AI資料作成入門 | マナビズ

AI資料作成入門

AI資料作成入門

「来週の会議で使う提案資料、作っといて」——上司にそう頼まれたあなたは、さっそくAIに「新しいツール導入の提案資料を作って」と一言だけ打ち込みました。数秒で、それらしいスライドの文章が返ってきます。でも、よく読むと、どこかの会社の話のような一般論ばかり。自分のチームの実態も、「結局、部長に何を承認してほしいのか」という肝心の主張も、どこにも入っていません。結局そのまま使えず、最初から自分で作り直して、気づけば深夜——小さなチームを任され始めたあなたに、こんな経験はありませんか。「AIって、資料作成には使えないんだな」と思いかけているかもしれません。

でも、安心してください。「資料、もう出来たの?早いね」と言われる先輩の資料がAIで速いのは、AIに“全部やらせている”からでも、センスがあるからでもありません。違いはたった1つ。「目的と主張(何を伝えたいか)」を自分で決めてから、「形にする(構成・文章化・スライド化)」をAIに任せ、最後に「事実と主張」を自分で確かめる——この役割分担と、目的・主張→構成案→本文・スライド骨子→確認という4つのステップを持っているかどうか、それだけです。

この講座を読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. AI資料作成を「目的・主張を決める→構成案→本文・スライドの骨子→事実と主張を確かめる」の4ステップとして、どこをAIに任せ・どこを自分が担うか(形にするはAI/決めて確かめるは人)まで含めて、自分の言葉で説明できる
  2. 提案資料について、「誰に・何を・どうしてほしいか」を1行の主張に固め、AIに資料の型で構成案(骨子)を作らせ、各パートを「結論+根拠」「1スライド1メッセージ」の本文・スライドの骨子に落とせる
  3. AIが作ったたたき台の事実の誤り(数字・固有名詞・事例)を一次情報に照合して直し、「自分のチームの実態と主張になっているか」を確かめ、機密情報を入れない前提で、テンプレートに整えて完成できる

この講座は最後まで、「営業部の若手リーダーのあなたが、来週の部内定例会で、部長に『チームの問い合わせ対応を効率化する新しいツールを導入したい。まず1か月、無料トライアルで試させてほしい』と提案するスライド資料(10枚程度)を、AIで作る」という、たった1つの資料だけで説明します。この同じ資料を、AI資料作成とは何か→目的と主張を決めて構成案→本文・スライドの骨子→確認して完成、と1ステップずつ仕上げていきます。各章末には手を動かす演習も置いているので、次の資料を1本AIで通せるように、手元でなぞりながら読み進めてください。なお、今日の4ステップをそのまま使える提案資料の構成テンプレート+AIに渡す型プロンプト集+確かめる4点チェックリストは、最後に一式ダウンロードできます。

この講座のポイント

  • AI資料作成を「目的・主張を決める→構成案→本文・スライドの骨子→事実と主張を確かめる」の4ステップとして、どこをAIに任せ・どこを自分が担うか(形にするはAI/決めて確かめるは人)まで含めて、自分の言葉で説明できる
  • 提案資料について「誰に・何を・どうしてほしいか」を1行の主張に固め、AIに資料の型で構成案(骨子)を作らせられる
  • 構成案の各パートを、AIで「結論+根拠」「1スライド1メッセージ」の本文・スライドの骨子に落とせる
  • AIのたたき台の事実の誤り(数字・固有名詞・事例)を一次情報に照合して直し、「自分のチームの実態と主張になっているか」を確かめ、機密情報を入れない前提で、テンプレートに整えて完成できる

AI資料作成とは何か(目的・主張→構成案→本文・スライド骨子→確認の4ステップ)

まずは、「AIに資料を頼んでも薄いものしか出てこない」というモヤモヤの正体を、はっきりさせましょう。AI資料作成という言葉を、ふわっとした“AIにお任せ”のイメージから、自分で使える4ステップの地図に変える土台の章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、AI資料作成を「目的・主張を決める→構成案→本文・スライドの骨子→事実と主張を確かめる」の4ステップとして、どこをAIに任せ・どこを自分が担うか(形にするはAI/決めて確かめるは人)まで含めて、自分の言葉で説明できるようになります。

