エンゲージメント向上入門|定着を高める見立てと打ち手の選び方 | マナビズ

エンゲージメント向上入門|定着を高める見立てと打ち手の選び方

エンゲージメント向上入門|定着を高める見立てと打ち手の選び方

エンゲージメントサーベイの結果は、毎年のように配られます。総合点が去年より少し下がった、部署別では自部署が平均より低い——数字はわかる。けれど、「で、明日から何を変えればいいのか」は、誰も教えてくれません。点数を眺めているうちに、評価で大きな問題があったわけでもない中堅が、ある日「転職を考えています」と切り出してくる。点を眺めるだけでは、人は静かに辞めていきます。

この講座は、5〜10名の課やチームを預かる管理職、または定着施策を任された人事の方に向けて、エンゲージメントを「測って→見立てて→打ち手を1つ回す」までの判断に絞ってお話しします。エンゲージメントを高めるための個々の打ち手——やる気そのものの引き出し方、安心して発言できる土台づくり、1対1の対話の進め方、チームの目標共有や役割設計——には、それぞれ専門の講座があります。本講座は「定着を高めるために、何を見て・どこから手をつけるかを決める」運用の上位レイヤーだけを担い、打ち手の中身はモチベーション管理入門心理的安全性入門1on1ミーティング入門へお渡しします。

この講座を終えると、次の3つができるようになります。エンゲージメントとは何で、それが従業員の定着とどうつながるかを、満足度やモチベーションとの違いを含めて説明できること。自部署のサーベイ結果や日常の兆候から、エンゲージメントが弱っているポイントとその背景仮説を見立てられること。そして、見立てに基づいて打ち手を1つ選び、担当・期限つきのアクションに落として回せること。覚えて帰る型は「測る(弱い項目を特定)→ 見立てる(兆候と仮説)→ 1つ選ぶ(影響度×着手しやすさ)→ 回す(担当・期限つきで継続)」です。本講座では、6人チームの「入社2年目の中堅候補」(例)が静かに転職を考え始め、直近サーベイで“仕事の意味づけ”と“上司との関係”が下がっている、という同じ場面を全章で追いかけます。点を眺めるのではなく、弱い1点から動かす。これが背骨です。

この講座のポイント

  • エンゲージメントが何で、なぜ従業員の定着につながるかを、満足度・モチベーションとの違いを含めて説明できる。
  • サーベイ結果や日常の兆候から、エンゲージメントが弱っているポイントとその背景仮説を見立てられる。
  • 見立てに基づき、定着を高める打ち手を「どこから・なぜ」の優先順位で選べる。
  • 打ち手を担当・期限つきのアクションに落とし、見直す仕組みを作れる。

エンゲージメントとは何か——定着とのつながりを押さえる

この章のゴール

エンゲージメントが何で、なぜ従業員の定着につながるかを、満足度・モチベーションとの違いを含めて説明できる。

エンゲージメントは「前向きに関わり続けたい度合い」

まず言葉を揃えます。厚生労働省の「令和元年版 労働経済の分析」は、ワーク・エンゲイジメントを「仕事に関連するポジティブで充実した心理状態」とし、「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態と定義しています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」第3章)。さらにこれは「一時的な状態」ではなく、仕事に向けられた「持続的かつ全般的な感情と認知」によって特徴づけられる、ともされています。つまりエンゲージメントとは、その日の気分ではなく、個人と仕事全般との関係性を示す、持続的に「前向きに関わり続けたい」と思う度合いだと押さえてください。

定着とつなげて考えるときに有用なのが、同じ白書が使う「組織コミットメント」という言葉です。白書はこれを「企業の理念等や担当業務の意義等を理解した上で、企業の組織風土に好感もっている」状態と説明しています(出典:同前 第3章)。前向きに関わりたい気持ちと、この組織への好感や貢献意欲が薄れていくと、人は次第に距離を取り始めます。

満足度・モチベーションとの違いを切り分ける

ここでつまずきやすいのが、満足度やモチベーションとの混同です。白書は職務満足感を「自分の仕事を評価してみた結果として生じる、ポジティブな情動状態」とし、エンゲージメントが仕事を「している時」の感情や認知を指すのに対し、職務満足感は仕事「そのものに対する」感情や認知を指す点で異なると整理しています(出典:同前 第3章)。待遇や職場環境に「不満がない」状態(満足度が高い)と、「この仕事に前向きに関わりたい」状態(エンゲージメントが高い)は、別物だということです。だから、給料や環境に大きな不満がなくても、関与が薄れて辞める人がいます。

