「議事録、お願いね」——会議の前に先輩からそう言われて、あなたはノートを開きました。会議が始まると、発言を一言一句書き取ろうとして、話のスピードに追いつけない。そして会議が終わってからも大変です。録音を最初から聞き直して、清書に1〜2時間。やっと出した議事録を見た先輩からは、「で、結局何が決まったの?」「私の担当、どれ?」。発言は全部書いてあるのに、肝心の「決まったこと」と「誰が何をするか」が、文字の海に埋もれてしまっている——こんな経験はありませんか。
AIを使えば速くなる、とは聞きます。でも、「丸投げして間違っていたら、自分の責任になる」「どうせAIの出力って、そのまま使えないんでしょ」と思って、手が出せずにいる。その気持ち、とてもよく分かります。
でも、安心してください。「議事録、もう出来たの?早いね」と言われる先輩が速くて分かりやすいのは、AIに“全部やらせている”からでも、タイピングが速いからでもありません。違いはたった1つ。「書く」をAIに肩代わりさせ、「何が決まったか・誰の担当か」は自分で確かめる——この役割分担と、録音→文字起こし→AIで要約・整形という3つのステップを持っているかどうか、それだけです。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。
- AI議事録を「録音→文字起こし→AIで要約・整形」の3ステップとして、どこをAIに任せ・どこを自分が担うか(書くはAI/確かめるは人)まで含めて、自分の言葉で説明できる
- 文字起こしテキストから、決定事項・ToDo(誰が・何を・いつまでに)・論点・保留を抜き出す指示(プロンプト)をAIに出して、議事録のたたき台を作れる
- AIが作ったたたき台の誤り(固有名詞・数字・日付・決定事項)を、元の文字起こし(と録音)に照合して直し、社内テンプレートに整えて共有できる
この講座は最後まで、「新商品の販促キャンペーンを決める、月曜の社内定例会議(30分・4人)」という、たった1つの会議だけで説明します。この同じ会議を、AI議事録とは何か→録音して文字起こし→AIでたたき台→確認して共有、と1ステップずつ進めていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、次の会議で1回通せるように、手元でなぞりながら読み進めてください。なお、今日の3ステップをそのまま使える議事録テンプレート+AIに渡す型プロンプト+確かめる4点チェックリストは、最後に一式ダウンロードできます。
この講座のポイント
- AI議事録を「録音→文字起こし→AIで要約・整形」の3ステップとして、どこをAIに任せ・どこを自分が担うか(書くはAI/確かめるは人)まで含めて、自分の言葉で説明できる
- 会議を録音して文字起こしテキスト(AIに渡す素材)を用意でき、その前に機密性を確認できる
- 文字起こしテキストから、決定事項・ToDo(誰が・いつまでに)・論点・保留を抜き出す指示(プロンプト)をAIに出して、議事録のたたき台を作成できる
- AIのたたき台の誤り(固有名詞・数字・日付・決定事項)を、元の文字起こし(と録音)に照合して直し、社内テンプレートに整えて共有できる
AI議事録とは何か(録音→文字起こし→AIで要約・整形の3ステップ)
まずは、「議事録に時間がかかる」「AIに手が出せない」というモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。議事録という言葉を、ふわっとした“発言の記録”のイメージから、自分で使える3ステップの地図に変える土台の章です。
この章のゴール
この章を読み終えると、AI議事録を「録音→文字起こし→AIで要約・整形」の3ステップとして、どこをAIに任せ・どこを自分が担うか(書くはAI/確かめるは人)まで含めて、自分の言葉で説明できるようになります。
議事録に時間がかかる正体は「全部書こう」としているから
あなたのタイピングが遅いわけでも、メモが下手なわけでもありません。議事録に時間がかかる正体は、たいてい1つ。議事録を“発言の記録”だと思って、全部書こうとしていることです。
会議では雑談も脱線も飛び交い、それを全部書こうとすれば話に追いつけません。でも、後で読む人が本当に知りたいのは、そこではありません。「結局、何が決まったのか」「誰が・何を・いつまでにやるのか」です。だから議事録は、発言を網羅するものではなく、要点に絞るもの。具体的には、次の4つに絞ります。
| 議事録に書く4つ | 中身 |
