「今期は新規のリードをもっと増やしてほしい」「展示会と広告とSEO、うちは何をどれだけやればいいのか、一度整理して」——上司にそう言われ、あなたは自社の施策を紙に書き出してみました。展示会、検索広告、SEO記事、メルマガ、テレアポ、問い合わせフォーム。ところが、書き出した施策がただバラバラに並ぶだけで、「全体でどう繋がって受注に向かうのか」を1枚で説明できず、ペンを持つ手が止まってしまう。「で、リードは何経由でどれくらい来ていて、どこを伸ばすの?」と重ねて聞かれても、施策名は言えても、導線として答えられない。BtoBのリード獲得の方法が分からないのではなく、そもそも手元にある施策をどう整理して繋げればいいのかが分からない。そんな経験、ありませんか。
でも、安心してください。手が止まる原因は、やる気やセンスの不足ではありません。チャネルを整理する「軸」と、獲得の「導線」という2つの地図を持っていないだけです。BtoBのリード獲得とは、ひとことで言えば「見込み客の連絡先を、どんな入り口(チャネル)で・何と引き換えに(オファー)・どこに着地させて(受け皿)取り、営業へ渡すか」を設計する仕事です。施策を思いつく順に足すのではなく、チャネルを2軸で4象限に整理し、各チャネルに導線を通し、1枚の図にまとめて「どの象限を・なぜ・次に埋めるか」を優先順位で決める。この講座は、その設計図の描き方を1本道でお渡しします。
この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- BtoBのリード獲得を「入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡し」の一連の流れとして説明でき、獲得したい「リード1件」の定義を温度(今すぐ/育てる)で分けて自分の言葉で決められる
- 自社のリード獲得チャネルを2つの軸(来てもらう/こちらから出向く × 今すぐ取れる/時間をかけて育てる)で4象限に整理し、各象限に既存・候補のチャネルを配置できる
- 各チャネルに獲得導線を通し、4象限+導線を1枚の図にまとめて、薄い象限・次に伸ばすチャネルを優先順位つきで説明できる
この講座は最後まで、「架空のBtoB SaaS企業『A社』(従業員100名規模で、勤怠管理クラウドを法人向けに販売している会社)のマーケ担当が、来期の新規リードを増やすために、自社のリード獲得チャネルを4象限で整理し、獲得導線を1枚の図に描く」という、たった1つの場面だけで説明します。A社も、勤怠管理クラウドも、これから出てくる件数や偏りも、すべて説明のための架空の設定です(実在のサービスや実データではありません)。この同じ題材を、リードの定義→4象限→導線→1枚の図、と1段ずつ組み上げ、最後に「上司の“何をどれだけやる?”に1枚で答えられる設計図」ができあがる流れです。各章末には手を動かす演習もあります。なお、リード獲得の設計から各チャネルの運用・効果測定まで実務の全工程を続けて学びたくなったら、有料プランの実務講座で深められます。まずはこの1本で、リード獲得の全体を1枚に描く地図を手に入れましょう。
この講座のポイント
- BtoBのリード獲得を「連絡先を入り口で・オファーと引き換えに・受け皿に着地させて取得し、営業へ渡す一連の流れ」として説明でき、自社が獲得したい「リード1件」の定義を温度で分けて自分の言葉で決められる
- 自社のリード獲得チャネルを2つの軸で4象限に整理し、各象限に既存・候補のチャネルを配置できる
- 1つのチャネルについて「入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡し」の獲得導線を線で描け、チャネルの象限とオファーの温度(第1章)が噛み合っているかを確認できる
- 4象限+各チャネルの獲得導線を1枚の図にまとめられ、薄い象限・噛み合っていない導線を見つけて、次に伸ばすチャネルを優先順位つきで説明できる
BtoBのリード獲得を1本の流れで捉える(リードの定義と獲得の全体像)
最初に、「手が止まる」モヤモヤの正体を消しておきましょう。BtoBのリード獲得が「どういう流れで連絡先を取り、営業に渡すのか」を掴み、そのうえで「リード1件」を自分で定義できると、この後の4象限も導線図も、ぐっと描きやすくなります。
この章のゴール