一時的なやる気(モチベーション)とも違います。白書は、過度に強迫的に働く「ワーカホリズム」を活動水準は高いが態度・認知は否定的な状態、燃え尽きた「バーンアウト」を活動水準が低く態度・認知も否定的な状態とし、エンゲージメントはこれらと区別される、活動水準が高く態度・認知が肯定的な状態だと位置づけています(出典:同前 第3章)。イベントや声かけで一時的に上がる「その瞬間のやる気」と、持続的に前向きでいられる度合いは、別の軸なのです。なお、やる気そのものをどう引き出すかという関わり方の中身は本講座の射程外で、モチベーション管理入門が正本です。ここでは「満足度=不満がない/エンゲージメント=前向きに関わりたい/モチベーション=今この瞬間のやる気」の3語の違いだけ、はっきり持って帰ってください。

関与が薄れると、静かな離職につながる

では、なぜこれが定着の話になるのか。白書は、ワーク・エンゲイジメント・スコアと、組織コミットメント、新入社員の定着率(入社3年後)、従業員の離職率の低下との間に「正の相関があることがうかがえる」とし、「逆方向の因果関係がある可能性にも留意が必要であるが、ワーク・エンゲイジメントを向上させることは、こうしたアウトカムにポジティブな影響を与えている可能性が示唆される」と述べています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」第3章)。ここで大事なのは、白書が「相関がうかがえる」「可能性が示唆される」と慎重に書いている点です。エンゲージメントを上げれば離職が必ず何割減る、という単純な因果ではありません。それでも、前向きに関わる度合いと定着・離職の動きは、同じ方向に動きやすい。だから定着を考えるなら、エンゲージメントの状態を見る価値がある——この順序で理解しておけば十分です。

共通例の2年目候補(例)で言えば、待遇に大きな不満があるわけではありません。けれど「この仕事に何の意味があるのか」が見えなくなり、上司にも相談できず、関与が薄れている。満足度の問題ではなく、エンゲージメントが弱っている状態です。これを「給料を上げれば解決する」と満足度の話に矮小化したり、「飲み会で盛り上げよう」と一時的なやる気の話にすり替えたりすると、本当の弱点を外します。

この章の確認(演習)

自部署のメンバーを1人思い浮かべてください。その人について、「満足度・エンゲージメント・モチベーション」のどれが下がっていそうかを1つ選び、なぜそう思うのかを、観察した言動や行動の変化(例:会議での発言が減った、自分から提案しなくなった)を1つ添えて書き出してください。3語のどれを指しているのかを区別できれば、この章のゴールはクリアです。

自部署の状態を見立てる——サーベイと兆候を読む

この章のゴール

サーベイ結果や日常の兆候から、エンゲージメントが弱っているポイントとその背景仮説を見立てられる。

総合点ではなく、項目(ドライバー)ごとに見る

サーベイの総合点が下がった、という情報だけでは打ち手は決まりません。見るべきは、どの項目が弱いかです。白書は、エンゲージメントを高める要因を「仕事の資源」と「個人の資源」という枠組みで整理しています。「仕事の資源」とは、就業条件(キャリア開発の機会、雇用の安定性など)、対人関係や社会関係(上司によるコーチング、社会的な支援など)、組織での仕事の進め方(意思決定への参加、コントロールなど)、課題(仕事のパフォーマンスに対するフィードバック、正当な評価など)を指す、とされています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」第3章)。

この4つのまとまりを、現場の言葉に置き換えると、見立ての軸になります。仕事の意味づけや成長の機会(就業条件)、上司・同僚との関係(対人関係)、仕事の裁量や意思決定への参加(仕事の進め方)、承認やフィードバック・正当な評価(課題)。総合点ではなく、自部署のサーベイがこのどのあたりで弱いのかを、項目別に見るのが第一歩です。白書はあわせて、自己効力感やレジリエンス、希望といった「個人の資源(心理的資本)」もエンゲージメントの重要な予測因子だとし、仕事の資源と個人の資源が相互に強化し合うとしています(出典:同前 第3章)。つまり、見立てるべきは本人の心構えだけでなく、職場の側が用意できている資源(成長機会・支援・裁量・フィードバック)の不足なのです。点が低い=本人のやる気の問題、と決めつけないための土台がここにあります。実際、白書の計量分析でも、「仕事を通じて、成長できていると感じる」「仕事遂行に当たっての人間関係が良好」「勤め先企業でのキャリア展望が明確になっている」「職場にロールモデルとなる先輩職員がいる」といった項目とエンゲージメント・スコアの間に統計的有意な正の相関が確認されています(出典:同前 第3章)。弱い項目を特定することは、効きそうな打ち手の方向を絞ることにつながるわけです。

