仕事ができる人の時間管理術

仕事ができる人の時間管理術

「やることが多すぎて、いつも気づいたら一日が終わっている」。働き始めて数ヶ月、こんな手応えのなさを感じていませんか。

メールに返信し、頼まれた雑用を片づける。動き続けているのに、夕方になっても締切間近の仕事に手がついていない。でも、それはあなたの仕事が遅いからではありません。来た順・頼まれた順に手をつけているだけです。

時間管理のコツは、もっと速く動くことではありません。時間は誰でも1日24時間で、増やせないからです。だから一般に、「全部やる」のではなく、やることを重要度と緊急度で並べ替え、重要な仕事に先に時間を確保するのが基本とされています。それだけで、追われる感覚は減りやすくなります。

読み終えたあなたは、次の3つができるようになります。

  1. 「忙しい」と「成果が出る」は別だと説明できる(時間は有限という前提を持てる)
  2. やることを重要度×緊急度で並べ替えて優先順位をつけられる
  3. 1日の時間割を、重要な仕事を先に置いて設計できる

この講座は最後まで、「ある1日の自分のToDo(メール返信/提案資料づくり/先輩への確認/締切間近の見積もり提出 などが混在)」という、たった1つの場面だけで説明します。

第1章:なぜ時間が足りなくなるのか

「やることが多すぎて回らない」。動き続けているのに終わらない。それは、あなたが頑張っていないからではありません。来た順に手をつけて、重要な仕事を後回しにしているだけです。まずは、足りない原因から見ていきましょう。

この章のゴール

この章を読み終えると、「忙しい」と「成果が出る」は別だと説明できるようになります(時間は増やせない、という前提を持てます)。

1-1 「回らない」のは、仕事が遅いからではない

朝から動きっぱなしなのに、定時になっても終わらない。これは処理が遅いというより、手をつける順番のサインです。一般に、来た順・頼まれた順に動くと、目の前の頼まれごとから片づいていき、本当に重要な仕事が後ろに押し出されていくと言われます。だから、まずやるのは速く動くことではなく、今日やることの全体を見ることです。

共通の場面に入りましょう。あなたのある1日には、こんなToDoが混在しています。

  • メールに返信する
  • 提案資料を作る
  • 先輩に確認してもらう
  • 締切間近の見積もりを提出する

これを来た順にこなすと、どうなるか。メールに返信し、雑用を片づけているうちに午前が終わり、締切間近の見積もりは夕方まで手つかずのまま、という1日になりがちです。この混在したToDoが、以降の全章で立ち戻る原点になります。

1-2 時間は増やせない:だから重要なことを先にやる

ここがこの講座の背骨です。時間は、誰でも1日24時間で、増やせません。だから「全部やる」を目指すと、必ずあふれます。やるべきは、限られた時間を重要なことに先に使うことです。

そのための最初の一歩が、頭の中のやることを全部書き出して見える化することです。一般に、頭の中だけで処理しようとすると抜け漏れや焦りが起きやすく、まずメモに全部書き出すと、今日どれだけ抱えているかを客観的に見られると言われます。書き出して初めて、「どれが重要か」を考える土台ができます。

1-3 忙しく動く=仕事をした気になる

ここで、いちばんありがちな誤解を1つ。「忙しい=頑張っている=成果が出ている」という思い込みです。動いた量と、出た成果は、別ものです。

メール返信や雑用を次々こなすと、たしかに「働いた感覚」は得られます。でも、その間に重要な見積もりが進んでいなければ、成果には近づいていません。大事なのは、どれだけ動いたかではなく、重要なことに時間を使えているかです。

ここでつまずきやすい
忙しく動いていること自体を「頑張っている」と感じてしまう。これがいちばん多い落とし穴です。動いた量は、成果の証明にはなりません。まずは今日のToDoを全部書き出して、どこに時間を使えているかを目に見える形にする。力の入れどころは、そこからです。

この章の確認(演習)

お題:今日の自分のToDoを、すべて書き出してみてください。

混在したやることを、まずは順不同でかまわないので、全部リストにします。頭の中から紙やメモに出し切れたら、ゴール達成です。次の章で、これを並べ替えます。

第2章:優先順位のつけ方(重要度×緊急度)

ToDoを全部書き出したら、次は並べ替えです。「全部が急ぎに見える」状態から抜け出すために、2つの軸でやることを仕分けます。

この章のゴール

この章を読み終えると、やることを重要度×緊急度で並べ替えて優先順位をつけられるようになります。

2-1 「全部が急ぎに見える」のは、1つの軸で見ているから

書き出したToDoを眺めて、「どれも急ぎに見えて、選べない」と感じる。これは、緊急度という1つの軸だけで見ているからです。目につくのは、いつも「急いでいそうなもの」。でも、急いで見えるものが、必ずしも重要とはかぎりません。並べ替えるには、もう1つの軸=重要度を足す必要があります。

