データ分析入門 | マナビズ

データ分析入門

データ分析入門

「先月のデータを見て、来月どうするか提案して」——リーダーにそう頼まれたあなたは、注文データのファイルを開きました。けれど、画面に並んだ数百行の数字を前に、手が止まってしまう。とりあえず「先月の平均売上は◯円でした」と報告したり、思いつくままに棒グラフをいくつも作って貼り付けたりしたら、「で、結局何が言いたいの?」「それ見て、来月どうすればいいの?」と返されて、言葉に詰まってしまった。数字は出せるのに、そこから何を言えばいいのか分からない。こんな経験はありませんか。

でも、安心してください。データ分析でつまずくのは、センスや専門知識が足りないからではありません。スラスラ提案できる先輩と、詰まってしまうあなたの違いは、たった1つです。目的(何を判断したいか)を決めないまま、いきなり数字やグラフから手をつけているか。それとも、ある順番で進めているか。その順番こそが、この講座で渡す1枚の地図です。

実は、データ分析の出発点は「数字」でも「グラフ」でもなく、目的です。「何を判断したいのか」から逆算して、データを集計し、傾向を表とグラフで見せて、次の行動を決める。これがデータ分析です。統計の世界には、この「問題(目的)から始める」進め方を PPDACサイクル(Problem→Plan→Data→Analysis→Conclusion)として整理した考え方があり、総務省統計局も紹介しています。名前は覚えなくて大丈夫。大事なのは「目的から始める」という1点だけです。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. データ分析を「数字をこねくり回す作業」ではなく、①目的(何を判断したいか)→②集計(軸で数える・合計・平均する)→③表現(傾向を表とグラフで見せる)の順で進める一連の流れとして、自分の言葉で説明できる
  2. 手元のデータについて、目的を具体的な“問い”(推移・比較・割合のどれを知りたいか)に翻訳し、その問いに答えるためにどの軸(切り口)×どの集計で集計表を作るか決められる。平均だけに頼らず、外れ値があるときは中央値も確かめて実態を判断できる
  3. 集計した傾向を、問いに合ったグラフ(推移=折れ線/比較=棒/割合=円・帯)で示し、「だから次はこうする」という次の一手まで説明できる

この講座は最後まで、「ネットで雑貨を売る『みどり雑貨店』で働くあなたが、リーダーの『来月の販促、どこに力を入れる? 先月の注文データを見て提案して』に応える」という、たった1つの場面だけで説明します。同じ注文データを、データ分析とは何か→目的を問いに翻訳→軸×値で集計→グラフで傾向を表現、と1ステップずつ地図を埋めていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、書きながら読み進めてみてください。そして、この「目的→集計→表現」の型を自分のデータでも使えるように、最後に集計テンプレートのダウンロードも用意しています。まずは、この1本で地図の全体像を掴みましょう。

この講座のポイント

  • データ分析を「数字をこねくり回す作業」ではなく、目的→集計→表現の3点で“次の一手を決める”一連の流れとして、自分の言葉で説明できる
  • 目的を答えの出る具体的な“問い”(推移・比較・割合のどれを知りたいか)に翻訳し、その問いに必要な軸(切り口)を決められる
  • 問いに沿って「軸×値」の集計表を作れるようになります。さらに、平均だけに頼らず、外れ値があるときは中央値も確かめて、実態を判断できる
  • 集計した傾向を問いに合ったグラフ(推移=折れ線/比較=棒/割合=円・帯)で示し、「だから次はこうする」という次の一手まで説明できるようになります。あわせて、見る人を惑わせるグラフ(3D円グラフなど)を避けられる

データ分析とは何か(目的→集計→表現の地図)

まずは、「データ見て提案して」で手が止まってしまうモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。データ分析という言葉を、ふわっとした「数字いじり」のイメージから、自分で使える1枚の地図に変える土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、データ分析を「数字をこねくり回す作業」ではなく、目的→集計→表現の3点で“次の一手を決める”一連の流れとして、自分の言葉で説明できるようになります。

「データ見て提案して」で固まる正体

あなたの能力が足りないわけではありません。多くの場合、「データ見て提案して」で手が止まるのは、データ分析を「数字をいじって、それっぽいグラフを作ること」だと狭く捉えていて、進める順番(地図)を持っていない——これが正体です。