なお、サーベイのスコアの目安や、何点なら高い・低いといった基準は、使っているサーベイや会社によって変わります。本講座では特定のスコアを「危険水準」と断定はしません。あくまで「自部署の中で相対的に低い項目はどこか」を見てください。

点の低い項目に、観察できる兆候を重ねる

項目が特定できたら、そこに日常で観察できる兆候を重ねます。サーベイは1年に1回程度の写真にすぎません。その間の動きは、現場の観察でしか埋められない。発言の回数が減った、自分から提案しなくなった、受け身になった、欠勤や遅刻が増えた——こうした行動の変化を、低い項目の隣に並べていきます。これらは「これが出たら必ず離職」という確定サインではなく、見立てのための手がかりです。

共通例で考えます。2年目候補のサーベイ(例)で「仕事の意味づけ」と「上司との関係」が低かった。そこに、最近の1on1で発言が減った、以前は出していた改善提案をしなくなった、という観察を重ねます。すると、点の低さと現場の変化が一本の線でつながり始めます。

「点が低い=原因」ではなく、“なぜ低いか”の仮説に言い換える

ここで大切なのは、点の低さをそのまま結論にしないことです。「意味づけの点が低い」は事実ですが、原因ではありません。「役割の意味が本人に見えていないのではないか」「上司に相談できる関係になっていないのではないか」——こう、“なぜ低いか”の仮説に言い換えて初めて、打ち手を選べる状態になります。共通例なら、「役割の意味が見えず、上司に相談できていない」という背景仮説が置けます。

このとき、事実(サーベイの値・観察した行動)と、解釈(背景仮説)を分けて書いてください。混ぜると、「みんな疲れているだけ」といった大雑把な決めつけや、逆にサーベイの数値を断定的な結論として扱う誤りに陥ります。事実は事実として、仮説は仮説として、別の欄に書く。これだけで見立ての精度が上がります。メンバーの「やる気そのもの」が落ちている兆候の捉え方を深めたい場合は、モチベーション管理入門が参考になります。

この章の確認(演習)

手元のサーベイ結果(無ければ共通例の結果)から、相対的に低い項目を2つ選んでください。それぞれについて、最近観察できた行動の変化(兆候)を1つと、“なぜ低いのか”の背景仮説を1つ、書き出します。書くときは、事実(サーベイ値・観察)と解釈(仮説)の欄を必ず分けてください。

打ち手を選んで優先順位をつける——どこから手をつけるか

この章のゴール

見立てに基づき、定着を高める打ち手を「どこから・なぜ」の優先順位で選べる。

弱いドライバーごとに、打ち手の“種類”が変わる

見立てができたら、打ち手を選びます。ここで知っておきたいのは、白書がエンゲージメント向上の要因として挙げる項目は非常に多く、そのいずれもがスコアと正の相関を示している、という事実です。雇用管理の側では「能力・成果等に見合った昇進や賃金アップ」「労働時間の短縮や働き方の柔軟化」「職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化」「仕事と育児との両立支援」などが、人材育成の側では「キャリアコンサルティング等による将来展望の明確化」「指導役や教育係の配置(メンター制度等)」などが、それぞれエンゲージメント・スコアと統計的有意な正の相関を持つと報告されています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」第3章)。

要因が多いということは、裏を返せば「どの弱い項目を補うか」で打ち手の種類が変わるということです。意味づけが弱いなら役割と期待の再確認、関係が弱いなら対話の場づくり、安心が弱いなら発言しやすい土台づくり、承認が弱いならフィードバックの量と質。弱点に応じて、手の打ちどころが違います。

全部を同時にやらず、影響度×着手しやすさで1つに絞る

ここで一番のつまずきが、「正しい打ち手」をたくさん見つけて、全部を一度に盛り込もうとすることです。白書のリストはどれも有効ですが、現場の管理職が同時に全部を動かすことはできません。だから絞ります。基準は2つ。1つは影響度——その弱点が、いま見ている人の離職検討にどれだけ直結しているか。もう1つは着手しやすさ——自分(管理職)が今すぐ動かせるか、それとも人事・経営の判断が要るか、です。

