等級制度入門|職能型・職務型・役割型の違いと評価・報酬・育成のつながり | マナビズ

等級制度入門|職能型・職務型・役割型の違いと評価・報酬・育成のつながり

等級制度入門|職能型・職務型・役割型の違いと評価・報酬・育成のつながり

「うちの等級って、どうなってるんだっけ」「昇格の基準は何?」——社員や経営層からそう聞かれて、言葉に詰まったことはないでしょうか。等級表は毎年運用しているのに、その“役割”を自分の言葉で説明しようとすると、評価の話や給与の話と混ざってしまう。これは、等級・評価・報酬が頭の中で1つにくっついているために起こります。

本講座は、この絡まりをほどき、「等級制度とは何か」を人に説明できるようにすることだけに絞ります。等級に評価結果をどう乗せるか=格付けの設計や評価項目の作り方は評価制度入門、確定した評価を本人に伝える対話は評価面談の基本、報酬テーブルの先にある給与の計算手順は給与計算入門が、それぞれ正本です。本講座はそこには踏み込みません。

この講座を終えると、等級制度の役割を「社員を段階に位置づけ、評価・報酬・育成に共通のものさしを与える器」として説明でき、代表的な3つの分け方(職能型・職務型・役割型)の違いを言い分けられ、等級が評価・報酬・育成とどうつながるかを1枚の図として作成できるようになります。覚えて帰る型は「等級=器(位置づけ) → そこに 評価が乗り・報酬がひもづき・育成の期待が示される」。本講座では、自社の等級表を1枚見て、「何を基準に何段階で分けた等級か/評価結果がどこに反映され/報酬・育成にどうつながるか」を図を描いて同僚に説明する、という場面を通して追いかけます。

この講座のポイント

  • 等級制度の役割を、「社員を段階に位置づけ、評価・報酬・育成に共通のものさしを与える器」として説明できる。
  • 代表的な等級の分け方(職能型・職務型・役割型)の違いを、判断基準の違いとして言い分けられる。
  • 等級が評価・報酬・育成とどうつながるかを、1枚の図として作成できる。

等級制度とは何か——社員を段階に位置づける器

この章のゴール

等級制度の役割を、「社員を段階に位置づけ、評価・報酬・育成に共通のものさしを与える器」として説明できる。

等級制度とは社員を「段階(ランク)」に位置づける枠組み

等級制度(社員格付け制度)とは、従業員を何らかの基準に基づいてランク付けする制度です(出典:JILPT 西村純「社員格付け制度の変遷と今後の行方に関する一考察」)。企業組織は階層をもつため、社員を何らかの基準で序列化する必要があり、その基準に沿って等級を設定し、社員を該当する等級に格付けします(出典:同)。ここでいう等級とは、従業員に割り当てられた職務に係る階層区分、つまりグレードやランクのことで、困難度や責任の重さといった要素で区分し、1等級・2等級・3等級のように数字で表すのが一般的です(出典:厚生労働省「中小企業のモデル賃金」)。

自社の等級表を1枚見てみてください。縦に並んだ段階(例:1等級〜N等級)が等級で、社員一人ひとりはこのどこかに位置づきます。まずはこの縦の段階を「器の構造」として読むのが第一歩です。なお、段階数は制度や会社で変わり、職能資格制度では6〜9程度、中小企業の役割等級では等級・職種ともに4〜7程度が一つの目安とされますが(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」/厚生労働省「中小企業のモデル賃金」)、これは設計の目安であって、自社が必ずこの数だと決まっているわけではありません。

等級は“測る”でも“払う”でもなく、それらが乗る器

ここがこの講座の背骨です。等級制度は、賃金管理や能力開発など他の人事施策に影響を与える「人事管理の基礎システム」であり、諸制度の中核を担うものです(出典:JILPT 西村)。言い換えると、従業員の公正な評価と育成には共通のモノサシが必要で、等級がそのモノサシの役割を果たします(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」)。

大事なのは、等級そのものは「測る仕組み」でも「払う仕組み」でもない、ということです。等級の枠組みとは別に人事評価を行って評価結果を反映し、等級が決まり、あらかじめ規定された賃金表(賃金テーブル)によって報酬が支給されます(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」)。つまり等級は、評価が乗り・報酬がひもづき・育成の期待が示される“器”であって、評価そのもの・給与そのものとは別のレイヤーなのです。

「等級=給料の段階」「等級=評価そのもの」というつまずき

ここでつまずきやすいのが2つあります。1つは「等級=給料の段階」と捉えてしまうこと。等級が上がれば給料が上がるのは事実ですが、それは等級という器に報酬テーブルがひもづいているからで、等級と給与額そのものは別物です。もう1つは「等級=評価そのもの」と混ぜてしまうこと。評価は等級という器に“乗せるもの”であって、器そのものではありません。この2つを切り分けられると、「等級は位置づけの器、評価・報酬・育成はその上に乗る別レイヤー」と人に説明できるようになります。等級にどう評価結果を乗せて格付けするか、その仕組みづくりは評価制度入門が正本です。

