キャリアの基礎 | マナビズ

キャリアの基礎

キャリアの基礎

「3年後、どうなっていたい?」——上司との面談で、あるいは年に一度のキャリアシートで、そう聞かれて、何も書けずにペンが止まってしまった。そんな経験はありませんか。同期は「私は企画の仕事がやりたいんです」とハッキリ言うのに、自分には“やりたいこと”が思いつかない。「やりたいことがない自分は、意識が低いのかな」と、なんだか落ち込んでしまう。キャリアという言葉が、出世とか転職とか、もっとデキる人が考える“重くて遠いもの”に感じられて、何から手をつければいいのか分からない。

でも、安心してください。キャリアづくりに、立派な夢は必要ありません。スラスラ答えられる人とあなたの違いは、大きな夢を持っているかどうかではなく、手元に無い“夢”を探しに行こうとするか、すでに手元にある“経験”から始めるかだけです。

実は、キャリアづくりの出発点は「未来の夢」ではなく、あなたがこれまでやってきた「経験」です。キャリアとは、出世や転職といった一部の出来事だけを指すのではなく、あなたが日々積み重ねてきた仕事の経験そのもの。だから、夢が無くても始められます。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. キャリアを「出世・転職・大きな夢」ではなく、これまでの経験を棚卸しし→強み(できること)と志向(大事にしたいこと)を取り出し→「キャリアの軸(自分の判断基準)」を1文で言葉にすることとして、自分の言葉で説明できる(やりたい“夢”が先に無くても始められる、と言えます)
  2. 自分のこれまでの経験を5〜10個書き出して棚卸しし、その中の「当たり前にできてしまうこと」から、自分の強み(できること)を言葉にできる(「強みなんて何もない」で止めません)
  3. 強みと志向を束ねて、「私は〇〇な場面で、△△を大事にして働きたい」という“キャリアの軸”を1文で作成でき、迷ったときの判断のものさしとして使える

この講座は最後まで、「入社2年目の“ゆいさん”が、自分のキャリアの軸を言葉にしていく」という、たった1人の話だけで進めます。ゆいさんは、希望していた企画部ではなく営業事務に配属され、「やりたいことも、強みも、特にない」と感じている人。そんなゆいさんを、キャリアとは何か→経験の棚卸し→強み→志向と軸、と1マスずつ進めていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分のことに置き換えて、書きながら読み進めてみてください。そして、自分の強みをもっと客観的に知りたくなったら、最後にスキル診断への入口も用意しています。まずは、夢がなくても始められる、という安心から出発しましょう。

この講座のポイント

  • キャリアを「出世・転職・大きな夢」ではなく、これまでの経験を棚卸しし→強み・志向を取り出し→「キャリアの軸」を言葉にすることとして、自分の言葉で説明できる
  • 自分のこれまでの経験を5〜10個、具体的な場面で書き出して棚卸しできるようになります(「やりたいことが無い」で止めません)。
  • 棚卸しした経験の中から、「自分が当たり前にできてしまうこと」を手がかりに、強み(できること)を1〜2個、言葉にできる
  • 強みと志向を束ねて、「私は〇〇な場面で、△△を大事にして働きたい」という“キャリアの軸”を1文で作成でき、迷ったときの判断のものさしとして使える

キャリアとは何か(経験→強み→志向→軸の地図)

まずは、「将来どうなりたい?」と聞かれて固まってしまう、あのモヤモヤの正体をはっきりさせましょう。キャリアという“重くて遠い言葉”を、自分の手で使える1枚の地図に変えていく、土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、キャリアを「出世・転職・大きな夢」ではなく、これまでの経験を棚卸しし→強み・志向を取り出し→「キャリアの軸」を言葉にすることとして、自分の言葉で説明できるようになります。

「将来どうなりたい?」に固まる正体

あなたの意識が低いわけでも、能力が足りないわけでもありません。「将来どうなりたい?」に固まるのは、多くの場合、キャリアを「出世・転職・大きな夢」という重いものだと思い込み、手元に無い“夢”を頭の中から探し出そうとしている——これが正体です。