この線引きには根拠があります。白書が挙げる要因のうち、「賃金アップ」「労働時間の短縮」「両立支援制度」「人事評価制度の公正性」などは、管理職単独では動かしにくい経営・人事マターです。一方で、目標の意義づけ、上司からのフィードバック、キャリア展望についての話し合い、ロールモデルの提示などは、現場の管理職が自分の裁量で着手しやすい。さらに白書は、「働きがい」を向上させる前提として、まず「働きやすさ」を高めて「望まない離職や過度な疲労・ストレスの蓄積につながる要因を解消」することが重要だとも述べています(出典:同前 第3章)。過重や疲労を放置したまま、やりがい施策だけを盛っても効きにくい、ということです。影響が大きく、自分が今すぐ着手でき、前提(過重の解消)を欠いていない——そこから1つを選びます。

なぜそれを最初にするかを、一文で言える状態にする

共通例で選んでみます。2年目候補の弱点は「仕事の意味づけ」と「上司との関係」でした。このうち「仕事の意味づけ」を最優先に選ぶ理由(例)は、本人の離職検討の直接の引き金に近く、しかも上司である自分が今すぐ着手できるからです。打ち手は「役割と期待を1on1で言語化し直す」に決める。ここまでが本講座の仕事です。

注意したいのは、選んだ打ち手の“やり方の中身”には本講座は踏み込まない、ということです。役割の意味づけややる気の引き出し方そのものはモチベーション管理入門、安心して話せる土台づくりは心理的安全性入門、その対話を1on1でどう進めるかは1on1ミーティング入門、チームの目標共有や役割分担の設計はチームビルディング入門が正本です。本講座は「どの弱点に・なぜ手をつけるか」を一文で言える状態まで持っていきます。「いま一番効いて、自分がすぐ動かせるのはこれだから、最初にやる」——こう言えれば、選べたことになります。

この章の確認(演習)

第2章で立てた背景仮説のうち1つを選んでください。その弱点に対する打ち手の“種類”を1つ決め(例:役割と期待の再確認/対話の場づくり/フィードバックの強化)、「なぜ最初にこれを選ぶのか」を、影響度と着手しやすさの2点に触れながら一文で書いてください。

打ち手を回し続ける——単発で終わらせず定着につなげる

この章のゴール

打ち手を担当・期限つきのアクションに落とし、見直す仕組みを作れる。

エンゲージメントは、一度の施策では動かない

打ち手を1つ選んでも、研修や面談を1回やって終わりにすると、翌年もスコアは動きません。エンゲージメントは持続的な状態だからこそ、関わりも続ける必要があります。白書の分析は、ここに具体的なヒントをくれます。たとえば成長実感については、「業務上の目標管理に当たっては、達成にある程度の努力を要する難易度で設定されていることが肝要」であり、その内容を「労使でよく話し合っていくことが重要」だとされています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」第3章)。フィードバックについても、「日常業務に対する上司からのフィードバックが実施され、その頻度が相対的に高いことが肝要」で、手法としては「行動した内容の重要性や意義について説明しながら、行動した直後に誉めることが肝要」だと示されています(出典:同前 第3章)。いずれも、一度やれば終わりではなく、頻度と継続が効くという話です。

「打ち手→小さく実行→反応を観察→次の一手」で回す

そこで、選んだ打ち手を回せる形に落とします。様式はシンプルに「何を・誰が・いつまでに・どうなれば成功か」の4点です。共通例なら、こう書けます(例)。何を=役割と期待を1on1で言語化し直す。誰が=自分(直属の上司)。いつまでに=今月の1on1で。成功の目安=本人が、次の四半期にやりたい役割を自分の言葉で言える。4点まで具体化すると、打ち手は「やる気のある宣言」から「実行できるアクション」に変わります。

そして小さく実行し、次の1on1や次のサーベイで、兆候の変化を観察します。発言が戻ってきたか、提案が出るようになったか。観察できる行動で変化を確かめ、続ける・変える・やめるを判断する。このループを回し続けることが、単発施策との違いです。キャリア展望についても白書は、管理職と話し合う頻度が高いほどキャリア展望が明確になり、「労使間の意思疎通の機会を高めることによって、職場の雰囲気が明るくなり、コミュニケーションが活発化することで、従業員の離職率が低下する可能性が期待される」としています(出典:同前 第3章)。続けて話すこと自体に意味がある、というわけです。話す中身も、いま担当している業務の意義だけでなく、これから必要になるスキルや、本人が担当を希望している業務まで広げると効果が高い、と白書は指摘しています(出典:同前 第3章)。さらに、出産・子育てや、昇進、定年が見据えられる時期といったライフステージの節目では、意思疎通の重要性が一段と高まる可能性があるともされています。打ち手を回すサイクルの中に、こうした節目の対話を意識して組み込んでおくと、変化を捉えやすくなります。継続的な対話の仕組み化そのものは1on1ミーティング入門に詳しく譲ります。