この章の確認(演習)

自社(または身近な組織)の等級表を開き、「何段階あるか」「各段階に“どんな人が位置づくか=期待”が言葉で書かれているか」を確認してください。そのうえで、「等級は、評価でも給与でもなく、それらが乗る器である」ことを、自分の言葉で1〜2文にまとめてみましょう。

等級の分け方を言い分ける——職能型・職務型・役割型

この章のゴール

代表的な等級の分け方(職能型・職務型・役割型)の違いを、判断基準の違いとして言い分けられる。

同じ「等級」でも、何を基準に分けるかで性格が変わる

等級は「段階に位置づける器」ですが、何を基準にその段階を分けるかで性格が変わります。大きな分け方として「人基準」と「仕事基準」があります。人基準は「人」に着目して序列を設計する方法で、年齢・勤続年数・保有能力・役割などが基準になります。仕事基準は、社内にある職務の価値に着目して等級を設計する方法です(出典:JILPT 西村純「社員格付け制度の変遷…」)。この2軸を踏まえると、代表的な3つの型が見分けやすくなります。

職能型は「人の能力」、職務型・役割型は「仕事・役割」を基準にする

職能型(職能資格制度)は、労働者が保有する職務遂行能力を基準に格付けする制度です(出典:JILPT 西村)。仕事を遂行するのに必要な能力(職能)を判定し、その結果にもとづいて賃金表で支給します(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」)。等級表の定義文に「◯◯ができる」と能力で書かれていれば、職能型寄りと読めます。

職務型(職務等級制度)は、その人が就いている職務(仕事)の大きさ・価値を基準にする制度です。社内の職務を評価基準で測定し、その高低に応じて等級に位置づけます。この型では、勤続年数や保有能力にかかわらず、同じ仕事をしていれば同じ等級になり、上の等級に上がるには職務の変更が必要です(出典:JILPT 西村)。

役割型(役割等級制度)は、担う「役割」の大きさを基準にする制度です。厚生労働省のモデルでは、「職種」と「等級」の2つから「役割」を定義し、その役割に応じて格付けする仕組みを役割等級制度と呼びます(出典:厚生労働省「中小企業のモデル賃金」)。職務型と職能型の中間的な性格をもち、人の貢献=役割の重みに基づいて序列を設計し直そうとした制度です(出典:JILPT 西村)。等級表の定義文に「◯◯という職務/役割を担う」と書かれていれば、職務・役割基準寄りと読めます。

型名だけ覚えるのではなく、昇格の意味の違いで見分ける

3つの型は、「どうすれば昇格するか」が変わります。職能型は「能力が上がる」と昇格します。昇格の判定には、現在の等級に求められる能力を満たしたときに上げる卒業方式と、上位等級に求められる能力を満たしたときに上げる入学方式があります(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」)。一方、仕事基準・役割基準では「担う仕事・役割が変わる」と昇格します。ある銀行が役割等級制度を導入した事例では、年齢や勤続年数に関わらず役割を果たせれば昇格しますが、能力や年齢が上がっても役割が変わらなければ昇格しない、という運用がとられています(出典:JILPT「ビジネス・レーバー・トレンド」2024年4月号 企業ヒアリング)。

つまずきは2つです。1つは型名の言葉だけ覚えて判断基準を語れないこと。「人の能力で分けるか/仕事・役割で分けるか」で見分けるのがコツです。もう1つは3つの型を“良し悪し”で優劣比較してしまうこと。本講座は機能の違いを言い分けるところまでで、自社にどれが最適かの設計判断には踏み込みません(その判断は評価制度入門など制度設計の領域へ)。

この章の確認(演習)

自社(または例として示す等級表)の各段階の定義文を読み、職能型・職務型・役割型のどれに近いかを当ててください。あわせて、「定義文のどの表現でそう判断したか」(“◯◯ができる”という能力の表現か、“◯◯という役割を担う”という役割の表現か)を根拠として書き出してみましょう。

等級と評価・報酬・育成のつながりを1枚にする

この章のゴール

等級が評価・報酬・育成とどうつながるかを、1枚の図として作成できる。

等級は単独では機能せず、評価・報酬・育成と線でつながって回る

等級は器ですが、器だけでは機能しません。評価・報酬・育成と線でつながって初めて回ります。その軸になるのが評価です。人事評価の役割は、強み弱みを把握して人材育成に活かすことと、評価結果を給与や人材配置などの処遇に活かすことの2つです(出典:J-Net21「人事管理の基本」)。実際の運用では、社員が等級の要件を満たしたかを試験・面接などで確認し、等級の昇格を実施して昇給させます(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」)。ここから、3本の矢印が引けます。