この章を読み終えると、BtoBのリード獲得を「連絡先を入り口で・オファーと引き換えに・受け皿に着地させて取得し、営業へ渡す一連の流れ」として説明でき、自社が獲得したい「リード1件」の定義を温度で分けて自分の言葉で決められるようになります。
リードとは見込み客の連絡先が取れた状態
まず、言葉をそろえます。リードとは、見込み客の連絡先が取れた状態のことです。会社名・氏名・メールアドレスなど、後からこちらから連絡できる情報が手元にある——その状態になった見込み客を、リードと呼びます。展示会で名刺を交換した相手、Webの問い合わせフォームから連絡してきた人、資料をダウンロードした人。いずれも「連絡先が取れた」という点でリードです。
ここで大事なのは、リード獲得を単発の「集客」で終わらせないことです。「たくさんの人に見てもらった」だけでは、まだ連絡先は手元にありません。だから「集客」ではなく、「連絡先を取って、その先で営業に渡すまで」を1本の流れとして見ます。
リード獲得は入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡しの流れ
そのリード獲得の流れは、4つの段でできています。管理する順番でもあるので、この4段をそのまま頭に入れてください。
| 段 | 名前 | 何を決めるか |
|---|---|---|
| ① | 入り口(チャネル) | どこで見込み客と出会うか(検索広告・SEO・展示会・SNS・メルマガ・テレアポ など) |
| ② | オファー | 何と引き換えに連絡先をもらうか(資料ダウンロード・無料相談・デモ申込・セミナー参加 など) |
| ③ | 受け皿 | 連絡先を入力する着地先(専用のページと入力フォーム) |
| ④ | 営業への受け渡し | 取れたリードを、誰が・いつ・どの状態で営業へ渡すか |
多くの人は①の入り口(「展示会に出る」「広告を出す」)だけを考えて、②③④が抜けます。けれど、入り口で人が来ても、連絡先を渡してもらうオファーが無ければリードにならないし、入力する受け皿が無ければ連絡先は取れないし、営業への受け渡しを決めていなければ、取れたリードは放置されます。リード獲得は、この4段が繋がって初めて成立する——これが1つ目の土台です。
「リード1件」を温度で分ける(今すぐ/育てる)
そして、この章で一番覚えて帰ってほしいのが、次の設計判断です。「リード1件」を、何とみなすかを最初に決める。しかも、リードを温度で分けます。
どういうことか。BtoBでは、「資料をダウンロードしただけの人」と「今すぐ商談したい人」は、同じ「1件」でも温度がまるで違います。前者はまだ情報を集めている検討初期の人、後者はもう具体的に検討していて、すぐ話を聞きたい人です。この2つを混ぜて「リード◯件」と数えてしまうと、こんなズレが起きます——「リードは増えたのに、商談が増えない」。数の中身に、今すぐ話せる人がほとんどいなかった、というわけです。これが、リード獲得でつまずく人の典型パターンです。
だから最初に、リードを温度で分けて定義します。この講座の共通例では、A社のリードを2種類に分けます。
- リードA=資料ダウンロード(連絡先だけ・検討初期)……まだ情報収集中。すぐには商談にならない。時間をかけて育てる対象。
- リードB=商談希望(今すぐ話したい)……もう具体的に検討中。すぐ営業に渡す対象。
なお、リードを有望度で仕分けする考え方には、正式な呼び名もあります。マーケティング部門が「顧客化する可能性が高い」と判断したリードをMQL(マーケティングが認めたリード)、そのなかから営業部門が「成約見込みが上位」とさらに絞り込んだリードをSQL(営業が認めたリード)と呼びます。判断する主体が、マーケか営業か、という違いです。この講座のリードA/Bは「営業へ渡すタイミングを分けるための機能ラベル」なので、MQL/SQLとそのまま同じものではありませんが、「資料DL=まだ育てる段階」「商談希望=もう営業に近い」という温度の感覚は、この公式区分とも地続きだと押さえておけば十分です。
共通例で定義し直す — A社のリードA/B
共通例のA社で、実際に定義し直してみましょう。これまでA社のマーケ担当は、展示会の名刺も、Webの問い合わせも、資料DLも、全部「リード」とひとまとめに数えていました。だから、上司の「リードは増えたのに、なぜ受注が増えないの?」に答えられなかった。数の中身に、今すぐ話せる人がどれだけいたのかを、区別していなかったからです。