|---|---|
| 決定事項 | 会議で合意された結論。「誰が・何を・いつまでに」まで |
| ToDo(タスク) | 次にやること。「誰が(担当)・何を・いつまでに(期限)」をセットで |
| 論点 | 主な意見・議論の流れ(簡潔に) |
| 保留事項 | 結論が出なかった、次回に持ち越す事項 |
これに、日時・参加者・議題といった基本情報を加えれば、議事録の骨格は完成です。「全部書く」のをやめて「この4つに絞る」だけで、議事録はぐっと作りやすく、読みやすくなります。そして、ここで覚えてほしい背骨はひとつ。AIは“書く”を肩代わり、“確かめる”は人の仕事。この役割分担を、これから3ステップの中で見ていきます。
AI議事録とは「録音→文字起こし→AIで要約・整形」の3ステップ
では、その要点に絞った議事録を、AIを使ってどう作るのか。AI議事録とは、議事録づくりを次の3つのステップに分けて回すことです。
| ステップ | やること | 主役 |
|---|---|---|
| ① 録音 | 会議の音声をその場で残す | あなた(残す) |
| ② 文字起こし | 録音した音声を文字にする(音声認識) | AI・ツール(変換する) |
| ③ AIで要約・整形 | 文字起こしから決定事項・ToDo・論点を抜き出して整形し、人が事実を確かめて仕上げる | AIが下書き → あなたが確かめる |
ポイントは③です。AIが文字起こしから要点を抜き出して“下書き”を作り、最後にあなたが事実を確かめて仕上げる。つまりAI議事録は、「AIに丸投げ(出てきたものを鵜呑みにする)」でも、「どうせ使えない(最初から使わない)」でもない、第3の道なのです。あなたが感じていた「丸投げは怖い」も「どうせ使えない」も、この第3の道なら、どちらも乗り越えられます。
役割分担:AIは「書く」を肩代わり、人は「確かめる」
なぜ、この役割分担になるのか。それは、AIにも得意・不得意があるからです。
AIが得意なのは、大量の文字起こしから、決定事項やToDoといった要点を速く抜き出して、きれいに整形すること。何千字もの会話を読んで要点をまとめる作業を、数十秒でこなします。これが「書く」の肩代わりです。一方、AIが苦手なのは、聞き取れなかった発言を正しく補うこと、固有名詞や数字を取り違えないこと、そして「本当にそう決まったのか」という最終責任を負うこと。ここはAIに任せられません。だから、「確かめる」は人の仕事として残ります。
この線引きが、これから歩く地図です。①録音と②文字起こしで素材を用意し、③でAIに「書く」をやらせ、最後に人が「確かめる」。任せるところと自分が責任を持つところが最初からはっきりしているので、「丸投げして大丈夫かな」と毎回迷わずにすみます。
ここで、この講座を通して使う会議に登場してもらいましょう。月曜の社内定例会議です。議題は「新商品の販促キャンペーンをどうするか」。30分の会議に、先輩の田中さん、デザイン担当の佐藤さん、あなた、上司の山口課長の4人が参加します。議事録係は、あなた。この会議を、地図に置いてみます。①録音する、②文字起こしする、③AIで決定事項・ToDo・論点のたたき台を作り、あなたが確かめて仕上げる。今はまだ、3つの箱の“枠”を立てただけです。中身は、第2章から1つずつ埋めていきます。
この章の確認(演習)
直近で出た会議を1つ(思い当たらなければ、想像の会議でかまいません)思い浮かべて、①録音 ②文字起こし ③AIで要約・整形 の3つのステップの枠だけを、紙やメモに書き出してみてください。中身はまだ埋めなくて大丈夫です。
そのうえで、「どこをAIに任せ(書く)、どこを自分が確かめるか(決定事項・担当・期限)」を、1〜2行で書いてみましょう。手を動かす前に、まず役割分担を自分の言葉にできたら、この章はゴールです。空欄の中身は、これから第2章・第3章・第4章で1つずつ埋めていきます。
録音と文字起こし(AIに渡す素材を用意する)
地図の①と②、録音と文字起こしを進めます。AIに「書く」を肩代わりしてもらうには、その材料となる文字起こしを用意する必要があります。ただし、その前にひとつ、必ず通る関所があります。
この章のゴール
この章を読み終えると、会議を録音して文字起こしテキスト(AIに渡す素材)を用意でき、その前に機密性を確認できるようになります。
まず「残す」:会議中は全部書こうとしない
第1章で見たとおり、会議中に発言を全部書き取ろうとすると、話に追いつけず、議論にも入れません。だから、ステップ①は割り切ります。書き取りは録音に任せるのです。