「資料作って」と丸投げして“薄い一般論”が出る正体

あなたのAIの使い方が下手なわけでも、頼んだAIの性能が低いわけでもありません。AIに「資料作って」と頼んで、どの会社にも当てはまる薄い資料しか出てこない正体は、たいてい1つ。資料でいちばん大事な「目的と主張(誰に・何を・どうしてほしいか)」を、自分で決めずに、AIに預けてしまっていることです。

あなたは「新しいツール導入の提案資料を作って」とだけ伝えました。でもAIは、あなたのチームが今どんな問い合わせ対応に困っているのか、部長に何を承認してほしいのかを知りません。だからAIは、世の中にある「ツール導入の提案資料」の平均的な形をなぞるしかなく、結果として“どこかで見た一般論”が出てくるのです。これは、AIの限界ではなく、伝えるべき中身(主張)を渡していないことが原因です。

ここで覚えてほしい背骨は、ひとつです。資料の主役は“あなたの主張”。AIは形にする係で、決めて・確かめるのはあなた。この順番さえ持てば、AIは「使えない道具」から「速い相棒」に変わります。

AIが得意なこと・苦手なこと(形にするはAI/決めて確かめるは人)

では、AIに何を任せ、何を自分でやればいいのか。AIの「得意・苦手」を知ると、すっきり整理できます。

AIが得意なことAIが苦手なこと
中身型に沿った構成・文章化・スライド化(=形にする)あなたのチームが何を伝えたいか(主張)
スピード速い(数十秒でたたき台)その数字・固有名詞は本当か(事実の保証)
守備範囲一般的な型・言い回しチームの実態・最終的な責任

AIは、型に沿って文章にしたり、スライドの形に整えたりするのは、とても速くて得意です。一方で、「あなたのチームが、部長に何を承認してほしいのか(主張)」は、あなたにしか決められず、AIが書いてくる数字や固有名詞が正しいかも、AI自身は保証してくれません(この理由は第4章で見ます)。

だから、役割分担はこうなります。AIは「形にする」を肩代わりし、人は「決める(主張)」と「確かめる(事実)」を担う。「AIに丸投げ」して薄い資料が出てくるのでも、「全部自前」で深夜まで残業するのでもない、第3の道がここにあります。

全体像は4ステップ:目的・主張→構成案→本文・スライド骨子→確認

この役割分担を、実際の手順に落とすと、次の4ステップになります。これが、この講座で渡す1枚の地図です。

ステップやること担当
① 目的・主張誰に・何を・どうしてほしいかを1行で決めるあなた(決める)
② 構成案資料の型に沿って、章立て(骨子)を作るAI(形にする)
③ 本文・スライド骨子各スライドを、結論+根拠の骨子に落とすAI(形にする)
④ 確認・整える事実を確かめ、自分のチームの主張に整えるあなた(確かめる)

ポイントは、前と後ろ(①と④)が人、まんなか(②と③)がAIだということです。最初に主張を決めるのも、最後に事実を確かめるのも、あなたの仕事。その間の「形にする」作業を、AIが一気に肩代わりしてくれる。だから速いのに、ちゃんと“自分のチームの資料”になるのです。なお、どのAIツール(ChatGPT・Claude・Gemini など)を使っても、この4ステップの考え方は同じです。大事なのはツール選びではなく、順番。いきなり「どのツールがいいか」から入らないのが、つまずかないコツです。

ここで、この講座を通して使う共通例に登場してもらいましょう。営業部の若手リーダーであるあなたが、来週の部内定例会で、部長に「問い合わせ対応を効率化する新しいツールを導入したい。まず1か月、無料トライアルで試させてほしい」と提案するスライド資料(10枚程度)です。これをAIで作っていきます。地図を持たないと、つい「ツール導入の提案資料、作って」と丸投げしてしまう。そうではなく、①誰に・何を・どうしてほしいか→②構成案→③スライドの骨子→④確認、の4ステップで進めます。この章では、まだ中身は埋めません。4ステップの“枠”だけを立てておきます。

