速報値と確報値の違い|統計を引用する前の記録5項目
公開 2026.11.02
この記事の要点(2026年11月時点)
- 速報値は早さを優先した暫定の数字、確報値は追加の集計を入れた数字です。値が違っても、多くは誤りではなく「版」の違いです。
- 段階名と数字が動く理由は統計の種類で違います。自分が使う統計の行を、下の表で引いてください。
- 資料に書く数字は、用途・確報の有無・版の記録の3つで、速報にするか確報にするかを決めます。
- 引用するときは統計名・公表回・公表日・対象期間・取得日の5項目を残し、版が分からなければ確定値として書きません。
速報値は早さを優先した暫定の数字で、確報値は追加の集計を入れた数字なので、値が違うのは誤りではありません
速報値とは、調査結果を速やかにまとめた暫定的な数字のことで、後で追加の集計が入った確報値と値が変わることがあります。
国土交通省の「統計を利用する上での留意事項」では、速報を「調査結果を速やかに取りまとめた資料」、確報を「調査結果の確定した詳細項目を取りまとめた資料」と説明しています(国土交通省が作成する統計の一般的な説明)。速報は、一部の項目のみ、または一部の調査票のみを集計した結果を公表するものです。
数字が動くのは、統計調査の結果には必ず何らかの誤差が生じることが避けられず、集計を足すほど正確さが上がるからです。ただし正確さを高めるほど公表は遅くなります。内閣府の国民経済計算の作成方法でも、「正確性」を高めるほど公表が遅くなるトレードオフがあるため、公表を複数回に分けて段階的に改定し、速報性と正確性の両立を図ると説明しています。
つまり「早く出た数字」と「後から固まった数字」が並んで存在するのは仕組みどおりです。大事なのは、どちらの版かを見分けることです。
速報から確報への段階名と、数字が動く理由は、統計の種類ごとに違います
自分が使う統計の行を引いてください。段階名と改定の理由は、統計の作り方で変わります。
| 統計 | 段階名 | 確報の位置づけ | 数字が動く理由 | 公表の時期 |
|---|---|---|---|---|
| 国土交通省が作成する統計(一般) | 速報 / 確報 | 確報=調査結果の確定した詳細項目を取りまとめた資料 | 速報は一部の項目・一部の調査票のみの集計 | 統計ごとに決まる(各統計の公表ページで確認) |
| 毎月勤労統計(厚生労働省) | 速報値 / 確報値 | 速報後に追加された調査票を加えて集計した値 | 速報は調査票締切日に先立ち、その時点までに提出された調査票で集計するため | 月ごと |
| 国民経済計算(GDP、内閣府) | 1次QE → 2次 → 第一次年次推計 → 第二次 → 第三次、概ね5年ごとに基準改定 | 年次推計で順に改定 | 正確性を高めるため、複数回に分けて段階的に改定 | 1次QEは四半期終了から約1か月と2週間後。第一次年次推計は当該年の翌年末以降、第二次はその1年後、第三次はさらに1年後 |
| 宿泊旅行統計調査(観光庁) | 第1次速報 → 第2次速報 → 年間値(速報値) → 年間値(確定値) | 年間値(確定値)で確定 | 速報の後に確定値が公表される(2025年の例は次の章) | 報道発表ごと |
毎月勤労統計には、確報が速報より低めに出やすいという傾向の説明があります。ただしこれは平成27〜28年(H27〜H28)の月別グラフに基づく古い資料の傾向で、きまって支給する給与と所定内給与が、確報で下方改訂される傾向がみられるというものです。理由は、速報のあとにパートタイム労働者比率の高い事業所の調査票が提出され、確報で集計に加わるためと「考えられる」と説明されています。将来の月について保証するものではないので、最新の数字は必ず公式の資料で確かめてください。
国民経済計算では、概ね5年ごとの基準改定でも数字が見直されます。段階が多い統計ほど、「何回目の公表か」を書かないと数字が特定できません。
2025年の宿泊旅行統計では、年間の延べ宿泊者数の前年比が速報の-0.8%から確定値で+0.3%に変わりました
これは1つの統計・1つの年の実例で、他の統計や他の年が同じように動くとは限りません。ただし、速報の「方向」まで確定値で変わることがあるという、境界を示す例です。
観光庁の宿泊旅行統計調査・2025年(令和7年)年間値の延べ宿泊者数(全体)です。
| 版 | 延べ宿泊者数(全体) | 前年比 |
|---|---|---|
| 年間値(速報値) | 6億5,348万人泊 | -0.8% |
| 年間値(確定値) | 6億6,111万人泊 | +0.3% |
差は、編集部算出で次のとおりです(公表値ではありません)。
- 確定値と速報値の差: 66,111万人泊 − 65,348万人泊 = 763万人泊(編集部算出)