スマホやパソコン、会議システムの録音機能で、音声をまるごと残します。あなたが手元のメモに残すのは、たった2種類だけ。「決まったこと」と、「あとで聞き直したい場面」(議論がもつれた所、聞き取りにくかった所)です。録音という“完全な記録”が別にあるので、メモは道しるべ程度で十分。これだけなら、会議の話を聞きながらでも書けます。
ひとつ忘れずに。録音するときは、会議の冒頭で「記録のため、録音させていただきます」と一言断りましょう。黙って録るのはトラブルのもとです。録音してよいか、誰の許可がいるかは、会社のルールに従ってください。
「文字起こし」:音声を文字にする(音声認識)
音声が残せたら、ステップ②の文字起こしです。文字起こしとは、録音した音声を文字に変換すること。この、音声を聞き取って文字にする技術を音声認識と呼び、専用のツールや会議システムの機能で自動的に作れます。
このとき、あると後がラクなのが話者分離です。話者分離とは、「誰の発言か」を区別してくれる機能のこと。これがあると、文字起こしが「田中さん:〜」「佐藤さん:〜」と話し手ごとに分かれるので、第3章でAIに渡したときに「誰が言ったか」を追いやすくなります。日本語の会議なら、日本語に対応した文字起こしを使いましょう。
ここで、大事な注意をひとつ。音声認識は便利ですが、完璧ではありません。特に、固有名詞(人名・商品名・社名)・専門用語・数字・日付は、誤って変換されやすいのです。音は近いけれど字が違う、ということが起こります。だから、いま覚えておいてほしいのは、文字起こしには誤変換が混じる前提で進めること。この誤りは、第4章の「確かめる」で直します。今は「あとで直す箇所がある」と頭の隅に置いておけば十分です。
AIに入れる前に「機密性」を確認する
さて、文字起こしができました。すぐにAIへ——と行きたいところですが、その前に必ず通る関所があります。「この会議の内容を、AIに入れてよいか」の確認です。
なぜ確認がいるのか。多くの生成AIサービスでは、入力した内容が、AIの学習に使われる場合があるからです。だから、機密情報や個人情報をうっかり入れると、外部に流出するリスクがあります。議事録の要約は、まさに機密情報・個人情報が含まれやすい作業。だから原則として、機密情報・個人情報・社外秘を、無料のパブリックな生成AIに入れない。これが、AI議事録を使ううえでの安全の土台です。
入れる前に、次の3点を社内ルールで確認してください。
| 確認する3点 | 中身 |
|---|---|
| ① 許可されたツールか | 会社で利用が認められた生成AI・ツールか |
| ② 学習させない設定か | 入力を学習に使わせない設定になっているか |
| ③ この会議を入れてよいか | 社外秘・個人情報を含まないか、含むなら入れてよいルールか |
月曜の販促会議の文字起こしを思い出してください。議題は「新商品の販促キャンペーン」。新商品の情報は、まだ世に出ていない社外秘かもしれません。だとすれば、「とりあえず手元のAIに入れてみよう」は危険です。まずは「このツールは会社で許可されているか」「新商品の名前を入れてよいか」を確認し、取れて初めて第3章に進みます。便利さの前に、この関所を必ず通る——これを習慣にしてください。
この章の確認(演習)
次の会議を1つ想定して、2つのことを書いてみましょう。
まず(a)「録音する一言」と「メモは要点だけ」の段取りです。会議の冒頭で言うセリフ(例:「記録のため録音します」)と、メモに残すのは“決まったこと”と“聞き直したい場面”だけ、という自分ルールを書き出します。次に(b)その会議の音声をAIに入れてよいかを確認するチェック項目を3つ作ります(例:許可されたツールか/学習させない設定か/社外秘・個人情報を含まないか)。素材を用意する前に「入れていいか」を自分で判断できたら、ゴールです。
AIで要約・整形する(型プロンプトでたたき台を作る)
地図の③の前半、いよいよAIに「書く」を肩代わりさせるステップです。ここでのコツは、たった1つ。AIへの頼み方を変えることです。
この章のゴール
この章を読み終えると、文字起こしテキストから、決定事項・ToDo(誰が・いつまでに)・論点・保留を抜き出す指示(プロンプト)をAIに出して、議事録のたたき台を作成できるようになります。
「要約して」だけでは、ぼんやりした要約しか返らない