そこでA社は、リードを2種に定義し直します。リードA=「勤怠管理の資料をダウンロードした(まだ検討初期)」、リードB=「デモや商談を希望した(今すぐ検討)」。同じ「1件」でも、Aは育ててから営業に渡す、Bはすぐ営業に渡す、と受け渡しのタイミングが変わります。この定義があるだけで、後の章で「どのチャネルがA(育てる系)を、どのチャネルがB(今すぐ系)を連れてくるか」を象限に置けるようになります。リードの温度定義は、これから描く4象限と導線図の、いちばん下の土台です。
この章の確認(演習)
共通例のA社になったつもりで、次の3つを書いてください。①「リード=◯◯が取れた状態」と、1文で定義する(例:「リード=会社名・氏名・メールが取れた状態」)。②自社(または身近なBtoB商材)で獲得したいリードを、温度で2種類に分ける(例:資料DL=育てる/商談希望=今すぐ)。③それぞれ「取れたら誰に・いつ渡すか」を1行ずつ書く。ここが書ければ、リードを「増やすもの」ではなく「温度で分けて、それぞれ扱いを変えるもの」として捉えられています。この温度定義が、次章以降の整理の土台になります。
チャネルを4象限で整理する(来てもらう/出向く × 今すぐ/育てる)
リードの温度が決まったら、次は「入り口」であるチャネルの整理です。ただし、思いつく順に並べるのではなく、2つの軸で俯瞰します。この章は、施策の一覧を「判断できる1枚の地図」に変える章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、自社のリード獲得チャネルを2つの軸で4象限に整理し、各象限に既存・候補のチャネルを配置できるようになります。
チャネルは並べず2軸で俯瞰する
リード獲得のチャネルは数が多くあります。検索広告、SEO、展示会、テレアポ、メルマガ、SNS、問い合わせフォーム……。これを思いつく順に一覧にしただけでは、「何をどれだけやるか」を判断できません。全部やろうとすれば手が回らないし、どれかに絞ろうにも、選ぶ基準がない。
そこで、2つの軸で4象限に分けて俯瞰します。ここで狙うのは「チャネルを網羅する」ことではなく、自社がどの象限に偏っていて、どの象限が空いているかを一目で見えるようにすることです。偏りと空きが見えれば、「次にどこを伸ばすか」の判断ができます。逆に、これが見えないまま新しいチャネルの話を聞くたびに手を広げると、施策が増えるほど、全体が説明できなくなっていきます。
縦軸=今すぐ取れる/育てる、横軸=来てもらう/出向く
この講座では、軸を2つに固定します。
横軸は、来てもらう(インバウンド)/こちらから出向く(アウトバウンド)です。インバウンドとは、Webサイトやブログなどで見込み客に役立つ情報を発信し、顧客側から見つけてもらう手法で、こちらから直接の売り込みはかけません。アウトバウンドは、企業側から顧客に向けて直接アプローチする手法です。ひとことで言えば、インバウンドは「見つけてもらう」、アウトバウンドは「こちらから届ける」。検索やSEO記事で向こうから来てもらうか、展示会やテレアポでこちらから接触しに行くか、という違いです。
縦軸は、今すぐ取れる/時間をかけて育てるです。短期で連絡先が取れるチャネルか、すぐには取れないけれど積み上がっていくチャネルか、という違いです。
この2軸で、4つのマスができます。見取り図はこうなります。
| 来てもらう(インバウンド) | こちらから出向く(アウトバウンド) | |
|---|---|---|
| 今すぐ取れる | 検索広告・問い合わせフォーム | 展示会・テレアポ |
| 時間をかけて育てる | SEO記事・資料ダウンロード | 特定企業への継続アプローチ |
1つ、大事な但し書きを添えます。この軸は、絶対の正解ではなく、意思決定のための補助線です。たとえば「検索広告」は、検索した人=自分の意思で調べに来た人に出す点で「来てもらう」側に置いていますが、広告は企業側から出すものなので「こちらから出向く」寄りだと整理することもできます。どちらが公式に正しい、というものではありません。自社の事業に合う軸なら差し替えてかまいません(例:横軸を「費用がかかる/かからない」にする)。まずはこの2軸で、1枚描けるようになることを目標にしてください。
共通例で配置する — A社のチャネルを4マスに置く