夢は「これからの未来」の話で、まだ手元に無いものです。無いものを頭の中から探しているのですから、固まるのは当たり前。地図を持たずに歩き出そうとして、立ちすくんでいる状態です。

ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。キャリアは“どこかで見つける”ものではなく、経験から“言葉にする”もの。そして、考える順番は、経験→強み→志向→軸。手元に無い夢からではなく、すでに手元にある「経験」から始める。これさえ押さえれば、固まっていたペンが動き出します。

キャリア=働くことを通じた「経験の連なり」

そもそもキャリアとは、何のことでしょうか。出世や肩書きのことだと思っていると、「自分にはまだ早い」と感じてしまいます。でも、本当はもっと身近なものです。

厚生労働省は、キャリアを「関連した職務(職業経験)の連鎖」、つまり働くことを通じて積み重ねてきた経験の連なりだと説明しています。出世や転職は、そのキャリアの中で起きる出来事の一部にすぎません。あなたが今日も受発注を処理し、問い合わせに答え、資料を作った——その一つひとつが、もうあなたのキャリアなのです。

そして、この講座でやるのは、その経験の連なりを棚卸しして、「キャリアの軸」を言葉にすることです。キャリアの軸とは、ひとことで言えば、働くうえで、あなたが最も大切にしたい“判断のものさし”のこと。専門的には「キャリアアンカー」と呼ばれ、組織心理学者のエドガー・シャインが「最も大切にして譲れない価値観」として整理しています。難しく考えなくて大丈夫。要は、「自分は仕事で、何を大事にしたいんだっけ?」という、迷ったときに立ち戻れる自分なりのものさしを、1つ持っておこう、という話です。

全体像は1枚の地図:経験→強み→志向→軸

では、その「軸」を、どんな順番で言葉にしていけばいいのか。順番は、この4つです。

順番やることひとことで言うと
① 経験これまでやってきたことを書き出す何をやってきた?
② 強み経験から「できること」を取り出す何ができる?
③ 志向経験から「大事にしたいこと」を取り出す何を大事にしたい?
④ 軸①〜③を束ねて1文にするだから、どう働きたい?

これが、キャリアの軸づくりの全体像=1枚の地図です。①経験から始めて、②強み、③志向、そして④軸へと埋めていきます。大事なのは、出発点が「未来の夢」ではなく「これまでの経験」だということ。夢からではなく、経験から入る。これがコツです。

ちなみに、就職活動や研修で「Will・Can・Must」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。Will(やりたいこと)・Can(できること)・Must(すべきこと)の3つで考える、という有名な整理です。これも、実はこの地図の上に乗っています。Can(できること)が、この地図の「強み」。Will(やりたいこと)が、「志向」のあたりです。今は名前を覚えなくて大丈夫。「いろいろな言葉があるけど、結局この地図のどこかに乗るんだな」とだけ掴んでください。

ここで、この講座を通して付き合ってもらう、ひとりの先輩に登場してもらいましょう。入社2年目の「ゆいさん」です。ゆいさんは、希望していた企画部ではなく営業事務に配属され、毎日の受発注や問い合わせ対応をこなしています。先日、上司との面談で「3年後どうなりたい?」と聞かれ、「やりたいことも、強みも、特にないので…」と、何も言えずに固まってしまいました。

このとき、「夢が無いから書けない」と止まってしまうのが、地図を持っていない状態です。そうではなく、「①これまで何をやってきた? ②その中でできること(強み)は? ③やっていて大事にしたいことは? ④だから、どう働きたい(軸)?」の順で考えていく——これが、これからやるキャリアづくりです。この章では、まだ中身は埋めません。4つの問いの“枠”だけを立てておきます。

この章の確認(演習)

ゆいさんになったつもりで、いきなり“夢”を探すのをやめて、次の4つの問いを、答えは空欄のまま書き出してみてください。

  • ① これまでの経験(やってきたこと):_____
  • ② 強み(できること):_____
  • ③ 志向(大事にしたいこと):_____
  • ④ 軸(だから、どう働きたい):_____

そのうえで、「キャリアとは、この4つを経験から順に言葉にして、“軸”を作ることだ」を、自分の言葉で1〜2行に書いてみます。夢からではなく“経験の枠”から入る、という感覚を、自分の手で言葉にできたら、この章はゴールです。空欄は、これから第2章・第3章・第4章で1つずつ埋めていきます。