文字起こしをAIに貼り付けて、「これを要約して」とだけ頼む。多くの人が最初にやることですが、これだと、返ってくるのは「会議のあらすじ」のような、ぼんやりした要約です。「販促キャンペーンについて話し合いました」——間違ってはいませんが、これでは議事録になりません。肝心の「何が決まったか」「誰の担当か」が、相変わらず埋もれたままだからです。
なぜこうなるかというと、AIはこちらが指示したとおりに動くからです。「要約して」としか言わなければ、ざっくり要約するだけ。逆に言えば、ほしい形を具体的に指示すれば、その形で返してくれるということです。この、AIへの指示文のことをプロンプトと呼びます。コツは、AIに“議事録の型”を指示することです。
プロンプトの型:役割・素材・抜き出すもの・出力形式
では、どんな指示を出せばいいのか。議事録を作らせるプロンプトには、次の4点を入れます。これをそのまま使える「型」として覚えてください。
| プロンプトの4点 | 書くこと |
|---|---|
| ① 役割 | あなたは議事録作成者です |
| ② 素材 | 以下は会議の文字起こしです(このあとに文字起こしを貼る) |
| ③ 抜き出すもの | 決定事項/ToDo(誰が・何を・いつまでに)/論点/保留事項 |
| ④ 出力形式 | 見出しをつけ、箇条書きで。ToDoは「担当・内容・期限」の表で |
文章にすると、たとえばこうなります。「あなたは議事録作成者です。以下は会議の文字起こしです。ここから、決定事項、ToDo(誰が・何を・いつまでに)、論点、保留事項を抜き出してください。決定事項と論点は箇条書き、ToDoは担当・内容・期限の表で出してください。事実(決まったこと)と、議論の中の意見は分けてください」。このあとに文字起こしを貼り付けて、送るだけです。①役割を与え、③ほしい中身(議事録の4要素)を指定し、④形まで決める。これだけで、出力は見違えます。
出てくるのは「たたき台」:要点に絞り、まだ共有しない
月曜の販促会議の文字起こしに、この型プロンプトを当ててみましょう。AIは、こんなたたき台を返してきます。
| ToDo | 担当 | 内容 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 1 | 田中さん | キャンペーンの予算案を作成 | 今週中 |
| 2 | 佐藤さん | バナーのデザイン案を3つ用意 | 12月5日 |
| 3 | あなた | 次回会議の日程を調整 | 明日中 |
決定事項としては「新商品の販促はSNS中心で進める」「予算の上限は次回までに確定」、論点としては「店頭ポスターを出すかどうかは意見が割れた」、保留事項としては「インフルエンサー起用の可否」——といった具合に、要点が整理されて出てきます。第1章で言った“4つに絞る”作業を、今度はAIがやってくれたわけです。これが、AIに「書く」を肩代わりさせる、ということです。
ただし、ここで必ず釘を刺します。いま出てきたのは、あくまで“たたき台”です。きれいな表になっているとつい「完成」と思いたくなりますが、まだ共有してはいけません。実はこのたたき台、よく見ると、第2章で「誤変換が混じる」と言った箇所が、しれっと紛れ込んでいることがあります。たとえば、佐藤さんの期限「12月5日」。これは本当に正しいのでしょうか。たたき台を仕上げるのは、次の第4章の仕事です。
この章の確認(演習)
自分の会議の文字起こし(手元になければ、配布のサンプルでかまいません)に、本章の型プロンプト(役割・素材・抜き出すもの・出力形式)を当てて、決定事項・ToDo(誰が・いつまでに)・論点・保留のたたき台を出してみてください。
できれば、「要約して」とだけ頼んだときの出力と、型プロンプトを使ったときの出力を、見比べてみましょう。同じ文字起こしでも、返ってくるものがまるで違うはずです。型を指示するとたたき台になる、という手応えがつかめたら、ゴールです。そして忘れずに——出てきたものは“たたき台”。次の章で確かめます。
確認と仕上げ(AIの間違いを直し、テンプレに整えて共有)
地図の③の後半、「確かめる」=人の仕事の本丸です。AIが作ったたたき台を、ここで信頼できる議事録に仕上げます。AI議事録が「速くて、しかも正確」になるかどうかは、この章にかかっています。
この章のゴール
この章を読み終えると、AIのたたき台の誤り(固有名詞・数字・日付・決定事項)を、元の文字起こし(と録音)に照合して直し、社内テンプレートに整えて共有できるようになります。
AIのたたき台は、そのまま使わない
