AIリテラシーと情報セキュリティ入門 | マナビズ

AIリテラシーと情報セキュリティ入門

AIリテラシーと情報セキュリティ入門

「議事録、AIに貼って要約してもらお」——明日の取引先A社との打ち合わせ準備のために、前回の議事録をコピーして、生成AIの入力欄に貼り付けようとした。その手、ちょっとだけ止めてみてください。

生成AIはとても便利です。でも、便利だからとなんでも貼り付けてしまうのも、逆に「会社の情報を入れると危ないらしい」とこわくて一切使えないのも、実は同じ原因から起きています。それは、「どこまで入れていいか」の境界線を、自分の中に持っていないこと。境界線がないから、その都度「なんとなく大丈夫そう」「なんとなく危なそう」という感覚でしか判断できず、結局えいやで貼り付けるか、あきらめるかのどちらかになってしまうのです。

でも、安心してください。判断するためのものさしは、分厚いルール集ではありません。たった1つの問いだけです——「その情報が、外に出ても困らないか?」。この問いさえ持てば、入れていい情報とダメな情報を、自分で線引きできるようになります。この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. 生成AIに入れた情報が「自分のパソコンの中だけで完結せず、インターネット越しに外部の会社に渡りうる」ことを、自分の言葉で説明でき、だから入れる情報を選ぶ必要があると判断できる
  2. 手元の情報を、「外に出ても困らないか」という1つの軸で、入れてよい情報(公開されている情報・自分で書いた文章の推敲・一般的な質問)と、入れてはいけない情報(個人情報・社外秘や未発表の情報・取引先から預かった情報・ID/パスワード)に仕分けできる
  3. 入れてはいけない情報でも、①ぼかす(匿名化)②会社の安全なツール③上司・ルールに確認、の3つの方法から、安全にAIに手伝ってもらう手段を選べる

この講座は最後まで、「入社1年目のあおいさんが、明日の取引先A社との打ち合わせ準備を、生成AIに手伝ってもらおうとしている」という、たった1つの場面だけで説明します(説明用の架空の例です)。あおいさんの手元にある5つの素材を仕分けし、入れられないものは安全な形に変えて、最後は議事録を丸ごとコピペせずに準備を終える——その流れを一緒にたどります。各章末には手を動かす演習も置いているので、自分の業務に当てはめながら読んでください。ここで「安全に使う線引き」ができたら、生成AIをもっと活用する方法(任せる作業の選び方・指示の書き方・各ツールの使い方)は、関連講座で学べます。まずはこの1本で、安全に使う土台を作りましょう。

この講座のポイント

  • 生成AIに入力した情報が「自分のパソコンの中だけで完結せず、インターネット越しに外部の会社に渡りうる」ことを、自分の言葉で説明でき、だから入れる情報を選ぶ必要があると判断できる
  • 手元の情報を「外に出ても困らないか」という1つの軸で、入れてよい情報と入れてはいけない情報に仕分けできるようになります。これが、この講座のいちばんの到達点です。
  • 入れてはいけない情報でも、①ぼかす(匿名化)②会社の安全なツール③上司・ルールに確認、の3つの方法から、安全にAIに手伝ってもらう手段を選べる
  • 1つの業務(打ち合わせ準備)を、安全な手順でAIに手伝ってもらえるようになります。NG例とOK例の違いを説明でき、周りにも線引きを伝えられる

生成AIに入れた情報は、どこへ行くのか

この章のゴール

この章を読み終えると、生成AIに入力した情報が「自分のパソコンの中だけで完結せず、インターネット越しに外部の会社に渡りうる」ことを、自分の言葉で説明でき、だから入れる情報を選ぶ必要があると判断できるようになります。

その「貼り付け」、外に情報を渡しているのと同じかも

ここで、この講座の主役に登場してもらいましょう。入社1年目のあおいさんです。あおいさんは明日、先輩と一緒に取引先のA社へ打ち合わせに行きます。その準備として、前回のA社との議事録を、生成AIに貼り付けて要約してもらおうとしています。