- 速報値に対する増加率: 763 ÷ 65,348 × 100 ≒ 約1.17%(編集部算出)
差は約1.17%と小さく見えても、前年比の符号は-0.8%から+0.3%に変わりました。「速報は方向を見るもの」と決めて使うと、方向まで変わる場合があります。
なお、観光庁は令和8年(2026年)1月分調査から、層化基準を「従業者数」から「客室数」へ変更しています。対前年比に見直しの影響が含まれる可能性があるため、2026年1月分以降の前年比を読むときは、この変更も確認してください。
公表の時期は統計ごとに決まっていて、次の公表日が来れば数字が変わる前提で使います
GDP(四半期別GDP速報)を例に、公表の時期を整理します。内閣府の公表予定(2026年11月2日時点)です。予定日は変更される可能性があります。
| 段階 | 時期 |
|---|---|
| 1次QE | 当該四半期終了から約1か月と2週間後(令和7年11月版の作成方法) |
| 2026年7-9月期の1次速報 | 2026年11月16日(月)の予定 |
| 2026年7-9月期の2次速報 | 2026年12月8日(火)の予定 |
| 第一次年次推計 | 当該年の翌年末以降 |
| 第二次年次推計 | 第一次の1年後 |
| 第三次年次推計 | さらに1年後 |
| 基準改定 | 概ね5年ごと |
宿泊旅行統計のページには「最終更新日」が載っています(2025年年間値の速報値ページは2026年2月27日、確定値ページは2026年7月6日。取得時点)。**これは最終更新日であって、公表日そのものではありません。**公表日の記録に代用しないでください。
資料に書く数字は、用途と確報の有無と版の記録の3つで、速報にするか確報にするかを決めます
次の3問で決めます。
- その数字は何に使うか。方向をつかむ社内の把握か、外に出す資料か。
- 確報(確定値)はもう出ているか。
- 手元の数字は何回目の公表か、分かるか。
| 用途 | 確報 | 版の記録 | 使う数字と書き方 |
|---|---|---|---|
| 社内で方向をつかむ | なし(最新月) | 分かる | 速報を使い、「速報」と明記。確報が出たら入れ替える |
| 社内で方向をつかむ | あり | 分かる | 確報を使うのが無難。速報のままなら版を併記 |
| 外に出す資料 | あり | 分かる | 確報を使い、公表回と公表日を併記 |
| 外に出す資料 | なし(最新月) | 分かる | 速報(第1次など)と明記し、確報前の暫定値と書く |
| どちらでも | 不明 | 不明 | 確定値のように書かない。H2「引用するとき」の分岐へ |
最新月は確報がまだ無く、速報しか選べないことがあります。その場合は「速報」と書き、確報が出たら入れ替える前提で使います。速報を確定値のように書くのが、一番避けたい書き方です。
| 避けたい判断 | こうすればOK |
|---|---|
| 「速報は方向だけ見るもの」と決めて、確報を確認せずに使う | 宿泊旅行統計の2025年年間値のように、前年比の符号が変わる例もある。確報の有無を先に見る |
| 数字だけコピーして貼る | 公表回と公表日を一緒に書く |
| 古い資料の傾向を最新月に当てはめる | 「H27〜H28のグラフに基づく傾向」と、時点を添える |
職場に引用の決まりがあれば、それが先です。
引用するときは、統計名・公表回・公表日・対象期間・取得日の5項目を残し、版が分からなければ確定値として書きません
国土交通省が作成する統計は、引用・転載する場合に出典の記載(「○○統計調査」(国土交通省))を依頼しています。出典の名前に加えて、次の5項目を残すと、後から「どの版か」を説明できます。下は編集部が作った架空の記録例です。
| 項目 | 書き方の例(架空) |
|---|---|
| 統計名 | ○○統計調査(国土交通省) |
| 公表回 | 第1次速報 / 年間値(確定値) |
| 公表日 | 公式の報道発表に書かれた日(ページの最終更新日で代用しない) |
| 対象期間 | ○年○月分、または○年(年間値) |
| 取得日 | 自分が数字を見た日(例: 2026年11月2日) |
版が分からないときは、次の順で動きます。
- 保留: 確定値のように書かず、その数字を資料に入れるのをいったん止める。
- 再取得: 公式の公表ページで、その対象期間の最新の版を取り直す。
- 確認: それでも分からなければ、担当者や上司に確認する。
数字の確認の型は数字 苦手 事務も参照してください。
記事ごとに数字が違うときは、公表回を確かめれば自分で説明できます(演習)
次の演習は、編集部が作った架空の場面です。
同じ月の統計について、Aの記事は「前年より減った」、Bの資料は「前年より増えた」と書いている。どちらかが間違い?
