ダイバーシティ&インクルージョン入門|違いを成果に変えるチーム運営 | マナビズ

ダイバーシティ&インクルージョン入門|違いを成果に変えるチーム運営

ダイバーシティ&インクルージョン入門|違いを成果に変えるチーム運営

「多様性が大事だ」とは、いろいろな場で耳にします。けれども、自分のチームで具体的に何をすればいいのかは、たいてい誰も教えてくれません。気がつけば、中途入社・時短勤務・外国籍・若手と、属性の異なるメンバーは確かに増えた。それなのに、会議で発言するのはいつも同じ2〜3名。重要な案件や挑戦的な仕事も、結局その同じ顔ぶれに渡っている——もしそうなら、あなたのチームは「多様だが、活かせていない」状態かもしれません。

ダイバーシティ&インクルージョンとは、この「多様な人がいる」と「その違いが成果に活きている」のあいだの距離を縮める考え方です。経済産業省はダイバーシティ経営を「多様な人材を活かし、その能力が最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげている経営」と定義しています(出典:経済産業省「ダイバーシティ経営の推進」)。ポイントは、集めることがゴールではなく、活かすことがゴールだという点です。

本講座は、その中でも「管理職1人が、自分のチームで違いを成果に変える運営」だけに絞ります。全員が安心して発言できる場づくり(心理的安全性)そのものは心理的安全性の講座が、ハラスメントやNG言動といった守りの最低ラインはハラスメント防止の講座が、望ましい運営を全社・他チームへ根づかせる仕組み化は組織文化づくりの講座が、それぞれの正本です。本講座はそこには立ち入りません。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。ダイバーシティとインクルージョンの違いを自社の例で説明できること、自チームで発言・機会・意思決定が誰に偏っているかを洗い出せること、そして違いを成果につなげる運営の一手を選んで試す計画を作成できることです。覚えて帰る型は「違いを点検する(発言・機会・意思決定)→ 抜けた視点を見つける → 運営の一手で活かす」。本講座では、中途・時短・外国籍・若手が混在する自分のチームの定例会議で、発言と重要業務が同じ数名に偏っている、という場面を全章で追いかけます。

この講座のポイント

  • ダイバーシティ(多様性がある状態)とインクルージョン(多様性が活きている状態)の違いを、自社の例で説明できる。
  • 自チームで発言・機会・意思決定が誰に偏っているか、誰の視点が抜けているかを洗い出せる。
  • 違いを成果につなげる運営の一手を選び、次の会議・業務分担で試す計画を作成できる。

ダイバーシティとインクルージョンは何が違うのか

この章のゴール

ダイバーシティ(多様性がある状態)とインクルージョン(多様性が活きている状態)の違いを、自社の例で説明できる。

ダイバーシティは「違いがある状態」、インクルージョンは「違いが活きている状態」

まず2つの言葉を切り分けます。ダイバーシティは、メンバーの属性や経験に違いが「ある」状態です。インクルージョンは、その違いが意見・意思決定・成果に「活きている」状態を指します。経済産業省の資料では、インクルージョンを「一人ひとりが『職場で尊重されたメンバーとして扱われている』と認識している状態」と説明し、多様な人材がそれぞれ自分の「居場所」を実感できている状態だと述べています(出典:経済産業省「ダイバーシティ経営診断シートの手引き」)。

大事なのは、人を集めるだけでは足りないということです。同じ資料は「多様な人材が職場にいることは重要ですが、人が多様化しただけでは新たな価値は生まれません」と明言しています(出典:同手引き)。違いがあること(ダイバーシティ)と、その違いが活きていること(インクルージョン)は、別物なのです。

属性は目に見えるものだけでなく、経験・価値観・得意分野も含む

違いというと、性別・年齢・国籍・勤務形態のように目に見えるものを思い浮かべがちです。けれども経済産業省は、「女性」「外国人」「高齢者」「障がいのある人」といった表層的な多様性だけがダイバーシティではなく、「働き方」「キャリア」「経験」といった一見外からはわからない深層的な多様性も含まれる、としています(出典:同手引き)。つまり、見た目が似ていても、過去の経験や得意分野が違えば、それも立派な「違い」です。自チームを見るときは、見えやすい属性だけでなく、経験や価値観の違いまで含めて捉えます。