一見、なんの問題もないように見えます。でも、その議事録には、A社が検討している予算や、まだ表に出していない社内の課題、先方の担当者の名前が書かれています。これを生成AIに貼り付けるのは、実は「外部の相手に、A社の内部事情を丸ごと渡す」のとほとんど同じことなのです。なぜそう言えるのか。生成AIという道具の「正体」に関係しています。

ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。生成AIは「自分のパソコンの中だけで完結する道具」ではなく、「外部の相手に情報を渡す道具」。だから入れる前に、「これは外に出ても困らない?」と一呼吸おく。この一呼吸が、この講座のすべての出発点です。

生成AIは「外部の会社のサーバー」で動いている

電卓やメモ帳アプリは、自分のスマホやパソコンの中だけで動いています。だから、メモ帳に何を書いても、それが勝手に外に出ることはありません。

ところが、生成AI(ChatGPTなど)は、まったく違うしくみで動いています。あなたが入力欄に文章を打ち込んで送信すると、その文章はインターネットを通って、その生成AIを運営している会社(事業者)のサーバーへ送られて処理されるのです。手元で完結しているように見えて、実際には「外の会社に文章を送っている」。ここが、メモ帳との決定的な違いです。

さらに、送った情報がどう扱われるかも要注意です。使っているサービスの設定や契約によっては、入力した内容がAIの性能改善(学習)に使われたり、思わぬ形で外に出たりすることもありうるのです。実際、国の個人情報保護委員会も、生成AIについて「入力した個人情報が、AIの学習データとして使われていませんか?」と注意を呼びかけています。「入れた情報は外に出るかもしれない」というのは、おおげさな脅しではなく、公的機関も気をつけてと言っている現実なのです。

各サービスが、あなたの入力をどう扱うか(学習に使うのか、使わないのか)は、サービスや設定によって違い、しかも頻繁に変わります。毎回こまかく調べるのは大変なので、「入れた情報は外に出る可能性がある」と最初から考えて、入れる中身のほうを選ぶのが確実です。鍵のかかった引き出しにしまう感覚ではなく、「外部の人に手渡す」感覚で考えれば、迷いません。

実際に起きている「うっかり入力」からの情報漏れ

「自分がちょっと貼り付けたくらいで、大ごとにはならないでしょ」。そう思うかもしれません。でも、これは実際に起きています。

2023年、大手電機メーカーのサムスン(Samsung)で、社員が生成AIに社外秘の情報を入力してしまい、情報が外に漏れる事態が起きた、と報じられました。漏れた中身には、製品にかかわるプログラムのソースコードや、社内の会議の内容を文字起こしして、議事録を作らせようとしたものまで含まれていたといいます。会社はこの問題を受けて、社内での生成AIの利用を一時的に禁止しました。

ここに、いちばん大事なポイントがあります。この社員たちは、悪いことをしようとしたわけではありません。ただ、仕事を速く・うまくやろうとしただけ。私たちと同じです。それでも、便利に使おうとした「うっかり」から、機密情報が外に出てしまった。しかも、生成AIに一度送った情報は、あとから「やっぱり取り消します」と削除するのが難しい。送った時点で、もう外に渡っているからです。

あおいさんが議事録を貼り付けようとしているのは、まさにこの「社内の会議内容を要約させる」のと同じ場面です。悪意がなくても、誰にでも起こりうる。だからこそ、貼り付ける前の線引きが必要なのです。この章では、まだ仕分けはしません。「入れた情報は外に出る」「悪意がなくても漏れる」——この事実だけを、まず掴んでください。

この章の確認(演習)

自分が最近、生成AIに入れた(または入れようとした)情報を、3つ書き出してみてください。仕事のメール、会議のメモ、調べものの質問——なんでもかまいません。そして、それぞれについて、こう問いかけます。「もし、これが外部の人に見られたら、困るだろうか?」。困らないなら○、困るなら×を付けてみましょう。

仕分けのくわしい基準は、次の章で渡します。ここでは、「困るかどうか」という感覚をつかむだけで十分です。次の章で、自信を持って線を引くための“ものさし”を手に入れましょう。

