経費精算入門|差し戻されない処理をルールと証憑で通す手順 | マナビズ

経費精算入門|差し戻されない処理をルールと証憑で通す手順

経費精算入門|差し戻されない処理をルールと証憑で通す手順

「これ、経費で落ちますよね?」。そう思って出した申請が、また差し戻されて戻ってくる。宛名が空欄、日付が範囲外、用途が「お品代」のまま——再提出のたびに自分の手が止まり、経理の確認も二度手間です。こうした空回りの原因は、多くの場合、能力ではなく「経費精算 ルールの読み違い」です。

経費精算とは、業務のために自分が立て替えた費用を、自己判断ではなく社内ルールに沿って、証憑で裏づけて、会社に払い戻してもらう手続きです。大事なのは目的の置き方で、ゴールは「速く出すこと」ではなく、ルールどおりに出して一度で通すことです。一度で通れば、結果としていちばん速く払い戻されます。

この講座は「申請する側」に立ちます。証憑(領収書や適格請求書など)がなぜ税のうえで必要かは税金の基本(kouza-136-tax-basic)、経理側の給与・支払い処理は給与計算入門(kouza-137-payroll-basic)、勘定科目への仕訳は会計の基礎(kouza-020-accounting-basic)が正本です。本講座は税の仕組み・仕訳・経理処理には立ち入らず、「自分の1件を、ルールどおりに、一度で通す」ことだけに絞ります。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。①立て替えた費用が対象になるか・ならないかを社内ルールに照らして仕分けられる、②必要な証憑(領収書・但し書き・日付・宛名など)の過不足を点検できる、③差し戻されない申請を必須項目をそろえて1件作成できる。覚えて帰っていただきたい型は、対象か仕分ける → 証憑をそろえる → 必須項目をそろえて出すの3ステップです。本講座では一貫して、「取引先を訪問し、電車賃と打合せのカフェ代を自分で立て替えた1件」を共通の題材として追いかけます。

この講座のポイント

  • 立て替えた費用が経費精算の対象になるか・ならないかを、社内ルールに照らして仕分けできる。
  • 申請に必要な証憑(領収書・但し書き・日付・宛名など)の過不足を点検できる。
  • 差し戻されない経費精算の申請を、必須項目をそろえて1件作成できる。

経費精算とは何か——対象になる費用・ならない費用を仕分ける

この章のゴール

立て替えた費用が経費精算の対象になるか・ならないかを、社内ルールに照らして仕分けできる。

経費精算とは、立て替えを会社に払い戻してもらう手続き

あらためて、経費精算のポイントは「業務のために」と「会社のルールに沿って」の2つです。自分が払って後で戻る形は同じでも、戻るのは会社が「これは会社の費用だ」と認めたものだけ。しかも「業務のため」というだけでは足りません。旅費交通費も会社の経費になりますが、だからこそ会社は「旅費交通費支給規程」などを整え、規程に基づいて支給します(出典:J-Net21「旅費交通費支給規程」)。対象かどうかは自分の感覚ではなく、会社のルールが決めるのです。

対象になるかを決める3つの軸

立て替えた費用が対象になるかは、次の3つの軸で仕分けると迷いません。

1つ目は、業務のためか(私的でないか)です。費用が会社の経費として扱われる前提は、それが事業に関係する支出であること。たとえば交際費も「得意先、仕入先その他事業に関係のある者など」への支出が対象とされ、事業との関係が出発点です(出典:国税庁 No.5265)。私的な買い物は、ここで外れます。

2つ目は、社内ルール・上限の範囲内かです。会社の規程は、対象費目・上限額・事前申請の要否を定めています(出典:J-Net21「旅費交通費支給規程」)。同じ「業務のため」でも、上限を超えた分や規程外の費目は対象になりません。

3つ目は、立て替えの事実を証憑で示せるかです(証憑は次章で扱います。示せない費用は対象にしづらいと先に押さえます)。なお、業務のためでも「合理的な範囲」であることは要件で、日当も金額に決まりはないものの、あまりに高額だと経費として認められない場合があります(出典:J-Net21「旅費交通費支給規程」)。「業務だから青天井」ではないのです。