評価との矢印は、評価結果が等級の格付け(昇格・降格)に反映される線です。報酬との矢印は、決まった等級が賃金テーブルの入口になる線で、評価結果は主に基本給と賞与に反映されます(出典:J-Net21「人事管理の基本」)。育成との矢印は、等級ごとに求められる役割・能力の定義が、次の等級に上がるための“育成のゴール”になる線です。職能要件書や役割定義書で各等級に求められる成果・能力を明確にし、国の職業能力評価基準なども共通の基準として使えば、キャリアの道筋に沿った成長を支援できます(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」/厚生労働省「職業能力評価基準」)。

等級を中心に、評価・報酬・育成への矢印を1枚に引く

実際に図を描いてみましょう。中心に自社の等級(段階)を置きます。左に「評価」を置き、評価結果が等級のどの段階移動(昇格・降格)に反映されるかを矢印で結びます。評価項目の中身をどう作るかは評価制度入門の領域なので、ここでは「評価結果がここに乗る」とだけ示し、図に評価項目まで描き込まないのがコツです。下に「報酬テーブル」を置き、等級ごとに報酬の水準がひもづくことを矢印で示します。金額の計算には立ち入りません(計算手順は給与計算入門へ)。右に「育成」を置き、次の等級の期待=育成のゴールへ矢印を引きます。これで「うちの等級はこう回っている」と、図を指しながら同僚に説明できます。

なお、この連動が納得感をもって回るには前提があります。評価が企業理念・事業計画と結びついていること、そして評価基準が明確で透明であることです。企業理念や事業計画と切り離された評価では納得感は得られず、何をどうすれば評価されるのかが具体的に示されることで納得性は高まります(出典:J-Net21「人事評価制度と賃金制度の改善」)。

昇格と昇給を混ぜないことが、図を正しく描くコツ

最後のつまずきは、昇格(等級が上がる)と昇給(報酬が上がる)を同じ言葉として混ぜることです。運用では「昇格を実施して昇給させる」、つまり等級の昇格が先にあり、それに賃金テーブルがひもづいて報酬が変わります(出典:J-Net21「人事評価制度を変えたい…職能資格制度…」)。等級は器、報酬はその器にひもづく水準。この順序で捉えると、図の矢印の向きを間違えずに描けます。

この章の確認(演習)

等級を中心に置き、左に評価・下に報酬テーブル・右に育成への矢印を引いた1枚の図を作成してください。そのうえで、各矢印を一言で説明できるか確かめましょう(例:「評価結果がここに反映される」「等級ごとに報酬の水準がひもづく」「次の等級の期待が育成のゴールになる」)。

まとめ

等級制度とは、社員を段階(等級)に位置づける“器”であり、評価・報酬・育成が共通して参照する土台です。等級は“測る”仕組みでも“払う”仕組みでもなく、それらが乗る器。分け方には職能型・職務型・役割型があり、「人の能力で分けるか/仕事・役割で分けるか」、そして「能力が上がると昇格するのか/担う役割が変わると昇格するのか」で見分けます。そして等級は単独では回らず、評価が格付けに反映され・等級が報酬テーブルの入口になり・次の等級の期待が育成のゴールになる、という3本の線でつながって回ります。覚えて帰る型は「等級=器 → 評価が乗り・報酬がひもづき・育成の期待が示される」。

明日の一歩として、自社の等級表を1枚開き、「何段階/何基準(職能・職務・役割)か」を言葉にし、等級を中心に評価・報酬・育成への矢印を1枚の図に描いてみてください。それが、等級制度を人に説明できる最初の一歩です。さらに進んで、等級に評価結果を乗せる“格付け”の仕組みそのものを学びたい方は、評価制度入門へ進むのが次のステップです。

本講座の特典として、等級を中心に評価・報酬・育成への矢印を1枚で整理できる「等級制度の早わかり図(接続図テンプレ)」をご用意しています。テンプレートの入手案内と、人事制度づくりに役立つ実務情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

等級制度と評価制度は何が違うのですか

等級制度は社員を段階に位置づける“器”、評価制度はその器に乗せる格付けを測る仕組みです。評価結果が等級の昇格・降格に反映される関係にあります。

昇格と昇給は同じ意味で使ってよいですか

別の概念です。昇格は等級が上がること、昇給は報酬が上がること。運用では等級の昇格が先にあり、それに賃金テーブルがひもづいて報酬が変わります。

職能型・職務型・役割型はどう見分ければよいですか

定義文が「人の能力」を語れば職能型、「仕事・役割」を語れば職務型・役割型寄りです。能力で昇格するか、担う役割が変わって昇格するかでも見分けられます。

自社の等級が何段階あれば適切ですか

段階数に一律の正解はありません。職能資格制度は6〜9程度、中小企業の役割等級は4〜7程度が一つの目安とされますが、自社の規模や運用に合わせて設計します。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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