入れていい情報・いけない情報の線引き

この章のゴール

この章を読み終えると、手元の情報を「外に出ても困らないか」という1つの軸で、入れてよい情報と入れてはいけない情報に仕分けできるようになります。これが、この講座のいちばんの到達点です。

線引きの軸は、たった1つ

第1章で、「入れた情報は外に出るかもしれない」ことが分かりました。だとすれば、線引きの基準は、もう自然に決まります。「その情報が、外に出ても困らないか」。これだけです。

外に出ても困らない情報なら、入れてよい。外に出たら困る情報なら、入れてはいけない。貼り付けボタンを押す前に、この問いを1回だけ自分に投げかける。それだけで、判断の8割は終わります。では、具体的にどんな情報が「困らない」で、どんな情報が「困る」のか。順番に見ていきましょう。

入れてよい情報(外に出ても困らない情報)

まず、安心して入れてよい情報です。代表的なものは、次の3つです。

入れてよい情報
すでに公開されている情報会社のWebサイトやパンフレットに載っている内容、ニュースで報じられた事実
自分で書いた文章の推敲・要約自分が考えた挨拶文を「もっと丁寧にして」と直してもらう
固有名詞を含まない一般的な質問「初めての取引先へのお礼メールの、一般的な書き方を教えて」

これらに共通するのは、もともと外に出ている、または、外に出ても誰も困らないということです。会社のサイトに載っている紹介文は、世界中の誰でも読める情報ですよね。それを生成AIに入れても、新しく何かが漏れるわけではありません。

ここで、ひとつ誤解を解いておきます。「会社の情報を入れると危ないらしいから、生成AIは一切使わない」——これは、安全に思えて、実はもったいない判断です。公開情報を整えてもらう使い方まで手放す必要はありません。こわがって全部やめるのではなく、線を引いて、使えるところは使う。それが、かしこい付き合い方です。

入れてはいけない情報(外に出たら困る情報=秘密情報)

次に、入れてはいけない情報です。ひとことで言えば「秘密情報」。代表的なものは、次の3つ+1つです。

入れてはいけない情報
① 個人情報氏名・連絡先・顧客名簿・マイナンバーなど、「誰のことか分かる」情報
② 社外秘・未発表の情報発表前の製品・価格・売上、社内資料、プログラムのソースコード
③ 取引先から預かった情報議事録に書かれた先方の事情、契約で「秘密にします」と約束した情報
+ ID・パスワードこれは、どんな状況でも絶対に入れない

少し補います。個人情報は名前だけでも立派な個人情報です。社外秘は「まだ公開していない会社の情報」。そして取引先から預かった情報は、自分の会社のものですらありません。相手の信頼で預かったものを外に出したら、取引そのものを失いかねません。

この「公開されているものは入れてよい/秘密のものは入れてはいけない」という線引きは、私が勝手に言っているのではありません。国の個人情報保護委員会の注意喚起、総務省・経済産業省の「AI事業者ガイドライン」、東京都などの自治体のガイドラインでも、「機密性の高い情報や個人情報は入力しない」という同じ考え方が共通して示されています。この線引きは、社会全体の“常識”になりつつあるのです。

最後に、ひとつコツを。どちらか迷ったときは、「困る側」に倒してください。「これは公開情報かな、社外秘かな…」と迷うものは、いったん入れない。安全な側に寄せておけば、事故は起きません。迷いを「入れない」で止められること自体が、線引きができている証拠です。

この章の確認(演習)

それでは、あおいさんの手元にある5つの素材を、あなたも仕分けしてみましょう。「外に出ても困らないか」を基準に、○か×を付けてみてください。

あおいさんの素材仕分け理由
① A社との議事録(予算・課題・担当者名)×社外秘+取引先の預かりもの+個人情報
② 自社の未発表の価格表×社外秘・未発表
③ 公開済みの自社サービス紹介文すでに公開されている
④ 参加者リスト(氏名・メール)×個人情報
⑤ 自分で書いた、固有名詞なしの挨拶メール下書き自作文の推敲はOK