確かめる順番は、次のとおりです。
- それぞれが、何回目の公表(速報か確報か)を使っているかを見る。
- 対象期間が同じかを見る。
- 公式の公表ページで、最新の版を取り直す。
改定幅は、毎月勤労統計の資料の定義式で出せます。
速確比 =(確報値 ÷ 速報値 − 1)× 100
前の章の宿泊旅行統計(2025年・延べ宿泊者数)で検算すると、確定値÷速報値−1 = 763÷65,348 ≒ 約1.17%です(編集部算出)。式の使い方は、この検算と同じです。
演習の答えは、「どちらも誤りとは限らず、版や対象期間が違っている可能性がある。公表回を確かめる」です。数字が違うときは、まず版を疑ってください。
数字の読み方をもう一歩進めたいときは、数字 苦手 克服 仕事が次の一歩になります。数字の扱いを講座で身につけたい場合は、無料会員登録から関連講座へ進めます。
参照した一次情報(取得日: 2026年11月2日)
- 国土交通省・統計を利用する上での留意事項: https://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-other-2_tk_000333.html
- 厚生労働省・速報値と確報値で改訂される要因や傾向について(毎月勤労統計調査・PDF): https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/monthly/dl/maikin-sokukakukeikou.pdf
- 内閣府経済社会総合研究所・国民経済計算の作成方法(令和7年11月): https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/pdf/sakusei_houhou2020_202511.pdf
- 内閣府経済社会総合研究所・公表予定: https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kouhyou/kouhyou_top.html
- 観光庁・宿泊旅行統計調査(2026年4月・第2次速報、5月・第1次速報及び2025年年間値(確定値)): https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00090.html
- 観光庁・宿泊旅行統計調査(2025年12月・第2次速報、2026年1月・第1次速報)及び2025年・年間値(速報値): https://www.mlit.go.jp/kankocho/news02_00075.html
会話例・記録例・演習の場面は編集部作成の例(架空)です。
よくある質問
速報値と確報値はどちらを使えばよいですか?
用途と確報の有無で決めます。外に出す資料で確報が出ていれば確報を使い、公表回と公表日を併記します。確報がまだ無い最新月は、速報と明記して使い、確報が出たら入れ替えます。職場に引用の決まりがあれば、それを優先してください。
確報値が出ていない月はどう書けばよいですか?
「速報」または「第1次速報」など、版が分かる形で書きます。確定値のように書かず、確報が出たら入れ替える前提で使います。
速報値が確報値で大きく変わることはありますか?
あります。2025年(令和7年)の宿泊旅行統計では、年間の延べ宿泊者数の前年比が、年間値(速報値)の-0.8%から年間値(確定値)の+0.3%に変わりました(観光庁)。ただしこれは1つの統計・1つの年の例で、統計や年によって動き方は違います。
毎月勤労統計の確報は速報より低くなりますか?
厚生労働省の資料には、平成27〜28年(H27〜H28)の月別グラフに基づき、きまって支給する給与と所定内給与が確報で下方改訂される傾向がみられるという説明があります。古い資料に基づく傾向で、将来の月を保証するものではありません。
統計を引用するとき、出典は何を書けばよいですか?
国土交通省が作成する統計は、「○○統計調査」(国土交通省)の形で出典を記載するよう依頼しています。加えて、統計名・公表回・公表日・対象期間・取得日の5項目を残すと、後から版を説明できます。
GDPの速報はいつ改定されますか?
内閣府の説明では、1次QEは当該四半期終了から約1か月と2週間後に公表されます。2026年7-9月期は、1次速報が2026年11月16日(月)、2次速報が12月8日(火)の予定です(2026年11月2日時点。予定日は変更される可能性があります)。