この章の確認(演習)

あなたが直近で作る予定の(または想像の)資料を1つ選んで、いきなりAIに丸投げするのをやめて、次の4ステップの枠を、中身は空欄のまま書き出してみてください。

  • ① 目的・主張(誰に・何を・どうしてほしいか):_____
  • ② 構成案(どんな章立てにするか):_____
  • ③ 本文・スライド骨子(各スライドの中身):_____
  • ④ 確認・整える(事実と主張のチェック):_____

そのうえで、「このうち、どこをAIに任せ(形にする)、どこを自分が決め・確かめるか(主張・事実)」を、1〜2行で書いてみましょう。丸投げではなく“役割分担”から入る感覚を、自分の手で言葉にできたら、この章はゴールです。空欄は、これから第2章・第3章・第4章で1つずつ埋めていきます。

目的と主張を決めて、AIで構成案(骨子)を作る

地図の1ステップ目と2ステップ目、目的・主張構成案を埋めていきます。「あなたが決める」ことと「AIに任せる」ことが、はっきり分かれる章です。

この章のゴール

この章を読み終えると、提案資料について「誰に・何を・どうしてほしいか」を1行の主張に固め、AIに資料の型で構成案(骨子)を作らせられるようになります。

まず人の仕事:目的と主張を1行で決める

最初の仕事は、AIではなく、あなたの仕事です。資料の目的と主張を、1行で決めます

資料の目的とは、「読み手(誰に)に・何を伝えて・どう動いてほしいか」のことです。ここを言葉にしないまま作り始めると資料は必ずぼやけ、逆に1行で決まっていれば、資料全体の背骨ができます。共通例なら、こう書けます。「部長に・問い合わせ対応ツールの導入を・1か月の無料トライアルで承認してほしい」

この1行には「誰に(部長)」「何を(ツール導入)」「どうしてほしいか(1か月トライアルの承認)」の3つが入っています。これが決まると、資料のゴールが「ツールの便利さを語る」ことではなく「部長にトライアルを承認してもらう」ことだ、とはっきりします。この主張こそ、AIには決められない、あなたの仕事。ここを10分かけてでも自分で固めるのが、AI資料作成のいちばんの近道です。

次にAIの仕事:構成案(骨子)を型で作らせる

主張が決まったら、いよいよAIの出番です。ここでのコツは、いきなり中身(本文)を書かせないこと。まず、章立て(骨子)だけを作らせます。中身まで一気に書かせると、後で「やっぱり構成が違った」となったとき、書いた文章ごと作り直しになるからです。先に骨子だけ作って方向を直しておけば、手戻りが小さくて済みます。

そして、構成案には“型”があります。提案資料の定番は、課題→原因→解決策→効果→費用・リスク→次の一歩という、相手が「なるほど、それなら承認しよう」と納得する順番です。この型のベースにあるのが、プレゼンでよく知られるPREP(プレップ)——Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(結論)という「結論を先に、理由と具体例で支える」考え方。さらにさかのぼると、マッキンゼー出身のバーバラ・ミントが著書『考える技術・書く技術』で体系化したピラミッド原則(言いたいこと=結論を上に置き、その下に根拠を並べて支える)につながります。名前は覚えなくて大丈夫。「言いたいことを先に、根拠で支える」とだけ掴んでおけば十分です。

AIに構成案を頼むときは、次の5つを指定します。「いい感じに作って」だと、また薄い一般論に戻ってしまうからです。

指定するもの例(共通例の場合)
役割あなたは提案資料の構成を作る人です
読み手部長(最終的に承認する立場)
主張(1行)問い合わせ対応ツールを1か月トライアルで承認してほしい
資料の型課題→原因→解決策→効果→費用・リスク→次の一歩
出力まず章立て(スライドのタイトル一覧)だけ。本文はまだ書かない