どうでしょう。同じ「打ち合わせ準備の素材」でも、○と×にくっきり分かれましたね。しかも、5つのうち3つが×。何も考えずに全部コピペしていたら、と想像するとぞっとします。

仕分けができたら、次は自分の実際の業務で扱う情報を3つ挙げ、同じように○×を付けてみてください。×が付いたものは、「もう生成AIには使えない」のでしょうか。いいえ、違います。次の章で、×を安全に扱う3つの方法を渡します。

入れられない情報も、AIに手伝ってもらう3つの方法

この章のゴール

この章を読み終えると、入れてはいけない情報でも、①ぼかす(匿名化)②会社の安全なツール③上司・ルールに確認、の3つの方法から、安全にAIに手伝ってもらう手段を選べるようになります。

×が付いても、「使えない」で終わらせない

第2章で、あおいさんの素材には3つも×が付きました。でも、明日の準備はしなければなりません。ここで「×だから一切AIは使えない」とあきらめると、振り出しに戻ってしまいます。

そうではなく、×が付いた情報を、安全な形にしてから手伝ってもらう。そのための逃げ道が、3つあります。迷ったときの合言葉は——「困るなら、ぼかす・社内ツール・確認」。ひとつずつ見ていきましょう。

3つの逃げ道:ぼかす・社内ツール・確認

逃げ道やること
① ぼかす(匿名化)困る部分だけを消す・置き換える。社名を「A社」、担当者名を「ご担当者」、具体的な金額を消す/「ある程度の規模」に丸める
② 会社の安全なツール会社が用意した、入力が外部の学習に使われない運用の生成AIがあれば、それを使う
③ 上司・ルールに確認自社のAI利用ルールに従う。なければ、入れる前に上司や情報システム担当に一言聞く

①ぼかす(匿名化)から。匿名化とは、「社名や名前、金額など、“誰の・どの情報か分かる部分”を消したり置き換えたりすること」です。議事録なら「A社」「ご担当者」と置き換え、具体的な予算額は消す。すると残るのは「ある会社が、こういう課題で悩んでいる」という、固有名詞のない要点だけ。これなら外に出ても困りません。困る部分を外せば、残った困らない部分は、安心してAIに渡せるのです。

②会社の安全なツール。最近は、会社が法人向けに契約した生成AIで、「入力した情報を外部の学習に使わない」運用になっているものもあります。そういうツールが社内にあれば、機密に近い情報でも、ルールの範囲で使える場合があります。ただし、何が許されているかは会社ごとに違うので、「うちに専用ツールはある? どこまで入れていい?」を情報システムの担当者に確認しておきましょう。

③上司・ルールに確認。会社に生成AIの使い方を決めたルール(ガイドライン)があれば、まずそれに従います。なくても、迷ったら貼り付ける前に上司や先輩に一言聞けばいい。「確認するのは気がひける」と感じるかもしれませんが、漏らしてから謝るより、よっぽど早くて安全です。

この3つは、どれか1つを選ばなければいけない、というものではありません。組み合わせて使ってOKです。ぼかしたうえで社内ツールを使う、迷ったら確認する——状況に合わせて、いいとこ取りをしてください。

出てきた答えも、鵜呑みにしない

ここまでは「何を入れるか(入力)」の話でした。安全に使うには、もう1つ、「出てきた答えをどう扱うか(出力)」にも気をつけます。

生成AIは、もっともらしいけれど、事実と違う内容を、自信たっぷりに作ってしまうことがあります(これを「ハルシネーション」と呼びます)。「次に来そうな言葉」を計算して文章を作るしくみで、内容が本当に正しいかを確かめてはいないからです。国のNISTや総務省の白書でも、「出力が正しいか確認するのが望ましい」とされています。

ですから、AIが作った文章はそのまま使わず、事実・固有名詞・数字は自分で確かめる。入力(何を入れるか)と出力(答えをどう扱うか)、この両方に気をつけて、はじめて「安全に使えている」と言えます。出力チェックのくわしいやり方は、活用法を扱う関連講座で深められます。

この章の確認(演習)