表計算ソフトの基本操作は、あなたもできます。SUM で合計を出す、AVERAGE で平均を出す、グラフボタンを押す。でも、道具が使えても、それを何のために・何を知りたくて使うのか(目的)が決まっていないと、いきなり手だけが動いて、「とりあえず平均」「とりあえずグラフ」になってしまう。そして「で、何が言いたいの?」と返されて止まる。これは、目的地を決めずに、とりあえず歩き出すのと同じです。

ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。データ分析は“数字をいじる”ことではなく、目的→集計→表現の順で傾向を見せて、次の一手を決めること。いつも、目的から始める。この順番さえ持てば、平均もグラフもピボットテーブルも、地図のどこで使えばいいかが見えてきます。

データ分析=目的から逆算して、傾向を見せ、次の一手を決めること

データ分析とは、数字を眺めて平均を出したり、それっぽいグラフを作ったりすることではありません。「何を判断したいのか(目的)」から逆算して、データを集計し、傾向を表とグラフで見せて、次の行動を決めることです。

冒頭で触れた PPDACサイクルを、もう一度かみくだきます。これは問題解決の流れを、Problem(問題)→ Plan(計画)→ Data(データ)→ Analysis(分析)→ Conclusion(結論)の5段階に分けた、統計教育で広く使われる進め方で、総務省統計局も紹介しています。注目してほしいのは、最初の「問題(目的)」と「計画」が、データやグラフよりに来ていること。つまり、「何を知りたいか」をはっきりさせてから、データを集めて分析する、という順番です。だから、データ分析で最初に考えるのは「どう集計するか」でも「どんなグラフにするか」でもなく、「そもそも、何を判断したいのか」。出発点は、いつでも目的です。

ここで先回りして、いちばんありがちな誤解を潰しておきます。「データ分析=平均を出す・グラフを作る作業」という思い込みです。集計やグラフは、データ分析の一部分(あとで出てくる「集計」「表現」の道具)にすぎません。その手前に、「何を判断したいか(目的)」という、もっと大事な土台があります。土台を飛ばして集計やグラフから始めると、「で、何が言いたいの?」という、あの返しが待っています。

全体像は1枚の地図:目的→集計→表現

では、そのデータ分析を、どんな順番で進めればいいのか。順番は、この3つです。

順番進めることひとことで言うと
① 目的何を判断したいかを決めるなぜ調べる?
② 集計どの軸(切り口)で数える・合計・平均するか何で分けて、何を数える?
③ 表現傾向を表とグラフでどう見せ、次の一手につなげるかだから、どうする?

これが、データ分析の全体像=1枚の地図です。①目的から始めて、②集計、③表現の順に進めます。

よく聞く「ピボットテーブル」「関数」「AIで分析」といった言葉は、実はすべて、この地図の②集計を助ける道具です。便利ですが、いちばん最後に開ける引き出しで、そこから話を始めないのがコツです。今は名前を覚えなくて大丈夫。「道具は②集計のところで使うんだな」とだけ掴んでください。

ここで、この講座を通して使う共通例に登場してもらいましょう。あなたは、ネットで雑貨を売る「みどり雑貨店」で働く、入社2年目だとします。リーダーから、こう頼まれました。「来月の販促、どこに力を入れる? 先月の注文データを見て提案して」。手元には、先月の注文データがあります。1行が1件の注文で、こんな列が並んでいます。

中身の例
日付6月3日
曜日
商品カテゴリキッチン/文具/インテリア
流入元SNS/検索/メルマガ
金額2,400円

さて、これをどう分析するか。地図を持たない状態だと、「とりあえず全体の平均を出そう」「とりあえずグラフを作ろう」と、いきなり数字・グラフから動いてしまいます。そうではなく、「①リーダーは何を判断したい?(目的) ②それを知るには、何をどう集計する? ③どう見せれば傾向が伝わる?」の順で考える——これがデータ分析です。この章では、まだ中身は埋めません。3つのステップの“枠”だけを立てておきます。

この章の確認(演習)

共通例「みどり雑貨店の注文データ」について、いきなり集計を始めるのをやめて、次の3つの枠を、答えは空欄のまま書き出してみてください。

  • ① 目的(何を判断したいか):_____
  • ② 集計(どの軸で、何を数えるか):_____
  • ③ 表現(傾向をどう見せ、次に何をするか):_____

そのうえで、「データ分析とは、目的から逆算して集計し、傾向を見せて、次の一手を決めることだ」を、自分の言葉で1〜2行に書いてみます。数字からではなく“枠”から入る感覚を、自分の手で言葉にできたら、この章はゴールです。空欄は、これから第2章・第3章・第4章で1つずつ埋めていきます。