共通例のA社のチャネルを、この4象限に置いてみましょう。
左上(来てもらう×今すぐ)=検索広告(「勤怠管理 システム」で今まさに探している人に出る)・問い合わせフォーム。左下(来てもらう×育てる)=SEO記事(「勤怠管理 効率化」などで情報収集中の人に読まれる)・勤怠管理の資料ダウンロード。右上(出向く×今すぐ)=展示会(名刺交換)・営業のテレアポ。右下(出向く×育てる)=気になる特定企業へ、時間をかけて継続的に接触していく動きです。この右下は、狙う企業(アカウント)を絞って、リード単位ではなく企業単位で個別にアプローチしていく考え方(ABM=アカウントベースドマーケティングと呼ばれます)に近い動きで、本講座では象限の1マスとして置くにとどめます。狙う企業の選び方や実行計画そのものは、ABMを扱う別講座(kouza-717)で扱う予定です。
偏りと空きを読む — A社は右上偏重・左下が空
こうして置いてみると、A社の現状が一目で見えます。今のA社は、右上(展示会・テレアポ)にリードが偏っていて、左下(SEO記事+資料ダウンロード=育てる系)がほぼ空、という状態です(この偏りは、説明のための架空の設定です)。展示会で毎年たくさんの名刺は集まるけれど、来てもらって時間をかけて育てる導線が立ち上がっていない、というわけです。
すると、「新規リードを増やせ」という上司の指示への答えが、図から見えてきます。すでにいっぱいの右上をさらに詰め込むのではなく、空いている左下を立ち上げる——これが、A社にとっての次の一手の候補です。一覧を眺めているだけでは出てこなかった判断が、4象限に置くだけで見えてくる。これが、チャネルを並べずに象限に置く狙いです。
なお、この4象限のうち、来てもらう系のチャネル(左上・左下)の入り口づくりは、公開済みの講座で具体的に深められます。検索から来てもらう入り口の1つ、SEO記事の設計はSEOコンテンツ設計の方法で、その手前のキーワードの選び方はSEOキーワードリサーチのやり方で扱っています。本講座は、そうした各チャネルを「4象限のどこに置き、どう導線で繋ぐか」という上位の設計に集中します。
この章の確認(演習)
まず、共通例のA社の4象限を自分で1枚描き、A社のチャネル(検索広告・問い合わせフォーム・SEO記事・資料DL・展示会・テレアポ・特定企業への継続接触)を、左上/左下/右上/右下に配置してみてください。次に、自社(または身近なBtoB商材)で、今やっている・やれそうなチャネルを全部書き出し、同じ4象限に置きます。最後に、「今どこに偏っているか・どこが空いているか」を1〜2行で書いてください。ここまで書ければ、到達目標の前半「自社のチャネルを4象限で整理する」が、自分の商材で1枚できあがっています。
各チャネルに獲得導線を通す(入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡し)
4象限でチャネルを置いても、それだけでは連絡先は取れません。各チャネルに、第1章の4段を通して初めて、リードが取れて営業に渡ります。この章では、空いていたチャネル1つに、実際に導線を通します。
この章のゴール
この章を読み終えると、1つのチャネルについて「入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡し」の獲得導線を線で描け、チャネルの象限とオファーの温度(第1章)が噛み合っているかを確認できるようになります。
象限に置いただけでは連絡先は取れない — 導線を通す
第2章で、A社は左下が空いていると分かりました。でも、「左下=SEO記事」と象限に書いただけでは、まだリードは1件も取れません。SEO記事を読んでもらっても、そこに「連絡先を渡してもいい」と思えるオファーが無く、連絡先を入力する受け皿も無ければ、読者はただ通り過ぎるだけです。
ここが、よくある誤解の潰しどころです。「集客=リード獲得」ではありません。記事を読ませて終わり、展示会で名刺を集めて終わり、では連絡先の「その後」が設計されていない。チャネル(入り口)に、オファー→受け皿→営業への受け渡しまでを通して、初めてリード獲得になる。だから、置いたチャネルに導線を通していきます。
象限の温度とオファーの温度を噛み合わせる(導線設計の肝)
導線を通すときの、いちばんの肝はここです。チャネルの象限の温度と、オファーの温度を噛み合わせる。