なお、ここで出てくる「プロンプト」とは、AIへの指示文のこと。「構成案(骨子)」とは、中身を書く前の“章立て・見出しの一覧”のことです。

主張がブレなければ構成案は背骨に沿う:骨子を自分で直す

この型プロンプトをAIに渡すと、共通例ならこんな構成案(10枚程度のスライドタイトル)が返ってきます。

スライドのタイトル(章立て)
1表紙:問い合わせ対応の効率化を、1か月トライアルで試したい
2現状の課題:問い合わせ対応に時間がかかっている
3課題の原因:対応がメンバー個人に属人化している
4解決策:問い合わせ対応ツールで定型対応を自動化する
5期待できる効果:残業時間を減らせる
6費用とリスク:月額費用とトライアルでの検証
7導入ステップ:まず1か月の無料トライアル
8まとめ・お願い:トライアルの承認をお願いしたい

出てきた骨子は、そのまま使うのではなく、主張に沿っているか・抜けがないかを、あなたが見て直します。たとえば「費用だけでなくリスクも一言入れたい」「効果のスライドは数字を入れたい」といった調整を、この骨子の段階でやっておく。中身を書く前なので、直すのは一瞬です。ここまでをまとめると、①主張は自分が決め、②AIに型を指定して構成案を作らせ、③出てきた骨子を自分で直す——「主張は自分、骨子はAI、直しは自分」。これが2ステップ目までの役割分担です。

この章の確認(演習)

あなたが次に作る資料の主張を、1行で書いてみてください。「誰に・何を・どうしてほしいか」の3つを必ず入れます。たとえば「課長に・新しい勤怠管理の手順を・来月から導入することを承認してほしい」のように。

そのうえで、本章の型プロンプト(役割・読み手・主張・資料の型・出力は章立てだけ)をAIに当てて、構成案(骨子)のたたき台を出してみましょう。出てきた章立てを見て、「主張に沿っているか」「抜けている論点はないか」を自分でチェックし、気になるところを直します。主張は自分で決め、骨子はAIに作らせ、直しは自分でやる——この感覚を、自分の手で確かめられたら、ゴールです。

本文・スライドの骨子に落とす(1スライド1メッセージ)

地図の3ステップ目、本文・スライドの骨子を埋めます。構成案という“目次”ができたので、いよいよ各スライドの中身を、AIで形にしていきます。

この章のゴール

この章を読み終えると、構成案の各パートを、AIで「結論+根拠」「1スライド1メッセージ」の本文・スライドの骨子に落とせるようになります。

骨子の各パートを、AIで中身に展開する

構成案(章立て)が決まったら、各スライドの中身をAIに展開させます。ただし、ここでも「いい感じに肉付けして」と頼むと、また情報を盛り込みすぎた、ぼやけたスライドに戻ってしまいます。展開するときは、AIに2つの“型”を指定します。1つ目が「1スライド1メッセージ」、2つ目が「結論を上に、根拠は下に」。この2つを守るだけで、スライドは見違えて伝わりやすくなります。

型(a) 1スライド1メッセージ:1枚に言いたいことは1つ

1つ目の型は、1スライド1メッセージ。1枚のスライドに載せる「言いたいこと(メッセージ)」を、1つだけにする、という考え方です。

なぜか。人が一度に受け取れる情報の量には限りがあり、1枚に2つも3つも主張を詰め込むと、読み手の注意が分散して、結局どれも印象に残らないからです。だから、欲ばらずに「このスライドで言いたいことは、これ1つ」と決める。もし1枚に2つメッセージが入っていたら、迷わずスライドを2枚に分けます。

ひとつ補足を。「1スライド1メッセージ」は、すべての資料で絶対に守るべき唯一の正解、というわけではありません(「メッセージの定義が人によって曖昧になりがち」という指摘もあります)。あくまで「盛り込みすぎを防ぐ、とても有効なコツ」。ガチガチのルールではなく、「1枚に欲ばって詰め込んでいないか」を見直す物差しとして使ってください。

型(b) 結論を上に・根拠は下に(ピラミッド/PREP)と、AIへの指示

2つ目の型は、結論を上に、根拠は下に。各スライドは、「言いたいこと(結論)」を見出しに置き、その下に、それを支える根拠(理由・データ・具体例)を3つ程度で並べます。これが、第2章でも触れたピラミッド原則(言いたいことを頂点に、根拠で支える)の、スライド1枚版です。