経験を棚卸しする(やってきたことを書き出す)

地図の1マス目、経験(やってきたこと)を埋めていきます。夢からではなく、すでに手元にある経験から始める——その第一歩です。

この章のゴール

この章を読み終えると、自分のこれまでの経験を5〜10個、具体的な場面で書き出して棚卸しできるようになります(「やりたいことが無い」で止めません)。

地図の最初は「経験」。夢ではなく、やってきたことから

第1章で確認したとおり、キャリアづくりの出発点は経験です。なぜ夢からではなく、経験からなのか。理由はシンプルで、夢は手元に無いけれど、経験はもう手元にあるからです。

厚生労働省が示すキャリア形成の手順でも、いちばん最初のステップは「自己理解」、つまり自分自身を知ることだとされています。そして、自分を知るための一番確かな材料が、これまでの経験です。未来の自分にインタビューはできませんが、やってきたことなら事実として書き出せます。だから、まずは経験の棚卸しから始めるのです。

立派な実績でなくていい。小さな日常の場面でよい

「経験を書き出そう」と言うと、多くの人が「人に誇れるような大きな実績を書かなきゃ」と身構えて、手が止まってしまいます。でも、それは誤解です。棚卸しに、立派さは要りません。

書き出すのは、日々の小さな場面でかまいません。次の5つの切り口で探してみてください。

切り口思い出すヒント
任された仕事この1〜3年で、自分が担当した仕事は?
うまくいったこと人に感謝された、ほめられた場面は?
苦労したこと大変だったけど、やり切ったことは?
頼られたこと「これお願い」とよく頼まれることは?
時間を忘れることやっていて苦にならない作業は?

ここで大事な注意がひとつ。「こんなの当たり前すぎる」と思っても、書く前に消さないでください。実は、その“当たり前にできてしまうこと”こそが、次の第3章で見つける「強み」の種なのです。自分では平凡に見えることが、他の人から見たら立派な強みだった、というのはよくある話です。だから、ジャッジせずに、まずは書き出す。これが棚卸しのルールです。

ゆいさんの経験を棚卸ししてみる

では、ゆいさんの経験を棚卸ししてみましょう。「やりたいことも強みも無い」と言っていたゆいさんですが、この2年で“やってきたこと”を書き出すと、こうなりました。

  • 受発注の処理を、毎日ミスなく回している
  • 取引先からの急な変更依頼を、慌てずに段取りし直して対応した
  • クレームの一次対応で、相手の話を最後まで聞いて、落ち着かせることができた
  • 新しく入った後輩のために、受発注の手順マニュアルを自分で作った
  • Excelの集計を関数でまとめて、先輩の手作業を半分に減らした

どうでしょう。「やりたいことは無い」と言っていたゆいさんでも、やってきたことは、こんなにあるのです。ひとつひとつは派手な実績ではありません。受発注、クレーム対応、マニュアル作り——どれも日々の仕事です。でも、これを書き出せたことが、軸づくりの最初の素材になります。何も無いと思っていた手元に、ちゃんと材料があった。まずは、ここに気づくことが大切です。

この章の確認(演習)

あなた自身の、この1〜3年の経験を、具体的な場面で5〜10個、書き出してみてください。立派な実績でなくてかまいません。さきほどの5つの切り口——「任された仕事/うまくいったこと・感謝されたこと/苦労してやり切ったこと/頼られたこと/時間を忘れること」——を使って、1行ずつ書いていきます。

繰り返しますが、「これは当たり前すぎる」と思っても、消さずに残してください。夢ではなく経験から始める、という感覚を自分の手で体験できたら、ゴールです。このリストは、次の第3章でそのまま使います。

経験から「強み(できること)」を取り出す

地図の2マス目、強み(できること)を埋めます。「自分には強みなんて何もない」という思い込みが、この章で崩れます。

この章のゴール

この章を読み終えると、棚卸しした経験の中から、「自分が当たり前にできてしまうこと」を手がかりに、強み(できること)を1〜2個、言葉にできるようになります。

強みは“特別な才能”ではなく、“当たり前にできること”の中にある

「自分の強みは何ですか」と聞かれて、すぐ答えられる人は多くありません。多くの人が「強み=特別な才能や、すごい資格のこと」だと思い、「そんなものは自分には無い」と止まってしまいます。