具体的に見ます。「今すぐ×来てもらう(検索広告)」の受け皿に、いきなり「50ページの分厚い読み物をダウンロード」というオファーを置くとどうなるか。今すぐ相談したくて検索してきた人は、分厚い資料の入力フォームで面倒に感じて離れてしまいます。逆に、「育てる×来てもらう(SEO記事)」の末尾に「いますぐ商談を予約」というオファーを置くと、まだ情報収集を始めたばかりの人は、そこまでの気持ちになっておらず、押せません。オファーの温度が入り口の温度とズレていると、せっかく来た人が離れやすくなる、というわけです。
だから、温度を合わせます。今すぐ系のチャネルには、無料相談・デモ申込といった「もう話したい人が押せるオファー」を。育てる系のチャネルには、資料ダウンロード・お役立ち資料といった「まだ情報収集中の人でも手を出せる軽いオファー」を。象限に合ったオファーと受け皿を置くのが、導線設計のいちばん大事なところです。
ここで出てくる「資料ダウンロード」は、BtoBでよく使われるオファーの一つで、ホワイトペーパーとも呼ばれます。ホワイトペーパーとは、課題解決に役立つ情報をまとめ、会社名・氏名・メールなどの連絡先入力と引き換えにダウンロードしてもらう、お役立ち資料のことです。連絡先が取れれば、そこからメールで有益な情報を送り、時間をかけて検討へ促していけます。資料そのものの中身の作り込み(どんな構成にするか等)は、ホワイトペーパー作成を扱う別講座(kouza-718)で扱う予定です。本講座では「導線に置くオファーの一例」として押さえるにとどめます。
受け皿はトップページに丸投げしない
もう1つ、見落としがちなのが受け皿です。③受け皿=連絡先を入力する着地先は、そのオファー専用のページと入力フォームを用意します。よくある失敗が、広告や記事のリンク先を、会社のトップページに丸投げすること。トップページに着地させられた人は、「どこで連絡先を入れればいいのか」が分からず、離れてしまいます。「この資料が欲しい人が、ここで会社名・氏名・メールを入れれば手に入る」という専用の受け皿を、オファーごとに用意してください。
共通例で空いた左下に1本通す — SEO記事→資料DL→育てて昇格
共通例のA社で、空いていた左下(来てもらう×育てる)に、導線を1本通してみましょう。
- ①入り口=SEO記事(「勤怠管理 効率化」で検索して読みに来た人)
- ②オファー=「勤怠管理クラウド導入の比較チェックリスト」の資料ダウンロード(まだ検討初期なので、“商談予約”ではなく軽い提供物にする)
- ③受け皿=その資料専用のダウンロードページと入力フォーム(会社名・氏名・メール)
- ④営業への受け渡し=ここで取れたのはリードA(育てる)。だからすぐ営業には渡さず、まずメルマガで有益な情報を数回送り、資料の続き(デモ案内)を押してくれた人だけをリードB(今すぐ)に昇格させて、営業へ渡す
一方、A社にすでにある左上(検索広告)は、別のルートを引きます。①入り口=検索広告 → ②オファー=無料デモ申込 → ③受け皿=デモ申込フォーム → ④受け渡し=リードB(今すぐ)として、その日のうちに営業へ。同じA社でも、象限の温度が違えば、オファーも受け渡しのタイミングも変わる——これが「温度を噛み合わせる」ということです。この左上の入り口である検索広告そのものの運用(キーワード設計や配信)は、リスティング広告運用のやり方で具体的に深められます。本講座では、その検索広告を「どの温度のオファーと受け皿に繋ぐか」という導線の側に集中します。
この章の確認(演習)
まず、共通例のA社で、空いている象限のチャネルを1つ選び、「入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡し」の4段を、1本の線で書いてください(各段1行)。書けたら、オファーの温度が入り口の象限と噛み合っているか(今すぐ系の入り口に軽いオファー/育てる系の入り口に重いオファーを置いていないか)を、自分でチェックします。次に、自社の伸ばしたいチャネルを1つ選び、同じ4段の導線を描いてください。ここまで書ければ、到達目標の「獲得導線を線で描く」を、1チャネル分、自分の商材で作れています。
4象限と導線を1枚の図にまとめ、次の一手を決める(全体設計と優先順位)