あおいさんの「A社議事録」を、あなたの手でぼかして書き直してみましょう。社名を「A社」に、担当者名を「ご担当者」に置き換え、具体的な金額は消す。残った「課題の要点」だけにして、生成AIに渡してよい形にします。やってみると、「これくらい残しても大丈夫かな?」という感覚が、自分の中に育ってきます。

そのうえで、第2章の演習で×を付けた「自分の業務の情報」について、3つの逃げ道(ぼかす・社内ツール・確認)のどれで対処するかを、1つずつ決めてみてください。これで、×だった情報も、行き止まりではなくなります。

安全な5ステップで、明日の準備をやってみる

この章のゴール

この章を読み終えると、1つの業務(打ち合わせ準備)を、安全な手順でAIに手伝ってもらえるようになります。NG例とOK例の違いを説明でき、周りにも線引きを伝えられるようになります。

線引きを「5つのステップ」にまとめる

これまで学んだことを、貼り付けボタンを押す前にたどる、5つのステップにまとめます。

ステップやること
① 目的を決める何をAIに手伝ってほしいか(例:提案メールの下書き)
② 情報を仕分けする使う情報を「外に出て困るか」で○×に分ける(第2章)
③ 困る情報は逃げ道で処理×は ぼかす・社内ツール・確認 で安全な形に(第3章)
④ AIに頼む残った「困らない情報」+一般的な指示で依頼する
⑤ 出てきた答えを確かめて直す事実・固有名詞・トーンを自分でチェックして仕上げる

この5ステップが回せれば、あなたはもう「便利だから全部入れる」人でも、「こわいから一切使わない」人でもありません。線を引いて、安全に使いこなす人です。

NG例とOK例を並べて見る

同じ「A社向けの提案メールの下書きを作る」というゴールでも、やり方しだいで安全性はまるで違います。あおいさんの場合で見比べてみましょう。

NG例OK例
入れるものA社の議事録を丸ごとコピペ社名・担当者名・金額をぼかした「課題の要点」+公開済みの紹介文
何が起きるか先方の予算・担当者名ごと外部に渡る(漏えい)困る情報は外に出ない
頼み方「これ要約して」と丸投げ「ある会社(A社)の課題3点を整理し、丁寧なトーンで提案メールの下書きを」
仕上げ出てきた文をそのまま使う事実・固有名詞・敬語を自分で確かめて仕上げる

NG例は、第1章で見たサムスンの事故とまったく同じ構図です。議事録を丸ごと貼り付けた瞬間に、先方の内部事情が外に出てしまう。一方OK例は、③で困る情報をぼかしてあるので、外に出るのは「困らない情報」だけ。同じ下書きが手に入るのに、リスクはまるで違います。

事故の多くは、ステップ①〜③を飛ばして、いきなり④の「AIに頼む」から始めることで起きます。仕分けする前に貼り付けない。この順番を守るだけで、ほとんどの事故は防げます。

線引きは「自分1人」で抱えない

最後に、大事なことを1つ。この線引きは、あなた1人だけが気をつければいい話ではありません。

チームで仕事をしている以上、誰か1人が機密をうっかり入れてしまえば、それは会社全体のリスクになります。だから、ここで学んだ「外に出て困る情報は入れない」「迷ったら、ぼかす・社内ツール・確認」という線引きを、ぜひ周りにも共有してください。後輩から「これ、AIに入れて大丈夫ですか?」と聞かれたら、「外に出て困る情報かどうかで考えるといいよ。困るなら、ぼかすか、会社のツールを使うか、いったん確認しよう」と伝えられる。それだけで、チーム全体が一段、安全になります。

迷ったときに一人で抱え込まず、相談し合える空気があること。それが、いちばんの安全対策です。会社全体のルール作りや本格的な研修は、また別のテーマ。まずは自分とチームの足元から始めましょう。

この章の確認(演習)

自分の実際の業務を1つ選び、5つのステップに沿って、「①目的②仕分け③逃げ道④頼み方⑤確認」を、それぞれ書き出してみてください。実際にAIに入れる前の、“設計図”を作る感覚です。これができれば、本番でも迷いません。