「やったか」ではなく、本人の所感の変化で判断する

最後に、回すときの落とし穴を1つ。打ち手を「やったかどうか」で評価しないことです。白書は、ロールモデルについて、いると感じている労働者は27.9%なのに、若手のロールモデルがいると認識している企業は48.6%だった、という労使の認識ギャップを示しています(出典:厚生労働省「令和元年版 労働経済の分析」第3章)。管理側が「ちゃんと環境は整えた」と思っていても、本人はそう感じていないことがある、ということです。だから判断は、施策を実施した数ではなく、本人の所感や行動がどう変わったかで行う。成果を待ちきれずに短期で打ち切ったり、記録せずに翌年へ学びを残さなかったりすると、せっかくのループが途切れます。観察し、記録し、次の一手につなぐ。これが定着につながる回し方です。

この章の確認(演習)

第3章で決めた打ち手を、「何を・誰が・いつまでに・成功の目安」の4点でアクション表(例の様式)に落としてください。成功の目安は、本人の観察できる行動や言動(例:次の四半期にやりたい役割を自分の言葉で言える)で書きます。そのうえで、いつの1on1やサーベイで変化を確認するかを、1つ決めてください。

まとめ

エンゲージメントは、満足度ともやる気とも違う、定着に直結する「前向きに関わり続けたい度合い」です。厚生労働省の白書も、エンゲージメントの高さと定着率・離職率の改善が同じ方向に動く(正の相関がうかがえる)ことを示しています。だからこそ、サーベイの総合点を眺めるのではなく、弱い項目を見立て、影響が大きく今すぐ着手できる打ち手を1つ選び、担当・期限つきで回し続ける——これが管理職の運用です。覚えて帰る型は「測る(弱い項目を特定)→ 見立てる(兆候と仮説)→ 1つ選ぶ(影響度×着手しやすさ)→ 回す(担当・期限つきで継続)」。点を眺めるのではなく、弱い1点から動かしてください。

明日の一歩として、手元のサーベイ結果(または日常の兆候)から弱い項目を1つ特定し、「何を・誰が・いつまでに・成功の目安」のアクションを1つ書いて、次の1on1に持ち込んでみてください。それが、定着を動かす最初の一歩です。選んだ打ち手の中身を深めたくなったら、やる気の引き出し方はモチベーション管理入門、対話の進め方は1on1ミーティング入門へ進むのがおすすめです。

本講座の特典として、弱い項目→背景仮説→打ち手→「何を・誰が・いつまでに・成功の目安」を1枚でつなぐ「エンゲージメント見立て&アクション設計シート」をご用意しています。シートの入手案内と、定着や組織づくりの実務に役立つ情報のお届けは、メルマガ登録からどうぞ。

よくある質問

エンゲージメントと従業員満足度は何が違うのですか

満足度は待遇や環境に「不満がない」状態、エンゲージメントは仕事に「前向きに関わりたい」度合いです。不満がなくても関与が薄れて辞める人がいるため、別物として見立てます。

エンゲージメントを上げれば離職は必ず減りますか

白書は両者に正の相関があるとしつつ、逆方向の因果にも留意が必要としています。必ず何割減るとは言えませんが、定着と同じ方向に動きやすいため見る価値があります。

サーベイは総合点と項目別のどちらを見るべきですか

項目別です。総合点では打ち手が決まりません。仕事の意味づけ・成長・関係・承認など、どの項目が相対的に弱いかを特定してから、観察した兆候を重ねます。

打ち手は何から手をつければよいですか

影響が大きく、自分が今すぐ着手できる1つに絞ります。賃金や制度は経営・人事マターなので、現場で動かせる目標の意義づけや対話から始めるのが現実的です。

施策が単発で終わってしまいます

「何を・誰が・いつまでに・成功の目安」の4点で書き、次の1on1やサーベイで本人の行動の変化を観察してください。やった数でなく所感の変化で続ける・変えるを判断します。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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