見出しが「結論」になっているか、が分かれ目です。見出しが「問い合わせ対応について」だと、それは“テーマ”であって、まだ何も言っていません。「問い合わせ対応ツールで、定型対応を自動化する」のように、見出しを読んだだけで言いたいことが分かる形にします。

この2つの型を、AIへの指示に込めます。各スライドについて、こう頼みます。「各スライドを、見出し(言いたいこと1つ)+根拠の箇条書き3点、という骨子で出してください。1スライド1メッセージで。本文(読み上げ原稿)はまだ書かなくていいです」。

ここでも、いきなり本文(ナレーション)まで書かせないのがコツです。まず骨子(見出し+箇条書き)で全体を通して見ると、流れのおかしいところや、根拠の薄いところがすぐ分かります。本文を書くのは、骨子が固まってから。共通例の「解決策」のスライドなら、AIはこんな骨子を返してきます。

要素中身
見出し(言いたいこと1つ)問い合わせ対応ツールで、定型対応を自動化する
根拠①よくある質問は、ツールが自動で回答する
根拠②対応履歴をチーム全員で共有できる
根拠③検索で、過去の対応例がすぐ出てくる

きれいに「1枚=1メッセージ」「見出し=結論」になっていますね。もしAIが、ここに「費用は月額◯円です」まで詰め込んできたら、別のメッセージなので「費用・リスク」のスライドに分けます。なお、次の「効果」のスライドには削減できる残業時間などの数字が入ってきますが、その数字が正しいかは次の章で必ず確かめます。今は「ここに数字が入る」と印を付けておくだけにしましょう。

この章の確認(演習)

第2章で作った構成案の中から、1〜2枚のスライドを選んでください。そのスライドについて、AIに「見出し(言いたいこと1つ)+根拠の箇条書き3点で。1スライド1メッセージで」と頼んで、骨子を出させてみます。

出てきた骨子を、自分でチェックします。チェックポイントは2つ。見出しが「テーマ」ではなく「言いたいこと=結論」になっているか。そして、1枚に1メッセージだけになっているか(2つ入っていたら分割)。形にするのはAI、型を指定して直すのはあなた——この感覚を、自分の手で確かめられたら、ゴールです。

事実と主張を確かめて整える(ハルシネーション対策・自分の主張に)

地図の最後、4ステップ目、確認・整えるを埋めます。ここが、AI資料作成でいちばん大事な、人の仕事の本丸。ここを飛ばすと、せっかくの資料が一気に信用を失います。

この章のゴール

この章を読み終えると、AIのたたき台の事実の誤り(数字・固有名詞・事例)を一次情報に照合して直し、「自分のチームの実態と主張になっているか」を確かめ、機密情報を入れない前提で、テンプレートに整えて完成できるようになります。

AIのたたき台は、そのまま出さない:ハルシネーションを知る

第3章までで、スライドの骨子はそろいました。でも、それをそのまま会議に出してはいけません。理由は、生成AIには、知っておくべきクセがあるからです。

それがハルシネーションです。ハルシネーションとは、英語で「幻覚」を意味する言葉で、ひとことで言えば、生成AIが、事実と違うことを、いかにも本当らしく書いてしまう現象のことです。

なぜ起きるのか。生成AIは、文章を作るとき「次に来る確率が高い言葉」をつないでいく仕組みなので、事実の正確さよりも、文章としての自然さ(流暢さ)が優先されてしまうことがあるからです。特に危ないのは、数字・固有名詞(社名・製品名・人名)・日付・事例・出典。AIは、それらしい数字や実在しそうな製品名を平気で作り出すことがあり、しかも文章が流暢なので、ぱっと見では気づきにくい。だからこそ、人が確かめる必要があるのです。

確かめる4点を当てて、一次情報に照合する

では、どうやって確かめるか。やみくもに全部を見直すと時間がかかるので、あやしい箇所を狙い撃ちする「確かめる4点」を使います。

確かめる4点見るところ
① 数字料金・削減できる時間・割合などの数値
② 固有名詞社名・製品名・データの出所
③ 事例・引用「他社の事例」などが実在するか
④ 日付いつの情報か・期限は正しいか