最後に、この線引きを後輩に一言で伝えるとしたら、何と言うかを、自分の言葉で書いてみましょう。一言で言えたなら、あなたはもう「なんとなくの感覚」ではなく、「線引き」で判断できる人です。

まとめ:AIに入れる前に、ひと呼吸

おつかれさまでした。「あおいさんの明日のA社打ち合わせ準備」という、たった1つの場面を、最後まで一緒にたどってきました。最初は議事録を丸ごと貼り付けようとしていたあおいさんが、5つの素材を仕分けし、×だったものをぼかして、議事録を丸ごとコピペすることなく、安全に準備を終えられるようになりました。要点を振り返ります。

  1. 入れた情報は、外に出る……生成AIは「自分のパソコンの中で完結する道具」ではなく、「外部の会社に情報を渡す道具」。悪意がなくても、うっかり入力から機密が漏れる事故は、実際に起きている(第1章)。
  2. 線引きの軸は、外に出て困るか……公開情報・自作文の推敲・一般的な質問は入れてよい。個人情報・社外秘や未発表・取引先の預かりもの・ID/パスワードは入れてはいけない(第2章)。
  3. 入れられない情報も、逃げ道がある……ぼかす(匿名化)・会社の安全なツール・上司やルールに確認。困るなら、この3つ(第3章)。
  4. 安全な5ステップで回す……目的→仕分け→逃げ道→依頼→確認。出てきた答えも、自分で確かめる。そして、線引きはチームで持つ(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。貼り付けボタンを押す前の、「これ、外に出ても困らない?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——AIに入れる前に、ひと呼吸。「これ、外に出ても困らない?」

明日の最初の一歩:次に生成AIを使うとき、貼り付けボタンを押す前に、一度だけ自分に問いかけてみてください。「これ、外に出ても困らない?」。困ると思ったら、ぼかすか、会社のツールを使うか、確認する。たったこれだけです。きれいにできなくてかまいません。まず、この一呼吸をおく癖をつけること。それが、すべての土台になります。

そして、安全に使う土台ができたら、次はもっと活用する番です。生成AIに任せる作業の選び方、伝わる指示(プロンプト)の書き方、各AIツール(ChatGPTなど)の使い方——こうした「活用の技術」は、関連講座で学べます。安全という土台の上に、活用という力を積み上げていきましょう。あなたの「ひと呼吸」が、あなた自身と、あなたの会社を守ります。

よくある質問

生成AIに情報を入れると、なぜ情報漏えいのリスクがあるのですか?

生成AIは自分のパソコンの中で完結する道具ではなく、入力した文章がインターネットを通じて外部の事業者のサーバーへ送られて処理されます。使っているサービスの設定によっては、入力内容がAIの学習に使われることもあるため、外に出たら困る情報は入れないことが重要です。

どんな情報は入れてよくて、どんな情報はいけないのですか?

「外に出ても困らないか」という一軸で判断します。すでに公開されている情報・自分で書いた固有名詞を含まない文章の推敲・一般的な質問は入れてよい情報です。個人情報・社外秘や未発表の情報・取引先から預かった情報・ID/パスワードは入れてはいけない情報です。

入れてはいけない情報を、どうしてもAIに手伝ってもらいたい場合はどうすれば良いですか?

3つの方法があります。社名や担当者名・金額など「誰の情報か分かる部分」を消して置き換える「ぼかし(匿名化)」、会社が用意した情報を外部学習に使わない運用の社内ツールを利用する方法、そして上司や情報システム担当者に事前確認する方法です。状況に合わせて組み合わせて使えます。

生成AIが出力した答えは、そのまま使って大丈夫ですか?

そのまま使わず、自分でチェックすることが大切です。生成AIはもっともらしいけれど事実と違う内容を作ってしまうことがあります。特に事実・固有名詞・数字は、自分で確かめてから使うようにしましょう。

この線引きは自分1人だけが守れば十分ですか?

チームで仕事をしている以上、1人が機密をうっかり入れてしまえば会社全体のリスクになります。「外に出て困る情報は入れない」「迷ったらぼかす・社内ツール・確認」という考え方を周りにも共有することが、チーム全体の安全につながります。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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