目的を「問い」に翻訳し、必要なデータ(軸)を決める

地図の1ステップ目、目的を埋めていきます。ただし、目的を決めるだけでは集計は始められません。目的を「集計できる形」に翻訳するのが、この章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、目的を答えの出る具体的な“問い”(推移・比較・割合のどれを知りたいか)に翻訳し、その問いに必要な軸(切り口)決められるようになります。

「目的」のままでは、まだ集計できない

リーダーの依頼は、「来月の販促、どこに力を入れる?」でした。これが目的です。でも、この目的のままでは、まだ何を集計すればいいか決まりません。「販促をどこに力を入れるか」は大きすぎて、表計算ソフトのどのボタンも押せないのです。

ここでつまずく人は、目的が大きいまま、いきなりデータに飛び込みます。すると、列を片っ端から集計して、グラフを量産して、「手は動いたけど、で、何が言いたいの?」になります。第1章で詰まったのと同じ場所です。必要なのは、大きな目的を、データで答えが出るサイズに割ることです。

目的を「問い」に割る:推移・比較・割合・分布

大きな目的は、いくつかの“問い”に翻訳します。問いとは、「データを見れば答えが出る、具体的な質問」のこと。そして、ビジネスの問いは、たいてい次の4つのどれかに当てはまります。

問いの種類知りたいこと
推移時間とともに、どう変わった?売上は月の前半と後半でどう変化した?
比較A と B、どちらが大きい?流入元別で、どこが強い/弱い?
割合全体に占める内訳は?売上の柱は、どのカテゴリ?
分布どのあたりに散らばっている?注文金額は、いくらくらいが多い?

目的を、この4種類のどれかの問いに割っていく。これが「問いを立てる」ということです。先ほど触れた PPDACサイクルでいえば、データを集める前の「計画(Plan)」にあたる、いちばん大事な段取りです。

問いが決まると、「軸」が決まる

問いを立てると、いいことがあります。何で集計すればいいか(軸)が自動的に決まるのです。

ここで「軸」という言葉を押さえましょう。軸とは、データを分ける“切り口”のことです。「曜日で分ける」「カテゴリで分ける」「流入元で分ける」——この「◯◯で分ける」の◯◯が軸です。そして、軸で分けたうえで「何を数えるか(件数・合計・平均)」がです。集計は、いつもこの「軸×値」でできています。

共通例で、目的「来月どこに販促費を使うと売上が伸びるか」を、3つの問いに割ってみましょう。

問い種類軸(どの列で分ける)値(何を集計する)
売上は月の前半と後半でどう推移した?推移金額の合計
売上の柱はどのカテゴリ? 割合は?割合商品カテゴリ金額の合計と割合
流入元別で、どこが強い/弱い?比較流入元金額の合計

どうでしょう。「来月の販促どうする?」のままだと何も集計できませんでしたが、3つの問いに割ったとたん、「週で分けて金額を合計する」「カテゴリで分けて割合を出す」「流入元で分けて金額を比べる」と、やることがはっきりしましたよね。目的を問いに翻訳し、問いから軸を決める。この順番(目的→問い→軸)で絞り込むのが、集計の前のいちばん大事な準備です。

この章の確認(演習)

共通例「みどり雑貨店」の目的「来月どこに販促費を使うと売上が伸びるか」を、自分で3つの問いに翻訳してみてください(上の例と同じでも、別の問いでもかまいません)。

そのうえで、それぞれの問いに、「軸(どの列で分けるか)」と「値(何を集計するか=件数・合計・平均)」を1行で書き、その問いが「推移/比較/割合」のどれに当たるかも添えてみます。目的→問い→軸の順で絞れたら、ゴールです。

集計する(軸×値で数える・合計・平均する)と「平均の罠」

地図の2ステップ目、集計を埋めます。第2章で決めた問いを、実際の集計表にしていきます。そしてここで、多くの人がはまる落とし穴「平均の罠」を1つ潰します。

この章のゴール

この章を読み終えると、問いに沿って「軸×値」の集計表を作れるようになります。さらに、平均だけに頼らず、外れ値があるときは中央値も確かめて、実態を判断できるようになります。

集計の基本形は「軸×値」

集計は、むずかしく考える必要はありません。基本形は、第2章で出てきた「軸(どの切り口で分けるか)×値(何を数えるか=件数・合計・平均)」だけです。第2章で決めた問いに沿って、軸ごとに値を出せば、それが集計表になります。