この4点に当てはまる箇所を見つけたら、一次情報に戻って突き合わせます。一次情報とは、公式サイトや社内の実際の数字など、おおもとの情報源のこと。そして大事なルールが1つ。確認できないものは、載せない。出所がはっきりしない数字や事例は、たとえAIがもっともらしく書いていても、思いきって消します。

共通例で見てみましょう。AIが作った「効果」のスライドに、「同様の事例で、残業が月30%削減されました」と書いてあったとします。一見、説得力がありそうです。でも、この「30%」はどこから来た数字でしょうか。AIに聞いても、はっきりした出所は出てきません。典型的なハルシネーションの疑いです。だから、この数字はそのまま載せません。代わりに、自分のチームで実際に計っている数字、たとえば「問い合わせ対応に、メンバー1人あたり月20時間かかっている」という社内の実数に置き換えます。同じように、AIが書いた製品名や料金が古かったり実在しなかったりすることもあるので、公式サイトで確認して直します。

一般論を“自分のチームの主張”に書き換え、機密性を確認して整える

事実を確かめたら、もう1つ、人にしかできない仕事があります。それは、AIが書いた“一般論”を、“自分のチームの主張”に書き換えることです。

AIの出力は、どうしても一般論になりがちです。たとえば「業務効率化が期待できます」。間違ってはいませんが、これでは、どの会社の資料か分かりません。これを、自分のチームの実態と主張に書き換えます。「問い合わせの定型対応を自動化して、チームの月20時間の残業を減らしたい」。こう書けば、部長には「これは、うちのチームの、具体的な提案だ」と伝わります。第1章で見た「丸投げの一般論」と「自分のチームの提案」の差は、ここで生まれます。

そして、ここで安全の土台を1つ。AIに情報を入れる前に、「機密性」を確認してください。生成AIは、入力した内容を学習に使う場合があり、入れた情報が外に漏れるリスクがあります。だから、顧客名・個人情報・社外秘を、無料のパブリックな(誰でも使える)生成AIに入れない。「社内で許可されたツールか」「学習させない設定か」「そもそもこの情報を入れていいか」を、社内のルールで確認します。ツールや設定によっては学習に使われない場合もありますが、「使われるかもしれない」前提で慎重に確認するのが安全です。共通例でも、提案資料の素材に実在の顧客名や個人情報が混じっていないかを確かめてから、AIに渡します。

最後に、確認の済んだ内容を、毎回同じ社内テンプレート(表紙=主張1行/課題/解決策/効果/費用・リスク/次の一歩)に整えて、完成です。共通例なら、以前は丸2日かかっていた提案資料が、半日で出せて、部長から「論点が整理されていて、何を承認すればいいか分かりやすいね」と言われる——これが、4ステップを回した先にある姿です。

この章の確認(演習)

第3章で作った骨子に、「確かめる4点(数字・固有名詞・事例・日付)」を当ててみてください。そのうち、数字か固有名詞を最低1つ選んで、一次情報(公式サイトや社内の実数)に照合して、直してみます。出所が確認できないものは、思いきって消します。

そのうえで、AIが書いた一般論を1つ選び、自分のチームの実態と主張に、1文書き換えてみましょう。「業務効率化が期待できます」を「◯◯を自動化して、月◯時間の残業を減らしたい」のように。最後に、配布の提案資料テンプレート(このあとダウンロードできます)に整えます。事実と主張を確かめるのは、AIではなく自分——この感覚を、自分の手で確かめられたら、ゴールです。

まとめ:資料の主役は“あなたの主張”。AIは形にする係

おつかれさまでした。「新しいツール導入の提案資料」という、たった1つの資料を、AI資料作成とは何か→目的と主張を決めて構成案→本文・スライドの骨子→確認して完成、と1ステップずつ仕上げてきました。第1章で空欄だった4ステップを、ここで振り返ります。