なぜ、きれいに出来たたたき台をそのまま使ってはいけないのか。それは、生成AIにはハルシネーションという性質があるからです。ハルシネーションとは、ひとことで言えば、AIが、事実と違うことを“もっともらしく”書いてしまうことです。AIはわざと嘘をついているわけではありません。もっともらしい文章を作るのが得意なあまり、事実から外れたことを、さも本当のように書いてしまうことがあるのです。
議事録づくりで特に気をつけたいのは、固有名詞(人名・商品名・社名)・数字・日付・決定事項です。第2章で見た文字起こしの誤変換に加えて、AIが要約する段階でも、こうした部分は取り違えが起こりやすい。しかも厄介なのは、文章がとても流暢なので、読んでも一目では誤りに気づけないことです。「佐藤さん、12月5日まで」と自信たっぷりに書いてあれば、つい信じてしまう。だから、「きれいに書けているから正しいはず」は通用しません。流暢さと正確さは、別ものなのです。
確認の手順:「確かめる4点」を元の文字起こしに突き合わせる
とはいえ、全部を疑って録音を最初から聞き直していたら、時間がかかって本末転倒です。そこで、あやしい所だけを効率よく確かめるために、次の4点に絞ってチェックします。
| 確かめる4点 | 見るところ |
|---|---|
| ① 決定事項 | 本当にそう決まったか(決まっていないことを決定にしていないか) |
| ② ToDoの担当・期限 | 誰が・いつまでに、が合っているか |
| ③ 固有名詞 | 人名・商品名・社名が正しいか(誤変換していないか) |
| ④ 数字・日付 | 金額・件数・期日が合っているか |
この4点について、あやしいと感じた箇所を、元の文字起こし(必要なら録音)に戻って突き合わせます。全部ではなく、この4点だけ。これが「確かめる=人の仕事」の中身であり、速さの秘訣です。
月曜の販促会議で、実際にやってみましょう。たたき台では、佐藤さんのToDoの期限が「12月5日」になっていました。気になって録音を聞き直すと、佐藤さんはこう言っています——「バナーのデザイン案、来週の金曜までに3つ出します」。カレンダーを見ると、来週の金曜は12月6日。AIは「来週金曜」を「12月5日」と1日ずらして書いていたのです。これは④数字・日付と②ToDoの期限の取り違え。さっそく12月6日に直します。さらに、決定事項に書かれた新商品の名前も、音の近い別の言葉に誤変換されていました(③固有名詞)。これも録音と突き合わせて、正しい商品名に直します。こうして、あやしい4点だけを突き合わせることで、たたき台は信頼できる議事録に変わります。
テンプレートに整えて、会議後すぐ共有する
確認が済んだら、最後は整えて共有です。ここで効くのが、毎回同じテンプレート(型)に流し込むこと。バラバラの書き方だと読み手が迷いますが、いつも同じ型なら「決定事項とToDoはここ」とすぐ分かります。テンプレートは、たとえばこんな並びです。
| 議事録テンプレート | 中身 |
|---|---|
| 基本情報 | 日時・参加者・議題 |
| 決定事項 | 会議で決まったこと |
| ToDo | 担当・内容・期限(表) |
| 論点 | 主な意見・議論の流れ |
| 保留事項 | 次回に持ち越す事項 |
| 次回 | 次回の予定 |
このテンプレに、確認済みの内容を流し込めば完成です。そして、会議後すぐに共有しましょう。記憶が新しいうちのほうが、読み手も思い出しやすく、ToDoもすぐ動き出します。
ここで、冒頭のあなたを思い出してください。以前は、録音を最初から聞き直して、清書に当日の夜まで2時間かかっていました。でも今回は違います。今日の3ステップを通せば、30分もあれば、「誰が・何を・いつまでに」が一目で分かる議事録が共有できます。先輩からは、「もう出てるの?早いね。しかも、誰が何やるか一目で分かる」。今度は、あなたが「私の担当、これですよね」と確認される側に回ります。これが、AIは“書く”を肩代わり、“確かめる”は人の仕事、の成果です。
この章の確認(演習)
第3章で作ったたたき台に、「確かめる4点」(決定事項/ToDoの担当・期限/固有名詞/数字・日付)を当てて、元の文字起こし(と録音)と突き合わせ、最低1つ、誤りを見つけて直してみてください。
直し終えたら、配布の議事録テンプレート(テンプレDL)に整えるところまでやってみましょう。「書くはAI、確かめるは自分」を、たたき台から完成まで1周できたら、ゴールです。
まとめ:AIは“書く”を肩代わり、“確かめる”は人の仕事