でも、ここに大きな勘違いがあります。本当の強みは、自分では“当たり前”すぎて気づかないことの中にあります。人より少しラクにできてしまうこと、苦にならずに続けられること、よく「これお願い」と頼まれること。それが、強みのサインです。

自分にとっては「できて当たり前」なので、わざわざ強みだと思わないのです。細かいミスにすぐ気づく人は、それを特別だと思っていませんが、見逃しがちな人から見れば立派な強みです。だから強みは、ゼロから探し出すのではなく、第2章で書いた経験の中から“拾い出す”ものなのです。

経験に2つの問いを当てて、強みを拾う

では、どうやって経験から強みを拾うのか。やり方は、第2章で書いた経験リストの一つひとつに、次の2つの問いを当てるだけです。

  • 問い1:これは、自分には苦もなくできただろうか?
  • 問い2:これで、人から頼られた・感謝されただろうか?

このどちらかに「イエス」がつく経験には、印をつけます。そして、印のついた経験に共通して現れる“できること”を、1〜2個、言葉にします。

このとき、コツがあります。「優しい」「真面目」といった性格を表す言葉で止めないことです。性格は強みの説明にはなりません。そうではなく、「〇〇するのが得意」「〇〇は苦にならない」という、“何ができるか”の形で書きます。経験の場面に紐づけて書くと、面接や面談でもそのまま使える、具体的な強みになります。

ゆいさんの強みを取り出してみる

ゆいさんの経験リストに、2つの問いを当ててみましょう。

ゆいさんの経験苦もなくできた?頼られた?
受発注をミスなく回す
急な変更依頼を慌てず段取り
受発注マニュアルを自作
クレーム一次対応で相手を落ち着かせた

印のついた経験を見比べると、共通点が見えてきます。受発注・変更対応・マニュアル作りに共通するのは——「複数の依頼を段取りして、ミスを先回りで防ぐことが、苦もなくできる」。そしてクレーム対応からは——「相手の話を最後まで聞いて、不安を受け止めるのが得意」

「強みなんて何もない」と言っていたゆいさんですが、経験を見れば、“先回りの段取り力”と“傾聴”という2つの強みが、ちゃんと現れていました。これは、新しく身につけたものではありません。ずっと前から、ゆいさんが当たり前にやっていたこと。それに、経験を通して気づけただけなのです。

この章の確認(演習)

第2章で書いた、あなた自身の経験リストを開いてください。一つひとつに、「これは苦もなくできた?」「人に頼られた?」の2つの問いを当てて、当てはまるものに印をつけます。

そして、印のついた経験に共通する“できること”を、1〜2個、「〇〇するのが得意/〇〇は苦にならない」の形で言葉にしてみましょう。「優しい」などの性格の言葉ではなく、経験に紐づいた“できること”で書くのがポイントです。「強みは無い」が「経験から拾える」に変わったら、ゴールです。

志向を言葉にして、「キャリアの軸」を1文に束ねる

地図の3マス目「志向」と、仕上げの「軸」を埋めます。ここまで集めてきた経験と強みを、いよいよ1本の軸にまとめます。

この章のゴール

この章を読み終えると、強みと志向を束ねて、「私は〇〇な場面で、△△を大事にして働きたい」という“キャリアの軸”を1文で作成でき、迷ったときの判断のものさしとして使えるようになります。

志向は“壮大な夢”でなく、“嬉しかった・大事にしたい”から拾う

強み(できること)の次は、志向(大事にしたいこと)です。志向と聞くと、また「壮大な夢を語らなきゃ」と身構えるかもしれません。でも、ここでも夢は要りません。

志向とは、やっていて「嬉しい」「これは大事にしたい」と感じる方向のこと。これも、第2章の経験の中から拾えます。経験を振り返って、「これをやったとき、なんだか嬉しかったな」「この瞬間はやりがいを感じたな」という場面を探すのです。「感謝されると嬉しい」「黙々と作業するより、誰かを助ける方が好き」「正確に仕上げられると落ち着く」——そんな、心が動いた小さなサインが、志向の手がかりです。