  1. 目的・主張……まず、あなたが「誰に・何を・どうしてほしいか」を1行で決める。共通例なら「部長に・ツール導入を・1か月トライアルで承認してほしい」。ここはAIに丸投げできない、あなたの仕事(第1章・第2章)。
  2. 構成案……主張をAIに渡し、資料の型(課題→原因→解決策→効果→費用・リスク→次の一歩)で、章立て(骨子)だけを作らせる。中身はまだ書かせない(第2章)。
  3. 本文・スライド骨子……各スライドを、1スライド1メッセージで、「見出し=言いたいこと1つ+根拠の箇条書き3点」の骨子に落とす。結論を上に、根拠は下に(第3章)。
  4. 確認・整える……確かめる4点(数字・固有名詞・事例・日付)でハルシネーションを直し、出所のないものは載せない。一般論を自分のチームの主張に書き換え、機密情報を入れない前提で、テンプレートに整えて完成(第4章)。

この4つは、すべて1つの問いに戻ります。「丸投げの一般論ではなく、“自分のチームの主張”が、事実の裏付けつきで、伝わる形になっているか?」。この講座でいちばん覚えて帰ってほしいのは、このひと言です——資料の主役は“あなたの主張”。AIは形にする係で、決めて・確かめるのはあなた。これが身につくと、「資料作っといて」と頼まれたとき、AIを相棒にして、半日で“自分のチームの提案”を出せるようになります。

明日の最初の一歩:次に作る資料で、この4ステップを1回だけ通してみてください。①まず「誰に・何を・どうしてほしいか」を1行の主張に書く→②AIに資料の型で構成案を作らせ、1スライド1メッセージで本文・スライドの骨子に落とす→③確かめる4点で数字・固有名詞を直し、一般論を自分のチームの主張に書き換えて、テンプレートに整える。完璧でなくてかまいません。「形にするはAI、決めて確かめるは自分」を、まず1周できたら、それが第一歩です。

そして、今日の4ステップを、そのまま次の資料で使えるように、提案資料の構成テンプレート+AIに渡す型プロンプト集(構成案用・スライド骨子用)+確かめる4点チェックリストを、一式ダウンロードできます。次の「資料作っといて」が来る前に、手元にそろえておきましょう。なお、生成AI(ChatGPT・Claude・Gemini など)そのものの基本操作にまだ不安があれば、生成AIの入門講座へ。会議の録音から議事録をAIで作る手順を知りたいときは、AI議事録の講座へ。まずはこの4ステップを、自分の手で1周してみてください。それが、すべての土台になります。

よくある質問

AI資料作成とは何ですか?

AIを使って資料を作る際に「目的・主張を自分で決める→構成案と骨子をAIで形にする→事実と主張を自分で確かめる」という役割分担を持つ作り方のことです。全部AIに任せるのでも全部自分でやるのでもなく、決めて確かめるのが人、形にするのがAIという分担が核心です。

「AIに資料を頼むと薄い一般論しか出てこない」のはなぜですか?

資料でいちばん大事な「誰に・何を・どうしてほしいか(主張)」を自分で決めずにAIに渡してしまっているためです。AIはあなたのチームの実態や伝えたいことを知らないので、平均的な型をなぞった一般論を返します。主張を先に1行で自分が決めてからAIに渡すと、この問題は解消できます。

初心者でも4ステップを使えますか?

はい。この講座では「提案資料10枚を作る」という共通例を通じて、各ステップを1つずつ丁寧に解説しています。AIツール(ChatGPT・Claude・Geminiなど)のどれを使っても同じ順番で進められるため、ツール経験が浅い若手社員でも4ステップを1周できます。

ハルシネーションへの対策はどうすればよいですか?

AIのたたき台に含まれる数字・固有名詞・事例・日付の4点を狙い撃ちし、公式サイトや社内の実数など一次情報と突き合わせます。出所が確認できないものは載せないのが基本ルールです。

どのAIツールを使えばよいですか?

特定のツールを推奨するのではなく、この講座の4ステップはChatGPT・Claude・Geminiなどどのツールでも共通して使える考え方です。大事なのはツール選びより「主張→構成案→骨子→確認」という順番を守ることです。

監修
マナビズ編集部

マナビズ(Manabiz)編集部。AIを活用した原稿制作に加え、人間によるレビューで品質を担保しています。 編集ポリシー

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