「うちは多様だから十分」「配慮して触れない」というつまずき

ここで2つのつまずきがあります。1つは、人数構成だけを見て「うちは多様だから十分」と満足してしまうこと。違いがあること自体は出発点にすぎず、それが会議や意思決定に活きていなければインクルージョンは弱いままです。もう1つは、違いを「配慮して触れない」ことが、活かしているつもりの取りこぼしになることです。たとえば外国籍のメンバーに言語や海外事情の話だけを求め、その他の重要な決定は一部の人だけで進めてしまう。本人にとっては「自分はその他の判断には関われない」というメッセージになりかねません(出典:同手引きの「分化」の説明)。共通例の会議で言えば、メンバー構成は多様(ダイバーシティはある)なのに、発言と重要業務は同じ2〜3名に偏っている(インクルージョンが弱い)——この状態を見抜けるかどうかが、第一歩です。

この章の確認(演習)

自チームのメンバーを思い浮かべ、「どんな違いがあるか」を、見えやすい属性と、経験・価値観・得意分野の両面から書き出してください。そのうえで、「その違いが直近の会議・意思決定に活きたか」を1〜2行で書き、ダイバーシティとインクルージョンのどちらが弱いのかを自分の言葉で説明してみましょう。

自チームで「活かせていない違い」を見つける

この章のゴール

自チームで発言・機会・意思決定が誰に偏っているか、誰の視点が抜けているかを洗い出せる。

「足りない違いを増やす」前に「いる違いを活かせているか」を点検する

インクルージョンを高めようとすると、つい「もっと多様な人を採ろう」と考えがちです。けれども順番が逆です。まずは、いま「いる違い」を活かせているかを点検します。J-Net21は、多様な人材を公平に扱う制度や研修があっても、アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)が残る環境では本質的な多様性の実現につながらない、と指摘しています(出典:J-Net21「DE&Iと、ダイバーシティ経営の違いについて」)。点検の切り口は3つです。発言(会議で意見が出るのは誰か/黙っているのは誰か)、機会(重要な仕事・挑戦的な業務が誰に渡っているか)、意思決定(最終的に物事を決める場に誰が関わっているか)。インクルージョンには「組織内の意思決定プロセスに十分に参加できる」状態が含まれる、とされている点が、3つ目の根拠です(出典:同J-Net21)。

偏りは「配慮のつもり」に隠れている

アンコンシャス・バイアスとは、自分では気づいていない「ものの見方やとらえ方のゆがみや偏り」のことです(出典:内閣府男女共同参画局「令和3年度 性別による無意識の思い込みに関する調査研究」事例集)。やっかいなのは、それが「配慮」の顔をして現れることです。共通例の会議を3観点で振り返ると、「時短メンバーには遠慮して重要案件を振っていない」「若手は意見を求められず、いつも聞き役」といった偏りが見えてきます。本人のためを思った配慮のつもりが、実は機会を奪っている——これがインクルージョンの取りこぼしです。なお、内閣府の調査では、こうした思い込みは一般社員より評価者である役職者の層で強く出る傾向が報告されています(出典:同調査)。決めつけは、決める立場の人ほど起こりやすいのです。

本人に確かめず想像で外さない

つまずきは2つあります。1つは、本人に確かめず「忙しそうだから」「遠慮して」と想像で機会を外すこと。もう1つは、偏りを個人の性格のせいにして、運営の問題と見ないことです。点検の目的は犯人探しではなく、「この決定に、本当はあったほうがいい視点は誰のものか」を見つけることにあります。なお、全員が違いを安心して言い出せる場そのものをどうつくるかは心理的安全性の講座が正本です。本章は「偏りを見つける」までに絞ります。

この章の確認(演習)

直近の自チームの会議を1つ選び、発言・機会・意思決定の3観点で「誰に偏っていたか」を書き出してください。そのうえで、「この決定に、本当はあったほうがよかった視点は誰のものか」を1つ特定します。それが、次章で動かす対象になります。