共通例で仕分ける——電車賃・カフェ代・ついでの私用買い物

共通例(取引先訪問で電車賃と打合せのカフェ代を立て替えた1件)で当てはめてみましょう。電車賃は、取引先訪問という業務の移動で合理的な経路なので、3つの軸を満たしやすく対象になります。打合せのカフェ代も業務目的ですが、飲食代は社内ルールや人数あたりの基準で扱いが分かれる費目です(基準そのものの税の話は税金の基本(kouza-136-tax-basic)へ)。だから「対象だが、ルールを確認」という仕分けになります。一方、訪問のついでに立ち寄った私用の買い物は、業務のためではないので対象外です。

「業務に関係ありそう」を自己判断で通すつまずき

いちばん多いつまずきは、「業務に関係ありそう」を自分の判断で対象にしてしまうことです。手順はシンプルで、①その出費は誰の・何の業務のためかを言葉にする、②社内の経費規程(対象費目・上限・事前申請の要否)に照らす、③曖昧なら立て替える前に確認する、の3つ。とくに③が効きます。出張や接待のように事前申請が要る費目は、立て替えてから「対象外でした」となると戻ってきません。私用と業務が混ざった支払いは、業務の部分だけを切り分けて出します。

この章の確認(演習)

自分が最近立て替えた、または近いうちに立て替えそうな出費を3つ挙げてください。それぞれを「①業務のためか ②社内ルール・上限の範囲内か ③証憑で示せるか」の3軸に当てはめ、「対象/対象外/要確認」に仕分けてみましょう。「要確認」になったものは、誰に何を確認すれば判断できるかも書き添えてください。

証憑をそろえる——領収書・但し書き・日付・宛名を点検する

この章のゴール

申請に必要な証憑(領収書・但し書き・日付・宛名など)の過不足を点検できる。

証憑とは、立て替えた事実を示す書類

経費精算は、「立て替えた」という事実を証憑(しょうひょう)で示せて初めて通ります。証憑とは、領収書やレシートなど、いつ・いくら・何に払ったかを裏づける書類です。どれだけ正しく立て替えても、証憑がなければ会社は事実を確認できません。支払いそのものと同じくらい、証憑をそろえることが経費精算の本体だと考えてください。

証憑にそろえたい記載事項——日付・金額・用途・宛名・発行元

手がかりになるのが、適格請求書(インボイス)の記載事項です。インボイスは「請求書」という名前に限らず、所定の事項が書かれていれば領収書・レシート・納品書など名称を問わずインボイスになります(出典:国税庁「インボイス制度について」)。記載事項は、①発行事業者の氏名・名称および登録番号、②取引年月日、③取引内容(何を買ったか)、④税率ごとに区分した対価の額および適用税率、⑤税率ごとの消費税額等、⑥書類の交付を受ける事業者の氏名・名称(宛名)、の6つです(出典:国税庁「適格請求書の記載事項」)。

申請する側として、まず点検したいのは実務に直結する5つ——①日付 ②金額 ③何に使ったか(用途・但し書き)④宛名(会社名)⑤発行元です。手書きの領収書でも問題なく、税込価額が書かれていれば税抜価額は省略してよいとされています(出典:国税庁「適格請求書の記載事項」)。

レシートで足りる場合・領収書が要る場合・証憑が出ない場合

「レシートでもいいの?」はよく出る疑問です。結論から言えば、必要な事項がそろっていればレシートでも問題ありません。とくに小売業・飲食店業・タクシー業などでは、宛名を省略し、税率か税額のどちらか一方の記載で足りる「簡易インボイス」をレシートとして交付できます。受け取ったレシートに宛名がなくても、これらの業種からのものなら不備ではありません(出典:国税庁「インボイス制度について」)。カフェ代のレシートに会社名が入っていなくても、それだけで差し戻しにはならないのです。