表計算ソフトには、これをラクにする道具があります。ピボットテーブルです。ピボットテーブルとは、軸(行)と値(集計)をドラッグで組み替えながら集計表を作れる機能のこと。軸を「週」から「カテゴリ」に入れ替えれば、別の問いの集計表にすぐ作り変えられます。そして、複数の軸を掛け合わせる集計を、クロス集計と呼びます。たとえば「曜日×カテゴリ」で集計すれば、「土曜はキッチンが売れる」といった、1つの軸だけでは見えない傾向が見えてきます。

操作の細かいやり方(どのボタンを押すか)は、ここでは扱いません。それは表計算ソフトの講座の役目です。この章で身につけてほしいのは、「集計とは、結局軸×値なんだ」という、シンプルな骨格のほうです。

共通例:3つの問いを集計表にする

では、第2章で立てた3つの問いを、集計表にしてみましょう。数字はすべて、説明のための仮の例です。

まず①「売上は月の前半と後半でどう推移した?」。軸=週、値=金額の合計で集計します。

売上合計
第1週12万円
第2週15万円
第3週14万円
第4週19万円

月の後半、特に第4週に伸びている、と読めます。次に②「売上の柱はどのカテゴリ? 割合は?」。軸=カテゴリ、値=金額の合計と割合です。

カテゴリ売上の割合
キッチン48%
インテリア33%
文具19%

売上の柱は、約半分を占めるキッチン用品だと分かります。最後に③「流入元別で、どこが強い/弱い?」。軸=流入元、値=金額の合計です。

流入元売上合計
検索28万円
SNS21万円
メルマガ11万円

検索からの売上がいちばん大きく、メルマガが弱い、と読めます。3つの問いが、3つの集計表で答えられました。軸×値さえ決まれば、集計はこれだけのことなのです。

「平均の罠」:外れ値があると、平均は実態より高く出る

ここで、集計でいちばんはまりやすい落とし穴を潰しておきます。それが「平均の罠」です。

たとえば、リーダーに「1件あたり、いくらくらい買ってもらえてるの?」と聞かれて、注文金額の平均を出したら、平均3,800円だったとします。でも、注文データをよく見ると、ほとんどの注文は2,000〜3,000円台。そんな中に、1件だけ8万円の法人まとめ買いが混じっていました。この1件が平均を引き上げて、3,800円という、実態より高い数字になっていたのです。

平均は、全体を“ならして”見せてくれる便利な値です。でも、こうした極端に大きい値(外れ値)があると、それに引っ張られて、実態より高く(または低く)出るという弱点があります。そこで使うのが、中央値です。中央値とは、データを大きさ順に並べたとき、ちょうど真ん中に来る値のこと。さきほどの注文金額を大きさ順に並べて真ん中を見ると、中央値は2,500円。こちらのほうが、「いつものお客さんは、だいたいこのくらい買う」という実態に近いですよね。

見る値数字何を表すか
平均3,800円全体をならした値(1件8万円に引っ張られている)
中央値2,500円大きさ順の真ん中(外れ値に左右されない実態)

これは、あなたの会社のデータだけの話ではありません。総務省統計局の家計の貯蓄データでも、平均額を下回る世帯が67.9%(約3分の2)を占めるという結果があり、一部のお金持ちの大きな金額が平均を引き上げていることが知られています。平均が「みんなの真ん中」とは限らないのです。

注意したいのは、「平均はダメ、中央値が正解」ではないこと。外れ値が見当たらない素直なデータなら、平均で十分です。大事なのは、平均を出したら「外れ値に引っ張られていないか?」と一度疑い、あやしければ中央値も見て確かめること。これだけで、「平均3,800円が標準です」という、実態とずれた報告を防げます。

この章の確認(演習)

共通例「みどり雑貨店」の注文データについて、第2章で立てた問いのうち1つを選び、「軸×値」の集計表を作る形を書いてみてください(行=軸、列=値)。たとえば「曜日×売上合計」でも「カテゴリ×件数」でもかまいません。

さらに、3-3の注文単価の例(ほとんどが2,000〜3,000円台、1件だけ8万円)について、平均(3,800円)と中央値(2,500円)の、どちらが「いつものお客さんの実態」を表しているかを、理由つきで1〜2行で書いてみましょう。軸×値で集計し、平均の罠を中央値で補う感覚が手に入ったら、ゴールです。

