します。
なぜ「直後」なのか。時間が経つと、記憶から具体的な事実が抜け落ち、残るのは「なんとなく良かった」という印象だけになるからです。その印象こそ、第1章で見たハロー効果・確証バイアスの正体です。直後に事実で記録しておけば、あとで「どこが良かったの?」と聞かれても、印象でなく、評価項目と実話で答えられます。複数の面接官で評価が割れても、「同じ評価シートの、どの項目で割れましたか?」と、感覚論でなく項目単位で議論できます。
この章の確認(演習)
共通例「佐藤さんの45分面接」の進行表を、オープニング/質問(評価項目ごとの配分)/候補者からの質問/クロージングの4ブロックに分け、それぞれ何分かけるかを書いて作ってみてください。質問の30分を、評価項目ごとに割り振るのを忘れずに。
あわせて、面接直後に何をメモするかを、1行で決めておきましょう。「評価項目ごとに、出たエピソード(事実)と、満たした/満たさないを書く」。これで、評価項目と質問が、当日の“時間の地図”に乗りました。設計してから臨み、直後に事実で評価する感覚を、自分の手で定着させられたら、ゴールです。
まとめ:面接は“会って話す”のではなく“決めて確かめる”
おつかれさまでした。「佐藤さんのCS中途採用面接」という、たった1つの場面を、面接とは何か→何を見極めるか→どう確かめるか→どの順で何分か、と1ステップずつ設計してきました。第1章で空欄だった3つの枠を、ここで振り返ります。
- 面接とは……会って話して人柄を見る場ではなく、先に決めた評価項目を、質問で確かめる場。当日の思いつきや第一印象(ハロー効果・確証バイアス)で決めず、設計してから臨む。設計の順番は、評価項目→質問→進行表(第1章)。
- 評価項目(何を見極めるか)……「コミュ力が高い」のような抽象語ではなく、観察できる行動に翻訳し、3〜5個に絞り、各項目に基準(どんなエピソードが出れば満たすか)を付ける。求める人物像を“確かめられる行動”に割り付ける(第2章)。
- 質問(どう確かめるか)……「ストレス耐性ありますか?」(自己申告)や「もし〜なら?」(仮定)ではなく、過去に実際にやった行動を聞く(行動質問)。浅い答えは「あなたは具体的に何を? 結果は?」と深掘り(STAR)。全候補者に同じ質問で聞く(第3章)。
- 進行表(どの順で何分か)……オープニング→質問(評価項目ごとに配分)→候補者からの質問→クロージングの時間配分を決める。複数面接官は担当を分け、面接直後に評価項目ごとに事実でメモする(第4章)。
この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「面接後に『どこが良かったの?』と聞かれて、第一印象でなく、“どの評価項目を、どの実話で満たしたか”を、事実で答えられるか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——面接は“会って話す”のではなく“決めて確かめる”。順番は、評価項目→質問→進行表。これが身につくと、面接後の評価が「なんとなく良かった」から「項目②を、理不尽なクレームを言い換えて対応した実話で満たした」に変わり、複数の面接官とも、同じ物差しで議論できるようになります。
明日の最初の一歩:次に自分が面接する1人について、①評価項目を3〜5個(観察できる行動+基準) ②各項目の行動質問を1問ずつ ③45分の進行表を、面接の前に1枚にまとめてみてください。きれいにまとめる必要はありません。当日その場の思いつきでなく、設計してから臨めたら、それが第一歩です。
この「評価項目→質問→進行表」を毎回ゼロから手書きするのは大変です。そこで、3つをそのまま埋めて使えるテンプレート(評価シート+質問リスト+進行表)をダウンロードできるようにしてあります。次の面接から、このテンプレートに沿って設計してみてください。なお、その手前にある「求める人物像」がまだ言葉になっていない場合は、姉妹講座『採用の基礎』で先に固めてから戻ってくると、評価項目づくりがスムーズになります。まずは1枚、自分の面接の設計図を描いてみましょう。それが、感覚で決める面接から抜け出す、いちばんの近道です。
よくある質問
面接設計とは何ですか?
面接設計とは、当日の思いつきや第一印象に頼らず、「評価項目→質問→進行表」の3ステップを面接前に準備することです。見極めたいことを先に決め、それを確かめる質問と時間配分を整えてから面接に臨む進め方です。
評価項目はどう作ればよいですか?
求める人物像を「実際に何ができたら"できている"と言えるか」という観察できる行動に翻訳し、3〜5個に絞ります。「コミュ力が高い」のような抽象語のままにせず、各項目に「どんなエピソードが出れば満たすか」の基準を1行付けるのが作り方の手順です。
行動質問とはどのような質問ですか?
「これまでで実際に〜したときのことを教えてください」のように、過去に本人が取った具体的な行動を尋ねる質問です。「ストレス耐性はありますか?」という自己申告型や「もし〜なら?」という仮定型と違い、過去の事実を引き出すため盛りにくく、入社後の行動を予測しやすいのが特徴です。
面接時間はどう配分すればよいですか?
45分の場合、オープニング5分・評価項目の質問30分・候補者からの質問5分・クロージング5分の4ブロックに分けるのが基本です。質問の30分は評価項目ごとに割り振り、1項目に話し込みすぎて別の項目を聞けなくなる事態を防ぎます。
面接後の評価はどうすればよいですか?
面接が終わったらその場で、評価項目ごとに「出たエピソード(事実)と満たした/満たさない」をメモします。時間が経つと具体的な事実が抜け落ちて印象だけが残るため、直後に事実ベースで記録することが精度の高い評価につながります。