いよいよ仕上げです。第2章の4象限(チャネルの配置)と、第3章の導線(各チャネルの4段)を、1枚の図に統合します。この1枚ができると、上司の「何をどれだけやる?」に、図を見せながら優先順位で答えられるようになります。
この章のゴール
この章を読み終えると、4象限+各チャネルの獲得導線を1枚の図にまとめられ、薄い象限・噛み合っていない導線を見つけて、次に伸ばすチャネルを優先順位つきで説明できるようになります。
4象限(第2章)と導線(第3章)を1枚に統合する
図の作り方は、3ステップです。①中央に4象限のマスを描き、各マスに自社のチャネルを置く(第2章の成果物)。②各チャネルから、「オファー→受け皿→リードの温度(A/B)→営業への受け渡し」の矢印を伸ばす(第3章の成果物)。③リードA(育てる)とリードB(今すぐ)が、最終的にどこへ流れるかを描く。
言葉だけだと掴みにくいので、A社の1枚を表にすると、こう整理できます。
| 象限 | チャネル | オファー | 受け皿 | リード温度 | 営業への受け渡し |
|---|---|---|---|---|---|
| 左上(来てもらう×今すぐ) | 検索広告 | 無料デモ申込 | デモ申込フォーム | B(今すぐ) | その日のうちに営業へ |
| 左下(来てもらう×育てる) | SEO記事 | 比較チェックリストのDL | 資料DLページ+フォーム | A(育てる) | メルマガで育て、昇格した人だけ営業へ |
| 右上(出向く×今すぐ) | 展示会 | 名刺交換・ブースでの相談 | (名刺/その場の申込) | A・Bが混在 | 温度で仕分けてから渡す |
| 右下(出向く×育てる) | 特定企業への継続接触 | 個別の案内 | 個別対応 | 育てる | 関係を作りながら営業へ |
1枚の図に3つの問いを当てる
この1枚ができると、図を見るだけで、次の3つの問いに答えられます。
- (a) どの象限が空いているか(=伸ばす余地があるか)
- (b) どのチャネルの導線が途中で切れているか(オファーや受け皿が無いか)
- (c) リードの温度と受け渡しが噛み合っているか(今すぐの人を放置していないか、まだ育てる人を営業に丸投げしていないか)
この3つは、施策の一覧を眺めているだけでは、まず見えてきません。1枚に統合したからこそ、空白と断線と噛み合わせが、目で見えるようになります。
少ない手数で効く象限から優先順位を決める
3つの問いで課題が見えたら、次の一手を決めます。ここで大事なのが、空いている象限を全部いっぺんに埋めようとしないことです。手が回らなくなって、どれも中途半端に終わります。目安は「今の事業フェーズで、少ない手数で効く象限から」。すでに持っている資産(書き溜めたSEO記事、集めた名刺など)が活きる一手から始めると、少ない労力で導線が立ち上がります。
共通例で1枚を完成させ次の一手を決める
共通例のA社の1枚を、完成させましょう。上の表のとおり、左上=検索広告・問い合わせ、左下=SEO記事・資料DL(新設)、右上=展示会・テレアポ、右下=特定企業への継続接触を置き、各チャネルから導線の矢印を伸ばします。
この1枚を見ると、A社の課題が3つの問いで浮かびます。(a)右上(展示会)に偏っていて、左下がほぼ空=伸ばす余地は左下にある。(b)SEO記事は書いているのに、オファーと受け皿が無く、導線が途中で切れている(=第3章で1本通した箇所)。(c)展示会で取った名刺を温度で仕分けず、全部すぐ営業に渡していたので、営業が“まだ検討初期の人”に追われて疲弊していた。
そこで、次の一手を優先順位づけします。①まず、切れているSEO記事に資料DLの導線を通す(すでにある記事が活きるので、手数が少なく効く)。②その資料DLをメルマガで育てて、リードBに昇格させる仕組みを作る。③展示会で取った名刺も、同じ育てる導線に合流させ、今すぐ話せる人だけを営業に渡す。この順に、図を根拠に説明できます。上司の「何をどれだけやる?」には、「この1枚のとおり、まず①をやります。理由は、既存のSEO記事が活きて、少ない手数で空いた左下を立ち上げられるからです」と、優先順位つきで答えられます。
最後に、位置づけを1つ添えます。ここで描いた「リードの連絡先を取る設計図」は、より大きな流れの一部分です。マーケティング部門から営業部門へ渡す見込み案件を創出・発掘するすべての活動を、デマンドジェネレーションと呼びます。これは大きく、見込み客の獲得(リードジェネレーション)、育成(リードナーチャリング)、絞り込み(リードクオリフィケーション)の3つのプロセスから成り立っていて、本講座で描いたリード獲得は、その最初の「獲得」にあたります。育成や絞り込みまで含めた需要創出の全体像とKPIは、デマンドジェネレーションを扱う別講座(kouza-726)で扱う予定です。