傾向を表とグラフで示す(問いに合ったグラフを選ぶ)

地図の3ステップ目、表現を埋めます。集計した傾向を、表とグラフで「ひと目で伝わる」形にして、最後に「だから、どうする」までつなげます。

この章のゴール

この章を読み終えると、集計した傾向を問いに合ったグラフ(推移=折れ線/比較=棒/割合=円・帯)で示し、「だから次はこうする」という次の一手まで説明できるようになります。あわせて、見る人を惑わせるグラフ(3D円グラフなど)を避けられるようになります。

グラフは「問いの種類」で選ぶ

集計表は正確ですが、数字の羅列なので、傾向(増えている/どれが大きい/何が柱か)がひと目では伝わりません。そこでグラフにします。

ここでいちばん大事なのは、「見せたい問いの種類」でグラフを選ぶことです。「とりあえず棒か円」で選ぶのをやめましょう。総務省統計局の整理を借りると、基本はこうなっています。

見せたいこと(問い)グラフ総務省統計局の説明
推移(変化の方向)折れ線グラフ「量が増えているか減っているか、変化の方向をみる」
比較(量の大小)棒グラフ「棒の高さで、量の大小を比較する」
割合(全体の内訳)円グラフ「全体の中での構成比をみる」
割合の比較(複数の内訳を比べる)帯グラフ「構成比を比較する」

第2章で問いを「推移・比較・割合」に分けておいたのは、ここで効いてきます。問いの種類さえ決まっていれば、グラフは自動的に決まるのです。

共通例:3つの集計表を、合うグラフにする

第3章で作った3つの集計表を、それぞれ合うグラフにしてみましょう。

集計表問いの種類選ぶグラフ理由
週ごとの売上(12→15→14→19万)推移折れ線グラフ後半に伸びている“変化”がひと目で分かる
カテゴリ別の割合(キッチン48%ほか)割合円グラフキッチンが約半分の“柱”だと分かる
流入元別の売上(検索28万ほか)比較棒グラフ検索が最大・メルマガが最小と“大小”を比べられる

3つのグラフから読み取れる傾向を、1文にまとめると——「売上は月の後半に伸び、柱はキッチン用品、流入は検索が強くてメルマガが弱い」。

そして、ここが大事です。グラフは、作って終わりではありません。第1章の目的「来月の販促、どこに力を入れる?」に戻って、「だから、どうする」を言います。傾向から導く次の一手は——「来月は、売上が伸びている後半に向けて『キッチン用品×検索』を厚くし、弱いメルマガはてこ入れする」。これで、リーダーの最初の問いに、目的→集計→表現の順で、筋道立てて答えられました。

もし、グラフの選び方を間違えるとどうなるか。①の週ごとの推移を円グラフにすると、「増えている」という変化がまったく分かりません。②の構成比を折れ線にしても、何の割合か伝わりません。問いとグラフが合っていないと、せっかく正しく集計しても、傾向が伝わらないのです。

グラフで「盛らない」:3D円グラフは避ける

グラフは、見栄えを“盛る”ための飾りではなく、傾向を“正しく伝える”ための道具です。ここで1つだけ、やってはいけないことを覚えてください。3D(立体)の円グラフは使わないことです。

3Dの円グラフは、見た目は派手ですが、立体にすることで手前の項目が大きく、奥の項目が小さく見えてしまい、実際の割合と違う印象を与えます。見る人を惑わせる(ミスリードする)原因になるので、割合を見せたいときはふつうの(平らな)円グラフにします。また、項目の数が多くて正確に比べたいときは、円グラフよりも棒グラフのほうが正確に伝わります。数値やパーセントのラベルを添えておくと、さらに親切です。「派手なグラフ」より「正しく読めるグラフ」。これが、信頼される報告の地味だけど大事なコツです。

この章の確認(演習)

共通例「みどり雑貨店」の3つの集計表(週ごとの売上/カテゴリ別の割合/流入元別の売上)それぞれに、合うグラフ(折れ線/棒/円・帯)を選び、その理由を1行で書いてみてください。

そのうえで、3つのグラフから読み取れる傾向を1文にまとめ、「だから来月は◯◯を強化する」という次の一手を1文で書いてみましょう。目的→集計→表現→次の一手を、自分の手で1周つなげられたら、ゴールです。「データ見て提案して」に、数字からではなく、目的から筋道立てて答えられるようになっているはずです。