軸=強み×志向を、1文に束ねる

いよいよ、仕上げです。第3章で取り出した強み(できること)と、いま見つけた志向(大事にしたいこと)。この2つを束ねて、1文のキャリアの軸を作ります。型は、これです。

「私は、〇〇な場面で、△△を大事にして働きたい」

〇〇には、自分の強みが活きる場面を。△△には、大事にしたい志向を入れます。この1文が、あなたのキャリアの軸——働くうえで迷ったときに立ち戻る、自分だけの判断のものさしになります。第1章で触れた「キャリアアンカー」、つまり最も大切にして譲れない価値観を、自分の言葉にしたもの、と言ってもいいでしょう。

軸があると、異動や仕事選び、急に降ってきたチャンスに迷ったとき、人の正解ではなく、自分の基準で選べるようになります。「みんなが良いと言うから」ではなく、「自分の軸に合うから」で決められる。これが、軸を持つことのいちばんの効果です。

軸は仮でいい。使ってこそ、意味がある

ここで、力を抜いてほしい話をします。軸は、最初から完璧でなくてかまいません。一度で立派な軸を作ろうとすると、また手が止まってしまいます。仮でいいのです。

なぜなら、キャリアの多くは、計画どおりには進まないからです。スタンフォード大学のクランボルツという研究者は、「個人のキャリアの8割は、偶然の出来事から生まれる」と述べています。突然の異動、たまたま任されたプロジェクト、ふとした出会い——そうした予期しない偶然が、キャリアを大きく動かす、というのです。

だとすれば、軸の役割は「未来を完璧に決めること」ではありません。軸は、偶然のチャンスがやってきたときに、「これは自分に合う」と掴むためのアンテナです。だから、今は仮の軸でいい。経験が増えて自分がもっと見えてきたら、何度でも書き直していい。大切なのは、完璧な軸を作ることではなく、仮の軸を1つ持って、実際の選択に使ってみることです。

ゆいさんの軸ができあがる

ゆいさんの軸を、完成させましょう。まず、志向を拾います。ゆいさんは経験を振り返って、こう感じていました。「受発注で、取引先の“困った”を先回りで防げたとき、いちばん嬉しかった」「黙々と数字を入力するより、誰かの手間を減らせたときに、やりがいを感じる」。これが、ゆいさんの志向=「人の“困った”を先回りで助けると嬉しい」です。

そして、第3章の強み(先回りの段取り力・傾聴)と、この志向を、型に束ねます。

「私は、人の“困った”が起きる前に、段取りと気配りで先回りして解決する仕事を、大事にしたい」

これが、ゆいさんのキャリアの軸です。「やりたいことも強みも無い」と固まっていたゆいさんが、自分の経験から、ちゃんと1文の軸を作れました。

後日、ゆいさんの部署に「新しいサポート窓口の立ち上げメンバー募集」の話が来ました。以前なら「自分なんて」と見送っていたかもしれません。でも今回は、「困っているお客さんを先回りで助ける——これ、私の軸にぴったりだ」と思え、自分から手を挙げました。偶然やってきたチャンスを、自分の軸というアンテナで掴んだのです。次の面談でも固まることなく、「この2年で、人の困りごとを先回りで段取りするのが自分に向いていると分かったので、その強みを活かせる仕事を増やしたいです」と、自分の言葉で答えられるようになっていました。

この章の確認(演習)

仕上げの演習です。第2章で書いた経験の中から、「これは嬉しかった・大事にしたい」と感じた場面を探して、あなたの志向を1つ、言葉にしてみてください。そして、第3章で書いた強みと、この志向を、型に当てはめます。

「私は、〇〇な場面で、△△を大事にして働きたい」

この1文を書けたら、それがあなたの“キャリアの軸”の第一稿です。完璧でなくて大丈夫、仮でかまいません。最後に、いま自分の目の前にある選択を1つ挙げて——「続けたい仕事」でも「やってみたいこと」でも——その軸に合っているかどうかを、確かめてみてください。軸を作って、実際に“使う”ところまで体験できたら、ゴールです。