一方、宛名や用途が要る費目では、宛名入りの領収書を求められることもあります。これも社内ルール次第なので、迷ったら規程を確認します。そして、電車賃のようにそもそも証憑が出ない費用は記録で補います。出張精算では、精算書に「出張日時・目的地・訪問先や相手方の氏名・業務の内容」などを書き、出る分の領収証は貼付するのが実務です(出典:J-Net21「旅費交通費支給規程」)。電車賃なら、いつ・どこからどこへ・いくら、という経路の記録を残しましょう。なお、領収書をデータ保存する場合は電子帳簿保存法というルールがあり、やり方は会社の運用と国税庁の特設サイトに従います(出典:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」)。本講座では「データ保存にもルールがある」とだけ押さえます。

「お品代」のまま出して差し戻されるつまずき

つまずきの代表が、但し書き「お品代」のままの証憑を出すことです。記載事項の③は「取引内容」=何に使ったかなので、「お品代」では用途が分からず③を満たさず、差し戻されやすいのです。共通例のカフェ代なら「打合せ代(取引先◯◯様)」のように用途と相手が分かる形にしてもらいます。月末にまとめて証憑を紛失する、読めないレシートをそのまま添付する、といったつまずきも、支払い直後にその場で証憑をもらい用途を書き足して5項目を確認すれば防げます。適格請求書が税のうえでなぜ要るのかは税金の基本(kouza-136-tax-basic)へ。本章は「証憑として何が必要か」に絞りました。

この章の確認(演習)

手元のレシートか領収書を1枚(なければ直近の支払いを例に)用意し、「①日付 ②金額 ③用途(但し書き)④宛名 ⑤発行元」の5項目でチェックしてください。欠けている項目があれば、それをどう補うか(発行時に書いてもらう、補足メモを残す、経路記録で代替する、など)まで書き出します。

差し戻されない申請を作る——必須項目をそろえて提出する

この章のゴール

差し戻されない経費精算の申請を、必須項目をそろえて1件作成できる。

申請は「経理が確認しなくても分かる状態」で出す

差し戻されない申請の共通点は、経理がいちいち確認しなくても内容が分かる状態になっていることです。逆に、金額だけで用途も相手も分からない申請は、経理が問い合わせるしかなく、その往復が差し戻しになります。出す前に「初めて見る人が説明なしで理解できるか」を自分で点検するのが、差し戻しを防ぐ最短ルートです。

申請1件に必要な項目——日付・費目・金額・用途/相手・証憑・承認

申請1件にそろえたいのは、次の6つです。①日付、②費目(交通費・会議費など)、③金額、④用途・相手、⑤証憑の添付、⑥(必要なら)事前申請や承認の有無。この型は出張精算の実務とも一致し、出張精算書には「出張日時・目的地・訪問先や相手方の氏名・業務の内容」などを記載し、宿泊費や交通費の領収証を貼付するとされています(出典:J-Net21「旅費交通費支給規程」)。日付・用途・相手を書いて証憑をひもづける——これが申請の基本形です。

費目を分けるのも大切です。規程上、旅費は「日当/交通費(電車・バス・タクシー等の実費)/宿泊料」のように種類ごとに区分されます(出典:J-Net21「旅費交通費支給規程」)。申請も同じく、ひとつの訪問でも費目ごとに行を分けて並べると伝わりやすくなります。なお、その費目を会計上どの勘定科目に振り分けるかという仕訳は本講座の範囲外です。正しい仕訳は会計の基礎(kouza-020-accounting-basic)へ。

共通例を1件の申請にまとめる

共通例の「訪問1件(電車賃+打合せのカフェ代)」を、費目ごとに分けて1件の申請にまとめます。

  • 日付:(例)◯月◯日/費目:交通費/金額:(例)◯◯円/用途:取引先◯◯訪問の往復電車賃/証憑:経路記録を添付(領収書が出ないため)
  • 日付:(例)◯月◯日/費目:会議費/金額:(例)◯◯円/用途:打合せ代(取引先◯◯様と同席)/証憑:レシートを添付(但し書きを「打合せ代」に)