そして、図を描いて満足しないためにもう1つ。どのチャネルから何件のリードが取れているかを、測れる前提を用意しておくことです。測れなければ、次にどの象限を伸ばすかの判断が、勘に戻ってしまいます。どのチャネルから何件取れたかをWebサイトのアクセスやCVで見る方法は、GA4の初期設定とGA4レポートの読み方で具体的に深められます。
この章の確認(演習)
まず、共通例のA社の「1枚の獲得導線図」を、自分で描き切ってください(4象限+各チャネルの導線+リードA/Bの流れ)。その図から、(a)空いている象限、(b)切れている導線を1つずつ挙げ、「次の一手」を優先順位1位だけ、理由つきで書きます。次に、自社(または身近なBtoB商材)で、第2章の4象限と第3章の導線を統合した1枚の図を完成させ、次に伸ばすチャネルを1つ選んでください。ここまで書ければ、到達目標「自社のリード獲得チャネルを4象限で整理し、獲得導線を1枚の図に作成できる」の完成品が、自分の商材で1枚できあがっています。
まとめ:BtoBのリード獲得は“4象限に置いて、1枚の導線図に描いて、空いた所から埋める”
おつかれさまでした。「架空のA社が、来期の新規リードを増やす」という1つの場面を、リードの定義→4象限→導線→1枚の図と、1段ずつ組み上げてきました。最後に、BtoBのリード獲得を1枚で設計する4ステップを振り返ります。
- リードを温度で定義する……「入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡し」の流れで捉え、獲得したいリードを温度(今すぐ/育てる)で分ける。資料DLと商談希望を混ぜない(第1章)
- チャネルを4象限に整理する……来てもらう/出向く × 今すぐ/育てる の2軸で4象限に置き、自社の偏りと空きを一目で見えるようにする(第2章)
- 各チャネルに導線を通す……象限の温度と噛み合ったオファー・受け皿・受け渡しを、入り口ごとに通す。今すぐ系には話せるオファー、育てる系には軽いオファー(第3章)
- 1枚の図にまとめて優先順位を決める……空いた象限・切れた導線・温度の噛み合いを3つの問いで読み、“少ない手数で効く一手”から優先順位づけする(第4章)
この4つは、すべて1つの合言葉に戻ります——「BtoBのリード獲得は、施策を並べるのでなく、4象限に置いて、1枚の導線図に描いて、空いた所から埋める」。新しいチャネルを足すのも、新しいオファーを作るのも、判断の軸はいつも「4象限のどこを・なぜ埋めるか」「リードの温度に噛み合うか」です。この地図さえあれば、次々に出てくる施策の話に呑まれて手を広げることは、もうありません。
明日の最初の一歩:自社の主力商材を1つ選び、①獲得したいリードを温度で2種類に定義する ②今やっている・やれそうなチャネルを全部書き出して4象限に置く ③空いている/伸ばしたい象限のチャネルを1つ選んで「入り口→オファー→受け皿→営業への受け渡し」の導線を1本描く ④これらを1枚の図にまとめて、次に伸ばすチャネルを1つ決める——ここまでを、紙1枚に書き出してみてください。「リード獲得の設計図」が1枚できあがります。
そして、この1枚を手に、実際に各チャネルを運用して、リードを増やせるようになりたくなったら、その先の道も用意されています。4象限の各マスを深める講座——検索広告の入り口づくりはリスティング広告運用のやり方、SEO記事の入り口はSEOコンテンツ設計の方法とSEOキーワードリサーチのやり方、SNSからの流入はX(旧Twitter)運用のやり方とInstagram運用のやり方、どのチャネルから何件取れたかの効果測定はGA4の初期設定とGA4レポートの読み方——が続きます。さらにこの先、狙う企業を絞って攻めるABM、ダウンロード資料(ホワイトペーパー)の作り込み、需要を作り育てるデマンドジェネレーションの全体像を深掘りする講座も控えています。これらを一連で学べるのが、有料プランの実務講座群です。まずは今日の4ステップで、リード獲得の設計図を、自分の手で1枚描いてみてください。