まとめ:キャリアは“見つける”ものでなく、経験から“言葉にする”もの

おつかれさまでした。「入社2年目のゆいさん」というたった1人の話を、キャリアとは何か→経験の棚卸し→強み→志向と軸、と1マスずつ地図に埋めてきました。第1章で空欄だった4つの問いを、ここで振り返ります。

  1. キャリアとは……出世や転職、どこかにある夢を探し当てることではなく、働くことを通じた経験の連なりを棚卸しして、自分の判断基準(軸)を言葉にすること。順番は、経験→強み→志向→軸(第1章)。
  2. 経験……夢は手元に無い。だから、すでにある「やってきたこと」を、立派さで選ばず、小さな日常の場面で5〜10個書き出す。「当たり前すぎる」と消さない(第2章)。
  3. 強み……強みは特別な才能ではなく、“当たり前にできること”の中にある。経験に「苦もなくできた?」「頼られた?」を当てて拾う(第3章)。
  4. 志向と軸……志向は壮大な夢でなく、“嬉しかった・大事にしたい”から拾う。強みと志向を「私は〇〇な場面で、△△を大事にして働きたい」の1文に束ねる。軸は仮でいい。偶然のチャンスを掴むアンテナとして持ち、使う(第4章)。

この4つは、すべて1つのことに戻ります。面談で「将来どうなりたい?」と聞かれたとき、立派な夢が無くても、経験に裏打ちされた自分の軸で答えられるか?——これです。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です。キャリアは“どこかで見つける”ものではなく、経験から“言葉にする”もの。順番は、経験→強み→志向→軸。手元に夢が無くても、手元の経験からなら、軸は必ず作れます。

明日の最初の一歩:今日からできる第一歩として、この1〜3年の経験を、5個だけ、具体的な場面で書き出してみてください。立派でなくてかまいません。書けたら、その5個を眺めて、「自分には苦もなくできたこと」を1つ、丸で囲んでみる。それが、あなたの軸づくりの最初の素材です。

そして、もう一歩進めたくなったら。今日は記憶を頼りに強みを拾いましたが、自分の強みは、自分ではいちばん気づきにくいものでしたよね。そこで役立つのがスキル診断です。いくつかの質問に答えるだけで、自己申告では見えにくい”できること”を客観的に可視化できます。診断で見えた強みを今日作った軸に足していくと、軸はもっとくっきりします。スキル診断で自分の強みを確かめて、あなたの「キャリアの軸」を、これからのすべての選択の土台にしていきましょう。

よくある質問

キャリアとは何ですか

キャリアとは、出世や転職といった特別な出来事ではなく、働くことを通じて積み重ねてきた経験の連なりのことです。この講座では、その経験を棚卸しして「キャリアの軸」を言葉にすることをキャリアづくりと定義しています。

やりたいことがなくてもキャリアを考えられますか

はい、考えられます。この講座では、出発点を「未来の夢」ではなく「これまでやってきた経験」に置いています。夢が手元になくても経験はすでにあるため、経験→強み→志向→軸の順に進めれば軸づくりを始められます。

自分の強みはどうやって見つけますか

第2章で書き出した経験リストの一つひとつに、「自分には苦もなくできただろうか」「人に頼られたり感謝されたりしただろうか」という2つの問いを当てます。どちらかに当てはまる経験に共通する「できること」を言葉にしたものが、あなたの強みです。

キャリアの軸とは何ですか

キャリアの軸とは、働くうえで迷ったときに立ち戻る自分だけの判断基準を1文にしたものです。「私は〇〇な場面で、△△を大事にして働きたい」という形で、強みと志向を束ねて作ります。異動や仕事選びで迷ったとき、人の正解ではなく自分の基準で選べるようになります。

キャリアの軸は最初から完璧に作らないといけませんか

仮の軸で大丈夫です。この講座では、最初から完璧な軸を作ることより、まず仮の軸を1つ持って実際の選択に使ってみることを勧めています。経験が増えて自分がもっと見えてきたら、何度でも書き直してよい、というのがこの講座のスタンスです。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

上部へスクロール