金額はすべて例です。1行ごとに「いつ・どの費目・いくら・何のため・誰と・どの証憑」がそろっていれば、経理は問い合わせなしに承認できます。

提出前に自分で点検する——金額だけ出す・証憑と合わないつまずき

最後に、提出前のセルフチェックです。よくあるつまずきは3つ——用途や相手を書かずに金額だけ出す、証憑の金額と申請金額が合っていない、締切や事前承認のルールを見落とす、です。手順は、①対象に仕分けた出費を費目ごとに並べ、②各行に日付・金額・用途・相手を書き、③証憑をひもづけ、④締切や事前申請の要否を最終確認し、⑤必須項目の抜けを点検してから出す、という流れです。

申請には締切があります。たとえば出張精算では、出張終了後おおむね1〜2週間以内に提出する運用が紹介されています(出典:J-Net21「旅費交通費支給規程」)。具体的な期限は会社の規程で異なるので、自社の締切を確認しましょう。なお、この申請を経理が給与や支払いとしてどう処理するかは給与計算入門(kouza-137-payroll-basic)へ。本章は「自分の1件を仕上げる手順」に絞りました。

この章の確認(演習)

共通例(訪問1件の交通費+打合せのカフェ代)を題材に、費目・金額・用途・相手・証憑をそろえた申請を1件、実際に書き起こしてください。書き終えたら、「①日付 ②費目 ③金額 ④用途・相手 ⑤証憑 ⑥承認の有無」の6項目で抜けがないか、提出前チェックとして自己点検しましょう。

まとめ

経費精算とは、業務で立て替えた費用を、自己判断ではなく社内ルールに沿って・証憑で裏づけて会社に払い戻してもらう手続きでした。目的は速く出すことではなく、ルールどおりに一度で通すこと。型は対象か仕分ける → 証憑をそろえる → 必須項目をそろえて出すの3ステップです。対象かは「業務のためか・ルールの範囲内か・証憑で示せるか」の3軸で、証憑は「日付・金額・用途・宛名・発行元」の5項目で点検し、申請は「経理が確認しなくても分かる状態」で出す。この3つがそろえば、差し戻しは大きく減ります。

明日の一歩は小さなことです。次に何かを立て替えたら、その場で証憑をもらい、但し書きに用途を書き足してから保管してください。月末にまとめて思い出そうとするのをやめるだけで、差し戻しの多くは消えます。証憑(適格請求書など)がなぜ税のうえで必要かを知りたくなったら、税金の基本(kouza-136-tax-basic)へ進むのが次のステップです。

本講座の特典として、対象判定の3軸・証憑の5項目・申請の必須項目をまとめてチェックできる「経費精算セルフチェックシート」をご用意しています。立て替えのたびに使えるこのシートのダウンロードは、無料会員登録から行えます。

よくある質問

レシートでも経費精算はできるのか

できます。日付・金額・用途などの必要事項がそろっていれば、レシートでも問題ありません。とくに小売・飲食・タクシーなどでは宛名を省略した簡易インボイスがレシートとして認められています。

領収書の但し書きが「お品代」でも大丈夫か

用途が分からず差し戻されやすいので避けましょう。証憑には取引内容(何に使ったか)の記載が必要です。「打合せ代(取引先◯◯様)」のように用途と相手が分かる形にしてもらうのが確実です。

電車賃など領収書が出ない費用はどう申請するか

経路の記録で補います。いつ・どこからどこへ・いくらを記録し、精算書に用途や訪問先を書き添えます。出張なら目的地・訪問先・業務内容を記載する運用が一般的です。

経費精算が差し戻される一番多い原因は何か

多いのは、用途や相手の記載漏れ、証憑と申請金額の不一致、締切や事前承認の見落としです。提出前に「初めて見る人が説明なしで分かるか」を自分で点検すると防げます。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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