2-2 重要度×緊急度の4分割で並べ替える

やることを、重要度緊急度の2軸で見て、4つに分けます。これは、よくアイゼンハワー・マトリクスと呼ばれます。米大統領だったアイゼンハワーの考え方にちなんだ呼び名ですが、よく引かれる「緊急なものは重要でなく、重要なものは緊急でない」という言葉も、彼が演説である人物の言葉として紹介したもので、彼の発案というわけではありません。今日この4分割の図として広く知られるようになったのは、スティーブン・コヴィー『7つの習慣』が「時間管理のマトリックス」として紹介したことが大きいとされています。4つの枠は、こう整理されます。

  1. 緊急かつ重要(第1領域)……すぐやるべき重要な仕事
  2. 重要だが緊急でない(第2領域)……準備・計画・スキル学習など
  3. 緊急だが重要でない(第3領域)……急いで見える割り込み・雑用
  4. 緊急でも重要でもない(第4領域)……やらなくてよいこと

第1章で書き出したToDoを、実際に置いてみましょう。

  • 締切間近の見積もり提出=緊急かつ重要(第1領域)。まず手をつける。
  • 提案資料づくり=重要だが、締切に余裕があれば緊急でない(第2領域)。
  • 頼まれた雑用=急ぎに見えるが、重要度は高くない(第3領域)。
  • 重要度も緊急度も低い作業=第4領域。後回し、あるいはやらない。

手順はシンプルです。①各ToDoを「重要か」「緊急か」の2軸で4つの枠に置く、②緊急かつ重要(第1領域)から着手する。これだけで、「全部が急ぎ」だった山が、手をつける順番のついた列になります。

2-3 「重要だが急がない」を後回しにしない

4分割でいちばん大事なのが、第2領域(重要だが急がない)です。スキル学習、提案の準備、段取りの見直し——こうした仕事は、締切がないぶん「今日じゃなくていい」と後回しにされ続けます。

『7つの習慣』では、この第2領域こそ後で大きく効いてくる領域だと説かれています。緊急なものに追われていると、この枠が手つかずのまま、いつまでも目の前の火消しが続きます。だから、緊急に追われるのではなく、重要だが急がないことに先に時間を確保する。これが、この講座の背骨です。

ここでつまずきやすい
緊急なものばかりを追いかけて、重要だが急がないことを後回しにし続ける。すると、いつまでも第1領域(緊急かつ重要)の火消しが減りません。緊急=重要ではありません。第2領域に先に時間を取ることが、追われる毎日から抜け出す近道です。

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この4分割と、次の章で作る1日の時間割をそのまま書き込める時間管理テンプレを、無料会員登録でダウンロードできます。今日のToDoを、白紙ではなく型に沿って並べ替えられます。
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この章の確認(演習)

お題:第1章で書き出したToDoを、重要度×緊急度の4分割に置いてみてください。

各ToDoがどの枠に入るかを書き込みます。特に、「重要だが急がない(第2領域)」に入るものを見落としていないか確認してください。

第3章:1日を設計する

ToDoを4分割で並べ替えたら、次はそれを「1日のどこでやるか」に落とし込みます。並べ替えただけでは、まだ実際には進みません。

この章のゴール

この章を読み終えると、1日の時間割を、重要な仕事を先に置いて設計できるようになります。

3-1 空いた時間に重要な仕事を入れようとすると、入らない

「重要な仕事は、手が空いたらやろう」。そう思っていると、空き時間はいつまでも来ません。割り込みや雑用で時間は埋まり、重要だが急がない仕事は、また明日に持ち越されます。だから、先に時間を取って予定として置くしかありません。

3-2 重要な仕事を先に時間どりする

一般に、1日を時間のブロックに分け、各ブロックにやることを割り当てておくと、動きやすくなるとされています。そのとき大事なのは、最も集中できる時間帯に、最も重要な仕事を先に置くことです。

多くの人は、午前など頭が動きやすい時間帯に重要な仕事を置くとよいとされます(集中しやすい時間帯には個人差があります)。共通例なら、午前に提案資料づくり(重要な仕事)を先に時間どりし、午後に軽い作業や頼まれごとを回す。朝のうちに「午前は資料、午後はメールと雑用」と置いてしまうと、夕方になって「結局できなかった」が減ります。

3-3 細切れ作業はまとめる・バッファを入れる

時間割を組むときの工夫が、2つあります。

1つは、細切れの作業をまとめること。メール返信のように、いつでも来る作業をその都度こなしていると集中が途切れます。「メールは11時と16時に確認する」のようにまとめて1枠にしておくと、間の時間を重要な仕事に使えます。

もう1つは、バッファ(余白の時間)を入れること。予定はたいていズレます。最初からぎっしり詰めると、1つズレただけで全部が後ろにずれて崩れます。そこで、1日のどこかに30分ほどのバッファを置いておきます(時間は目安です)。この余白が、割り込みの受け皿になります。

共通例の1日を時間割にすると、こんな1枚になります。

  • 午前:提案資料づくり(重要)/締切間近の見積もりを最優先で先に
  • メール返信:11時と16時にまとめて1枠
  • 30分のバッファ:割り込み・押した分の受け皿