おつかれさまでした。「月曜の社内定例会議」という、たった1つの会議を、AI議事録とは何か→録音して文字起こし→AIでたたき台→確認して共有、と1ステップずつ進めてきました。第1章で枠だけ立てた3つの箱が、最後には全部埋まりましたね。振り返ります。
- AI議事録とは……「AIに丸投げ」でも「どうせ使えない」でもなく、①録音→②文字起こし→③AIで要約・整形の3ステップ。書く(要点を抜き出し整形する)はAIに肩代わりさせ、確かめる(何が決まったか・誰の担当か)は人が担う。議事録は発言の網羅でなく、決定事項・ToDo・論点・保留の4つに絞る(第1章)。
- 録音と文字起こし……会議中は全部書こうとせず、録音に任せてメモは要点だけ。文字起こし(音声認識)には固有名詞・数字・日付の誤変換が混じる前提を持つ。そして、AIに入れる前に必ず機密性を確認する(許可されたツールか/学習させない設定か/社外秘を含まないか)(第2章)。
- AIで要約・整形……「要約して」だけでなく、型プロンプト(役割・素材・抜き出すもの・出力形式)で、決定事項・ToDo・論点・保留のたたき台を作る。出てくるのは“たたき台”で、まだ共有しない(第3章)。
- 確認と仕上げ……AIのたたき台はそのまま使わない(ハルシネーション)。確かめる4点(決定事項/ToDoの担当・期限/固有名詞/数字・日付)を元の文字起こしに突き合わせて直し、テンプレに整えて会議後すぐ共有する(第4章)。
この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「書くはAIに任せたか/確かめる(決定事項・担当・期限・固有名詞)を自分でやったか」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——AIは“書く”を肩代わり、“確かめる”は人の仕事。AI議事録は、録音→文字起こし→AIで要約・整形。
明日の最初の一歩:次の会議で、(1)冒頭に「録音します」と一言、メモは要点だけ → (2)文字起こしを型プロンプトでAIに渡して、決定事項・ToDo・論点のたたき台 → (3)確かめる4点で直して、テンプレに整えて共有、を1回だけ通してみてください。完璧でなくて大丈夫です。「書くはAI、確かめるは自分」を1周できたら、それが第一歩です。
そして、今日の3ステップをそのまま次の会議で使えるように、議事録テンプレート+AIに渡す型プロンプト+確かめる4点チェックリストを一式、ダウンロードできます。まずはこれを手元に置いてください。もし、生成AIそのものの操作(ChatGPTやClaude、Geminiの使い方)にまだ不安があれば、AIの入門講座に戻ってからでも大丈夫です。次は、あなたが「議事録、もう出来たの?早いね」と言われる番です。
よくある質問
AI議事録とは何ですか?
AIを使った議事録作成とは、「録音→文字起こし→AIで要約・整形」の3ステップで議事録のたたき台を作り、最後に人が決定事項・担当・期限・固有名詞を確かめて仕上げる手法です。AIに丸投げするのでも、全部自力で書くのでもない第3の道です。
AIが作ったたたき台はそのまま使えますか?
そのまま使うのは禁物です。生成AIはもっともらしい文章を作る反面、固有名詞・数字・日付・決定事項を取り違えることがあります(ハルシネーション)。必ず「確かめる4点」(決定事項/ToDoの担当と期限/固有名詞/数字・日付)を元の文字起こしと突き合わせてから共有してください。
会議の録音をAIに入れる前に何を確認すればよいですか?
会社で利用が許可されたツールかどうか、入力内容をAIの学習に使わせない設定になっているかどうか、そして扱う会議に社外秘や個人情報が含まれていないかどうかの3点を、必ず社内ルールで確認してから入力してください。
「要約して」と頼むだけではなぜうまくいかないのですか?
AIはこちらが指示したとおりに動くため、「要約して」とだけ伝えると会議のあらすじを返すだけにとどまります。「役割・素材・抜き出すもの・出力形式」の4点を含む型プロンプトで指示すると、決定事項・ToDo・論点・保留事項が整理されたたたき台を出してもらえます。
文字起こしの誤変換はどう対処しますか?
音声認識は固有名詞・専門用語・数字・日付を誤変換しやすい点を前提として進めてください。誤変換の修正は第4章の「確かめる4点チェック」でまとめて行います。会議中のメモには「聞き直したい場面」を記録しておくと、後で録音と突き合わせる箇所がすぐ分かります。