違いを成果につなげる運営の一手を決める

この章のゴール

違いを成果につなげる運営の一手を選び、次の会議・業務分担で試す計画を作成できる。

打ち手は3方向——発言の場/機会の配り方/意思決定への関わり

見つけた偏りは、運営のやり方を少し変えるだけで動かせます。経済産業省は、ダイバーシティ経営の成否は「経営者の取組」「人事管理制度の整備」「現場管理職の取組」の3拍子で決まり、多様な人材の活躍の実現は現場の運営者である管理職の職場マネジメントにかかっている、としています(出典:経済産業省「ダイバーシティ経営診断シートの手引き」)。管理職が自チームで打てる手は、大きく3方向です。1つ目は発言の場を変えること。発言の順番を変える、問いかけ方を工夫する、論点を事前に共有しておくことで、いつも黙っている人の意見を引き出します。2つ目は機会の配り方を変えること。重要業務や挑戦の機会を、属性で決めつけず、本人の希望も聞いたうえで渡します。3つ目は意思決定への関わりを変えること。決める場に、抜けていた視点の人を一人加えます。インクルージョンが「意思決定プロセスへの十分な参加」を含むことを思い出してください(出典:J-Net21「DE&Iと…」)。

配慮とは機会を外すことではなく、本人に確かめて関わり方を選ぶこと

ここでの軸は1つです。配慮とは、負荷の高い仕事や重要な決定から本人を外すことではありません。本人に確かめたうえで、関わり方を一緒に選ぶことです。経済産業省も、管理職の役割として、各メンバーが能力を発揮できる職場環境の提供と、一人ひとりに期待する役割・達成すべき目標を明確にし、本人が理解・納得して取り組めるようフォローすることを挙げています(出典:経済産業省「ダイバーシティ経営診断シートの手引き」)。共通例なら、「次の定例会議は若手から先に意見を聞く順番にする」「時短メンバーに、本人の希望を確認したうえで意思決定の一部を任せる」といった、明日試せる一手が選べます。

一度に全部変えようとせず、小さく一手から

つまずきは2つあります。1つは、一度に全部変えようとして続かないこと。もう1つは、本人の希望を聞かず「良かれと思って」役割を押し付けることです。だからこそ、まずは一手に絞ります。なお、多様な人材を増やすだけで活かす運営を伴わないと、かえって成果につながりにくいことが指摘されています(出典:経済産業省「ダイバーシティレポート」)。選んだ一手を自分一人で終わらせず、望ましい運営を全社・他チームへ広げて根づかせる進め方は組織文化づくりの講座へ進んでください。

この章の確認(演習)

第2章で特定した「抜けている視点」に対し、発言・機会・意思決定の3方向から打ち手を1つ選び、「いつ・どの場で・何を変えるか」を1文で書いてください。あわせて、試した後に何を見れば効果が分かるか(例:その人が会議で発言したか、決定に関わったか)を1つ決めましょう。

まとめ

ダイバーシティは「違いがある状態」、インクルージョンは「違いが活きている状態」です。多様な人を集めるだけでは足りず、管理職の仕事は「いま、いる違いを活かせているか」を点検し、発言・機会・意思決定の偏りを運営で動かすことにあります。配慮とは機会を外すことではなく、本人に確かめて関わり方を選ぶこと。覚えて帰る型は「違いを点検する → 抜けた視点を見つける → 運営の一手で活かす」です。

明日の一歩として、次のチーム会議で、発言・機会・意思決定の3観点の偏りを1つ書き出し、抜けた視点を入れる運営の一手を1つだけ試してみてください。全員が違いを安心して言い出せる場づくりをさらに深めたい方は、心理的安全性の講座へ進むのが次のステップです。

本講座の特典として、発言・機会・意思決定の偏りを点検し、試す一手を書き込める「D&I運営チェックシート」をご用意しています。チェックシートの入手案内と、チーム運営に役立つ実務情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

ダイバーシティとインクルージョンの違いは何ですか

ダイバーシティは違いがある状態、インクルージョンはその違いが発言・機会・意思決定に活きている状態です。人を集めるだけでは成果にならず、活かす運営があって初めて価値につながります。

多様な人材を採用すればD&Iは達成できますか

採用は出発点にすぎません。多様な人材を増やしても活かす運営を伴わないと、かえって成果につながりにくいと指摘されています。いる違いを活かせているかの点検が先です。

配慮と甘やかしの違いはどこにありますか

配慮は本人に確かめて関わり方を一緒に選ぶこと、甘やかしは本人に確かめず重要な機会から外すことです。良かれと思った機会外しは、違いを活かす妨げになります。

何から始めればよいですか

直近の会議を1つ選び、発言・機会・意思決定の3観点で偏りを書き出します。抜けた視点を1つ見つけ、次の会議で試す運営の一手を1つだけ決めるところから始めます。

監修
マナビズ編集部

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