ここでつまずきやすい
予定を詰め込みすぎて、割り込みが1つ入った瞬間に全部が崩壊する。これがよくある失敗です。崩れない時間割の秘訣は、最初からバッファを入れておくことです。なお、ToDoの抜け漏れを防ぐ管理の仕組みづくりは、次の kouza-009「タスク管理入門」 で詳しくお渡しします。本章は「1日の時間割を組む」ところまでです。

この章の確認(演習)

お題:今日の時間割を、重要な仕事を先に置いて1枚作ってみてください。

午前に重要な仕事を置き、細切れ作業はまとめて1枠にし、30分ほどのバッファを入れます。1枚の時間割として書けたら、ゴール達成です。

第4章:集中を守る(割り込みとマルチタスク)

時間割を組んでも、割り込みと「ながら作業」で崩れてしまっては意味がありません。最後に、設計した1日の集中を守る方法を見ます。

この章のゴール

この章を読み終えると、割り込みとマルチタスクに対処して、設計した時間割の集中を守れるようになります。

4-1 同時に複数を進めると、どれも終わらない

資料を作りながらメールに返信し、合間にチャットに答える。一見たくさんこなしているようで、夕方には「どれも中途半端」になっている。よくある落とし穴です。

人は、同時に複数を処理しているように見えても、実際にはタスクを高速で切り替えているだけ、とされています(これをタスクスイッチングと呼びます)。そして、切り替えのたびに頭を切り替えるコストがかかります。1回は小さくても繰り返すと積み上がり、マルチタスクは速そうで、実際は時間がかかり、ミスも増えるとされます

4-2 1つに絞る/割り込みは「いつ戻るか」を決める

だから、集中を守る基本は1つに絞ることです。共通例の「午前の提案資料づくり」の時間を例にしましょう。

その時間は、提案資料だけに集中します。作成中にチャットの通知が来ても、都度反応せず、区切りまで進めてからまとめて確認する。集中したい時間帯は、通知をオフにしておくのも有効です。

とはいえ、急ぎの相談など、対応すべき割り込みは必ず来ます。そのときは即対応するかわりに、「いつ戻るか」と「次の一歩」を決めて記録します。「資料は見出しまで。次は中身。13時から再開」と一言メモしておくと、割り込みが終わったあと、すぐ元の作業に戻れます。割り込みの回数は減らせなくても、失う時間はこの一手間で減らせるとされています。

4-3 小さな締切で集中を作る

もう1つ、集中を作るのが小さな締切です。「午前いっぱいで資料を仕上げる」だと、つい気がゆるみます。そこで、「この30分で、資料の骨子まで作る」のように、短い時間に小さなゴールを置きます。時間を区切ると、その間は1つのことに集中しやすくなります。第3章で組んだ時間割の各ブロックに、この小さな締切を重ねるイメージです。

これで、第1章で書き出したToDoが4分割で並び替わり、時間割に置かれ、割り込みから守られて回る——同じ1日が、ぐるりと一周しました。

ここでつまずきやすい
「同時にやったほうが速い」と思って、複数を並行で進めてしまう。でも、切り替えのたびに集中が削られ、結局どれも遅くなりがちです。1つに絞り、割り込みは記録して後で対応する。 これが、設計した時間割を守る基本です。

この章の確認(演習)

お題:今日、「通知を見ない時間」を15〜30分つくると決めてみてください。

その時間は1つの仕事に絞り、割り込みが来たら一言メモして後で対応します。「何時から何分、通知を見ない」と具体的に決められたら、ゴール達成です。

まとめ:緊急に追われず、重要に時間を投資する

おつかれさまでした。「ある1日の混在したToDo」という、たった1つの場面を、書き出すところから集中を守るところまで歩いてきました。最後に、その道を1枚の地図にまとめます。

  1. なぜ足りないか……時間は増やせない。来た順だと重要な仕事が後回しになる。まず全部書き出す(第1章)。
  2. 重要度×緊急度で並べ替える……2軸で4分割し、緊急かつ重要から着手。重要だが急がないを後回しにしない(第2章)。
  3. 1日に置く……重要な仕事を午前に先どり。細切れはまとめ、30分のバッファを入れる(第3章)。
  4. 集中を守る……1つに絞り、割り込みは記録して後で。小さな締切で集中をつくる(第4章)。

この4つは、バラバラの作業ではありません。すべてたった1つの問いに戻ります。

重要なことに、先に時間を使えているか?

時間は増やせません。だからこそ、緊急に追われるのではなく、重要なことに先に時間を投資する。この講座でいちばん覚えてほしいひと言は、これです。

緊急に追われず、重要に時間を投資する。

明日の最初の一歩:明日の朝、仕事を始める前に、今日のToDoを「重要×緊急」で並べ替えてみてください。来た順をやめて、重要な仕事を先に置くだけで、一日の手応えが変わります。第1章と第2章の演習を、実際の仕事で1回やってみる。それが、時間を自分のものにする最初の一歩です。

次の講座へ:優先順位がつき、1日を設計できるようになった今、次に効いてくるのは、それを抜け漏れなく回す仕組みです。ToDoをどう管理し、抱えたタスクをどう取りこぼさず進めるか。続きは、次の講座 kouza-009「タスク管理入門」 でお渡しします。

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