まとめ:データ分析は“数字をいじる”ことではなく、目的から次の一手を決めること

おつかれさまでした。「みどり雑貨店の注文データで、来月の販促を提案する」という、たった1つの場面を、データ分析とは何か→目的を問いに翻訳→軸×値で集計→グラフで傾向を表現、と1ステップずつ地図に埋めてきました。第1章で空欄だった3つの枠を、ここで振り返ります。

  1. データ分析とは……数字をこねくり回す作業ではなく、目的から逆算して、集計し、傾向を表とグラフで見せて、次の一手を決めること。順番は、目的→集計→表現。集計やグラフは、その中の道具にすぎません(第1章)。
  2. 目的→集計(その1:問いと軸)……大きな目的のままでは集計できない。「推移・比較・割合」の問いに翻訳すると、何で分けるか(軸)と何を数えるか(値)が決まる(第2章)。
  3. 集計(その2:軸×値と平均の罠)……集計の基本形は「軸×値」。ピボットテーブルで組み替え、必要なら軸を掛け合わせる(クロス集計)。平均は外れ値に引っ張られるので、あやしければ中央値で実態を確かめる(第3章)。
  4. 表現……集計表のままでは伝わらない。問いの種類でグラフを選ぶ(推移=折れ線/比較=棒/割合=円・帯)。3D円グラフのような“盛る”グラフは避け、最後に「だから次はこうする」までつなげる(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「『データ見て提案して』に、数字からではなく、“目的→集計→表現”の順で、次の一手まで答えられているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——データ分析は“数字をいじる”ことではなく、“目的→集計→表現”の順で傾向を見せて、次の一手を決めること。いつも、目的から始める。これが身につくと、「来月の販促どうする?」と聞かれたとき、「目的は来月どこに販促費を使うかですよね。週ごとの推移、カテゴリの割合、流入元の比較を調べたので、キッチン×検索を厚くするのを提案します」と、目的から順に、表とグラフを根拠に話せるようになります。

明日の最初の一歩:自分の手元にあるデータ(日報・売上・問い合わせ件数・アクセス数など、何でもかまいません)を1つ選び、①目的(何を判断したいか)を1文 ②それを問い(推移・比較・割合)に翻訳して軸と値を決める ③合うグラフを1つ選ぶを、目的から順に書いてみてください。きれいにまとめる必要はありません。「データ見て提案して」に、数字からではなく目的から答えられたら、それが第一歩です。

そして、この「目的→問い→集計→グラフ」の型を、毎回ゼロから考えなくていいように、集計テンプレートを用意しました。目的・問い・軸・値・グラフの選び方が埋められるスプレッドシートです。集計テンプレートをダウンロードして、今日の「目的→集計→表現」の型を、自分の手元のデータで1周回してみてください。集計をもっと速くする関数やピボットテーブルの操作は「Excelの基礎」「スプレッドシートの基礎」の講座で、AIに集計や要約を手伝ってもらう方法は「生成AIを仕事で使う」の講座で深められます。まずはこの「目的→集計→表現」の地図を、自分の手で1周描けるようにしておきましょう。それが、すべての土台になります。

よくある質問

データ分析とは何ですか?

データ分析とは、「何を判断したいか(目的)」から逆算してデータを集計し、傾向を表とグラフで見せて次の行動を決めることです。数字をいじる作業ではなく、目的→集計→表現の順で進めるのが基本です。

初心者でも取り組めますか?

はい。この講座では統計の専門知識は必要ありません。「目的から始めて、軸と値を決めて集計し、問いに合ったグラフを選ぶ」という手順を、共通例を使って1ステップずつ練習できます。

平均と中央値はどう使い分けますか?

データに極端に大きい値(外れ値)が含まれない場合は平均で十分です。外れ値があると平均は実態より高く(または低く)出るため、そのようなときは大きさ順の真ん中の値である中央値も合わせて確認すると実態に近い判断ができます。

グラフはどう選べばよいですか?

見せたい問いの種類で選びます。推移(変化の方向)を見せたい場合は折れ線グラフ、量の大小を比べたい場合は棒グラフ、全体に占める割合を見せたい場合は円グラフが基本です。問いの種類を先に決めておくと、グラフは自動的に決まります。

ピボットテーブルは必須ですか?

必須ではありません。ピボットテーブルは「軸×値」の集計表をラクに作るための道具の一つです。大事なのはツールの操作方法よりも「何の軸で、何の値を集計するか」という考え方であり、この講座ではその骨格の習得を目的としています。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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